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寝てるのに疲れがとれない人がやりがちなNG行動とは?

人間の生活に欠かせない「睡眠」。じつは、秋バテのカギとなる「自律神経」と睡眠はとっても深い関係にあるのです。睡眠のメカニズムといった基礎知識を紹介するとともに、「必要な睡眠時間は8時間?」「寝る前にお酒を飲むとよく眠れる?」といった、睡眠にまつわる10のウワサについて、専門家にうかがいました。秋バテの予防・改善のためにも正しい知識を得て、よりよい睡眠を手に入れましょう!

疲労回復のための「良質な睡眠」とは?

睡眠は疲労回復のために欠かせません。では、効果的に疲労回復するための「良質な睡眠」とは一体どのようなものを指すのでしょうか。

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があり、これらは「睡眠の種類」が異なります。レム睡眠では主に記憶や感情の処理を行っており「メンタル面の疲労回復」を担っているといえます。一方、成長ホルモンの分泌によって細胞の修復などを行い「身体の疲労回復」をするのがノンレム睡眠の担う役割です。つまりは、「良質な睡眠」は、これらをバランスよく含んだものであるといえます。

ノンレム睡眠は入眠直後に出てくる一方で、レム睡眠は明け方になるにつれて多く出てくるため、これらがバランスよく含まれることが重要。そのためには、睡眠時間だけでなく「睡眠の時間帯」も非常に大事で、良質な睡眠をとるには22~24時ごろに就寝し、朝の6~7時ごろに起床するのが望ましいといえます。

睡眠と自律神経は、深い関係にある

人は、サーカディアンリズム(体内時計)といわれる24時間周期のリズムを持っています。その体内時計によって、睡眠や自律神経もコントロールされているため、睡眠のリズムが崩れれば自律神経のリズムが、反対に自律神経のリズムが崩れれば睡眠のリズムが崩れるなど、相互に影響してしまうのです。

眠りにまつわるこれってホント?

では、良質な睡眠や自律神経の関係について学んだところで、私たちの生活のなかに「睡眠」を落とし込んでみましょう。突然ですが、みなさんは睡眠について正しい知識を持っていますか? よく巷で耳にする、眠りにまつわる10の話について、ウソかホントか考えてみましょう。

睡眠のウソ・ホント、どっちでしょう?

  1. 睡眠は90分単位でとると目覚めがよい
  2. 人間に必要な睡眠時間は8時間
  3. 寝る直前にお風呂に入ると寝つきがよくなる
  4. 気温が低い季節は体を冷やさないように靴下を履いて寝るとよい
  5. 睡眠前に瞑想をすることで、睡眠の質が上がる
  6. 年齢を重ねると早い時間に目が覚めるようになる
  7. 睡眠不足が続くと認知症の発症リスクが高まる
  8. 眠れないときでも、布団のなかで静かに目をつぶっていれば睡眠時に近しい効果がある
  9. 寝る前にお酒を飲むとよく眠れる
  10. 朝型・夜型は努力で変えられる

1睡眠は90分単位でとると目覚めがよい ⇒ ウソ!

スッキリと起きるためにはレム睡眠の途中で起きる必要があります。一方で、レム睡眠とノンレム睡眠の1セットを指す「睡眠周期」は人によって異なるため(60~120分程度といわれています)、90分単位の睡眠で誰もがスッキリと起きられるわけではありません。

2人間に必要な睡眠時間は8時間 ⇒ ウソ!

睡眠周期と同様、必要な睡眠時間は年齢や遺伝的要因など、人によってさまざま。米国の国立睡眠財団が推奨している睡眠時間は、18歳以上で7~9時間と幅があります。なお、認知機能(理解力・判断力など)を維持できる睡眠時間を調査した研究では、2週間、毎日6時間の睡眠を続けた人は、1日徹夜をしたときや、ほろ酔い状態のときと同程度の認知機能になるという結果が出ています。

3寝る直前にお風呂に入ると寝つきがよくなる ⇒ ウソ!

人間は体温が下がってくると睡眠に入りやすくなります。そのため、寝つきをよくするために望ましいのは、「就寝直前」ではなく、「就寝の1~2時間くらい前」。さらに約40℃の湯船に浸かって一度体温を上昇させておくと、よりよい眠りへと導くことができます。

4気温が低い季節は体を冷やさないように靴下を履いて寝るとよい ⇒ ウソ!

