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意外な大人のアレルギー。発症のきっかけや症状は?

子どものころはなかったのに、ある日突然くしゃみや鼻づまりの症状が現れ花粉症になった……。ある特定の食べ物を食べたら急に肌がかゆくなった……。というように、大人になってからアレルギー症状が突然現れることがあります。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。本記事では、大人のアレルギーの特徴とその対応、注意すべき点などについて解説します。

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なぜ大人になって突然発症するの?

アレルギーと聞くと「ちょっと怖い」「急になったらどうしよう」と、不安に感じる方もいるかもしれません。まずはアレルギーの基本を知っておきましょう。

私たちの体には、ウイルスや細菌などの異物(抗原)が侵入したときに、抗体をつくってこれらを排除しようとする「免疫」というしくみが備わっています。この免疫が、本来は体に害のない物質に過剰に反応してしまうのが、アレルギー反応です

アレルギーの多くは、アレルゲンが体内に入って数時間以内に症状が現れる「即時型アレルギー反応」というもので、そこにはIgE(アイジーイー)抗体が関わっています。

IgE抗体は、一つひとつのアレルゲン(原因物質)ごとに1対1で対のものがつくられ、一度つくられたIgE抗体は、皮膚や粘膜などにあるマスト細胞(※)の表面にアンテナのように張りついています。そして、体内で再びアレルゲンを見つけると、アレルゲンとピタッと張りつく性質があるのです。このときにヒスタミンやロコトリエンといった化学物質がマスト細胞から一気に放出され、これらの物質によってかゆみや鼻水などの症状が現れます。これがアレルギー反応です。

※マスト細胞とは…アレルギー反応に関与する細胞で、皮膚や粘膜などにたくさんいます

子どものころはIgE抗体がつくられなかった物質に対しても、大人になってからIgE抗体がつくられ、症状として現れることがあります。アレルギーは「アレルギー体質+環境」の2つの要素が重なって発症すると考えられています

さらに、「職業性アレルギー」といって、仕事と密接に関係して起こるアレルギーもあります。たとえば、パン屋で働く人が小麦アレルギーになったり、天然ゴム素材の手袋をよく着用する医療現場で働く人がラテックス(天然ゴム)アレルギーになったりするようなケースです。このようなケースでは、職場の配置転換によりアレルゲンへの接触機会を減らすことで症状が改善する場合があります。

大人になると、身の回りのさまざまなアレルゲンに触れたり口にしたりする機会が増えていくため、アレルギーの種類も多様化していくと考えられます。私たちの体に免疫というしくみがある以上、誰でも突然アレルギーになる可能性がある、ということを知っておきましょう。

アレルギー反応が起こるメカニズムについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

アレルギーはなぜ起こる?発症のメカニズムを知ろう
花粉症をはじめ、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、食物アレルギーなど、たくさんの種類がある「アレルギー疾患」。今や日本人の2人に1人がなんらかのアレルギー症状に悩まされているといわれるほど、とても身近な疾患です。

一方で、「アレルギー反応が起こるメカニズムについては理解できていない」という声も聞こえてきます。この記事では、発症のしくみや検査のことなど、病院で診察を受ける前に知っておきたいアレルギーの『基本のキ』を紹介します。アレルギーと上手に付き合っていくためにも、まずは正しい知識をきちんと得ることから始めましょう。
https://helico.life/monthly/230102allergy-kiso/

ゴム、金属、虫まで!? 大人になってから発症しやすいアレルギー

大人になってから起こるアレルギーには次のようなものがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

食物アレルギー

特定の食べ物を食べたり、触れたりしたあとに、肌のかゆみやむくみ、口のなかの違和感、息苦しさなどのさまざまな症状が出ます。有症率は乳幼児期が最も高いものの、原因となる食物の傾向が大人と子どもでは異なるため、大人になってから突然発症するケースも珍しくありません。

