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漢方薬でドライシンドロームをゆっくり改善

漢方薬は、体質改善を目的に服用する薬。即効性よりも、少しずつ体の中を整えていきたい人におすすめで、体のあちこちが乾く「ドライシンドローム」の症状にも効果が期待できる場合があります。今回は、ドライシンドロームに悩む方におすすめの漢方薬と使い方のポイントについて、漢方薬・生薬認定薬剤師の資格をもつ薬剤師さんに聞いてみました。

漢方薬ってどんなもの? 基本を理解しよう

漢方薬とは、いくつかの「生薬(しょうやく)」を組み合わせてつくられる薬のこと。漢方薬の歴史は長く、いくつかの生薬を配合することで、さまざまな効果が期待できる薬が生まれてきました。生薬は、薬効があるとされる植物の根や種子、鉱物、動物の角や内臓などを加工してつくられたもので、漢方薬には1種類以上の生薬が決められた量だけ含まれています。まずは、漢方の基本的な考え方について詳しく見てみましょう。

漢方の基本「気」「血」「水」とは?

「漢方」は数千年の歴史の中で築き上げてきた東洋医学の基本です。現在、一般的に行われる医療は体の悪い部分に焦点をあてて、それらを取り除くことを目的とする西洋医学ですが、東洋医学は体の不調を内側から改善することを目的にしている医療です。そのため、西洋医学と東洋医学では「体」に対する考え方が異なります。東洋医学の漢方の世界では、体を知るために「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素に分けてチェックします。

気(き)

「気」は、生命を維持するためのエネルギーのこと。メンタルも反映するとされており、「気」の停滞は気分の落ち込み、「気」の不足は倦怠感や無気力などを引き起こすと考えられています。

血(けつ)

「血」は、全身に酸素や栄養を運び、ホルモンバランスを整えます。血液をイメージするとわかりやすいかもしれません。「血」の流れの悪化は生理不順、肩こり、のぼせ、冷えなどの症状を引き起こします。また、「血」が不足すると顔色の悪さ、肌の乾燥などの原因になることも。

水(すい)

「水」は、リンパ液、尿、鼻水など体内にある水分のこと「水」の流れが悪くなると、めまい、頭痛、むくみなどの症状を引き起こします。

体の不調は「気」「血」「水」のバランスの乱れから

漢方の世界では、「気」「血」「水」の3要素のうち、どれか1つでも異常が生じれば体の不調につながるとされています。「気」「血」「水」のどれに異常があるかを判断したうえで、体の内側から改善していくというのが漢方の基本的な考え方です。

ドライシンドロームにおすすめの漢方薬は?

目、口、鼻、肌、膣……体のあちこちが乾燥して不快な症状を引き起こすドライシンドローム。中年期以降の女性を中心に悩まされている方は少なくありませんが、それらの症状は漢方の力で改善が期待できることもあります。

ドライシンドローム各症状の改善が期待できる漢方薬をご紹介

ドライシンドロームの多くは、「血」や「水」の不足が原因と考えられています。そのため、ドライシンドロームの人には「血」を補い、「血」の巡りを改善する作用を持つとされる四物湯(しもつとう)が広く使用されています

また、ドライシンドロームは乾燥する部位によってドライアイ、ドライマウス、ドライノーズ、ドライスキン、ドライバジャイナなどに分けられます。それぞれの症状に対し、効果が期待できる漢方薬をご紹介しますので、お悩みがある方はぜひ参考にしてみてください。

ドライマウス

白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう
喉の乾きやほてりを鎮める「白虎湯(びゃっことう)」に「人参」を合わせた漢方薬です。

ドライマウス&ドライノーズ

麦門冬湯(ばくもんどうとう)
主成分は乾燥をうるおす「麦門冬(ばくもんどう)」で、乾いた咳にも効果が期待できます。

滋陰降火湯(じいんこうかとう)
喉にうるおいがなく、痰(たん)や咳が激しい場合に用いられます。

ドライアイ

杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
目をいたわる「枸杞子(くこし)」「菊花(きくか)」を合わせた漢方薬です。

ドライスキン

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
産婦人科の三大漢方の1つで、「血」の不足を補い、体を温めます。

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
「血」と「気」が不足していて、全身が弱っている人に向く漢方薬です。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「気」を生み出し、元気を補う代表的な漢方薬です。

当帰飲子(とうきいんし)
高齢者の肌のかゆみや、アトピー性皮膚炎などに適しています。

消風散(しょうふうさん)
かゆみの強い慢性の皮膚疾患や、じんましんなどによく用いられます。

ドライバジャイナ

清心蓮子飲 (せいしんれんしいん)
尿トラブルのほか、不安感やイライラ感などの精神症状を伴う場合に用いられます。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)
泌尿器などの炎症や、おりものなどの症状がある場合に処方されます。

こんな人には漢方薬がおすすめ!