冷え性の方などが寝る直前まで靴下を履いておくことは、体を温める効果があるのでよいのですが、実際に寝るタイミングでは靴下を脱ぐようにしましょう。人間の体は深部体温を下げる際、手足など末梢の血管を拡張して放熱します。しかし、靴下を履いたままにしてしまうと、うまく放熱ができず(深部体温を下げられず)入眠を阻害してしまうのです。

5睡眠前にマインドフルネス瞑想をすることで、睡眠の質が上がる ⇒ ホント!

既存の不眠など、睡眠障害の治療と比較すると劣るものの、睡眠前の瞑想は中等度の効果があるという報告があります。しかし、その報告では、睡眠時の脳波などで睡眠の質を判定したわけではなく、あくまでも「主観での睡眠の質」として判定されたもの。ただしマインドフルネス瞑想によって副交感神経優位(リラックス状態)となる可能性もあり悪影響を及ぼす可能性は低いため、まずは気軽に試してみるのがよいかもしれません。

6年齢を重ねると早い時間に目が覚めるようになる ⇒ ホント!

生物学的に、加齢とともに生活リズムが前進する(朝型になる)という報告があります。反対に生活リズム後退(夜型)のピークは22、23歳程度といわれています。

7睡眠不足が続くと認知症の発症リスクが高まる ⇒ ホント!

認知症のうち半分以上を占めるアルツハイマー型認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積されることで発症すると考えられています。このアミロイドβは通常、睡眠時に脳から除去されていきますが、睡眠時間が短くなると十分にアミロイドβが除去できず、認知症のリスクが高まるのです。アミロイドβは認知症発症の20年ほど前から蓄積されていくという報告もあるため、認知症予防のためには高齢になってからだけではなく、若いころからきちんと睡眠をとることが重要です。

8眠れないときでも、布団のなかで静かに目をつぶっていれば睡眠時に近しい効果がある ⇒ ウソ!

「体の休息」という面を考えると多少は休まるかもしれませんが、睡眠時に近しい効果を得ることはなかなか難しいといえそうです。とはいえ、「寝なくちゃ」と考えすぎてしまうと交感神経を刺激してしまう可能性もあります。寝られないときには、「体の休息」と割り切って、布団のなかで目をつぶるのもひとつの方法です。

9寝る前にお酒を飲むとよく眠れる ⇒ ウソ!

入眠時に限って見れば、アルコールには寝つきをよくする効果があります。しかし、トータルで見るとアルコールには利尿作用があるため睡眠の途中でお手洗いに行きたくなって目覚めたり、アルコールが代謝される際に生じる覚醒物質によって中途覚醒が増えたり、睡眠全体の質は下がってしまいます。

10朝型・夜型は努力で変えられる ⇒ うーん!

朝型・夜型は遺伝的な要因が大きいといわれている一方で、外部環境の影響も受けるため、早起き生活を続けているとある程度は体も順応します。しかし、仮に夜型の遺伝要因が大きい方が朝型生活を長期的に続けた場合には、体調を崩してしまうことも……。ちなみに、1日に動かせる生活リズムは1時間といわれているため、生活リズムを変えたい場合には1時間ずつ起床時間と就寝時間をずらしていくのが理想的です。

寒暖差のある時期に気をつけたいこと

前述のとおり、人間は体温が下がると眠りに入りやすくなります。そのため、朝晩の気温が低くなる初秋は、気温の高い夏よりも入眠しやすい環境です。しかし、睡眠時の服装や寝具には要注意! 暑い環境と寒い環境では、より睡眠を阻害するのは「寒い環境」であるといわれています。

そのため、夏と同じような服装で寝てしまうと、寝ている途中で寒さを感じて目覚めてしまう可能性も。よりよい睡眠をとるためにも、気温に合わせた適切な服装・寝具をチョイスしましょう。人それぞれ睡眠時に適切な室温は異なりますが、一般的には21℃ほどが快適に眠れる室温とされています。

 
睡眠に関する新たな発見はありましたか? 正しい知識に基づいてより良質な睡眠をとることで、秋バテ知らずの生活を目指しましょう!

教えてくれたのは・・・
守田 優子先生

2013年、早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程修了。東京医科大学睡眠学講座を経て、16年4月から東京理科大学理工学部教養助教、21年度からは同大学教養教育研究院野田キャンパス教養部嘱託特別講師。専門分野はスポーツ精神生理学、睡眠学。特に運動学習における睡眠の効果、アスリートと睡眠、不眠症の運動療法について研究している。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:芦野公平
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