  • 子ども … 鶏卵・牛乳・小麦が全体の9割を占め、成長するにつれて食べられるようになるケースが多い
  • 大人  … 果物・野菜類、小麦、甲殻類、スパイス、ナッツ類などが多い

薬剤アレルギー

薬は病気を治すために必要ですが、アレルギー反応が出てしまうことがあります。主な症状は、皮膚の湿疹や赤み、かゆみなど。まれに、血圧低下や失神を伴うアナフィキラシーショックを起こすこともあります。薬剤アレルギーは、「即時型アレルギー」だけでなく、数日経ってから現れる「遅延型アレルギー」もあり、いずれも症状が出たと思った場合には、必ず医師に相談をしましょう。

金属アレルギー

金属との接触により生じる、アレルギー性の接触性皮膚炎での発症が多いです。金属そのものでアレルギー反応が出るのではなく、金属から溶け出した金属イオンが体内のタンパク質と結びつき、「アレルゲンになるタンパク質」に変化することで起こります。原因金属は、ニッケル、クロム、コバルトが多く、ピアスや指輪などのアクセサリー類が代表的ですが、化粧品や革製品、クレヨンに含まれる成分でアレルギーが誘発されることもあります。

カビアレルギー

空気中に浮遊しているカビを吸い込むことで起こるアレルギー症状のこと。症状は発熱、湿疹、かゆみ、アトピー性皮膚炎、咳、鼻水、目のかゆみ、呼吸困難など。カビが繁殖しやすい梅雨時期から初秋にかけて症状が悪化したり、カビが発生しやすい環境で生活したりしている人に症状が出る特徴が見られます。

ラテックスアレルギー

天然ゴムに含まれているタンパク質に反応して起こるアレルギー症状のこと。最も多い症状は、接触部位および全身のじんましんです。そのほか、咳や喘鳴(ぜんめい・呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒューなどの音がする)などの呼吸器症状、アナフィラキシーショックなどが起こる場合も。天然ゴムは、ゴム手袋や絆創膏、コンドームなど日用品にも含まれる身近な素材なので、知っておきたいアレルギーのひとつです。

昆虫アレルギー

昆虫もアレルギーの原因になります。蜂に刺されたり、蛾やゴキブリの死骸の一部を空気と一緒に吸い込んだりすることで、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アナフィキラシーショックなどの症状が出る場合があります。

大人になって発症する「花粉-食物アレルギー症候群」とは

年齢に限らず患者数が増え続けている「花粉症」は、大人になってから症状が現れることも少なくありません。花粉症は、植物の花粉を吸い込むうちに免疫細胞が過剰反応するようになり、アレルギー症状が起こるというしくみです。

花粉症を起こす花粉のアレルゲンと、一部の果物や野菜に含まれるアレルゲンは、タンパク質の構造が非常に似ているため、ある特定の果物や野菜を食べると、体が「花粉のアレルゲン(異物)がきた」と勘違いして反応してしまうことがあります。これを「花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome, PFAS)」といいます。たとえば、以下のような組み合わせは、アレルギー反応が出やすいとされています。

  • シラカンバ、ハンノキ花粉症はリンゴ、モモ、サクランボ
  • ブタクサ花粉症はメロン、スイカ、キウイ
  • ヨモギ花粉症はにんじんやセロリ

花粉-食物アレルギーでは、口や喉がかゆくなる、腫れるといった症状が出るケースが多く、「口腔内アレルギー症候群(OAS, Oral Allergy Syndrome)」とも呼ばれています。

ラテックスアレルギーは果物摂取に注意

ラテックスアレルギーは、アボカド、栗、バナナ、キウイフルーツなどの植物性食品と交差反応性があります。ラテックスアレルギーの患者さんの3〜5割にこれらの食物アレルギーを発症する人がいて、「ラテックス-フルーツ症候群」と呼ばれています。

