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知らないうちにうつしているかも?性感染症のキホン

性感染症とは、性行為やキス、オーラルセックスなどを通じて感染する病気のことを指します。性行為の経験がある人ならば誰でもかかる可能性があり、無症状のことも多いため、知らず知らずのうちに他人に感染させてしまうことも。

「症状がないなら放っておいてもいいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、それは大きな間違い。性感染症は放置しておくと、女性は不妊症や異所性妊娠(子宮外妊娠)、男性は排尿痛や精巣の腫れなどを引き起こす原因にもなり得ます。

では、日頃からどのようなことに気をつければよいのでしょうか。本記事では、性感染症にはどのようなものがあるのか、どのようにして広がっていくのか、そして予防のために何ができるのかなどをご紹介します。

INDEX
キホン1:「症状がないから大丈夫」は勘違い!?
キホン2:パートナーが替わるごとに必ず検査をしよう
キホン3:性感染症予防のためにコンドームの使用を
キホン4:性感染症にもいろいろな種類がある
エイズ(AIDS)
性器クラミジア感染症
梅毒
HPV感染症

キホン1:「症状がないから大丈夫」は勘違い!?

性感染症に関する誤った認識として多いのが、「自分には症状が出ていないから性感染症にはかかっていない」という考え。じつは性感染症にかかっている人の多くは無症状であるため、症状が出ていないからといって、かかっていないとはいい切れないのです。

妊娠をきっかけに妊婦検診で感染症検査を行ったところ、性感染症にかかっていたことが発覚するケースなども多いことから、無自覚のうちに感染し、診断されていないだけの「潜在的な性感染症患者」はかなりの数いるとされています。「症状がないから大丈夫」と思っていると、知らず知らずのうちに大切な人に性感染症をうつしてしまっていた……なんてことも。


キホン2:パートナーが替わるごとに必ず検査をしよう

無症状で感染している可能性がある以上、性感染症にかかっているかどうかの判断に何よりも必要なのが、検査を受けること。ですが、性感染症は「恥ずかしいもの」と捉えてしまい、なかなか検査に行く勇気が出ないという方も多いと思います。

しかし、性感染症は放っておくと不妊症や流産、早産、異所性妊娠(子宮外妊娠)の原因になってしまうことも。大切な自分の体を守るため、そして大切な人の体を守るためにも、性感染症の検査はきちんと受けるようにしましょう。

性感染症はたった一度の性行為でも感染することがあるため、パートナーが替わったら、次のおつき合いが始まる前に検査を受けるのが理想です。そして、検査の結果治療が必要であればきちんと治療を行って治すこと。こうしてはじめて、前のパートナーと本当の意味で「別れた」といえるのです。

また、性感染症は不特定多数の人と性行為をすると、それだけ感染のリスクが高まります。そのため、「性感染症の検査を受けていない人との性行為はしない」という選択も、非常に大切な性感染症予防方法の1つです。


キホン3:性感染症予防のためにコンドームの使用を

コンドームを単なる避妊具と捉えている方も多くいますが、じつはコンドームには「性感染症を予防する」というもうひとつの重要な役割が。そのため、性行為をする場合にはコンドームを正しく使用することで、性感染症を予防できる可能性が高まります。コンドームの使い方や選び方については「どう選ぶ?どう使う?コンドームソムリエAiさんが伝授」にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

また、日本における性行為の特徴として、口や舌を使い相手の性器を刺激する「オーラルセックス(口腔性交)」を行う頻度が高いというものがあります。口の中も粘膜になっているため、そこから感染してしまうケースもしばしば。挿入時だけでなく、オーラルセックスをする場合にも、コンドームを使用することが望ましいのです。

自分自身の体を守るためにも、コンドームを使用しない性行為は望まないのであれば、その意志をきちんと相手に伝えましょう。そのためには日頃から、パートナーとの信頼関係を築いておくことも大切です。


