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年代別・健康診断「オプション」の選び方 ~女性編~

健康診断・人間ドックを受診する際、オプション(追加)検査をつけるかどうか、考えたことのある方は多いのではないでしょうか。オプションにはさまざまな種類があるため、自分はどの検査を受けるのがよいのか、選択に迷うこともあると思います。特に女性は「婦人科領域」と呼ばれるような女性特有の病気があります。この記事では女性が検討したいオプション検査(気をつけたい病気)に注目して解説します。

男女共通編は以下の記事をご覧ください。

年代別・健康診断「オプション」の選び方 ~男女共通編~
毎年受診する定期健康診断や人間ドックの際、迷うことも多いのが、オプション(追加)検査。「定期健康診断でいろいろ調べるのだから、オプション検査は不要では?」と思う方、あるいは「念のためつけたいけれど、何を選んだらいいのか分からない……」という方など、さまざまだと思います。

この記事では、成人以降の男女において、どのような観点でオプション検査を検討すればよいのか、年代や生活習慣を踏まえながら解説していきます。
https://helico.life/monthly/230708healthcheck-option-common/
INDEX
「健康診断のオプション」っていったい何?
オプションはどのように選ぶのがいい?
20歳代から検討したいオプション
30~40歳代から検討したいオプション
50歳代以降で検討したいオプション
オプションを決める・検査を受けるうえで気をつけたいこと

「健康診断のオプション」っていったい何?

年に1回、定期的に受診している方が多い健康診断。会社に勤めている方を例に挙げると、毎年受けている定期健康診断は、労働安全衛生法という法律で、事業者(会社)が労働者に対して定期的に(基本的には1年に1回)実施しなければならないと定められているもので、受診費用は事業主と健康保険組合で負担されることがほとんどです。

これに対し、人間ドックは任意の検査で、検査項目や費用は医療機関によって異なりますが、一般的には定期健康診断よりも検査項目が多く、高額になります。しかし、事業者・健康保険組合によっては人間ドックを定期健康診断の代わりに実施し、費用を負担する場合もあります。

定期健康診断は検査項目が定められているのに対し、健康診断のオプション検査はあくまでも「任意」で受けるもの。定期健康診断に追加できる検査で、基本的には自費で受けることになりますが、健康保険組合によっては負担されることもあります。また、用意されているオプション検査は医療機関によって異なり、場合によっては指定する受診条件(年齢・性別等)に当てはまる方しか受けられない検査もあります。

定期健康診断で実施する検査の意義やその項目については、「健康診断のあの検査、いったい何を調べているの?」をご覧ください。

健康診断のあの検査、いったい何を調べているの?
「病気は早期発見が重要」とよくいわれます。しかし、実際には、初期段階では自覚症状がほぼない病気もあり、検査を行わないと早期発見が難しいケースも多々あります。そこで重要な役割を担っているのが「健康診断」。客観的な数値で体の状態をとらえる健康診断は、異常を早めに検知できる機会です。

本記事では、定期健康診断で実施する検査項目と、それらの目的などを解説します。
https://helico.life/monthly/230708healthcheck-kiso/

オプションはどのように選ぶのがいい?

オプション検査は、個人のリスク・懸念に応じて検査を組み合わせることが可能です。選択のポイントとしては以下が挙げられます。

  • 性別
  • 年齢
  • 家族歴(親や兄弟姉妹がかかったことのある病気)
  • 生活習慣(喫煙・飲酒などの嗜好歴)
  • 予算

ただし、どのような検査も精度が100%ではないため、病気がないのにもかかわらず「病気かもしれない」という結果が出るケースがあります(偽陽性)。その場合には、さらに精密な検査を行うための検査費用や心身への負担がかかることも。また逆に、病気が隠れていても「異常なし」と判定されるケース(偽陰性)もあります。

オプション検査は、受けることによって病気を早期発見できる可能性があるとともに、上記のような面もあることを考慮したうえで選んでいくことが大切です。

公費で補助が受けられるがん検診も

がんに関連したオプション検査の受診を検討する際、知っておきたいのが、がん検診の種類です。がん検診には、大きく分けて「対策型がん検診」と「任意型がん検診」があります。

「対策型がん検診」は、自治体で行われているもので、検診の対象となるがんは、「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「乳がん」「子宮頸がん」の5種類です。

対策型がん検診は、特定のがんによる国民全体の死亡率を減らすことを目的としており、検査の実施によって集団の死亡率が下げられるということが科学的に証明されたうえで、公的な予防対策の一環として行われています。そのため、費用も公費によって補助されています。

また、対策型がん検診では、検診の「対象年齢」「検診の間隔」「検査方法」も定められています。例えば乳がんは、「40歳以上の女性」「2年に1度」「問診およびマンモグラフィによる検査」が、対策型がん検診の対象となっています。それぞれの対策型がん検診の詳細はお住まいの自治体のWebサイトなどを確認してみてください。

一方、人間ドックや健康診断で実施するがん検診は「任意型がん検診」であり、これは医療機関が任意で提供しているものです。任意型がん検診は、受診者個人の生存期間の延長を期待して、受診者が任意で受診するがん検診です。

