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骨と筋肉をつくる!タンパク質を効率よく摂る3つのポイント

骨や筋肉を健やかに育むうえで欠かせない「タンパク質」。運動や筋トレをしない人にとっても大切な栄養素で、年代や性別に関係なく、健康や美容を維持するための大きな役割を担っています。最近は、ヨーグルトやプロテインバーなど、タンパク質が気軽に摂れる商品も手に入りやすくなりました。

でも、特別なものを買わなくても、日常の食生活のなかで少し意識をすれば、1日の目標摂取量をクリアできるようになります。今回は、そんな手軽にタンパク質が摂れる食事のポイントを、40歳を迎えるタイミングで体質改善を始め、フルマラソンやトレイルランニングにも挑戦している、料理家の牛尾理恵さんに教わりました。

教えてくれるのは・・・
牛尾 理恵さん
料理家

東京農業大学短期大学を卒業後、栄養士として病院の食事指導に携わる。料理の製作会社に勤務後、料理研究家として独立。『大豆ミートでキレイやせ』(主婦の友社)や、『毎日おいしい!鶏むね肉レシピ』(学研プラス)など著書も多数。栄養がしっかりとれて手軽につくれるレシピを考案している。

INDEX
基礎代謝を支える! タンパク質って何?
タンパク質摂取のための3つのポイント
タンパク質以外にも意識しておきたい栄養素
将来の健康のために、できることからコツコツと

基礎代謝を支える! タンパク質って何?

タンパク質は、20種類のアミノ酸によって構成されており、筋肉や臓器、免疫物質などをつくったり、栄養素を運搬したりするために欠かせない栄養素のひとつです。人体の約20%を占めていて、脳を働かせる材料としても活躍しています。

私たちの体は、ただじっとしているだけでも、呼吸をしたり細胞をつくったりと24時間稼働しています。それを「基礎代謝」といい、筋肉量が多いほど、基礎代謝は高くなります。日ごろからタンパク質をしっかり摂ることで筋肉がつきやすくなり、基礎代謝も上がって、健康的な体を維持できるようになるのです

タンパク質は、成長期の子どもや、運動や筋トレをする人に必要な栄養素として広く知られていますが、じつは、どの世代のどんな人にとっても大切な栄養素です。とくに、自然と筋力が落ちてしまう40代以降は、基礎代謝を落とさないためにもタンパク質が欠かせません

1日に必要なタンパク質量はおよそ60g

厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人男性は1日65g、成人女性は50gほどの摂取が推奨されています。ダイエットと筋トレで体質改善を始めたころは、1日に90gの摂取を目標にしていたという牛尾さん。目標体重となり、筋力がついてきた現在では、1日に最低でも60g、平均で75g程度のタンパク質を摂るよう心がけているそうです。

牛尾さん

タンパク質は1日に「体重×g」摂るといいとされています。タンパク質は一気に摂っても体内に貯めておけないので、3食の食事で各20g程度を意識するとよいですよ! タンパク質をしっかり摂ると、髪にハリが出たり、肌にツヤがよみがえったり、美容にもいいことがいっぱいあります。私の場合は、体質改善をしたおかげでやせて動くのが楽になったし、メンタルもポジティブになり、睡眠の質も上がりました。

タンパク質の摂取は、無理をすると飽きてしまうので、長く続けられるように考えるのがポイント。ストイックにできなくても、日々少しでも意識することで、体は確実に変わっていきます。ただし、タンパク質の摂りすぎは腎臓に負担がかかってしまうので、摂取量に注意しながら始めましょう。

タンパク質摂取のための3つのポイント

ポイント1:20gのタンパク質の目安を知ろう

タンパク質には、肉や魚などから摂れる「動物性タンパク質」と、大豆製品や野菜から摂れる「植物性タンパク質」があり、バランスよく摂ることが大切。1食分の目安となる、20gほどのタンパク質が摂れる食材の分量を知っておくと、買い物をするときや献立を考えるときにも役立ちます。

牛尾さん

手のひらに乗るくらいの大きさのお肉や魚で、およそ20gのタンパク質が摂取できます。ほかにも、大豆製品や乳製品、卵など身近な食材に何g程度のタンパク質が含まれているのか知るところから始めましょう。そこからパンとコーヒーのセットにヨーグルトやゆで卵を添えてみようかな? と考えられるようになると、タンパク質20gの目標をクリアしやすくなっていきます。

