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尿もれを予防&改善!無理なく続ける骨盤底筋の鍛え方

くしゃみやジャンプをしたとき、重いものを持ったときなどに、思いがけず尿がもれてしまう……。そんな症状で悩んでいませんか? これは骨盤底筋の筋力低下によって起こる尿もれで、「腹圧性尿失禁」といいます。女性に多く、ひとりで悩んでいる方も少なくない尿もれですが、症状が軽いうちならセルフトレーニングで改善が期待できます。本記事では、排尿コントロールに関わる、骨盤底筋を鍛える方法について解説します。

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INDEX
骨盤底筋とはどんなもの?
弱りやすい? 弱り始めてる? 骨盤底筋セルフチェックリスト
無理なく続く! 泌尿器科医おすすめの骨盤底筋トレーニング
いつでも好きなタイミングで鍛えられる!
トレーニング強度などさまざまな種類が。グッズを活用する方法も
軽いうちに対処して尿もれを改善しよう

骨盤底筋とはどんなもの?

骨盤底筋とは、骨盤の底にある筋肉群のこと。恥骨(ちこつ)・尾骨(びこつ)・坐骨(ざこつ)にハンモックのようについており、女性の場合、そこに尿道・腟・肛門が通っています。骨盤底筋の役割は、子宮・腟・膀胱・尿道・直腸などの臓器を支えて正しい位置に保つこと。さらに、尿道や肛門を緩めたり締めたりする、排尿・排便コントロールの役割も担っています。

尿がもれるのは、骨盤底筋のゆるみが出てきて、その働きが弱くなっているサイン。骨盤底筋は、妊娠や出産、加齢によりダメージを受けやすい一方、「骨盤底筋トレーニング」で鍛えることができます。尿もれの症状が比較的軽い人なら、トレーニングを続けることで予防や改善が期待できます

弱りやすい? 弱り始めてる? 骨盤底筋セルフチェックリスト

尿道の長さが3cm程度と短い女性は、男性に比べてもともと尿もれをしやすいといえますが、骨盤底筋が弱くなると、さらに尿もれ症状が出やすくなります。まずは、あなたの骨盤底筋の状態をチェックしてみましょう。

出産、閉経、生活習慣etc. 骨盤底筋が弱りやすいのは?

下記の項目があてはまる方は、骨盤底筋が弱りやすい傾向にあります。

□普段、運動をする習慣がない
□猫背になりやすい、姿勢が悪い
□仕事や家事で重い荷物を持つことが多い
□慢性的に便秘がちである
□排便のとき、トイレでいきむことが多い
□妊娠や出産の経験がある、出産回数が多い
□閉経を迎えた
□体重が急に増えた

妊娠・出産、肥満、加齢のほか、荷重労働、排便時の強いいきみ、長時間の座位姿勢や運動不足も、骨盤底筋の筋力低下につながります。

ちょっとした体の変化にも意識を! 骨盤底筋セルフチェック

さらに以下の項目があてはまる場合、すでに骨盤底筋が弱ってきている可能性があります。

□トイレの回数が増えてきた
□くしゃみをしたときなど、ふとした瞬間に尿が“ちょいもれ”をすることがある
□妊娠中や出産後に尿もれを経験したことがある
□お尻がたれてきた、下腹がぽっこりと出てきた
□座っているときにひざが開いてしまう
□お風呂上がりに腟から水がジャーっともれ出す
□排尿時、尿を途中で止められない
□トイレでふき終わったあとに、尿がちょろっともれる
□腟に何かが触れる感じがある、子宮が下がってきている感じがする

骨盤底筋は単独で動くのではなく、横隔膜や腹横筋、多裂筋といったお腹の深部にある筋肉(インナーユニット)とともに働いています。そのためインナーユニットが衰えてくると、骨盤底筋の筋力低下も起こりやすいと考えられるのです。お尻がたれてきた、下腹部がぽっこりしてきた、座っているときにひざが開くなどは、そうしたインナーユニットを含む筋力低下のサインと見ることができるでしょう。

また、一番下のチェック項目「腟に何かが触れる感じがある、子宮が下がってきている感じがする」に心当たりがある場合、骨盤底筋が弱っているだけではなく、「骨盤臓器脱」の可能性があります。

骨盤臓器脱とは

出産経験がある場合、出産時に骨盤の筋肉や靭帯が損傷したり引き伸ばされたりすることから、骨盤底筋がゆるみやすくなります。さらに、年齢とともに骨盤底筋が弱くなり伸びやすくなると、子宮が下がってくることがあります(「子宮脱」「子宮下垂」)。また、膀胱・直腸・腟などが下がってくることをそれぞれ「膀胱瘤」「直腸瘤」「腟脱」などといい、これらの総称が「骨盤臓器脱」です。

