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小さな不快も我慢しないで!女性の排尿トラブルと対策

人にはなかなか相談しにくい「おしっこ」のこと。トイレが近い、うっかりもれてしまう、排尿時に痛みを感じる、尿の色がいつもと違う……など、尿にまつわる症状で悩んでいませんか。尿の悩みは命に関わる重大な病気ではないにしても、症状によってはQOL(生活の質)を大きく低下させてしまう可能性があります。今回は、女性に多くみられる排尿障害に注目し、原因や医療機関にかかる目安、意識したい生活習慣などについて紹介します。ひとりで我慢せずに、楽になれる方法を見つけましょう。

教えてくれるのは…
佐藤 亜耶先生
自由が丘ウロケアクリニック 院長

日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。関連病院で診療経験を積み、2019年に自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。

女性に多い排尿障害とは?

排尿障害とは、「尿を溜める機能」や「尿を出す機能」に異常がみられる状態、またはそれらに関連する症状や疾患などを広く意味する言葉です。同じような意味の用語として「下部尿路症状」(LUTS)があり、下部尿路症状は「蓄尿症状」「排尿症状」「排尿後症状」の3種類に分けられます。

つまり、尿がうまく溜められなくなっていたり、排尿時に痛み・違和感・不快感などの症状があったりする場合には、排尿障害の可能性が考えられます。何らかの対策や治療が必要な状態といえるでしょう。

尿が出るしくみは?

尿は腎臓でつくられ、尿管を通って膀胱に貯蔵されます。膀胱の容量は350〜600ml程度で、一般的には膀胱に溜まった量が150〜250mlを超えると尿意を感じます。排尿には、「膀胱」と尿の出口を閉じている「内尿道括約筋(ないにょうどうかつやくきん)」と「外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)」の3つの働きが関係していて、外尿道括約筋は、「収縮」「弛緩」を自分でコントロールできるのが特徴。排尿を我慢できるのは、この外尿道括約筋の働きによるものです。

佐藤先生

膀胱の機能は風船をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。膀胱が伸びきった風船のようになるとおしっこが出しにくくなりますし、逆に硬くて伸びが悪い風船ではおしっこが溜めにくくなります。出口の部分に障害があると、おしっこが出にくくなったり、止められずにもれてしまったり……ということが起こります。

女性の尿道(膀胱の出口から尿の出口)は4cm程度しかありません。さらに、腟・尿道・肛門が近い位置にあるため、膀胱に細菌が侵入しやすいといわれています。また、妊娠や出産によって尿道括約筋を含む骨盤底筋が傷んでゆるみやすくなったり、子宮などの臓器に膀胱を圧迫されやすかったりといった傾向もみられます。そのため、女性は尿もれ、頻尿、尿意切迫感(トイレに間に合わない)、膀胱炎などが起こりやすいのです。

尿に関する代表的な疾患にはどんなものがある?

女性に多い排尿障害の原因疾患にはどのようなものがあるのか、知っておきましょう。たとえば、女性の尿もれは、40歳以上の4割以上が経験している身近な症状。また、急性膀胱炎は20~40歳の女性の2~3割が罹患した経験があるともいわれています。

排尿障害の原因疾患にもさまざまなものがあり、同じ症状でも対処方法が異なってくることがあります。気になる症状があれば、泌尿器科など専門機関に相談してみましょう。

佐藤先生

子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などが原因で、頻尿などの排尿障害が発生する場合も。おしっこの異常や不快感には、腎臓や膀胱だけでなく、婦人科系の疾患が隠れていることもあるので放置しないことが大切です。

以下、代表的な症状を紹介します。

過活動膀胱

膀胱に尿を溜めておけずに、頻尿・夜間頻尿(睡眠中に2回以上起きる)や、突然の強い尿意(尿意切迫感)により、トイレに間に合わないなどの症状が特徴。加齢に伴ってかかる人が増える。

切迫性尿失禁

急に強い尿意が起こり、同時もしくは尿意を感じてすぐに尿がもれてしまう。過活動膀胱が原因となって起こることもある。

腹圧性尿失禁

妊娠・出産、加齢、肥満などが原因で骨盤底筋がゆるむことにより発症。くしゃみや咳、笑ったとき、重いものを持ったり、ジャンプしたときなど腹圧がかかると、尿がもれる。

尿路感染症

膀胱炎

頻尿や排尿時の痛み、残尿感や下腹部の不快感、尿の濁りなどが主な症状で、再発しやすいのも特徴。女性は尿道が短く、出口が腟や肛門に近いため細菌が入り込みやすいことが原因。

