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ジェーン・スー&堀井美香が高尾先生に聞く!女性ホルモンと乾燥の関係

年齢を重ねることで、体にまつわる悩みは変化していきます。例えば「肌や髪の乾燥」が年々気になってきたけれど、それらの原因や正しいケア方法がわからなくて、なんとなくそのままにしている……という人は少なくないのでは。

ジェーン・スーさんと堀井美香さんがパーソナリティを務める人気ポッドキャスト番組『TBSラジオ ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』にて、女性のさまざまな悩みや本音に寄り添い、加齢に伴う体の変化や戸惑いを多くのリスナーと共有するおふたりが、今まさに直面している「体の乾燥」にまつわる悩みや疑問を、イーク表参道副院長・高尾美穂先生に相談。女性ホルモンの働きと乾燥の関係とは?

ジェーン・スーさん

1973年、東京都生まれ。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』のパーソナリティとして活躍中。近著は『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)。

堀井美香さん

1972年、秋田県生まれ。1995年にTBSテレビに入社して以来、局アナとして第一線で活躍。2022年、TBSテレビを退社後はフリーアナウンサーとして、ポッドキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』パーソナリティ、ナレーション、朗読を中心に多方面で活躍中。近著は『音読教室』(カンゼン)。

高尾美穂先生

医学博士・産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。イーク表参道副院長。ヨガ指導者。婦人科の診療を通して女性の健康を支え、 女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポートしている。NHK『あさイチ』をはじめメディア出演多数。近著は『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)。

オーバー40になると体のあちこちが乾燥するのは、なぜ?

ジェーン・スーさん(以下スーさん)

30、40代と年齢を重ねるほどに、体の乾燥に悩む女性は多くなる気がします。私も最近、肘や膝はもちろん、すねや首、デコルテあたりのキメがすごく粗くなってきた気がしていて。加齢と乾燥は何か関係性があるのでしょうか。

高尾美穂先生(以下、高尾先生)

女性の場合、加齢と乾燥は大いに関係があります。これは女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が、加齢によって減少していくためです。
 
エストロゲンは卵巣から分泌されるホルモンで、年代によって分泌量が大きく変化します。初潮を迎える10代の頃には分泌量が急激に増加して、20~30代はおおむね安定しますが、40歳前後からは分泌量がどんどん減少していくんですね。

女性ホルモンについての正しい知識を広めるべく、多方面に活動している高尾先生
高尾先生

エストロゲンは卵巣機能に働きかけるだけでなく、肌の弾力を保つコラーゲンの産生を促す作用も持っています。そのため、エストロゲンの分泌が減っていくと、皮膚のコラーゲンや水分量も減ってしまうので、例えばしわが深くなるなどの変化が現れます。コラーゲンは皮膚だけではなく、骨や血管にもありますから、エストロゲンが減少すると体のあちこちに不具合が起きてくるんです。
 
卵巣がつくる女性ホルモンにはもうひとつ、「プロゲステロン」があります。エストロゲンとプロゲステロンはどちらも水分を蓄える働きがあるので、この2つのホルモンが分泌される年代のうちは肌にみずみずしさが保たれるのですが、30代後半頃から分泌量の平均値が下がっていくため、結果的に水分保持能力も落ちてしまう。これが女性の場合の加齢による乾燥の正体です。
 
女性ホルモンの変動による心身のゆらぎは、おふたりも日常の中で何かしら体感されているのではないでしょうか。

スーさん

ここ数年でものすごくホルモンに振り回されている自分を感じるようになりました。メンタルが不安定になって、「世界の皆が私を嫌いなんだ」と思い込んでしまう思春期のような感情に襲われたりして。今まで軍人的に精神を鍛えて生きてきたので、むしろこんな自分がおもしろいくらい。これも女性ホルモンにドライブされているんでしょうね。

「女性ホルモンに振り回されている自分を客観的に見られるのが思春期との違いかも……」と話すスーさん
スーさん

生理に関しても出血量が最近はドッと増えていて。閉経前の最後の大暴れなのかな。ホルモンが急激に増える思春期と同じで、ホルモンが急激に減る時期も不安定になりやすいんですかね。そういう意味では似ているのかもしれないと感じました。

高尾先生

おっしゃる通りだと思います。ホルモンの分泌量がアップダウンして卵巣機能が不安定になるという意味では、思春期と更年期はじつはよく似ているんです。

堀井美香さん(以下、堀井さん)

女性ホルモンの影響で、やる気が出てこなくなることはありますか? 私は今、50歳で生理が終わりに近づいている予感がしているのですが、それとは別でここ数か月の悩みは「やる気のなさ」。とにかくやる気が湧いてこないんです。

高尾先生

自分が大好きなことであっても、やる気が出てきませんか? 推しみたいな存在もいない?