検診費用が自費になるものの、希望をすれば基本的には誰でも受けることができるため、遺伝的な要因(近親者に特定のがんの方がいる場合等)などで、若年のうちから定期的に検査を受けたいといった方などには有用な可能性があります。また、会社(組合)が検診推進のために、あらかじめ胃がんや大腸がん検査などを健康診断の項目に含め、費用を負担しているケースもあります。

ただし、任意型がん検診で実施される検査は、集団の死亡率を下げたり、どの程度の頻度で受けることが望ましいのかなど、まだ科学的根拠が十分ではない検査もあるため、その点には留意が必要です。

病気の多くは年齢を重ねるごとにリスクが高まりますが、比較的若いうちから受診を検討したいものもあります。ここからは、具体的にどの年代でどういった検査を検討するのがよいかを解説します。

20歳代から検討したいオプション

子宮頸がん検査

子宮頸がんの多くはHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染が原因となっており、性交渉の経験がある方は誰しもリスクがあるといえます。そのため、性交渉経験がある場合には、比較的若いうちから検査を検討したほうがよいでしょう。

なお、子宮頸がん検査は「対策型がん検診」の対象になっているので、20歳以上の女性は2年に1回、公費で検査を受けることができます。

会社などで定期健康診断を受けている方で、事業主・健康保険組合が子宮頸がん検診の費用負担を行っていない場合、対策型検診の対象となる年には健康診断でのがん検診オプションはつけずに、自治体の検診を受けるという方法もあります。

また、子宮頸がんにかかるリスクが高いかどうかを調べるという意味では、HPV感染の有無を調べる検査が有用になることもあります。

子宮頸がんの予防について、さらに詳しく知りたい方は、「HPVワクチン&検診で「子宮頸がん」の予防を!」の記事をご覧ください。

HPVワクチン&検診で「子宮頸がん」の予防を!
20~40歳代女性の間で近年増えている、「子宮頸がん」。多くのがんは加齢とともに発症率が上がっていきますが、このがんは「若いうちから注意したいがん」の1つです。

海外では予防ワクチン(HPVワクチン)の導入が進み、罹患率が低下している国もあります。しかし、日本ではワクチン接種が進んでおらず、年間で約1万人が新たに子宮頸がんを発症し、約2,900人が亡くなっています。病気の進行度によっては、子宮全摘出という決断を迫られる場合もあります。どうしたら自分の身を守れるのか。子宮頸がんという病気や予防のためのHPVワクチン、子宮頸がん検診について理解を深めてみませんか。
https://helico.life/series/healthcare-cervicalcancer/

経腟(けいちつ)超音波検査

腟内に、細いプローブ(器具)を挿入して行う超音波検査です。

子宮頸がん検査は、子宮頸がんのみをピンポイントでスクリーニングするものですが、経腟超音波検査では、子宮全体や卵巣の状態を調べるので、子宮筋腫や子宮内膜症(卵巣で発生した場合には卵巣のう腫)など、月経困難症の原因となる病気を見つけられる可能性があります。

「月経が重い」「子宮や卵巣の病気が気がかり」という方で、婦人科の受診にハードルを感じている場合には、健診のタイミングを利用して検査を受けてみるのもひとつの方法です。

ちなみに、経腟超音波検査は、子宮体がんや卵巣がんの診断の補助となる可能性もありますが、これらのがんは40歳代、あるいは40歳代後半頃から増加し、50~60歳代での発症が多い傾向があります。

30~40歳代から検討したいオプション

乳がん検査

乳がんの罹患者数は40歳代から増加するといわれています。乳がん検査は、対策型がん検診の対象となっているので、40歳以上の女性であれば2年に1回、公費で検査が受けられます。乳がんは遺伝が影響することもあるため、家族歴に懸念がある場合には30歳代から検査を検討してもよいでしょう。

乳がん検査には、乳房をプラスチックの板で挟んでX線で撮影する「マンモグラフィ検査」と、乳房に超音波を当てて画像に映し出す「超音波検査(乳腺エコー)」があり、対策型がん検診ではマンモグラフィ検査が行われていますが、マンモグラフィと超音波検査(乳腺エコー)を併用することにより、乳がんのスクリーニング成績が向上することが報告されています。

マンモグラフィ検査は人によっては痛みを伴うこともあるので、どうしても検査を苦痛と感じる場合には、超音波検査(乳腺エコー)を代替で検討するのもひとつの手段ですが、現時点で集団の死亡率低下が科学的に示されているのはマンモグラフィ検査のみのため、40歳以上の女性においては、マンモグラフィ検査による乳がん検診は定期的に受けたいもの。

なお、マンモグラフィ検査の苦痛が強い方は、医療機関で乳腺エコーへの代替について相談してみてください。

50歳代以降で検討したいオプション

骨密度検査

女性は閉経前後からホルモンバランスが大きく変化します。骨密度も女性ホルモンの影響を大きく受けるため、閉経後から急激に骨がもろくなり、骨粗しょう症のリスクが上がってしまうケースも。

