鶏卵、牛乳、小麦など、食物アレルギーを持つ家族のために、食材を除去したり、別のもので代用して調理したりするのは想像以上に大変なもの。お子さんのアレルギーをきっかけに、さまざまな代替レシピを考案してきた料理研究家の阪下千恵さんは、「食べられないものがあってもマイナスにとらえるのではなく、別の食材をうまく活用して、料理の楽しさやおいしさを経験してほしい」と話します。今回は、そんな思いのこもったレシピを3品教えていただきました。
- 教えてくれるのは・・・
-
- 阪下千恵さん
- 料理研究家
雑誌や書籍、テレビなどメディアでのレシピ作成を中心に、アレルギーのある子どもとの暮らしから、アレルギー物質除去食の研究も行う。著書は『野菜もりもり スープこそ最高のごちそう。』(主婦と生活社)や『耐熱ガラス容器で毎日ラクチンレシピ』(ワン・パブリッシング)など多数。
みんなで同じものを食べる。ごはんの喜びを大切にするレシピ
阪下さんがアレルギー対応レシピを考案する際にいちばん大切にしているのは、「みんなで同じものをおいしく食べられる」こと。アレルギーがあることで食べられなくてかわいそうだと思うのではなく、何かを除去してもおいしさに遜色(そんしょく)がなく、アレルギーのない家族も満足できるメニューを考えてきたそうです。
「子どもに食物アレルギーがあると、外食をするのに気を遣ったり、仕事などで疲れていてもお惣菜を買って食卓に並べる、ということができなかったりして、日々の献立をやりくりするのが本当に大変ですし、食にまつわる悩みも多くなると思います」(阪下さん)
阪下さんのお子さんは幼児期、卵などの複数のアレルギーを持っていました。卵なしのレシピもたくさん作ったそう
今回は、鶏卵や牛乳、小麦を使わなくても、ハンバーガーを食べる楽しさが味わえる「焼き肉ライスバーガー」や、鶏卵、牛乳なしでつくれる「衣がおいしいコロッケ」、「かぼちゃとにんじんのレンチン蒸しパン」のレシピをご紹介します。
「みんなで同じものが食べられると、お料理もすごく楽になりますよ。アレルギーに合わせて、お好みの食材にアレンジしてつくってみてくださいね」(阪下さん)
レシピ①:食べごたえ抜群! 焼き肉ライスバーガー(鶏卵・牛乳・小麦不使用)
レシピのポイント
■ハンバーガーを手作りする楽しさを味わえる!
■ライスバンズは表面が乾燥するまで焼くと、香ばしくておいしい。
材料(大人2人分+子ども2人分)
- 温かいごはん 茶碗大盛り3杯(550~600g)
- 牛肉(薄切り) 200g
- リーフレタス 2枚
- トマト 1/2個
- 片栗粉 小さじ2
- 白いりごま 小さじ1
- ごま油 小さじ2
- 卵不使用マヨネーズタイプドレッシング お好みで ※
※卵不使用マヨネーズタイプドレッシング:卵の代わりに植物性素材などを使ってつくられた、マヨネーズ風味の調味料。複数の商品が市販されています。
<焼肉ソース>
- ケチャップ 大さじ2~3
- 片栗粉 小さじ1/2
- 水 大さじ1/2
つくり方
下準備
・レタスは1枚を4~6等分にちぎり、ペーパーで水気を拭く。子ども用は少し小さめにちぎる。
・トマトは8mmくらいの厚さにスライスする。
・牛肉は4~5cm幅に切る。
・焼肉ソースの材料を混ぜ合わせておく。
1.ボウルにごはんと片栗粉、白いりごまを入れ、ごはんを軽くつぶすように混ぜ、6等分にする。
2.それぞれラップに包んで丸く握ったら、1cmの厚さにつぶし、ライスバンズをつくる(子ども用は半量とし、1個分の材料で2セットつくる)。
3.フライパンにごま油(材料の半量/小さじ1)を入れて中火にかけ、ライスバンズの両面を2~3分焼く。表面が乾くまで焼いたら、クッキングシートの上に取り出す。
焼き色がしっかりつかなくても、表面がパリッとしてきたら取り出してOK
4.フライパンに残りのごま油(小さじ1)を熱し、牛肉を入れて色が変わるまで中火で2~3分炒める。そこに焼肉ソースの材料を加えて煮絡め、粗熱をとる。
5.ライスバンズ1枚の上にレタス、トマトの順に乗せ、好みでマヨネーズタイプドレッシングを絞り、牛肉をのせる。もう1枚のライスバーガーをかぶせて完成。