堀井さん

推しはいませんし、おいしいものもそんなに食べたくない。映画やテレビも見る気が湧かない。唯一、仕事に関しては責任感や期待に応えたい気持ち、サボったら迷惑をおかけするかもという心配でモチベーションを保っているのですが、それ以外はまったくやる気が湧かないんです。

高尾先生

今がちょうど50歳で更年期の真ん中あたりの年齢ですから、やはり女性ホルモンの影響はあるかもしれませんね。更年期のメンタルの不調は、大きく分けて2種類です。すごくイライラして怒りっぽくなるか、鬱っぽく落ち込んでしまうか。美香さんは後者かもしれません。
 
エストロゲンはコラーゲンだけでなく、ハッピーホルモンとも呼ばれるセロトニンの産生とも関わっています。エストロゲンが減少すると、セロトニンもつくられづらくなってしまうため、幸せをなかなか感じづらくなる。
 
精神科領域の鬱状態とは違って、エストロゲンを足してあげると更年期状態のメンタル不調はある程度改善します。ですから、仕事や生活に支障が出るようであれば、漢方薬や体の外からエストロゲンを足す方法を検討するとよいでしょう。

「このやる気のなさが、ずっと続いたらどうしよう」と笑う堀井さん
堀井さん

体の外からエストロゲンを増やすには、どんな方法がありますか?

高尾先生

経皮パッチのような貼り薬やジェルなどの塗り薬で、経皮からエストロゲンを吸収させる方法があります。パッチをお腹や腰まわりに貼って、3日に1回貼り替えるような方法であれば、保険も適用されますし負担が少ないですよ。ほかに飲み薬もあります。

スーさん

この先、エストロゲンが体内で自発的に増えることはもうないと考えたほうがいいですか?

高尾先生

残念ながらありません。40代後半から閉経を迎える50代前半では、最後のゆらぎともいえるエストロゲン分泌のアップダウンがあるのですが、そこを過ぎれば体内のエストロゲン量は低めで安定してしまいますから。

スーさん

大豆イソフラボンが女性ホルモンと同じように体内で作用すると聞きますが、実際に効果はあるのでしょうか?

高尾先生

大豆イソフラボンには「ダイゼイン」という成分が含まれていて、体内で代謝されると「エクオール」という成分が生まれます。このエクオールの化学構造式がエストロゲンにすごく似ているんですよ。完全にマッチはしないけれども、体内で似た働きはしてくれる。
 
大豆イソフラボンのエクオール=弱いエストロゲン、と考えるとわかりやすいかもしれません。大豆イソフラボンを摂ってもエストロゲンは増えませんが、それに似た働きはしてくれますから。エクオールのサプリメントで補う方法もありますよ。

スーさん

ちょうど昨日、知り合いの50代半ばくらいの女性が「私はエクオールが効いた」って言ってたんですよ。

高尾先生

効き目が緩やかなのでスカッと改善することはないですが、3か月ほど続けると効果が出てくる人は多いですね。体の乾燥や生理の悩み、メンタルの不調も、すぐに命に関わるというわけではなくても、QOL(生活の質)が落ちることは確かですよね。そこは知識として持っておくといいかもしれません。

堀井さん

「怠惰なのは自分だけが悪いのではなく、ホルモンの影響もありますよ」と先生に言っていただけたら、ホッとしますね。

肌のコンディション、どこを目指すかでお手入れは変わってくる

スーさん

ところで「体の乾燥」と聞いて、ほとんどの人が最初に思い浮かぶのは「肌」かなと思います。先生は日常的にどんなケアをされていますか。

高尾先生

日焼けしている姿から想像がつくかと思いますが(笑)、私はあまり肌のお手入れは気にしていないんですよ。朝はぬるめの水で顔を洗うくらいで、化粧水すらつけていないんです。

