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初経から閉経まで。生理のしくみと体の変化を知ろう

初経を迎えてから閉経するまで、約35年から40年という長いつき合いになる「生理」。毎月訪れる生理を面倒に感じている人もいるかもしれませんが、その機能や役割を正しく理解すれば、もっと上手に、そして快適に生理とつき合っていけるはず。

本記事では、女性特有のリズム、妊娠・出産とも関わってくる生理のしくみについて解説します。

生理は「妊娠」というミッションのためにある

生理(医学用語では月経)とは、月に1回程度の周期で腟から経血が出てくることをいいます。女性の体に毎月生理が来る理由は、一言でいえば「妊娠」のため。子宮で受精卵を迎えるために、子宮内膜を厚くふかふかな状態にする必要があるのです。妊娠が起こらないと、不要になった内膜がはがれて、血液とともに体の外へと排出されます。これが生理の「経血」です。子宮内膜は毎月フレッシュな状態にする必要があるため、生理によってその入れ替え作業が行われているのです

一般的に正常とされる生理周期は、25日から38日間。この間、女性の体のなかでは、女性ホルモンが変動し、子宮内膜がはがれる→(排卵に向けて)厚くなる→(排卵後)さらに厚くふかふかになる→はがれる(生理)というサイクルを繰り返しています。

子宮内膜には子宮の壁から血管がたくさん伸びていているので、内膜がはがれ落ちる際には、血管からの出血も混じります。女性に鉄欠乏性貧血が多いのは、生理による出血で鉄が失われることも原因のひとつ。生理時の経血量が極端に多い場合(過多月経)には注意が必要です。

妊娠の予定がなければ、子宮の働きも卵巣からの排卵も、ある意味ムダな働きになってしまいます。体調などによっては、子宮内膜の増殖や排卵を抑制するために低用量ピルを活用して、毎月大忙しの子宮や卵巣を一定期間休ませるのも一案です

生理周期の司令塔は「脳」

生理周期は、「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」という4つのターンに分けられます。

※28日周期の場合
※カッコ内は、生理周期における日数

  • 月経期(1日目から5日目)
    不要となった子宮内膜がはがれ落ちて、経血が出る。
  • 卵胞期(月経開始日から約13日目まで)
    卵巣内で、複数の原始卵胞が成長をはじめ、そのなかの1つが主席卵胞になる。子宮内膜が厚くなり始める。
  • 排卵期(約14日目)
    主席卵胞の殻を破って、卵子が卵巣の外に放出される。子宮内膜がふかふかに厚くなる。
  • 黄体期(約15日目から28日目)
    卵子が卵管(子宮と卵巣をつなぐ部分)で精子の到着を待つ。精子との受精が成立しないと、子宮内膜が少しずつはがれ始める。

毎月の生理周期は、女性ホルモンの働きによってつくり出されています。女性ホルモンは卵巣から分泌されますが、卵巣に指令を出すのは「脳」の視床下部や下垂体というところ。つまり女性特有のリズムは、司令塔である脳と、卵巣と子宮の連携によって生まれています。過度なストレスは視床下部の働きにも影響するため、激しいストレスを受け続けると、排卵や生理が止まってしまうことがあります。

  • :視床下部から「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」が分泌。それを受け取った下垂体から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」や「黄体形成ホルモン(LH)」が分泌される。
  • 卵巣:原始卵胞が発育。FSHを受け取って「卵胞ホルモン(エストロゲン)」を、LHを受け取って「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌する。
  • 子宮:卵胞ホルモンにより子宮内膜が増殖し、黄体ホルモンにより内膜がさらに厚くふかふかになる。

経血量や期間に個人差があるのはなぜ?

生理は、個人差が大きいもの。3日で生理が終わる人もいれば7日間続く人も。また、量が少なかったり、とても多いと感じる人もいます。人によって周期や日数に差があるのはなぜでしょう?