佐藤先生

膀胱炎は、本来無菌状態の膀胱に細菌が侵入することで発症します。急性膀胱炎は、免疫がしっかり働いていれば数日で自然に良くなる場合もありますが、性交渉や生理のあとに症状を繰り返してしまう女性が多くみられます。症状を繰り返していると治りにくくなることもあるので油断は禁物。違和感を覚えたら、泌尿器科への早めの受診をおすすめします。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

尿道から侵入した細菌が腎臓に達することで発症。背中や腰の痛み・高熱・膀胱炎症状(排尿時痛、頻尿、残尿感等)が主な症状。

骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)

腟から子宮や膀胱、直腸などが下がっておりてくる状態。加齢により骨盤底筋を支える筋肉や靭帯が緩むことから起こる。治療は骨盤底筋体操や生活指導、手術療法など。

神経因性膀胱

膀胱や尿道に関係する神経の障害が原因となって尿意を感じにくくなったり、排尿しにくくなったり、尿失禁が起きたりする。子宮や直腸の手術後、脊髄損傷などさまざまな原因による。

気になる症状や疾患があれば、以下の記事もぜひご覧ください。

1日何回トイレに行く?頻尿の定義と原因、対策を解説
日中トイレに行く回数が増えたり、就寝中に尿意を感じて何度も起きたり、「もしかして?」と思っても、なかなか人に相談しにくい「頻尿」の悩み。じつは、日中の頻尿に悩む方は約3000万人、夜間の頻尿に悩む方は約4000万人を超えるといわれています。頻尿そのものが命にかかわることはありませんが、QOL(生活の質)を著しく低下させる可能性もあり、きちんとケアをすることが大切です。

本記事では、そもそも頻尿とは何なのか、どのような原因で起こるのか、また、改善方法についても解説していきます。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-hinnyo/
ひとりで悩まないで。尿もれの原因・対処法を解説
自分の意思とは関係なく起こる「尿もれ」。頻尿と同様に、QOL(生活の質)の低下にかかわる、非常に悩ましい尿トラブルのひとつです。「知られたくない」「恥ずかしい」という思いから、医療機関に行きづらいと感じてしまう方も多いはず。しかし、40歳以上の女性の4割以上は尿もれを経験しているとの報告もあり、実際には男女問わずもっと多くの方が尿もれに悩んでいると考えられています。

本記事では尿もれのタイプや原因、対処法を解説するとともに、医療機関で行われる治療の概要についても紹介します。悩んでいる方はもちろん今は大丈夫という方も、尿もれのこと、きちんと知ってみませんか。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-more/

泌尿器科を受診したほうがいい目安や症状は?

頻尿、血尿、尿もれ、排尿時痛など、尿のことで気になる症状がある場合や、膀胱炎を繰り返しているようならば、泌尿器科で適切な検査や治療を受けることが大切です。尿のことで生活に支障が出ている場合や尿の様子(色/濃さ/におい/量など)がいつもと違うと感じたときにも、泌尿器科で診てもらえます。

このおしっこ大丈夫? 受診の際は写メを持参しよう

おしっこが黄色すぎる、濁っている、血尿かもしれない……。そんなときはスマホでおしっこの写真を撮り、受診の際に医師に見せるといいでしょう。判断材料の1つになり、医師も助かることが多いようです。

健康な尿の色は薄い黄色です。透明で色が薄いときは水分を十分摂れていると考えてOK。ただし、いつも透明な場合には、腎臓で尿を濃縮できなくなっている可能性もあります。

目に見えて尿が赤い・濁っている・白い浮遊物が混ざっている・とてもにおうなど、いつもと違う場合には泌尿器科で検査を受けるようにしましょう。

佐藤先生

尿の悩みは人に言いにくかったり、本人の感じ方で差が出るので、ご自身で客観的に評価したり判断したりするのは難しいものです。受診をためらう気持ちもわかります。でも不快な症状を放置していると、膀胱炎から腎盂腎炎のように、より重い疾患に進んでしまうこともあります。

また、過活動膀胱のように薬の治療でよくなる疾患もあって、治療を受けてから「もっと早く受診すればよかった」とおっしゃる方が少なくありません。産後の尿もれもよくある症状ですし、女性の尿の悩みは恥ずかしいことではありません。悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。安心して泌尿器科を受診してくださいね。

女性も安心して受診できる。「泌尿器科」はこんな場所
泌尿器科に対して、「なんとなく行きにくい」「男性の患者さんが多い」というイメージを持っている女性は少なくないと思います。でも、尿のトラブルは性別や年齢を問わず誰にでも起こりえるもの。泌尿器科は、女性はもちろん、子どものおしっこの悩みも相談できる診療科です。

そこで本記事では、女性には受診のハードルが高いと思われがちな、泌尿器科について詳しく解説します。「内診はあるの?」「診察は痛くないの?」などの疑問や不安について、女性と小児の泌尿器科「自由が丘ウロケアクリニック」院長の佐藤亜耶先生に教えていただきます。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-urology/

