秋の夜長を楽しみたいけど、最近なんだか体がだるい……。そんな秋バテ気味のときは、気分転換になる映画や音楽、本などを取り入れてみてはいかがですか? 今回は、秋バテのしんどい心と体に寄り添う本・映画・音楽をシチュエーションごとに厳選。「寝る前に気持ちを癒やす本」「食欲をかきたてる映画」「運動中に気分を高める音楽」を、各テーマに相応しいセレクターがご紹介します!
寝る前に気持ちを癒やす本 3選
選書してくれるのは、泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」を手がけたクリエイティブディレクターの力丸聡さん。
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- 力丸 聡さん
- known unknown クリエイティブディレクター
泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」の立ち上げをはじめ、同施設のディレクターとして開発から運営までを指揮。現在は、クリエイティブブティック「known unknown」所属。主な仕事に、JR東日本「東京感動線」、オレンジページ「K,D,C,,,」「NEUTRALWORKS. 」など、多岐にわたるクリエイティブを行う。
1冊目:『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』
本書は、あのビル・ゲイツ先輩も二度褒めたという「マインドフルネス」がテーマの一冊です。
「最近考えることが多くて、頭のなかもざわざわ騒がしくて、なかなか眠れない……。瞑想がいいって聞いたことはあるけど、とりあえず目を瞑るんでしょう? でも、そこからなにをしたらいいのかわかんない(笑)」。 そんなかつてのぼくみたいに「興味はあるけど、どうすればいいのかわからない状態」から始められる瞑想の入門本。「頭を『からっぽ』にするレッスン」というタイトルからして、やってみたくなりますよね。
本書の導入となる1章、2章では「マインドフルとはなにか」など、筆者のエピソードを交えながら話が続いていくのですが、ぼくは飛ばしていきなり第3章「10分間瞑想を始めてみましょう」から読みました(笑)。固く考えすぎに、一度読んで……いや、一度「やってみる」ことをおすすめします。
2冊目:『このあと どうしちゃおう』
「こないだ おじいちゃんが しんじゃった。
おじいちゃんのへやを みんなで そうじしていたら
ベッドのしたから ノートが でてきた。」
そのノートに書かれていたのは、「天国に行くときの格好」「こんな神様がいてほしい」なんて希望や、自分が死んだあとに「みんなにつくってほしい記念品」などなど。なんだか、おじいちゃんは死ぬのが楽しみだったのかとさえ思えるような「このあとどうしちゃおう」がたくさん書かれていたのです。
ああなりたい。こうなりたい。こうなったらどうしよう。ああなったらどうしよう。
当たり前ですがいつも頭に浮かぶことは、自分が生きているあいだに起こり得る出来事について。でもこの本では、「死後」を考えるところから「いま」について考える。考え方が逆なんです。眠る前に読むと、いつもとは違った視点で自分の思考や生き方を見つめ直すきっかけになるかも。大人も楽しめる(考えさせられる)素敵な絵本です。
3冊目:『グレ-プフル-ツ・ジュ-ス』
人は歳をとるにつれて、現実的なことばかり考えるようになりますよね。でも、小さい頃って、もっと変なことをたくさん考えていたはず。それが、自分の想像力を豊かにしてくれていたのかもしれないなあと、いまになって思います。そんな昔の自分に戻って頭のなかを自由にしてくれる、思考のガイドみたいな本です。(ぼくにとっては、です)
試しに、本書に書いてある以下2つの指示を、それぞれ眠る前に目を瞑って頭のなかで遂行してみてください。
ほら、「想像力」が豊かになった気がしませんか?