漢方薬は、西洋医学で用いられる薬と比べると、ゆっくり時間をかけて体の歪(ひずみ)を改善していく薬です。また、すべての人に確実な効果が現れるわけではなく、服用を継続しても効果を実感できない方もいます。しかし、体の内側から不調を改善する漢方薬は、体質に合えば優れた効果を発揮します。なかには一般的な薬で効果がなかったのに、漢方薬で改善したという例もあります。

特にドライシンドロームは、はっきりした原因がわからない場合も多く、体の悪い部分を狙って効果を発揮する薬では十分な効果が得られないことも。体の内側から改善していく漢方薬で、乾燥に関する悩みを解決できる可能性もあるのです。

漢方薬を始める際は、症状が始まった時期、思いあたるきっかけ、生理や排便の状態などを把握しておき、専門的な知識をもった薬剤師に伝えると、より適切な処方に役立ちます

漢方薬を使用するときに注意すべきことは?

漢方薬は安全性が高いと思われがちですが、正しく使用しないと健康を害することもあります。漢方薬を使用するときは、次のようなことに注意しましょう。

まずは病気の治療が最優先!

漢方薬は体質に合えば優れた効果を発揮する薬です。しかし、体の不調が何らかの病気が原因である場合は、第一に病気の治療を優先する必要があります

例えば、アトピー性皮膚炎によって引き起こされるドライスキンは、ステロイド薬や保湿剤などでの西洋医学的な治療が優先して選ばれます。その際、漢方薬はあくまでも西洋医学の治療を補う役目を担うもの。西洋医学的な治療を行わずに漢方薬だけの治療を行うと、症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。

2週間~1か月は継続しよう

漢方薬は西洋医学での薬と異なり、時間をかけて体の内側から改善していくものです。そのため、服用している漢方薬が体質に合っているかを判断するには、ドライシンドロームの場合、少なくとも2週間~1か月は継続して使用する必要があります。ある程度の期間継続してみて、改善を実感した場合は、そのまま継続するとよいでしょう。ただし、漢方薬のなかには長く服用し続けると血圧が上がったり、体内のミネラルのバランスが乱れたりするものもあります。継続すべき期間や服用をやめるタイミングなどについては、医師や薬剤師に相談しましょう

飲み合わせには要注意

一般的に漢方薬は副作用が少ないですが、薬との飲み合わせが悪いものもあります。普段から持病のための薬を内服している人は、医師や薬剤師に相談して、安全な漢方薬の使用を心がけましょう。自己判断での使用は、思わぬ副作用が生じたり、飲んでいる薬の効果が弱まってしまったりすることもあるので注意してください。

「気」「血」「水」の乱れによってバランスが崩れてしまった体を整えてくれる、漢方薬。規則正しい生活や食事を心がけたうえで取り入れると、あなたの心強いサポーターになってくれるはず。慢性的な乾燥を感じている方や、各症状に対して体の内側からアプローチしたい方は、ぜひ薬剤師に相談してみてくださいね。

※ここでは、市販薬として一般的に入手しやすい代表的な漢方薬を紹介しています。医療機関などで処方される漢方薬とは異なる場合があります。

漢方にまつわる他の記事はこちら
『薬剤師に聞いた、冷えの症状別おすすめ漢方薬とは?』

教えてくれたのは・・・
北澤 泰代先生
株式会社アイセイ薬局 漢方薬・生薬認定薬剤師
アイセイ薬局 南千住店 店長

研修認定薬剤師/小児薬物療法薬剤師/臨床検査技師/放射線取扱主任1種
漢方は古方の傷寒論・金匱要略の原文解釈塾に参加。同じ流れで朴庵塾に参加。以来25年ほど漢方に携わる。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:姫田真武
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