マヨネーズタイプドレッシングはお好みで
ラップで一度全体を包んでしっかり密着させると、食べやすくなる
レシピ②:サクサク衣がおいしいコロッケ(鶏卵・牛乳不使用)
レシピのポイント
■コロッケは卵なしでもつくれる! 洗い物や工程が減ってもおいしさはそのまま。
■バッター液(粘度のある衣液)をしっかりつけることで、仕上がりがきれいに。
■油がたっぷり入る深い鍋で揚げると、形が崩れずサクサクの食感になるのでおすすめ。
材料(大人2人分+子ども2人分)
- じゃがいも 3個(約500〜600g)
- 玉ねぎ 1/4個
- 豚ひき肉 100g
- 薄力粉 適量
- 揚げ油 適量
- パン粉(乳・卵不使用のもの) 適量
<バッター液>
- 薄力粉 大さじ4
- 水 大さじ3・1/3〜4
つくり方
下準備
・玉ねぎはみじん切りにする。
・バッター液の材料を混ぜ合わせておく。
1.じゃがいもは皮をむいて4〜6等分に切り、さっと水にさらしてから12〜15分、竹串がすっと通るまで茹でる。ざるに上げて水気を切り、熱いうちに手早くつぶす。
2.フライパンに玉ねぎ、豚ひき肉を入れて中火にかけ、肉の色が変わり、玉ねぎがしっとりとするまで炒める。余分な油はペーパーで拭く。
フッ素樹脂加工のフライパンなら油なしでOK。それ以外の場合はオリーブオイル小さじ1(分量外)を熱してから炒めて
3.1のじゃがいもが温かいうちに2を加えて混ぜ、6等分にして小判型に成形する。
今回は子ども用を半分のサイズで作成
4.薄力粉をはたき、バッター液、パン粉の順にまぶす。
5.170度に熱した、たっぷりの油で揚げる。表面が固まってきたらそっと裏返し、ときどき上下を返しながら、揚げ色がつくまでこんがり揚げ、油を切って器に盛る。
レシピ③:かぼちゃとにんじんのレンチン蒸しパン(鶏卵・牛乳不使用)
レシピのポイント
■生地を混ぜたりカップに入れたり。子どもと一緒に調理をしても楽しい!
■卵なしの蒸しパンは色づかないので、野菜でおいしそうな発色に。
■オーブンで焼けばマフィン風に。同じレシピでもバリエーションが出る!
■冷凍かぼちゃ(2切れ・加熱し皮を取って使用)でもOK。いつでも手軽につくれて便利。
材料(マフィンカップ5個分)
- かぼちゃ 50g(種と皮を除いて正味)
- にんじん 20g
- サラダ油(または太白ごま油) 大さじ1
- 砂糖 40g
- レモン汁 大さじ1/2
- 豆乳 大さじ2
- 水 大さじ2
<A>
- 薄力粉 80g
- ベーキングパウダー 小さじ1/2
- 重曹(あれば) 小さじ1/4
つくり方
下準備
・かぼちゃは皮をむいて種を取り除く。
・にんじんは皮をむいてすりおろす。
1.かぼちゃは一口大に切って、大さじ1(分量外)の水と一緒に耐熱容器に入れる。ラップをふんわりかけ、電子レンジ(600W)で1分20秒加熱する。竹串がすっと通るようになるまで加熱し、水気をきってつぶす。
かぼちゃがかたい場合は、10秒ずつ追加で加熱して
2.ボウルに、1とにんじんを入れて、サラダ油(または太白ごま油)、砂糖、レモン汁、豆乳、水の順番に材料を加え、ゴムベラでそのつど混ぜる。
3.ふるったA(薄力粉、ベーキングパウダー、重曹)を加え、生地が均一になるまで泡立て器で手早くざっと混ぜる。
練らないようにさっくりと混ぜるのがポイント
4.耐熱のマフィンカップに、生地を8分目まで入れる。
5.カップにふんわりとラップをし、ひとつずつ電子レンジ(600W)で約40~50秒加熱する。竹串を刺してみて、生地がくっつくようならさらに10秒ずつ加熱する。ラップをはずして粗熱をとり、完成。
楽しくてにぎやかなごはんをみんなで味わおう
今回阪下さんに考えていただいたメニューは、アレルギーがある人もない人も、楽しく食べられるものばかり。お誕生日パーティーや、季節のイベントでつくってみてもいいですよね。アレルギーがあると、「食べられない……」ということがネックになりがちですが、食べることを前向きにとらえ、料理や食事の時間を楽しめるように視点を変えてみることも、大切なポイントです。大変なこともたくさんありますが、家族みんなが笑顔で食べられることを目指したいですね。