キホン4:性感染症にもいろいろな種類がある

一口に性感染症といっても、その種類はさまざま。ここでは主な性感染症を紹介します。ただし、例に挙げた症状が現れないということは多々あるため、「無症状だから感染していない」と油断せず、正確な感染状況を知るためには必ず検査を受けるようにしましょう。

エイズ(AIDS)

エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって起こる病気で、免疫が徐々に低下することでさまざまな症状(合併症)が現れます。以前は「感染すると死に至る病」というイメージもありましたが、現在ではきちんと治療をすれば、コントロール可能な病気です。

感染から数週間後、発熱やのどの痛みなど、風邪やインフルエンザに似た症状が現れることがあります。しかしこれらの症状は数日から数週間で治まり、無症状で病原体を保持する期間が数年単位で続きます。そのため、検査を受けないと感染に気づくことができず、知らず知らずのうちに感染範囲を大きく広げてしまう可能性も。

治療法の進歩により、発症前にHIV感染を発見できればエイズの発症が予防できるようになってきているため、感染拡大を防ぐためにも、発症を予防するためにも、検査による早期発見がとても大切です。

性器クラミジア感染症

日本で最も多い性感染症です。若年の女性に多く、感染者の数が増加傾向にあるともいわれており、妊婦検診でクラミジアを保有していることが発覚するケースも一定数あります。

男性の場合は、排尿の際に痛みを感じたり、尿道から透明な膿(うみ)が出たりなどが主な症状。女性の場合は症状が出ないことが多いですが、おりものの量が増えることもあります。いずれにせよ、男女ともに自覚症状が出ないことが多い感染症です。

梅毒

病原体が侵入した箇所に、梅毒トレポネーマと呼ばれる硬いできものができるのが、感染から3週間(第一期梅毒)。手や腕、全身に赤い発疹が出るのが3か月(第二期梅毒)。この頃、異常を感じて医療機関を訪ね、梅毒と診断されます。近年増加傾向にある感染症で、無症状で進行することもあるため注意が必要です。早期に発見されれば薬での完治が可能ですが、治療せずに長期間放置すると、脳や心臓にまで病気が拡がり、命に関わる危険性もあります(ただし近年では稀)。また、妊婦が梅毒に感染すると、胎児にも感染し、早産や奇形、死産の原因になってしまうことも。

HPV感染症

HPV(ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされる感染症で、ほかの性感染症と同様、無症状のことも多々あります。感染する部位やウイルスの型によって、子宮頸がんや肛門がんや咽頭(いんとう:のど)がんのほか、尖圭(せんけい)コンジローマなどの原因に。

HPVワクチンを接種することで、感染を予防することができます。HPV感染症とワクチンについては「正しく知ろう、HPVワクチンにまつわるQ&A」で詳しく解説しますので、そちらもあわせてご覧ください。


人には相談しにくい性感染症ですが、自分のことやパートナーのことを大切に思うのであれば、しっかりと検査を受けたり、予防をしたりすることが大切です。性感染症は多くの人がなり得るものであり、決して恥ずかしいことではありません。「症状が出ていないから自分には関係ない」と過信せず、この機会に、ぜひ検査を受けてみてはいかがでしょうか。


教えてくれたのは・・・
北村 邦夫先生
一般社団法人 日本家族計画協会 会長

1977年自治医科大学医学部卒業。その後、群馬県職員として群馬大学医学部産科婦人科学教室で臨床を学ぶ。保健所や群馬県庁での勤務を経て、1988年から日本家族計画協会クリニック所長、2014年から日本家族計画協会理事長。性教育や経口避妊薬・ピルの第一人者として、テレビ番組への出演や新聞での連載など、メディアを通じての発信も積極的に行っている。『新版 ティーンズ・ボディーブック』(中央公論新社)、『いつからオトナ? こころ&からだ』(集英社)、『カラダの本 誰にも聞けない性の疑問に答えます』(講談社)など、著書・共著多数。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:Kanako
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