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顔のシワやたるみは骨が原因?骨と美容の意外な関係

シワが気になる、肌がたるんできている。このような顔まわりの悩み、じつは「骨」が密接に関わっているのをご存知ですか? 骨量の減少や骨の質の低下は加齢にともない全身で起こりますが、なかでも顔の骨は、ほかの部位の骨よりも早く減少することがわかっているのです。顔の骨の減少がたるみにつながるメカニズムや、健康的な骨を維持するために意識したいケアについて、「骨美容」を提唱する、女性のための整形外科「ゆりクリニック」の院長 矢吹有里先生にお話をうかがいました。

INDEX
気になるシワやたるみは、肌だけの問題ではないかも!?
筋肉を使うことも骨ケアに。表情豊かに話し、食べ物をよく噛もう
骨のために気をつけたい「栄養バランス」と「糖化」
適度な日光に当たることも丈夫な骨づくりに重要
健やかな毎日を長く送るために、骨を大切に

気になるシワやたるみは、肌だけの問題ではないかも!?

体を支え内臓を守り、筋肉の力を伝達させるなど、私たちの生命維持になくてはならない骨ですが、じつは美容にも大きく関係しています。ほうれい線をはじめとするシワやたるみなどは、肌に関することだけではなく、「骨量・骨密度の低下」も原因のひとつと考えられるのです。

女性ホルモンの減少により、女性は30代後半から骨量・骨密度が低下傾向に

骨量・骨密度の低下に大きく関わっているのが、女性ホルモンです。骨はつねに新陳代謝が行われていて、少しずつ新しく生まれ変わっています。この新陳代謝には、女性ホルモンの働きが不可欠で、女性ホルモンが減少すると、古くなった骨を壊す破骨(はこつ)細胞の働きが活発になってしまい、新しい骨をつくるのが追いつかなくなってしまいます。そのため女性は、30代後半を過ぎると、骨量・骨密度が低下傾向に。閉経の前後5年間を合わせた10年間を更年期といいますが、更年期に女性ホルモンの分泌が大きく減少するとともに、骨密度は約20%減るといわれています

目がくぼんだり、頬がこけたり、顔の骨は見た目の印象に影響

さらに、顔の骨量・骨密度は、腰などほかの部位よりも早く低下することがわかっています。

骨量・骨密度が低下することで、顔の骨は薄くなり、委縮していきます。それにより、骨や筋肉をつなぎとめている靱帯がゆるんで、皮下脂肪や表皮を支えきれなくなり、たるんだ印象になるのです。

また、目や鼻のまわりなど、顔の骨には穴があいているところがあり、顔の骨の委縮が進むと、それらの骨の穴が広がってしまう可能性も。目のあたりには眼窩(がんか)と呼ばれるアイホールがあり、ここが広がると目がくぼんでしまいます。同様に、頬骨やあごの骨、こめかみの骨も委縮することによって、頬がこけるなど、ゴツゴツした顔になっていきます。

ちなみに、顔の骨量・骨密度がほかの部位よりも早く低下する要因として考えられることは、いくつかあります。骨は刺激を受けることで丈夫になりますが、顔の骨は体重などの刺激をあまり受けないため、減りやすい可能性があること。また、顔の骨の多くは海綿骨(かいめんこつ)という非常に薄い骨でできているので、体の骨と比べて減りやすいのではないかともいわれています。

筋肉を使うことも骨ケアに。表情豊かに話し、食べ物をよく噛もう

肌とは違い、自分では確認することができない顔の骨。美容の面からも健康な状態をキープしたいものですが、顔の骨をケアする方法はあるのでしょうか。

矢吹先生

顔の骨を丈夫にする方法については、はっきりとした情報はまだ存在していません。ただ、筋肉は靱帯を通して骨につながっているので、表情筋を使うことで骨に刺激が伝わり、よい影響を及ぼすと思います。

刺激を与えるには、マッサージよりも、表情豊かに話をしたり、食べ物をよく噛んだりして筋肉を使うのがおすすめです。いまはマスク生活もあり、口を開けっぱなしにしたり、あまり表情を変えずに会話したりすることが多いですが、顔のたるみを防ぐためには表情を豊かにするといいですね。

骨のために気をつけたい「栄養バランス」と「糖化」

顔の変化が気になりはじめたら、全身の骨に目を向けてみることが大切です。

矢吹先生

顔の変化が気になってきたということは、全身の骨量・骨密度が低下しているサインかもしれません。「骨粗しょう症」は高齢者の病気だから自分にはまだ関係ない、と思っている方は少なくありません。ですが、女性ホルモンの減少は、すべての女性にいずれは起こること。だからこそ、いまからできることを始めましょう。

骨量・骨密度のピークは20歳のころ。ピークを過ぎたあとは、女性ホルモンの影響である程度維持できますが、先述の通り、女性ホルモンの減少とともに骨量・骨密度も低下していきます。ただし、低下するスピードを緩やかにすることは可能で、そのために骨をケアしていくことが重要です。

まずは、食生活をはじめとした、生活習慣を整えることから。骨の栄養素というと、カルシウムが思い浮かびますが、カルシウムだけでは骨はつくられません。十分なカルシウムのほか、タンパク質、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウムが協働して、丈夫な骨をつくります。さまざまな栄養素を食事のなかでバランスよく摂取しましょう。