夏の終わり頃に行われた取材時、高尾先生はキレイに日焼けされていました
堀井さん

実は私も同じです。本当に全然何もしてなくて……。

スーさん

我々の肌のお手入れのしなさ具合は本当にヤバいですよ。肌を甘やかさないことによって今日まで生き延びてきたと言っても過言ではない。私の場合は、基本的には化粧水しかつけません。ベタベタするのが嫌いなので、乳液もほとんど使わない。自分の肌に関しては、ちょっとカサカサしているほうが好みだと思っているくらいなので。
 
ただ最近は、しっかりメイクをした日の洗顔後は、化粧水だけでは物足りない感じがすることもありますね。体のパーツの乾燥を感じる場面が増えてきたので、肘や膝、デコルテのあたりにも化粧水をつけるようになりました。シミもできていますが、あまり気にしないかな。

高尾先生

私はシミを隠すぐらい日光で肌を焼く派です(笑)。私たちのようなタイプは少数派かもしれませんが、手をかけすぎて乾燥を悪化させている女性も実は多いんですね。例えば、生理前で肌が脂っぽくなっているからといつも以上に洗顔に気合いを入れた結果、必要な肌の水分まで奪っていたり。
 
気持ちが焦ってくると、ついたくさん塗ったり手をかけたりしたくなりますが、逆に工程を減らしてみるとよいかもしれません。今使っているアイテムから1つ2つ減らしてみる。そういう勇気を持ってもいいと思います。
 
人間の体や肌って、そんなに手をかけなくてもどうにかなるようにつくられていると私は思っています。すごく高い理想を目指すのであれば色々とやる必要はあるかもしれませんが、ほどほどでストレスなく過ごしたいのであれば、そこまで手をかけなくても大丈夫ですよ。

スーさん

なるほど。自分の目指すレベルに応じて、ケアの内容も変わってくるんでしょうね。ひび割れしなければOKというレベルなのか、それとも田中みな実ちゃんのようなツヤツヤでぷるぷるの肌をキープしたいのか。後者であれば、やっぱりやることはたくさんありそう。自分がどんな肌コンディションを目指したいのか、確認しておくといいかもしれませんね。

髪の乾燥、根本的にケアするならどこから?

堀井さん

私はお肌以上に髪の乾燥が気になっています。日頃から、天ぷら油ぐらい熱いホットカーラーで巻いたり、染めたりしているのでバサバサ具合がひどいんですね。見方を変えれば年齢に合ったパサつきの髪になってきたといえるかもしれませんが。

自分が思っているよりずっと、年齢って髪に出るよね。

堀井さん

本当にそう。でも私は髪をロングにしていたいので、どうすればいいのでしょうか。

高尾先生

堀井さんの年代であれば、エストロゲンは髪の状態改善にも効果が見込めることがありますよ。一般向けに販売しているエクオールのサプリを摂取した結果、薄毛や髪の太さの改善、ツヤが増したなどの効果が出たというデータがあります。毛根にあるコラーゲンが、エストロゲンの働きでしっかりつくられるようになると、状態のよい髪の毛が生えるようになるんです。

スーさん

すでに生えている髪自体は、もう死んだ細胞ですからね。そこに集中して手をかけるよりは、高温のアイロンで挟んでも大丈夫な元気な髪を生やして育てるほうが絶対いいでしょ。

スーさんにも諭される堀井さん
堀井さん

じゃあ私は死んだ髪をずっとお手入れしていたってこと? トリートメント代とかすごくかけてきたのに……。先生の髪はすごく健康そうですよね。

高尾先生

私は通っているジムにあるリンスインシャンプーを使っています(笑)。堀井さんは髪の毛が細いタイプに見えるので、エクオールのサプリやパッチなどを半年ほど続ければ結構効果が出る気がしますね。

堀井さん

え〜うれしい、ちょっと生きる希望が湧いてきた(笑)。もう今日から試したいな。

高尾先生

スーさんは髪の乾燥などのお悩みはありますか?