そういえば、ジョン・レノンの楽曲『Imagine』の元ネタになった本らしいです。
食欲をかきたてる映画3選
セレクトしてくれるのは、映画研究家・評論家で食に関する本も出版されている三浦哲哉さん。
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- 三浦 哲哉さん
- 映画研究家・評論家
1976年生まれ、福島県出身。青山学院大学文学部教授。食についての執筆もする。著書に『LAフード・ダイアリー』(講談社)、『食べたくなる本』(みすず書房)、『『ハッピーアワー』論』(羽鳥書店)など。魚好きが嵩じて海辺の街に引っ越すが、近所のすばらしい魚屋さんがご高齢のため店をたたみ、毎日開かれていた定置網漁の朝市も採算が取れないという理由で終了。梯子を外された思い。
1本目:『バベットの晩餐会』
どうにも元気がでないとき、食べる歓び、ひいては生きる歓びとはなんだったかを再確認させてくれる映画があるだろうか。ある。その筆頭はなんといってもこれだろう。
宗教的な清貧と禁欲の教えに邁進するあまり、人々のあいだにじりじりと息苦しさが募る、そんな北欧の寒村。一人のフランス人家政婦のバベットが、村人たちに向けて晩餐会を開く。目を丸くして驚く村人たちの前に提供されるのは、フランスから取り寄せたウズラのフォワグラ詰めパイ包み焼きなど、洗練を極めた料理の数々。それは、かつて逃げ延びてきた自分を匿ってくれた人々に対する一生に一度の恩返しであった。
美食の力で冷え切った心が温まる、というのは繰り返し描かれてきた定番だが、本作のこの瞬間を超えるほど、おいしそう&おかしい&美しい&感動的な場面は存在しないのではないか。未見の方は、この秋ぜひ。
2本目:『恋人たちの食卓』
冒頭でいきなり藤竜也似のダンディーな初老の男性が、自宅の台所で超絶ハイレベルな技量を惜しげもなく注ぎ込んで、三人の娘たちのために食事の準備をしている。このシーンが、問答無用の食欲喚起力を振るう。的確かつダイナミックな動きは、さながら精緻に振りつけされた活劇のようだ。
しかし、娘たちはなぜかこの豪華な食事をつまらなそうに食べる。あわただしい現代生活になんとか慣れようと奮闘する三姉妹は、父がこだわる古きよき団らんの時間にはうんざりしていたのだ。という導入のあと、それぞれがそれぞれの問題と向き合い、結局はおいしさの力がすべてをよき方向に導き、「ともに食べること」の価値が再発見される。木漏れ日に照らされた台北の街の匂い立つような雰囲気を捉えるカメラにもぐっとくる。誰かとおいしいものを囲みたくなること請け合いの美しい佳作。
3本目:『お茶漬の味』
「お茶漬けをすするなんて下品で許せない」という上流階級出身の妻(木暮実千代)と、率直で気さくなものこそを好む夫(佐分利信)が、やがて一緒にお茶漬けをすすって仲直りする、という物語がなんとも最高。最終盤に訪れるお茶漬けの場面を見ると元気が出る。
飛行機事故かと思われた夫がひょっこり帰ってきた早朝、ふたりは向き合って笑顔でお茶漬けをすする。あきらかに、久しぶりに再開された夫婦の営みがほのめかされているけれど、洗練された小津のタッチと、木暮実千代のかっこよすぎる女っぷりゆえ、下品さは皆無。ただただ、素朴な食のおいしさがきっかけになって、私たちのなかのこわばりがあっというまにほぐれてしまうことがあるのだなあ、と納得し、賛嘆する。
運動中に気分を高める音楽3選
選曲してくれるのは、大の音楽好きでピラティスインストラクターの岩崎志保さん。
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- 岩崎 志保さん
- ピラティスインストラクター
1993年生まれ、静岡県出身。二度のフルマラソン完走経験あり。adidasのランニングコミュニティーのキャプテンを5年間務める。 3歳から15年間モダンバレエを習うなど、幼少期から身体を動かすことが好きで adidas Functional TrainingやBASI Mat Pilates Instructor資格を取得。その知識を生かし、ピラティスやファンクショナルトレーニング、ヨガ、ランニングなど複数の指導経歴を持つ。現在は、YES TOKYO中目黒、SIXPAD HOME GYM、FitnessMirrorでレギュラーレッスンを持つ。また、音楽鑑賞がライフワークで、コロナ禍になる以前のライブやフェスへの参加回数は年間70本弱だったという大の音楽好き。
Instagram:@shihoiwazaki
1曲目:Lianne La Havas『Unstoppable FKJ Remix』
「ピラティス」にぴったりなのが、この曲です。実際のレッスンでも、毎回必ず使用しているので、個人的にこの曲がかかるとレッスンスイッチが入ります。背骨や骨盤のインナーマッスルを使って繊細にエクササイズを行うピラティスは、「動く瞑想」ともいわれています。
だからこそ、音楽の選曲はすごく大事。この曲は、「エクササイズの邪魔はしないけど、気分が上がる」という絶妙なラインにマッチしているので最適です。リミックスを手がけているフランスのミュージシャン・FKJは、この曲以外もエクササイズにおすすめ。ピラティスのレッスン中は、FKJを流す率がめちゃくちゃ高いです。
2曲目:UMI『Instrospection』
この曲は、「ひと息つきたいときのストレッチ」に聴いてみてほしいです。起床時・日中の仕事の合間・就寝前など、ちょっと休憩したいときにこの曲を聴きながらストレッチをすると、心も体もリラックスできます。
「ストレス社会」といわれているなかで、働くことや生活することに疲れている人も多いはず。この曲を聴きながら、簡単なストレッチで自律神経の乱れを整える時間を1分でもつくってあげると、心身ともに気分が軽くなるかも。
3曲目:UVERworld『ALL ALONE(KING'S PARADE 2017 Saitama Super Arena)』
この楽曲は「メンタルブレイクしているとき」にぴったり。そもそも運動をしたくない、なにもかも手につかない……、私もそんなスランプに陥るときがたまにあります。そういうときには、まず自分を否定せずに現状を認めたあと、動き出す一歩を踏み出すことが大切。
勇気を出して前進したいときにこの曲を聴くと、「お前はお前のやりたいことをやれ」という歌詞が後押ししてくれます。私のなかでは、精神安定剤かつ活力剤のような曲。「聴かず嫌い」をしている人に、一度聴いてみてほしいです!