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どんな人生にする?生理×ライフプランを考えてみよう

「5年後、10年後、こんな人生を歩んでいたい」という、自分のライフプランについて考えたことはありますか? 働き方や結婚の有無など、女性のライフスタイルは多様化し、自分らしい生き方の選択肢が増えてきました。一方で女性の人生は、妊娠・出産といったライフイベントに左右されやすいことも事実です。

本記事では、女性がライフプランを描くうえで意識しておきたい「生理」について考えます。理想の人生を歩むために、どのような知識や準備が必要なのか。産婦人科医として生理や不妊予防の啓発を続ける、岡田有香先生にアドバイスしていただきました。

教えてくれるのは…
岡田 有香先生
グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長

順天堂大学医学部卒、日本産科婦人科学会専門医。順天堂大学医学部卒業後、聖路加国際病院、杉山産婦人科を経て現職。聖路加国際病院では子宮内膜症や低用量ピルの診療とがん治療前の卵子凍結などにも携わり、杉山産婦人科では不妊治療を学ぶ。生理の知識や妊活、卵子凍結、不妊治療に進む前から定期的に婦人科にかかり不妊予防を行う重要性などを、Instagramでも発信している。

誰もが考えておきたい人生のライフプランとは

ライフプランとは、ひとことでいえば「人生の設計図」。将来の生き方や具体的な暮らし方を考えていくことです。

10代や20代ではまだ早いと思うかもしれませんが、産婦人科医としてアドバイスするなら、できるだけ早いうちからライフプランを考えることが大切だと思っています。なぜなら「自分の人生をできる限り自分で選択し、選びとっていけるようにする」ためです。

仕事、結婚、妊娠・出産、趣味などについて、いつごろ、どうしたいか、将来のライフプランをあらかじめ描いておくことで、人生の見通しが立てやすくなり、それに向けた準備も見えてくるでしょう。

もちろん、年齢を重ねても、その都度ライフプランの変更や見直しは可能です。ただ、女性には妊娠・出産というライフイベントがあることを忘れずに。子どもを持つか持たないかはその人の選択ですが、医学的には、妊娠・出産に最適な年齢は20代、遅くとも30代半ばで、それまでに第一子を出産するのが望ましいといわれています。

一度ライフプランを考えたあとに価値観が変わることもあるでしょう。そのときに後悔しないためにも、選択肢を残しておくことが大切です。

理想のライフプランを実現するには、もうひとつ大事なことがあります。それは、卵巣や子宮といった女性特有の病気について知っておくこと、適切な時期に予防接種や検診を受けておくなど、「将来に向けた体のケアをいま、しておく」という視点です。

ライフプランと生理、どんな関係があるの?

みなさんは、つらい生理痛があるのに、我慢をしながら仕事をしていませんか。生理痛があるのは仕方ないと思っていませんか。もしそうだとしたら、早めに婦人科で相談してほしいと思います。

私は、産婦人科医としてさまざまな分野の仕事を経験し、子宮内膜症や子宮筋腫の手術の経験も重ねてきました。現在は不妊治療の分野に身を置いていますが、そこで日々感じるのは、妊娠希望で婦人科にこられた患者さんが、すでに子宮内膜症などの病気を発症しており、妊娠が難しくなるケースが増えているということ。「もう少し早く来てくれていたら…」と思うことがとても多いのです。

現代女性は、初経の低年齢化や晩産化、出産回数の減少などで、昔の女性と比べて月経のある期間が長くなり、一生のうちに経験する月経回数が著しく増えています。そのことが原因で、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が増えていると考えられています。「月経困難症」といって重い生理痛など、生理に伴う不調で悩まされる人も増えています。

子宮内膜症とは、子宮内膜という組織が子宮以外の場所で増えてしまう病気であり、基本的には閉経までの間、生理があるたびに進行していきます。

子宮内膜症と診断された人の3割から半数は妊娠しにくくなるため、内膜症の初期で子どもを持ちたいと考えている人には、早めの妊娠を勧めています。すぐに妊娠を考えていないとしても、早く見つけて治療を行っていくことが重要です。