スーさん

髪の悩みは今、まったくないんです。若い頃は太くて硬くて量が多くてクセ毛な自分の髪が悩みの種で、堀井さんみたいな髪質の人にずっと憧れていたんですよ。でも、この太くて硬い髪質のおかげでボリュームが保てているし、白髪染めもしていなからダメージも少ない。年齢を重ねてきた今になって帳尻が合ってきたというか、ちょうどよくなってきているなと実感しています。

自覚しにくい「腟の乾燥」=ドライバジャイナとは?

高尾先生

肌や髪と違って自覚しづらい乾燥として、女性の場合は「ドライバジャイナ」と呼ばれる腟の乾燥もあります。
 
腟の内側は扁平上皮(へんぺいじょうひ)といって薄く平らな細胞によって構成されています。この組織もエストロゲンの減少によってコラーゲンが失われると、ペシャンとへこんで立体感がなくなってしまうんですね。
 
婦人科の内診をしていると高齢になるにつれ腟の幅が細くなっていることがわかるのですが、これも加齢による乾燥の一種といえます。

スーさん

弾力がなくなっていく、ということですか?

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高尾先生

そうです、伸び縮みしにくくなります。普段の腟はバナナ1本分ぐらいが通るイメージですが、経腟分娩をされている女性は、赤ちゃんが通る頭の大きさ分だけ、1回それがグーンと伸びているんですね。その後も、完全に元通りになるわけではなくて、伸びようと思えば簡単に伸びられる状態にあるのですが、更年期以降はその弾力性が失われていく、と考えてください。
 
外陰部も皮膚ですから、加齢によって乾燥しやすくなることは避けられません。性交時に痛みや擦り切れる感触があるのであれば、乾燥が原因のケースも考えられます。性交痛や茶色いおりものが見られるときは、腟の組織が乾いてただれる「萎縮性腟炎」にかかっている可能性もありますので、医師に相談することをおすすめします。

スーさん

美容クリニックでは「腟トリートメント」の治療もありますよね。尿もれにも効くと聞きましたが、本当に効果は期待できるのでしょうか? 

 「女性ホルモンの数値を今度測りに来ます!」という堀井さん
高尾先生

腟の周辺組織をレーザー照射することで弾力性を戻す治療法ですね。実証効果については今後、データが増えていくかと思いますが、腟の内部がふわっとするような変化は見られるようです。ただし、腟の組織が伸びにくくなって時間がかなり経ってからだと、なかなか効果は出づらいようですが。

スーさん

肌も髪も腟も、年齢を重ねることでエストロゲンの分泌が減って、コラーゲンも生成されなくなり、体のあちこちがドライになる……ということですね。エストロゲンの減少は食い止められないとしても、日常生活の中で少しでも乾燥を防ぐためにできることはありますか?

高尾先生

エストロゲンの減少を抑えるためにできることは3つあります。
 
まずは、煙草を吸わないこと。受動喫煙も含めて、喫煙者は閉経を迎える平均年齢が非喫煙者よりも2歳ほど早いというデータが出ています。生理がある限りはエストロゲンの分泌も保たれますから、喫煙習慣をやめることがひとつ。
 
次に、バランスの取れた食生活と適度な運動を心がけること。エストロゲンの材料は脂肪ですから、食事を通じてほどよい脂質を摂取しないとエストロゲンがつくられません。脂質やタンパク質が不足するような食生活はおすすめしません。また、ホルモンは血液に乗って全身に運ばれるものですから、運動不足が続くとエストロゲンが体を巡りづらくなってしまいます。
 
最後は、ストレスを減らすこと。ストレスはホルモン分泌の命令を出す脳の視床下部の働きに関わってきますから、ストレスはこまめに解消していきましょう。ストレスが増大すると、エストロゲンの分泌量も減ることがわかっています。
 
エストロゲンを増やしたい気持ちには応えられませんが、普段の心がけで減少を食い止めることはできます。乾燥はもちろん、心身の不調に悩んでいる人はぜひ心がけてください。

堀井さん

先生、とっても勉強になりました。

スーさん

今日はありがとうございました!

体の変化は避けて通れないけれど、事前の知識があれば不安が軽減できそうですね!
CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト+阿部花恵  写真:藤原葉子
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