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体中のうるおいが不足する「ドライシンドローム」とは?

「ドライシンドローム(乾燥症候群)」とは、目、口、鼻、肌、腟など体のあちこちが乾いている状態の総称です。体の乾燥は、QOL(生活の質)を下げるだけではなく、進行すると健康を害することも少なくありません。できるだけ早く正しい対策を取ることが大切ですが、「そもそもドライシンドロームって何?」という方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、ドライシンドロームの原因や主な症状などについて解説します。

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体の乾燥、なんとなくそのままにしていませんか?

ドライシンドロームとは、体のさまざまな部位が乾いて不快な症状が現れる状態のこと。自覚があっても、「ただの乾燥だから……」と軽く考えてしまう人は要注意。次のような症状がいくつか当てはまる人は、ドライシンドロームの可能性があります。まずは、ご自身がドライシンドロームになっていないかどうかをチェックしてみましょう。

目の乾燥

□ 目にゴロゴロ感、かゆみ、痛みがある
□ 物の見え方に違和感がある
□ 光をまぶしく感じる
□ 目が疲れやすい
□ 目ヤニがよく出る

口の乾燥

□ 口や喉が渇きやすい
□ 口や舌に痛みがある
□ 口臭が気になる
□ 水分がないと食事を飲み込みづらい
□ 滑舌が悪い

肌の乾燥

□ 肌がカサカサする
□ 刺激に対して敏感
□ 赤みや痛みがある
□ 化粧ノリが悪い
□ 肌荒れが起こりやすい

腟の乾燥

□ 腟にヒリヒリ感、かゆみ、痛みがある
□ おりもののにおいがきつい
□ 些細な刺激で出血する
□ 性交痛がある

鼻の乾燥

□ 鼻に違和感がある
□ 鼻血が出やすい
□ 鼻の中にかさぶたができる
□ においを感じにくい

乾燥症状がひとつでもあればドライシンドロームなの?

ドライシンドロームは、体のあちこちが乾燥すること。目だけや、口だけなど一部位しか乾燥症状がない場合は、ドライシンドロームとは定義されません。しかし、ドライアイ外来を受診する人は、口の中が乾燥しやすいドライマウスであることも多く、体のどこかに乾燥を感じている人は、さまざまな部位が乾燥していることも。

乾燥が続くと、体がその状態に慣れてしまったり、特定の部位の乾燥だけが気になったりというケースも少なくありません。どこか一部位の乾燥が気になる人もドライシンドロームの可能性はあります。乾燥が気になっていない部位の状態もチェックしてみましょう。

ドライシンドロームになりやすい人とは?

ドライシンドロームによる乾燥症状は、唾液や涙、皮脂などの外分泌腺(がいぶんぴせん)の機能低下が原因で起こります。中年期以降の女性はドライシンドロームになりやすい傾向にあり、その主な原因はエストロゲン(女性ホルモン)の分泌低下が関係していると考えられています。

外分泌腺はエストロゲンの作用によって活発に働きます。そのため、年齢を重ねてエストロゲンの分泌量が減ると、外分泌腺の機能も低下してしまいます。エストロゲンの分泌が減少するスピードには個人差がありますが、急激に減少する人ほど重度なドライシンドロームになりやすい傾向があります。

また、外分泌腺の働きは自律神経によって調節されています。緊張感が高まると働く交感神経は外分泌腺の働きを抑制し、リラックスすると働く副交感神経は外分泌腺の働きを促します。そのため、ストレスが多い生活を送っていると交感神経が優位になり、外分泌腺の機能が低下し、乾燥症状を引き起こしやすくなってしまうと考えられています。ストレスが多い現代社会では、男性や若い人でもドライシンドロームになる可能性があるのです。

ドライシンドロームと似た「シェーグレン症候群」とは?

ドライシンドロームと同じような症状がある病気として、「シェーグレン症候群」という自己免疫性疾患があります。これは、免疫の異常によって外分泌腺が破壊され、あらゆる部位が乾燥していく病気で、涙腺が破壊されて涙が出なくなる、唾液腺が破壊されて唾液が出なくなる、などが特徴的な症状とされています。

シェーグレン症候群は中年期以降の女性に多くみられますが、どのようなメカニズムで発症するのか、今のところ明確には分かっていません。難病に指定されている病気でもあり、これまで、「全身の乾燥=シェーグレン症候群」と思われてきました。

しかし、実際はシェーグレン症候群の診断基準に当てはまらなくても、全身の乾燥症状を訴える人が多いことが分かっています。

ドライシンドロームをそのままにすると……

体の乾燥は、命に関わるほどではないため軽く思われがち。しかし、ドライシンドロームはQOL(生活の質)を下げ、新たな病気のきっかけになってしまうこともあります。例えば、口の乾きは虫歯や口臭だけではなく、歯周病を悪化させ、その結果、糖尿病や心疾患などの病気の引き金になることも知られています。腟の乾きは性交痛だけではなく、腟の自浄作用が低下してしまうので細菌性腟炎になりやすくなります。このように、ドライシンドロームは知らず知らずのうちに日常生活に影響を与えて、病気のきっかけとなっていることも少なくないのです。

「単なる乾燥だから……」と軽く考えず、乾燥症状が続くときは適切な対処や治療を行っていきましょう。近年では、ドライアイ外来やドライマウス外来など、ドライシンドロームに特化した専門外来がある医療機関も増えてきています。お悩みの方はぜひ利用してみてください。

教えてくれたのは…
斎藤 一郎先生

ドライマウス研究会代表。鶴見大学歯学部 教授、元附属病院長。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:umao
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