排尿障害の予防とおしっこの健康のために大切なこと

排尿障害は、原因となる疾患や症状によっては治療が必要な場合も少なくありませんが、予防や不快な症状を軽減するために日常生活でできることもあります。とくに膀胱炎は、生活を少し見直すだけで十分予防が可能な疾患です。次のようなセルフケアを取り入れてみましょう。

適度な水分補給を心がける

尿を膀胱に長時間溜めておくと、細菌が膀胱に停滞し繁殖しやすくなるため、適度に水分を摂り、尿と一緒に細菌を体外へ排出しましょう。こまめな水分摂取が膀胱炎予防には効果的です。

佐藤先生

水分は日中多めに摂るようにしましょう。摂取した水分は、約3時間後に8割がおしっこになります。夜間のトイレが近いことが気になる方は、夕食時や夜の水分補給をできるだけ早めの時間帯に済ませるといいでしょう。夏の暑い時期でもクーラーの効いた寝室で寝るなら、夜間にそれほどたくさんの水分量を必要としません。水分補給は気温や湿度に応じて調整しましょう。

免疫力を保つ(下腹部を冷やさない/運動を取り入れる)

下半身が冷えると、血流が悪くなったり免疫力が低下したりして膀胱炎を引き起こしやすくなります。お腹を冷やさないようにし、適度な運動も取り入れて過ごしましょう。免疫力を保つためにも、日ごろから規則正しい生活やストレスをためない生活を心がけることが大切です。

カフェインや刺激物の摂りすぎを控える

おしっこが近くて悩んでいる方や過活動膀胱の方は、膀胱の刺激になるようなカフェインや香辛料、アルコールを控えましょう。カフェインは、コーヒーだけでなく緑茶や紅茶にも含まれているので、摂りすぎには注意を。

トイレットペーパーでデリケートゾーンを擦らない

おしっこをしたあとは、トイレットペーパーで優しくおさえるのが正しい拭き方です。力を入れて擦ったり、前から後ろへ拭いたりする必要はありません。また、ビデを使いすぎるとかえって乾燥してトラブルを起こしやすくなるので、トイレへ行くたびに使うのは避けましょう。

デリケートゾーンを清潔に保つ

不清潔にしていると雑菌が繁殖しやすくなります。入浴時には、陰部専用のソープを泡立てて汚れが溜まりやすい女性器のひだの部分や全体を優しく洗いましょう。また、おりものシートや生理用ナプキンは適切な頻度で替えるようにします。セックスの前はお互いにシャワーを浴びて体を清潔にし、セックスのあとは排尿する習慣をつけましょう。

生理中の性交渉は控える

生理中は子宮内膜がデリケートな状態であり傷つきやすくなっています。また、経血を介して細菌が尿道や膀胱にも侵入しやすくなります。膀胱炎などの感染症予防のためにも生理中のセックスは控えたほうがよいでしょう。

生活習慣病の予防も大事

肥満は失禁の悪化、糖尿病は多尿や膀胱機能の低下、高血圧は夜間多尿や頻尿を起こしやすく、症状を悪化するリスクになるといわれています。メタボや生活習慣病は排尿障害を含む「万病のもと」なので、普段から予防を心がけましょう。

骨盤底筋を鍛える

加齢により増えてくる腹圧性尿失禁による「ちょいもれ」は、吸水シートなどのフェムケアアイテムを取り入れると快適に過ごせるでしょう。また、尿もれの予防のために骨盤底筋を鍛えるトレーニングを日ごろから取り入れるのも、おすすめです。詳しくはこちら↓

尿もれを予防&改善!無理なく続ける骨盤底筋の鍛え方
くしゃみやジャンプをしたとき、重いものを持ったときなどに、思いがけず尿がもれてしまう……。そんな症状で悩んでいませんか? これは骨盤底筋の筋力低下によって起こる尿もれで、「腹圧性尿失禁」といいます。女性に多く、ひとりで悩んでいる方も少なくない尿もれですが、症状が軽いうちならセルフトレーニングで改善が期待できます。本記事では、排尿コントロールに関わる、骨盤底筋を鍛える方法について解説します。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-kotsuban/

尿の悩みや不快症状はQOLに直結しますが、ひとりで何とかしようと我慢してしまう女性も少なくないようです。いつもと尿の様子が違うな、と感じたら一度クリニックで相談してみましょう。快適な毎日を過ごすためにも、治療やセルフケアをうまく取り入れながら早めの改善・解決を心がけましょう。

CREDIT
構成・取材・文:及川夕子 イラスト:tanateasami 編集:HELiCO編集部+ノオト
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