無理なく続く! 泌尿器科医おすすめの骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋は出産や加齢でどうしても弱ってきてしまうので、日常的にトレーニングを取り入れ筋力低下を防ぐことが大切です。まずはトレーニングのポイントをチェックしましょう。

トレーニングの手順

トレーニングは、骨盤底筋を「締める」「緩める」の動作を繰り返すのが基本形。その基本形をベースに、医師や理学療法士などの専門家によって、さまざまな実践方法が編み出されています。

今回ご紹介するのは、座っても立ってもOK、その時々のやりやすい姿勢で行える方法です。1回あたりの秒数が短いため、場所を選ばず、気軽に行うことができます。生理中は無理をしないで休んでも構いません。

  1. 背筋を伸ばして、お尻や肩に力が入らないようにリラックスします。
  2. 骨盤底筋を意識しながら、腟と肛門を「キュッ」と締めたり緩めたりします。息を吐きながら3秒「締める」息を吸いながら3秒「緩める」を繰り返しましょう。骨盤底筋はインナーユニット全体で働いているため、呼吸を止めないように行うことが大切です。
  3. 10回を1セットとして、1日に5~10セットを目標に毎日行います。

こんなイメージでやってみよう!

・陰部を体のなかに引き上げるように
・おしっこやおならを我慢するイメージ

正しい締め方を知りたいときは……?

トレーニングを実践したものの、「どういうふうに力を入れるとよいのか、塩梅がわからない……」と感じる方もいるかもしれません。その場合には、お風呂タイムに腟を締めたり緩めたりする練習をしてみるのがおすすめです。人差し指か中指を第1関節〜第2関節ぐらいまで腟に入れて、ちゃんと締めることができているかをチェック。締め具合と力の入れ方のバランスなどのコツがつかめるでしょう。

いつでも好きなタイミングで鍛えられる!

骨盤底筋トレーニングは、いわば骨盤底筋の筋トレ。年齢とともに筋肉の衰えは進行していくので、ときどきではなく、毎日継続して行うことで効果が出てきます。電車やお風呂のなか、仕事の合間、信号を待っているとき、家事をしながらなど、いつでもできるときに取り入れてみてください。

骨盤底筋トレーニングは「今は尿もれ症状がない」という人にもおすすめです。症状がない、または軽いうちから行うことで、尿もれをはじめ、子宮脱などの骨盤臓器脱の予防にもつながります。

トレーニング強度などさまざまな種類が。グッズを活用する方法も

最近では、骨盤底筋トレーニングをサポートするグッズ(通称:腟トレグッズ)も出てきています。腟内にボールを入れ落ちないようにして使う腟トレボール、スマートフォンと連携して腟圧を測りながらゲーム感覚で取り組めるトレーニンググッズ、座るだけで腟トレをサポートしてくれるクッションなど、種類も豊富。こうしたグッズを試してみるのも一案です。

グッズを使うメリットは、腟を締める感覚をつかみやすい、楽しく続けられるなどがあげられます。グッズはバラエティショップやオンラインショップなどで購入できます。

軽いうちに対処して尿もれを改善しよう

尿もれの症状は、あきらめなくて大丈夫。骨盤底筋トレーニングを基本に、自分に合ったセルフケアを取り入れましょう。ほかに、呼吸を重視しながら行うヨガやピラティスといったエクササイズを取り入れることも、骨盤底筋の維持にプラスになります。また、肥満の方や最近太ってきたと感じる方は、減量で尿もれが改善することがあります。いずれにしても、“症状が軽いうちに早めの対処”が効果的です。

骨盤底筋トレーニングを続けていても尿もれが改善しない場合には、原因や程度により、さまざまな治療法があります。ひとりで悩まずに泌尿器科を受診してみてください。

泌尿器科については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

女性も安心して受診できる。「泌尿器科」はこんな場所
泌尿器科に対して、「なんとなく行きにくい」「男性の患者さんが多い」というイメージを持っている女性は少なくないと思います。でも、尿のトラブルは性別や年齢を問わず誰にでも起こりえるもの。泌尿器科は、女性はもちろん、子どものおしっこの悩みも相談できる診療科です。

そこで本記事では、女性には受診のハードルが高いと思われがちな、泌尿器科について詳しく解説します。「内診はあるの?」「診察は痛くないの?」などの疑問や不安について、女性と小児の泌尿器科「自由が丘ウロケアクリニック」院長の佐藤亜耶先生に教えていただきます。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-urology/
教えてくれたのは・・・
佐藤 亜耶先生
自由が丘ウロケアクリニック 院長

日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。関連病院で診療経験を積み、2019年に自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:くぼあやこ
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