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正しく知ろう、HPVワクチンにまつわるQ&A

子宮頸がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を予防する、HPVワクチン。2022年4月から、小6~高1相当の女子に対してHPVワクチンの接種を勧める「積極的勧奨」が約9年ぶりに再開されました。一方で、「そもそもHPVワクチンってよく知らない……」と、戸惑いを感じている方も少なくないのでは?

そこで本記事では、HPVワクチンとはどういうワクチンなのか、接種するかどうかを判断する際に知っておきたい基礎知識について解説していきます。これを機に、親子で一緒に学んでみませんか。

INDEX
HPVワクチンってなに?
HPV感染症の原因は?
HPVワクチン接種、いつしたらいい?
HPVワクチン接種の効果はどれくらい?
HPVワクチンは大人が接種しても意味がある?
男の子への接種は必要?
「積極的勧奨の再開」ってどういう意味?
副反応をどう判断すべき?
子宮頸がんをどう予防する?

HPVワクチンってなに?

子宮頸がんは、がんのなかでも珍しく、ウイルス感染によって罹患します。その原因となるのが、ヒトパピローマウイルス(HPV)。HPVは、人の皮膚や粘膜に存在するごくありふれたウイルスで、200種類以上の型が見つかっています。

そのうち子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんなどの「がん」に関わるHPVは、15種類ほど。また、HPVのなかには性器やその周辺にイボをつくる「尖圭コンジローマ」の原因になるものもあります。こうした病気の原因となるHPV感染を防ぐための手段が、HPVワクチンなのです。

HPV感染症の原因は?

HPV感染の原因となるのは、性交渉や性器接触がほとんどです。性交渉経験がある女性の50~80%は、生涯で一度はHPVに感染するといわれているほど。パートナーのどちらかが感染していれば、何度も感染を繰り返す可能性もあります。

ただし、HPVに感染したからといって、必ずがんになるわけではありません。感染してもほとんどの場合、HPVは自然に体外へ排除されることがわかっています。しかし、特定の型のHPVに感染した人のなかには、ウイルスが排除されず持続感染し、がんへと進行する人も稀にいます。

HPVワクチン接種、いつしたらいい?

HPVワクチンは、初めての性交渉前に接種するのが理想的といわれています。性交渉を経験すると誰でもHPVに感染する可能性があり、HPVに感染してしまった後では、ワクチンで治すことはできないからです。

具体的には、16歳ごろまでの接種が最も効果的ですが、それ以上の年齢の人は、できるだけ早く接種することがより有効であるといえます。

HPVワクチン接種の効果はどれくらい?

現在接種できるHPVワクチンは、2価・4価・9価の3種類。この数字は予防するHPVの数を指し、このうち公費で受けられるHPVワクチンは、2価(ワクチン名:サーバリックス)と4価(ワクチン名:ガーダシル)の2種類。どちらの場合も全3回で接種完了です。

2価(サーバリックス)

  • 予防するHPVの型:子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型の2種
  • 公費接種:可
  • 必要接種回数:全3回。初回から1ヵ月の間隔をおいて2回接種を行った後、1回目の接種から6ヵ月の間隔をおいて3回目の接種

4価(ガーダシル)

  • 予防するHPVの型:2価対応のHPV-16型と18型に加え、尖形コンジローマの原因となる6型・11型の計4種
  • 公費接種:可
  • 必要接種回数:全3回。初回から2ヵ月の間隔をおいて2回接種を行った後、1回目の接種から6ヵ月の間隔をおいて3回目の接種

9価(シルガード9)

  • 予防するHPVの型:4価対応の4種に加え、31型、33型、45型、52型、58型の計9種
  • 公費接種:不可(全額自費負担)
  • 必要接種回数:全3回。初回から2ヵ月の間隔をおいて2回接種を行った後、1回目の接種から6ヵ月の間隔をおいて3回目の接種

2価と4価のどちらも、子宮頸がんの原因の50~70%を占める、16型と18型HPVの持続感染等に対して予防効果があります。早くから積極的にワクチンを接種してきた国では、子宮頸がんそのものを予防する効果があることもわかってきているそう。

ちなみに9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーするほか、外陰がん、腟がん、肛門がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマの予防効果も期待できます。ただ、残念ながら9価ワクチンはまだ定期接種化されておらず、接種する場合は自費負担。接種を受ける病院によって異なりますが、全3回で合計10万円ほどが相場のようです。

HPVワクチンは大人が接種しても意味がある?

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、26歳ぐらいまでHPVワクチンの接種を推奨しており、それ以降は、その人のライフスタイル次第としています。

たとえば生涯のパートナーが決まっていて、どこからもHPVが持ち込まれない状況だとわかっているなら、接種はそれほど必要ないという考え方もあるでしょう。しかし、今後もパートナーが変わる可能性があるなら、接種する意義はあります。

前述のとおり、HPVにはさまざまな型があり、一度感染しても多くの場合ウイルスが自然に体外へ排出されています。このことを踏まえると、すでに性交渉の経験がある方でも、HPVワクチンによる感染予防効果はある程度期待できると考えられるのです。オーストラリアのように、45歳までを9価ワクチンの接種対象としている国もあるので、医師と相談のうえ、40代前半ぐらいまでは接種を検討してもいいかもしれません。可能ならパートナーと一緒に接種しておくとより安心です。

※定期接種の対象でない場合の接種費用は、すべて自費になります。

男の子への接種は必要?