それは、体質や体の特徴が一人ひとり違うように、卵巣の働きやホルモン分泌などにも個人差があると考えられるからです。

ほかの人と多少生理の様子が違っても、医学的にいわれる「正常範囲内」であれば、それは個人差ととらえてよく、過度な心配は必要ありません。また、初経を迎えたばかりのころは、成長の途中ということもあり、生理が来たり来なかったり、周期が整わなかったりすることも多めです。初経より1年から数年で周期が整ってくれば問題ありません。

《正常な生理の目安》

開始時期:10歳から14歳(平均12歳前半)
閉経時期:40歳から54歳(平均50.5歳)
周期:25日から38日
持続期間:3日から7日
経血の量:20mlから140ml(1周期あたり)

量が多すぎたり少なすぎたり、期間が長すぎたり短すぎたりする場合や、3か月以上生理がない場合には早めに婦人科を受診しましょう

経血は一般的に2日目から3日目の量が最も多く、それから徐々に減っていきます。これは、はがれた内膜が一度子宮に溜まり、それから子宮の狭い出口から少しずつ出てくるため。経腟分娩の経験者は、産道となる「子宮頸管」が広がっているため、経血の通りがよくなって、1日目から量が多くなり、早く生理が終わるようになる人も多くみられます。

ちなみに産後の授乳中は、「プロラクチン」という乳汁分泌ホルモンが産生されます。その働きにより卵巣の排卵機能は停止し、生理はストップ。母乳育児中でも産後平均6か月で生理が再開しますが、個人差が大きく、授乳中はずっと止まっている場合も多くあり、どちらも異常ではありません。また、授乳をやめると数か月で生理が再開するのが一般的といわれています。

茶色い経血やレバー状の塊が出るのは異常なの?

経血は通常濃い赤色をしていますが、時間が経つと酸化して、色が茶色っぽくなったりします。また、経血量が多い場合には固まってレバー状になることがあります。

たまにレバー状の塊が出るくらいなら問題ありませんが、塊がたくさん出る場合や、日中でも夜用ナプキンが必要なほど量が多い場合には、貧血が起こりやすくなるほか、何か病気が原因のこともあるので注意が必要です。

生理の不調に隠れる病気については、こちらの記事もぜひご覧ください。

何かのサイン?生理の不調に隠れる病気
生理の不調をよくあることだと思って我慢していませんか。生理痛がひどい、経血量が多い、不正出血がある……などの症状には、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れていることがあります。なかには進行性の病気や、不妊症につながる病気もあるので、早めに婦人科を受診することが大切です。

この記事では、どんな症状が要注意なのか、生理の症状に隠れている可能性がある病気について解説します。生理が教えてくれる不調や病気を見逃さないようにしましょう。
https://helico.life/monthly/230910period-hidden/

生理痛が起こるしくみ

生理のときの下腹部の痛みを「生理痛」と呼びますが、生理痛と一言でいっても、なんとなく重い感じから、寝込んでしまうケースまで、症状はさまざまです。

生理中の子宮は、はがれた内膜を排出するために収縮します。その収縮を促しているのが、子宮内膜が産生する「プロスタグランジン」という痛み物質。この物質の分泌量が多いと生理痛の原因に。また、頭痛や胃痛などを引き起こすこともあります。多少の痛みなら生理的な現象といえますが、日常生活に支障をきたしたり、寝込んだりするほどの痛みは「月経困難症」の可能性があります。つらい痛みは我慢せずに婦人科で相談してみましょう。

鎮痛剤は、いわゆる「プロスタグランジンの産生を抑える」薬です。したがって、痛み物質プロスタグランジンが増える前に飲むのがしっかり作用させるコツ。生理痛がきそう、痛くなりそうと感じたら、痛みが本格的になる前の段階で飲んで構いません