QOLを落としたくない! 大人のアレルギー対応のポイント

アレルギー反応によって起こるさまざまな症状は、私たちのQOL(Quality of Life=生活の質)に大きく影響し、日常生活や仕事に支障をきたす場合も少なくありません。一方で、正しい情報を入手して適切な対応をとっていけば、完治しにくいアレルギー疾患だったとしても、症状をコントロールしながら生活していくことができます。

大人のアレルギーとの上手な付き合い方のポイントを確認していきましょう。

アレルギー専門の医療機関や医師に相談し、適切な診断を受ける

アレルゲン回避は基本的な治療のひとつですが、治療を始める前に、まずは専門の医師のもと、適切なアレルゲン検査によってアレルゲンを特定することが大切です

喘息症状の場合には呼吸器内科を、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎なども併せ持つ場合には、皮膚科やアレルギー科などの専門の医療機関、アレルギー専門医を受診するとよいでしょう。また、地域のかかりつけ医で治療を受けていて、治療方針に納得ができない場合にも、専門の医療機関を受診することを検討してみましょう。

アレルギー疾患の治療は長期間にわたることもあるため、相性の良い医師を選ぶことも大切なポイント。アレルギー専門医は、日本アレルギー学会の公式HPで検索することができます。

▼日本アレルギー学会公式HPの専門医・指導医検索
https://www.jsaweb.jp/modules/specialist/index.php?content_id=6

アレルゲン特定のための検査は、血液検査(非特異的・特異的IgE抗体検査)のほか、パッチテスト・プリックテストといった皮膚テストなどの方法があります

たとえば食物アレルギーの確定診断をするためには、医療機関で実際にその食品をごくわずかの量食べて、症状が現れるかどうかを確認する「食物経口負荷テスト(※)」という検査が必要です。疑わしい食物があっても、食物経口負荷テストで食べることができた場合は、除去する必要はありません。

※食物経口負荷テストは、専門医の厳密な管理のもとで行う特別な検査です。自分の判断で食べてみることは危険なので、絶対にしないようにしましょう

食物アレルギーの検査は、すべての医療機関で実施できるわけではないため、検査ができる医療機関を探すか、かかりつけ医に相談してみましょう。受診の際は、いつ・どこで・何をしているときに・どんな症状が出たのかを具体的に伝えられるといいでしょう。皮膚の症状はスマホなどで写真を撮っておくと、受診の際に説明がしやすくなります。

▼食物アレルギー研究会 食物経口負荷試験 実施施設一覧
https://www.foodallergy.jp/ofc/
※食物経口負荷試験を行っている施設は、上記のホームページに掲載されている施設のほかにもあります

アレルギー反応が起きるものを避ける・除去する・摂取しない

アレルゲンとなる物質は、生活環境、食生活、年齢などによって異なります。花粉、ダニ、カビアレルギーなどの場合には、アレルゲンを寄せつけないように掃除をマメにするなどの環境整備も大切です。大人の食物アレルギーの対応では、アレルギーを起こす食べ物は摂取しないのが原則です。

自分でできる環境整備や自己管理

  • アレルギーを起こす食物は避ける
  • 薬は用法・用量・期限を守って使う
  • ラテックスアレルギーでは、発症の原因となる天然ゴムが使用されているゴム手袋などの使用をやめて、湿疹等の治療を行う
  • ハウスダストアレルギーでは部屋の掃除をこまめに行い、ダニ、ホコリなどのアレルゲンを除去する
  • カビアレルギー対策では換気、掃除、湿度管理を徹底する

情報収集をする際は、厚生労働省や医学学会などが提供する公的で正確な情報にあたるようにしましょう

日本アレルギー学会と厚生労働省による、アレルギーに関するさまざまな情報を集めた「アレルギーポータル」には、アレルギーの症状や治療方法、相談できる専門医や災害時の対応方法の情報等が集約されています。こちらもぜひ参考になさってください。