現状、男の子は定期接種の対象外。接種する・しないは保護者の判断になりますが、HPVワクチンは、男性にも起こるがん(陰茎がん、肛門がんなど)や尖圭コンジローマ予防にも有効で、将来大切なパートナーを守ることにもつながります。

また、男女ともに多くの人が接種することで、全体のHPV感染率が下がる「集団免疫」の獲得も期待できます。オーストラリアでは男女ともに定期接種となり、子宮頸がんの根絶も視野に入ってきているそうです。

男性への接種は全額自費となりますが、接種を希望する場合は、HPVワクチン接種を行っている内科や小児科などに問い合わせてみてください。

「積極的勧奨の再開」ってどういう意味?

子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンは、世界の多くの国で接種が行われ、日本では、平成25(2013)年4月1日から小6~高1相当の女子を対象に定期接種が推奨されています。

しかし、定期接種が開始して以降、接種後に体の広範囲にわたる痛みなどのいわゆる「多様な症状(副反応)」が報告され、厚生労働省は積極的な勧奨を見合わせることになりました。その結果、各家庭に接種のお知らせが届かない状況が続いていたのです。

状況が大きく変わったのは、2021年11月のこと。専門家会議において、HPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました。

これを受けて、2022年4月から、定期接種のお知らせを各家庭に送る取り組み(個別の勧奨)が再開。対象者には自治体から予診票やお知らせが届くようになりました。これが、「積極的勧奨の再開」です。


また、接種勧奨を見合わせていた期間に接種機会を逃した方への「キャッチアップ接種(1997~2005年度生まれ)」も実施されています。定期接種の対象年齢を過ぎて自費で接種した人は、市区町村の判断により接種費用の償還が受けられる場合があります。

<キャッチアップ接種対象者>

平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)で、定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した、または合計3回の接種を完了していない女子。期間は2022年の4月~2025年3月。

接種方法など詳しく知りたい場合には、お住まいの市区町村の予防接種担当課に問い合わせてみましょう。

副反応をどう判断すべき?

HPVワクチンの定期接種が開始されてから、接種後に体の広い範囲の痛み、手足の動かしにくさ、記憶障害など「多様な症状」が報告されました。当時メディアで大きく取り上げられたこともあり、HPVワクチン接種と聞くと、「接種後に起こる症状が心配……」という方もいるかもしれません。

しかしその後、このような症状について、2015年に「名古屋スタディ」と呼ばれる大規模調査の結果が発表されました。内容は、名古屋市の小学校6年生から高校3年生までの女子約7万人に対して、ワクチン接種後の症状の出方についてアンケート調査を実施したというもの。ワクチンを接種した人としていない人とを比べたところ、接種した人が訴えている症状の出方には、両者間で差がないとわかったのです。

ほかにもさまざまな調査研究が行われてきましたが、いずれの症状も「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません。

HPVワクチン接種後に見られる主な副反応としては、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射による痛み、恐怖、興奮などをきっかけとした失神などが挙げられています。こうしたリスクについての最新情報は、厚生労働省のホームページから得ることができます(厚生労働省ホームページ)。

子宮頸がんをどう予防する?

ここまで説明してきたように、HPVワクチンは子宮頸がん予防にとても有効なワクチンです。しかし、ワクチン接種だけで子宮頸がんを100%予防できるわけではありません。

性交渉経験がある人は、必ず子宮頸がん検診を受けましょう。がんになる前段階である(前がん病変)や、ごく早期のがんを発見することで早期治療につなげることができます。子宮頸がんは、初期には自覚症状がないので、気づかないうちに進行してしまう病気。発見が遅れてがんが深く進行すると、子宮の全摘出が必要になる場合や、命に関わることも。

HPV感染による子宮頸がん予防で重要なのは、定期接種が可能な世代ではワクチンを受けること、そして20歳以上の女性は2年に1回の検診を受けることです。

子宮頸がん検診は、厚生労働省が推進する5大がん検診のひとつ。ほとんどの自治体では公費負担があるため、一部負担、または無料で受けられるはずです。


HPVワクチンについての疑問は解消されましたか? HPVワクチンを接種する・しないは、自分の命や今後の人生にかかわる重要なこと。実際に予防接種を受ける際は、ワクチンの効果とリスクを十分に理解したうえで、受けるかどうか、本人や保護者が判断することになります。そういった意味でも、正しい知識を得たうえで選択することが大切です。

〈参考文献〉
厚生労働省HPVワクチンに関するQ&A
厚生労働省検疫所FORTH


教えてくれたのは・・・
宋 美玄先生
産婦人科専門医、医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長

一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちいいセックス』、近著『女医が教える オトナの性教育 今さら聞けない セックス・生理・これからのこと』など著書多数。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:福士陽香

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