子宮内膜症について

  • 患者の多くは20代半ばで発病し、35歳ぐらいでピークに
  • 月経困難症の20代から30代では半数以上に子宮内膜症が見つかっている
  • 月経困難症の人は子宮内膜症のリスクが2.6倍高まる
  • 生理のたびに悪化していく
  • 生理痛が悪化していく場合は要注意
  • 生涯の経血量が多いほど発症リスクが高くなる
  • 子宮内膜症が進むと妊娠しにくくなる
  • 低用量ピルの服用は子宮内膜症の予防になる

生理のある女性に多い婦人科疾患には、ほかに子宮筋腫があり30代から増えていきます。子宮や卵巣の病気が見つかった場合には、治療を優先し、妊活を後回しにしなくてはならないことも出てきます。

特に強い生理痛や経血量がとても多いことで悩まされている場合には、婦人科を早めに受診しておく。その行動があなたの健康を守り、ライフプランを叶えることにもつながると知っておきましょう。

ライフプランを描くために意識したいこと

女性としてライフプランを描くために意識したいことはいくつかあります。そのポイントを紹介するので、参考にしてみてください。

1優先順位を決める

どの年代でも大事なことは、何歳ごろに何をしていたいかを具体的に描くこと。そのなかでも特に優先したいことは何か、人生の優先順位をつけるということです。

ただし、仕事などのキャリア形成にとって大切な時期と、妊娠・出産にとって大切な時期は重複しています。どこで休みを取るかといったことも同時に考えていかなくてはいけません。妊娠・出産に関しては何よりも年齢の影響が大きいといえます。どの年代で、何%ぐらいが出産可能なのかといったデータをきちんと抑えつつ、将来を決めていきましょう。

妊活は周囲と比べてスタートが遅くなると悩みも大きくなりがちですが、自分の人生はほかでもない自分のもの。できるだけ自分のなかでの優先順位に目を向けましょう。

私の場合は「子どもは2人ほしいので、30歳までに1人産む」と決めていたので、それに向けて医師としてのキャリアとの両立を目指しました。

それができたのも、産婦人科医としての知識がベースにあったから。信頼できるデータで見ると、27歳までに妊活をスタートした場合、9割の方が自然妊娠で子どもを2人持てることがわかっています(※)。

※National Library of Medicine参照

2重い生理痛をほうっておかない

非常に多くの人が生理の悩みを抱えていることは、データでもわかっています。

  • 月経困難症の方は約800万人で、医療機関を受診している方はそのわずか10%
  • 「器質性月経困難症(※)」の原因は、20代から30代ではダントツで子宮内膜症、40代になると子宮筋腫も増加傾向に
  • 女性の95%は生理前に何らかの症状(PMS症状)に悩んでいる

※月経困難症のうち子宮や卵巣の病気が原因で起こるもの、初経から10年経過した頃から発症する

これだけ生理で悩む人がいるのに、不調を改善せずに我慢している人がとても多いのが現状です。

「生理の不調で休むこともあり、やりたい仕事をあきらめた」
「いざ子どもを持ちたいと思ったら、子宮の病気が見つかってしまった」
こうしたことにならないためにも、まずはご自身の「生理」と向き合ってみることが大切です。特に重い生理痛には要注意。いつものことと見逃さず、婦人科を受診しましょう。

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3婦人科にかかりつけ医を持つ

婦人科(産婦人科)は女性特有の病気や悩みの相談ができる、頼りになる存在です。PMSや生理痛などの生理の悩みのほかにも、不正出血が1回でもあったら受診しましょう。低用量ピルの服用中は、1年に1回は婦人科で体のチェックをしましょう。

ちなみに、検診を受けていればよいかというとそうではありません。検診はあくまでも健康な方が病気を早期発見するために行うもので、受診(診察)とは違います。気になる症状や治療法などについて医師に相談するには、受診が必要です。

40代からの生理不順も婦人科に頼って

40代前半で生理不順になったり、生理の様子が変わってきたりすることはよくあります。日本女性の閉経平均年齢は50歳ごろですが、この数字はあくまでも平均なので、40代前半で閉経する人がいてもおかしくはありません。生理の変化は、病気が隠れている場合のほかに、更年期に入り閉経が近いサインということも考えられます。