また、気にしておきたいのが「糖化」という現象です。糖化とは、食事で摂取した糖質がタンパク質や脂質と結びつき、細胞が劣化することで、糖化が起こると、AGE(最終糖化産物)という加齢を促進する物質がつくり出されます

矢吹先生

骨の強さは骨密度と骨質(骨の構造や材質)で決まります。AGEはコラーゲンでできている骨質を劣化させるので、AGEが体に溜まっている人は骨密度が高くても骨折しやすくなってしまいます

糖化を抑えるには、糖質や酸化した油(揚げ物に使う油など)の過剰摂取や、喫煙、飲酒に注意しましょう

「骨粗しょう症」については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」
「骨粗しょう症」という病名は聞いたことがあるけれど、高齢者の病気だろうし自分にはまだ関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか。重篤な病気ではないととらえている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折が引き金となって寝たきりになったり、骨折を繰り返したりすることもあり、健康への影響はかなりのもの。また、骨量や骨密度は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、とくに40代以降の女性は気をつけたい病気です。

骨粗しょう症予防は、症状が出る前からの対策がなによりも重要です。正しい知識を身につけて、生涯自分の足で歩ける丈夫な体づくりを目指しましょう。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-osteoporosis/

適度な日光に当たることも丈夫な骨づくりに重要

食事からもビタミンDは摂れますが、一番効率良くビタミンDを吸収できるのは皮膚からなので、日焼けをしすぎない程度に日光に当たることはとても大事です。手のひらだけ、足だけでも構いません。散歩や通勤時などに意識してみましょう。

日光に当たる時間帯や照射時間の目安として、国立環境研究所が「ビタミンD生成・紅斑(こうはん)紫外線量情報」に毎日出している「お勧めする日光照射時間 」をぜひ参考にしてみてください。

【ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報】
https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/mobile/index.html

矢吹先生

日焼け止めを塗ると、基本的には紫外線がブロックされるととともに、ビタミン D も生成されなくなります。ビタミン D の生成を妨げない日焼け止めも販売されていますので、紫外線によるシミ・そばかすや日焼けが気になる方は、そのようなアイテムを活用してもいいでしょう。

健やかな毎日を長く送るために、骨を大切に

最後に、これまでとはまた別の角度から、「骨の健康」について気をつけたいことを紹介します。

矢吹先生

まずは外反母趾です。外反母趾とは、足の親指(母趾)のつけ根が飛び出して、その先が小指のほうに曲がってしまった状態のこと。外反母趾は中高年女性に多い病気のひとつ。日常生活ではなるべく歩きやすい靴を履くのがおすすめです。もし症状が気になる場合には早めに医療機関を受診しましょう。

また普段の姿勢にも気をつけたいところ。美しい姿勢は見た目だけではなく、生活をするうえでも重要です。人間は二足歩行になったときから腰痛や肩こりなどに悩まされていますが、その改善につながるのが正しい姿勢です。猫背や巻き肩、反り腰の姿勢だと腰の骨に負担がかかり、腰痛の原因にもなります。

矢吹先生

ちなみに「骨盤がゆがむ」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、本来骨盤はゆがむことはありません。足を組むことで筋肉のバランスや姿勢に影響が出るケースはあるかもしれませんが、骨盤は非常に強い靭帯と強固に連結しているので、大きく動くことはないのです。出産時に赤ちゃんを通すために産道や骨盤が開いたりゆるんだりすることがありますが、産後はホルモンの働きによって自然に閉じていきます。

また、 歯を大切にすることは、骨を大切にすることにつながります。歯が丈夫であれば下あごの骨をしっかり保つことが可能になります。年齢を重ねると歯茎がやせてきて、歯周病や虫歯などのリスクも高まります。歯科検診をしっかり受けるなど、予防歯科もぜひ習慣に取り入れていきましょう。

顔の変化が気になったら、骨について考え始めるいい機会かもしれません。スキンケアだけでは、老化を防ぐのはなかなか難しいもの。ぜひ内側からもケアをして、健やかな日々を送りましょう。

矢吹先生

今は人生100年時代、最近は120年ともいわれていますが、長生きしても歩けなかったら悲しいですよね。最後まで自分の足で歩くことで、本当の意味での自立、身体的な女性の自立を目指していただきたいと思っています。

「骨と筋肉のつくり、役割」については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

私たちの体を支える!骨と筋肉のつくり、役割を知ろう
私たちが生きていくためには、呼吸や水分・食事の摂取、睡眠が欠かせません。では、こうした行動ができるのはなぜでしょうか。それは、骨や筋肉が私たちの体を支えたり、動作に必要な部位を動かしたりしてくれているからです。

いま、あなたがこの文章を読んでいる間も、骨が体全体を支え、呼吸や目を動かすための筋肉が働いています。本記事では、私たちの日々の生活の動作に欠かせない「骨」と「筋肉」について解説します。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-kiso/
教えてくれたのは・・・
矢吹 有里先生
ゆりクリニック院長

東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入室。整形外科医として国立病院機構東京医療センターなどで勤務ののち、東京都済生会中央病院整形外科医長を経て、2017年11月、女性のための整形外科「ゆりクリニック」を開院。日本整形外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会会員、日本骨代謝学会会員。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:星野ちいこ
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