私たちが生きていくためには、呼吸や水分・食事の摂取、睡眠が欠かせません。では、こうした行動ができるのはなぜでしょうか。それは、骨や筋肉が私たちの体を支えたり、動作に必要な部位を動かしたりしてくれているからです。
いま、あなたがこの文章を読んでいる間も、骨が体全体を支え、呼吸や目を動かすための筋肉が働いています。本記事では、私たちの日々の生活の動作に欠かせない「骨」と「筋肉」について解説します。
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大人も子どもも要注意!ロコモティブシンドロームとは
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みなさんは「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」という言葉を聞いたことがありますか? なんだかかわいらしい響きに聞こえますが、ロコモとは、筋力低下や骨の病気などに伴い、立ったり歩いたりする能力が低下している状態を指します。自分はまだ若いから大丈夫! と思った方も要注意。近年は新型コロナウイルス感染症の影響や生活様式の変化により、「子どもロコモ」など、高齢者以外の世代でもロコモが懸念されています。ロコモが進行すると将来、介護が必要になるリスクが高まってしまうので、若い世代から予防を意識することが大切です。
本記事では、子どもから大人まで誰もがなり得るロコモについて、基礎的な情報を解説します。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-locomo/
また、「昔スポーツを本格的にやっていたから私は大丈夫」と思っている方は要注意。筋肉は衰えるのも比較的早いので、継続的に運動をする必要があります。ハードな運動を毎日自分に課す必要はありませんが、エスカレーターではなく階段を使用するなど、日常でできる小さな積み重ねを大切にしましょう。
骨量増加と減少のタイミングのカギは「性ホルモン」
人の体のなかにある骨の量を「骨量」といい、骨量が大きく増えるタイミングは、性ホルモンの分泌と密接な関係にあります。女性の場合は初潮がくるころから、男性の場合は急激に身長が伸び始める10代から骨量が増え始め、いずれも20歳ごろにピークを迎えます。なお、女性は以前と比較して初潮の年齢が早まっているため、骨量の増加時期も前倒しで訪れているとされています。
一般的に、骨量は女性のほうが減少しやすいといわれています。減少のタイミングにも性ホルモンが関係しており、女性ホルモンの分泌が大幅に減少する閉経前後は、特に骨量の減少に注意が必要です。一方で、男性の骨量の減少は比較的ゆるやかで、50代以降になって徐々に進行することが多い傾向にあります。
なお、骨量が減少すると、骨の強度が低下して骨折リスクが高まる「骨粗しょう症」になりやすくなります。骨折をして初めて骨量の減少を知るという方もいます。女性は40~50歳の間に、 男性も65歳ごろには医療機関で骨密度の測定を実施するとよいでしょう。骨密度を測定することで、現状を知り、生活するうえでの注意点なども把握できます。まだ一度もしたことがないという方は、ぜひこの機会に検討してみましょう。
「骨粗しょう症」については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
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すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」
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「骨粗しょう症」という病名は聞いたことがあるけれど、高齢者の病気だろうし自分にはまだ関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか。重篤な病気ではないととらえている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折が引き金となって寝たきりになったり、骨折を繰り返したりすることもあり、健康への影響はかなりのもの。また、骨量や骨密度は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、とくに40代以降の女性は気をつけたい病気です。
骨粗しょう症予防は、症状が出る前からの対策がなによりも重要です。正しい知識を身につけて、生涯自分の足で歩ける丈夫な体づくりを目指しましょう。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-osteoporosis/
年齢を重ねても健康に過ごすために欠かせない骨と筋肉。まずは自分自身の骨量や筋肉量を知り、増加・維持のために、なにができるのかを考えてみましょう。なにを始めるにも遅すぎることはありません。
- 教えてくれたのは・・・
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1985年東京大学医学部卒業。東京大学整形外科入局。東京大学医学部附属病院のほか関東圏を中心とした関連病院で整形外科全般の診療経験を積む。得意分野は手の外科、マイクロサージャリ―(顕微鏡下の微細手術)。ロコモティブシンドロームの提唱者の一人で、その研究・啓発活動にも力を入れている。2021年から現職。日本整形外科学会整形外科専門医。