▼アレルギーポータル 
https://allergyportal.jp

今回の特集「うまく付き合うアレルギー」では、さまざまなアレルギー疾患にフォーカスした記事を公開しているので、ぜひあわせてご覧ください。

食通・さとなおさん「アニサキスアレルギーになって見えたもの」
『ファンベース』などの著書で知られるコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんは、2018年に突如「アニサキスアレルギー」を発症しました。一過性の食中毒である「アニサキス症」ではなく、基本的に魚介類や出汁が食べられなくなるアニサキスアレルギーの発症は、地方の食文化に関心を持ち、食にまつわる本も多数執筆してきた食通の「さとなお」さんの人生を大きく左右する出来事でした。発症から現在までのさとなおさんの内省と再生の日々、さとなおさんを支える周囲の人々についてうかがいます。
https://helico.life/monthly/230102allergy-interview-anisakis/
症状が出る前に対策を!アレルギー性鼻炎のケアと治療
早ければ1月下旬から飛散が始まるスギ花粉。「まだ真冬なのに、鼻がムズムズし始めた」という方もいるのではないでしょうか。なかには1年を通じて「風邪ではないのにくしゃみが出る」「サラサラとした透明な鼻水が止まらない」などの症状で困っている人もいるかもしれません。アレルギー性鼻炎は、花粉の飛散時期だけ症状が出る場合もあれば、年間を通じて症状が出る場合もあり、それぞれ適切なケアが大切です。

この記事では、アレルギー性鼻炎の基本や治療法などについて詳しく解説します。つらい症状が少しでも軽くなるよう、アレルギー性鼻炎に関する理解を深めて、しっかり対策をとってみませんか?
https://helico.life/monthly/230102allergy-rhinitis/
どうする?つらい目のかゆみ。眼科医に聞く目の労り方
花粉症は、鼻だけではなく目の症状もつらいもの。花粉が飛ぶ時期は目のかゆみや涙目に悩まされ、「目が疲れやすい」「眠れない」「仕事や勉強に集中できない」などとお困りの方も多いでしょう。花粉以外にも、ダニやホコリが原因で、同様の症状に悩まれている人もいるのではないでしょうか。

アレルギーによる目のかゆみは、原因を回避しながら点眼薬をうまく使えば、症状をある程度コントロールしていくことができます。本記事では、目のアレルギー症状を少しでも楽にするために注意すべきことや、点眼薬の上手な使い方、眼科での治療法、家庭でできることについて解説していきます。
https://helico.life/monthly/230102allergy-conjunctivitis/
教えてくれたのは・・・
今井 孝成先生
昭和大学医学部小児科学講座 教授

東京慈恵会医科大学医学部を卒業後、昭和大学小児科学講座に入局。独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科を経て、2019年より現職。専門は小児アレルギー全般、特に食物アレルギーやアナフィラキシー。診療や後進の指導に当たりながら、厚生労働科学研究班「食物アレルギーの栄養指導の手びき」の作成委員長を務め、日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」の作成委員や、自治体の食物アレルギー対応マニュアルの監修にも携わる。近著に『こどものアレルギー基礎BOOK 心配になったら一番先に読む本』(日東書院)などがある。

記事中のラテックスアレルギーに関連して、コンドームを選ぶうえで注目してもらいたいポイントをご紹介した記事もあわせてぜひご覧ください。

どう選ぶ?どう使う?コンドームソムリエAiさんが伝授(2022年7-8月 特集「知っておきたい性のこと」より)
性感染症予防、そして避妊のためのアイテムとして身近なコンドーム。誤った方法で使用すると、目的をしっかり果たすことができなくなるにも関わらず、肝心な選び方や正しい使い方について、学ぶ機会がなかったという方がほとんどなのではないでしょうか。

今回は、現役の保健室の先生でもあり、コンドームについて豊富な知識を持つコンドームソムリエAiさんに、コンドームの選び方や正しい使い方をお聞きしました。
https://helico.life/monthly/220708aboutsex-condom/
CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:うえむらのぶこ
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