女性の卵子の数(在庫)は生まれたときに決まっていて、日々減っています。卵子の減少を唯一止められるのは妊娠・出産のときだけです。閉経時期には個人差がありますが、出産回数が多い人と少ない人では、閉経時期が変わってくることも考えられるのです。

40代といえば、子育て中の方もいて、かつ仕事では責任が増してくる年代。この時期に更年期の症状で悩まされると、キャリアにも家庭生活にも影響が大きいです。早期に閉経した場合には、将来の骨粗しょう症のリスクも高まります。予防のために、ホルモン補充療法などの治療を選択することもできますので、婦人科で相談してみましょう。

知ってほしい、不要な生理はコントロールするという考え方

「生理は止めておいてもデメリットはないですよ」と患者さんに話すと、驚かれることがあります。でも、生理はそもそも、妊娠に向けて子宮内膜が厚くなり、妊娠しなければそれがはがれ落ちて経血となって外に出ること。妊娠・出産のためにだけあるものなので、妊娠が必要でない時期は、低用量ピルを使って生理をコントロールして止めておく。これを産婦人科医は当たり前のように行なっています。

あるアンケートで、20代から30代の女性の産婦人科医師は、約6割がピルを服用していることがわかりました。国内の普及率は数%であることを考えると、大きく差があります。

生理でつらい思いをする必要はありません。低用量ピルをうまく使えば、女性ホルモンのバランスをコントロールすることができ、生理不順の改善、生理痛の軽減、子宮内膜症の予防にもつながるなど、メリットが大きいのです。

女性ホルモンのお薬にリスクがあるとすれば、血栓症の副作用があることです。しかし、事前の問診や血液検査での結果、医師が血栓症のリスクが高いと判断した方は、低用量ピルを内服できない場合があります。そうしたケースを除けば、低用量ピルの服用において血栓症が発症するリスクは1万人に5人~9人程度の割合といえます。

たとえば、20代でいまは仕事を頑張りたい時期なのに、生理痛がつらく、我慢しているとしたらそれはあなたにとって大きな損失です。生理痛や経血をコントロールできれば、キャリア形成にも、趣味にも打ち込めるようになり、人生の充実度が大きく変わるでしょう。私たち女性の産婦人科医は約6割が低用量ピルを使用しても、医師として働けているわけなので、不安に思わなくて大丈夫。婦人科に相談してみてください。

未来の健康をつくる「プレコンセプションケア」とは?

将来、子どもを持つ・持たないに関わらず、健康な生活習慣を身につけ、赤ちゃんができやすい体を維持しておく――。若い世代が将来のライフプランを意識して取り組む体のケアや健康管理を「プレコンセプションケア」といい、近年とても注目されています。

プレは「~より前の」、コンセプション(Conception)は「妊娠・受胎」という意味になるので、「将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことで、健康をつくっていこうとする考え方」になります。この言葉は、もともと2016年にアメリカ疾病管理センター(CDC)が提唱したもの。その後2012年に、WHOは「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義しています。

プレコンセプションケアの対象は、妊娠を望んでいる女性だけではありません。10代から生殖可能な年代のすべての人が対象。もちろん男性にも必要とされています。将来の妊娠に向けた体づくりは、じつは子どものころから始まっているということでもあるのです。

食事、運動、性感染症の予防など、やるべきことはいくつかありますが、どの年代にとっても未来の健康をつくっていくために大切なこと。今日から意識してみませんか。以下がプレコンセプションケアで特に重要な9つの項目です。

□ 栄養バランスの良い食事
□ 週150分程度の運動
□ かかりつけ婦人科受診
□ ストレスの少ない生活
□ 性感染症の予防
□ ワクチン接種
□ 禁煙
□ 飲酒を控える
□ 適正体重のキープ

国立成育医療センターのWEBサイトにも、プレコンセプションケアの情報が掲載されています。こちらもぜひ確認してみるといいでしょう。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_check-list.html

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:宮下和
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