▲身近な食材のタンパク質量の目安

ポイント2:ひとつの食材に頼らないようにしよう

タンパク質=鶏むね肉に豊富、というイメージを持つ方も多いと思いますが、タンパク質は、肉や魚、豆腐など、さまざまな食材に含まれています。食材を選ぶうえでも、いつも同じではなく、バランスを意識することが大切です

▲魚ならば、必須脂肪酸である「DHA」「EPA」といった栄養も一緒に摂れる
▲牛尾さんは肉の食べすぎで体調を崩してから、大豆製品からのタンパク質を摂取するようになったそう
牛尾さん

同じものを食べ続けるとどうしても飽きてしまいますよね。それに、人それぞれ体質的に相性のよい食材、そうでない食材もあると思います。新たに食材を増やすのもいいですが、ふだんよく食べている食材を見直して、よりタンパク質が多いものとチェンジしてみるのもおすすめです。たとえば、鶏肉ならもも肉ではなくむね肉を、豚肉なら脂分の多いバラ肉ではなくロースを使うと、それだけでより多くのタンパク質が摂れますし、脂質を下げることもできます。

鶏肉100gなら……もも肉のタンパク質量はおよそ16g、むね肉のタンパク質量はおよそ21g
豚肉100gなら……バラ肉のタンパク質量はおよそ14g、ロース肉のタンパク質量はおよそ20g
牛尾さん

食材やメニューを限定するのではなく、たとえばサンドイッチを食べるとしたら、ヘルシーさを意識してレタスサンドを選ぶよりもたまごサンド、野菜炒めなら八宝菜よりレバニラかな、というふうに、食事ごとに何を選ぶべきか考えてみましょう

ポイント3:タンパク質のグラム数だけではなく、熱量や脂質量などもチェックしよう

タンパク質を摂取しようと頑張るあまり、カロリーが上がってしまったり、脂質の多い食事になってしまったりすることもあります。それではせっかくタンパク質が摂れていても、体にやさしい献立とはいえません。

ベーコンやハムはタンパク質量が多めですが、塩分も多く添加物が気になることもあるので、食べすぎには注意が必要です。また、タンパク質量を表示しているヨーグルトやプロテインバー、チョコレートは手に取りやすいものの、食べすぎるとカロリーや脂質、糖質の摂りすぎになってしまうので気をつけましょう。

牛尾さん

タンパク質1gで4キロカロリーあるので、カロリー面でも適切な量を摂取するよう心がけたいですね。ただし、あまりにも低糖質で低カロリーな食事にすると、疲れやすくなったり、体を動かすのが億劫になったりするので、バランスよく摂ることが肝心です。

また、お酒を飲むと、せっかく摂ったタンパク質がアルコールの分解に使われてしまいますさらにはカルシウム摂取を妨げてしまう働きもあるので、飲む量を考えるのも大切です

タンパク質以外にも意識しておきたい栄養素

骨と筋肉づくりのために意識したい「カルシウム&鉄分」

40歳をすぎたあたりから気になってくるのが、骨量の低下。丈夫な骨や筋肉をつくるためには、タンパク質だけではなく、カルシウムや鉄分の摂取も必要です

牛尾さん

現代の日本人の食生活では、カルシウムと鉄分が不足しがちです。これらを積極的に摂ることで、骨が強くなり、筋肉がつくられます。

手軽に摂れるのは、魚介類を献立に加えること。私は、煮干しをミルで粉砕してお味噌汁に直接入れたり、たたみいわしをおやつにしたりします。あとは、レバーもおすすめの食材です。豚レバーはニラや舞茸など、香りのある野菜と一緒に煮込んだスープが調理も簡単。鶏レバーならオリーブオイルやカレー粉をあえて、魚焼きグリルで焼いてみて。香りのあるものと調理をすると、くさみが気になりません。

ちなみにタンパク質量はそんなに変わりませんが、普通の食パンよりもライ麦パンのほうが、ミネラルや食物繊維が豊富です。また白米よりも玄米のほうがビタミンBやカルシウムが豊富に含まれていますから、ときどき食べてみてくださいね。

▲ミルで粉砕した「煮干しパウダー」があれば、手軽に料理に使える。もちろん市販品でも○

「抗酸化物質」を多く含む野菜で筋肉を修復

ストレスや飲酒、喫煙、運動など、日常生活でのさまざまな刺激によって、私たちの体には「活性酸素」が増えるとされています。老化や生活習慣病の原因になってしまう活性酸素を抑えるためにも、ぜひ抗酸化物質を含むさまざまな種類の野菜を食べましょう。こうした食材は、運動後の筋肉痛を予防・軽減する効果も期待できます。