生理痛の対処法については、こちらの記事もぜひご覧ください。

鎮痛薬、ピル、ミレーナ…我慢しない生理痛の対処法
多くの女性を毎月悩ませている生理痛。いつものことだから仕方がないと、我慢している人も少なくありません。しかし、生理痛は鎮痛薬のほか、ピルやミレーナといったアイテムを上手に取り入れることで、緩和することができます。つらい痛みを我慢せず、自分に合った対処法を見つけていきましょう。
https://helico.life/monthly/230506stomachache-periodpain/
つらい痛みをなんとかしたい。生理痛をやわらげるツボ
生理中、お腹や腰回りに痛み、だるさなどを感じてしまう生理痛。東洋医学では、生理痛のことを「痛経(つうけい)」といい、痛みのタイプに応じたツボを押すことで、生理痛にアプローチすることができます。鎮痛薬が飲めないときは、ツボ押しを試してみるのもおすすめです。ここでは、生理痛に有効なツボの位置と、適切な刺激方法について解説します。
https://helico.life/monthly/230910period-tsubo/

初経から閉経まで、年代で変化していく生理の特徴

卵巣は、ほかの臓器よりも寿命が短く、約50年でその役目を終えます。ホルモン分泌も生理の様子も、初経から閉経までの間に少しずつ変わっていきます。年代ごとの卵巣の働きとともに、生理の変化をみていきましょう。

思春期(8歳から18歳ころ)

卵巣からエストロゲンの分泌がスタート。10歳から14歳ころ初経に。
まだ卵巣やホルモンの働きが不安定。しばらくは生理周期が安定せず、生理不順になったり、出血量が多くなったりする場合も。

性成熟前期(18歳から34歳ころ)

卵巣と脳の連携が安定し、生理周期も整ってくる。女性ホルモンの分泌も活発で妊娠・出産に最も適した時期。一方で、生理が順調に来る分、生理にまつわる毎月の不調(生理痛やPMS)に悩まされることも。

性成熟後期(35歳から44歳ころ)

卵巣の機能が揺らいできて、妊娠しにくくなる。高齢出産といわれる年齢に突入。女性ホルモンの分泌も徐々に不安定に。20代のころに比べて経血が少なくなり、全体的にパワーがなくなってきたと感じる人も。40歳未満での自然閉経は早発閉経といって病的な状態。婦人科に相談を。

更年期(45歳から55歳ころ)

卵巣の機能が弱まり、ホルモン分泌や生理周期が乱れる人が出てくる。エストロゲンの分泌量が乱高下することで、生理不順や更年期症状などの自覚症状が現れる。生理が数ヵ月止まったと思ったら再開することや、排卵を伴わない無排卵周期も増えていく。順調にきていた生理が突然止まり閉経する人もいて、閉経に至るまでのパターンは人それぞれだが、1年以上生理がない状態になると閉経。早い人では40代で閉経することもある。

年代ごとのおおよその変化を知っておくと、更年期や閉経など“体と生理の変わり目”を迎えたときに対処がしやすいでしょう。

こうした初経から閉経までの卵巣機能の変化は、生物学的プログラムに基づいて、生まれるときから決まっています。生理とのつき合いもいずれ終わると思うと、自分の体をより愛おしく感じられるかもしれませんね。

教えてくれたのは…
善方 裕美先生
よしかた産婦人科 院長

横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士。女性ヘルスケア専門医として、月経にまつわる様々な悩みに対しカウンセリング、内分泌療法(ホルモン治療)、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療をおこなう。また、NHK健康チャンネルの出演や健康セミナーなどで更年期診療の認知を広める活動にも尽力。近著に『女医が教える閉経の教科書』(秀和システム)、『女性の生き方を左右する 子宮のきほん』(池田書店)など。日本産科婦人科学会専門医・日本女性医学学会専門医・日本骨粗鬆症学会認定医評議員。2014年日本女性医学学会において、妊娠授乳期のビタミンDに関する研究で優秀演題賞受賞。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:ちちち
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