骨粗しょう症は転倒した拍子に骨折などが起こり、それにより活動量が低下し健康寿命にも影響するなど、悪循環を生み出す危険性があります。

元々の骨の丈夫さや、ホルモンバランスの変化が大きくなる年齢(閉経年齢)は人によってまちまちのため一概にはいえませんが、大体50歳頃から検査を検討するのがいいでしょう。

なお、骨密度検査は自治体からの補助で受けられる場合があるため、お住まいの自治体の情報も確認しておきましょう。

骨粗しょう症について、さらに詳しく知りたい方は「すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」」をご覧ください。

すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」
「骨粗しょう症」という病名は聞いたことがあるけれど、高齢者の病気だろうし自分にはまだ関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか。重篤な病気ではないととらえている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折が引き金となって寝たきりになったり、骨折を繰り返したりすることもあり、健康への影響はかなりのもの。また、骨量や骨密度は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、とくに40代以降の女性は気をつけたい病気です。

骨粗しょう症予防は、症状が出る前からの対策がなによりも重要です。正しい知識を身につけて、生涯自分の足で歩ける丈夫な体づくりを目指しましょう。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-osteoporosis/

ロコモティブシンドローム(ロコモ)検査

人が立ったり歩いたりするために必要な身体能力(移動機能)が低下した状態を、ロコモティブシンドローム(ロコモ)といいます。筋力や骨密度の低下によって引き起こされるロコモは、健康寿命にも影響があります。

検査を受けることで自身の筋力やバランス能力などを把握し、必要に応じて筋力をつけるための簡単な運動などを実施することが重要です。

ロコモについて、さらに詳しく知りたい方は「大人も子どもも要注意!ロコモティブシンドロームとは」をご覧ください。

大人も子どもも要注意!ロコモティブシンドロームとは
みなさんは「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」という言葉を聞いたことがありますか? なんだかかわいらしい響きに聞こえますが、ロコモとは、筋力低下や骨の病気などに伴い、立ったり歩いたりする能力が低下している状態を指します。自分はまだ若いから大丈夫! と思った方も要注意。近年は新型コロナウイルス感染症の影響や生活様式の変化により、「子どもロコモ」など、高齢者以外の世代でもロコモが懸念されています。ロコモが進行すると将来、介護が必要になるリスクが高まってしまうので、若い世代から予防を意識することが大切です。

本記事では、子どもから大人まで誰もがなり得るロコモについて、基礎的な情報を解説します。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-locomo/

オプションを決める・検査を受けるうえで気をつけたいこと

選択に迷った場合はかかりつけ医や検査を受ける医療機関で相談しよう

すでに、ある病気の診断をされていたり、治療を受けていたりする場合は、不要と思われる検査や逆に受けておいたほうがよい検査が出てくることもあります。検査のオプション選択に迷う場合には、まずはかかりつけ医に相談してみるのがよいでしょう。

特にかかりつけ医がない場合には、健診を受ける医療機関に相談し、検査に対する疑問や不安などを解消することも大切です。検査によってはまだ判定基準が標準化されていないケースもあります。また、以前の健診で異常値が出たものの、健康には影響がないと思われる項目について、それまでとは違う医療機関で健診を受けたことで、要精査と判断されるケースがあるように、余計な検査が増えたりすることもあります。そのため、できるだけ毎年同じ医療機関で健診を受け、定点的にデータを確認することも重要なポイントといえます。

すでに症状がある場合は健診ではなく医療機関の受診を!

健診はあくまで、健康であるかどうかを広くまんべんなく確認し、病気のスクリーニングやリスクを測るものです。そのため、すでに何らかの症状がある場合には、その症状からより限定的・専門的に疾患を特定できる適切な診療科を受診するようにしましょう。

検査を受けて終わりにしないで

「何か病気が見つかるのが怖い」という理由で、健診、あるいはオプションでさらに深く体の状態を調べることをためらう方もいると思います。しかし、健診を活用することで、できるだけ病気を早期発見することにより予後を改善したり、あるいは発症リスクを減らすための対策をとれる可能性も出てきます。

健診は受けることがゴールではありません。結果を受けて、生活改善や治療などにつなげるところまでを健診の意義としてとらえ、勇気を持って体の状態をチェックしてみましょう。

どのような観点で健康診断のオプションを選べばよいか、参考になりましたか? せっかく実施するのであれば、自分自身の生活スタイルや病気のリスクに合わせてきちんと健診の場を活用できるよう、ゆっくり健診オプションについて考える時間をつくってみるのはいかがでしょうか。

教えてくれたのは・・・
松本 知沙先生
東京医科大学病院 健診予防医学センター

2011年 Harvard 公衆衛生大学院 疫学修士。2011~2013年 Harvard 大学医学部、Brigham and Women’s Hospital Fellow。専門領域は内科、循環器内科、予防医学、循環器疫学。人間ドック健診専門医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本高血圧学会認定専門医・指導医、米国心臓病協会フェロー、American Heart Association Fellow (FAHA)。病気の早期発見や予防を目標に、受診者ひとりひとりに寄り添った人間ドックの案内を目指す。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:きりふみこ
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