牛尾さん

抗酸化物質を含む野菜はさまざまありますが、根や皮、種など、捨ててしまうようなところに栄養が多く含まれています。にんじんは皮のまま調理したり、ピーマンの種は捨てずにラタトゥイユなどにして一緒に煮込むと、栄養をあますことなくいただけます。

緑黄色野菜はもちろん、根菜も抗酸化物質を含んでいます。生姜やごぼうは皮ごと使うと栄養価も高くなるだけでなく、香りもいちだんとよくなっておいしいですよ。

▲皮ごと食べられるプチトマトもよく召し上がるそう
牛尾さん

野菜は、緑色のものばかりではなく、赤、黄色、茶色、白など、彩りを考えて食べるようにしましょう。「朝はじゃがいもでスープをつくったから、夜はブロッコリーを蒸して食べよう」というふうに、色を意識してみると、まんべんなくいろいろなものが食べられる献立づくりができますよ。

将来の健康のために、できることからコツコツと

牛尾さん自身、体が変わってきたなと感じたのは、「体質改善を始めて2か月ほど経ってからだった」そう。すぐに結果が出るわけではありませんが、5年後、10年後の自分が元気でいられるように、まずは2か月と思って続けてみてください。

タンパク質量を緻密に計算するよりも、ちょっと意識を変えてその都度ベターな選択をすることで、体によい食習慣を続けることができます。まずは主菜に手のひらサイズの肉や魚を用意したり、納豆や冷奴などを副菜として添えたり、骨と筋肉のためにタンパク質を意識した食生活を始めてみましょう!

今回の特集「骨と筋肉、見落としてない?」では、骨と筋肉をさまざまな角度からとらえた記事を公開しているので、ぜひあわせてご覧ください。

私たちの体を支える!骨と筋肉のつくり、役割を知ろう
私たちが生きていくためには、呼吸や水分・食事の摂取、睡眠が欠かせません。では、こうした行動ができるのはなぜでしょうか。それは、骨や筋肉が私たちの体を支えたり、動作に必要な部位を動かしたりしてくれているからです。

いま、あなたがこの文章を読んでいる間も、骨が体全体を支え、呼吸や目を動かすための筋肉が働いています。本記事では、私たちの日々の生活の動作に欠かせない「骨」と「筋肉」について解説します。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-kiso/
すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」
「骨粗しょう症」という病名は聞いたことがあるけれど、高齢者の病気だろうし自分にはまだ関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか。重篤な病気ではないととらえている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折が引き金となって寝たきりになったり、骨折を繰り返したりすることもあり、健康への影響はかなりのもの。また、骨量や骨密度は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、とくに40代以降の女性は気をつけたい病気です。

骨粗しょう症予防は、症状が出る前からの対策がなによりも重要です。正しい知識を身につけて、生涯自分の足で歩ける丈夫な体づくりを目指しましょう。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-osteoporosis/
顔のシワやたるみは骨が原因?骨と美容の意外な関係
シワが気になる、肌がたるんできている。このような顔まわりの悩み、じつは「骨」が密接に関わっているのをご存知ですか? 骨量の減少や骨の質の低下は加齢にともない全身で起こりますが、なかでも顔の骨は、ほかの部位の骨よりも早く減少することがわかっているのです。顔の骨の減少がたるみにつながるメカニズムや、健康的な骨を維持するために意識したいケアについて、「骨美容」を提唱する、女性のための整形外科「ゆりクリニック」の院長 矢吹有里先生にお話をうかがいました。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-bonebeauty/
骨と筋肉、同時に鍛える!ゆるスクワット&かかと落とし
健康のために骨を丈夫に保ち、筋肉をつけることが重要なのは分かるけれど、運動の習慣を身につけるのは難しい……。そう思っている方に朗報です。

骨や筋肉を丈夫に保つためには、息が上がるほどの運動を毎日長時間行う必要はありません。ほんの数分でも、自分にとって無理のない動作を継続することが大切なのです。この記事では、今日から始められる「ゆるスクワット」「かかと落とし」の方法や、メリット、注意点を解説します。筋力や骨量の低下が気になる方は、ぜひ実践してみてください。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-squatheel/
CREDIT
取材・文:吉川愛歩 写真:小野奈那子 イラスト:あなんよーこ 編集:HELiCO編集部+ノオト
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