朝、あたたかい布団からなかなか出られない……。気温がぐっと下がり、そんな日が増えてきました。寒い時期になると、手足など体の冷えに悩まされる人も多いでしょう。万病の元ともいわれる「冷え」。あまり自覚症状がない人でも、じつは慢性的に体が冷えていて、それによりさまざまな不調を引き起こしている場合があります。
この記事では「冷えをやわらげてくれるツボ」をご紹介。ツボ押しの方法や、市販のお灸を使って手軽にできるセルフケアもあわせて解説します。
東洋医学では、「冷え」のタイプは主に3つ
人の体は日々、血行促進や発汗などによって体温を調節しています。そのことを東洋医学では「寒熱のバランスをとる」といいます。しかし、体を冷やす飲食物の摂りすぎや、空調をはじめとする外的要因などによって、過度に体が冷えてしまうことがあります。
東洋医学では、冷えは大きく3つのタイプに分けることができます。
まずは「瘀血(おけつ)型」です。瘀血型の冷え性は、血流の悪化によって引き起こされていて、手足の末端が冷えやすいという特徴があります。生理痛など月経関連の不調が現れやすい人もいます。
次に「むくみ型」。こちらは胃腸機能の低下による水分の滞りが起こりやすいタイプです。足のむくみのほか、全体的に筋肉に弾力性がなく、ぷよぷよとしていて水分代謝が悪い傾向が見られます。
さらに「ストレス型」の冷えもあり、こちらは過剰なストレスによって自律神経が乱れてしまうことが原因です。手足の多汗などで体の熱が奪われてしまい、四肢末端が冷えたり、体温調節がうまくいかず全身に寒さを感じたりすることがあります。
体の不調につながる冷えに対して、どんなツボが効果を発揮するのでしょうか。具体的なツボの場所を説明する前に、まずはツボ刺激の方法を紹介します。
ツボ刺激のやり方は?
ツボ押しは、「軽く押して、離す」という3~5秒程度の刺激を繰り返します。ポイントは指の腹を用いること。爪を立てると皮膚を傷つけてしまうので、注意しましょう。
ツボ押しのよい所は「いつでも、どこでも行えること」です。ただ、手軽だからといってやりすぎは禁物! 押す力が強すぎたり、ツボ押しの回数が多すぎたりすると、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。気持ちがよい程度の力加減で、回数は5回程度にとどめるようにしてください。
冷えがやわらぐツボ5選
冷えの症状を感じたら押したい5つのツボを紹介します。冷えを自覚しやすいのは腹部や脚ですが、ツボもやはりそのあたりが重要になってきます。
ツボの位置はあくまでも目安です。ツボの周辺で「押すと痛いけれど、気持ちよい」ポイントを見つけるようにしましょう。
ツボ①:すべての冷えに使える「三陰交」
冷えのタイプにかかわらずおすすめなのが、「三陰交(さんいんこう)」です。婦人科系の不調を緩和してくれることでも有名なツボで、冷えに対してもよい影響を与えてくれます。
ツボの位置は、内くるぶしの一番高いところから指4本分上の、すねと骨のきわにあります。その周辺で反応がないか探ってみてください。
ツボ②:ストレスタイプの冷えに「太衝」
「太衝(たいしょう)」は足の甲にあるツボです。足の親指と人差し指の骨が交わるところにある、くぼみに位置しています。イライラを伴うようなストレス型の冷えを感じたら、太衝を押してみましょう。
ツボ③:お腹の冷えや下痢には「関元」
「関元(かんげん)」は体の中心線上にあるツボで、へそから指4本分下がったところに位置しています。お腹が冷えやすい人や下痢をしやすい人、冷えと同時に足腰にだるさを感じる人には、ぜひ試してほしいツボです。
骨盤内の冷えも緩和してくれるので、ツボの周辺をカイロで温めるのもよいでしょう。
ツボ④:冷えやすい「身柱」を温める
頭を前に倒してみると、首の付け根に骨のでっぱりがあるのがわかります。そこから背骨の突起3個分下にあるのが、「身柱(しんちゅう)」のツボです。
風邪をひくときは、このあたりから冷えが入ってくるともいわれています。自分では押しにくい場所なので、パートナーなどに協力してもらうとよいでしょう。
ツボ⑤:「腎兪」は全身を温める
「腎兪(じんゆ)」は全身を温めてくれるツボです。おへその高さで両手を腰に添えたときに親指が当たるところ、背骨から外側に2〜3センチのあたりにあるので、押すと気持ちがよいポイントを探してみましょう。
冷えに対するセルフケア
ツボ押し以外の冷えに対するセルフケアとしては、首・手首・足首をウォーマーで温めたり、ペットボトルを用いて温活をしたりするのがおすすめ。ホット専用のペットボトルに、温かいお湯を入れて、全身にコロコロ転がすと冷えがやわらぎます。
また、今回紹介したツボにドライヤーの温風を当てるのも、冷え防止につながります。やけどをしないようドライヤーはツボから離し、心地よい程度の温風でぜひ試してみてください。
意外と知らない「台座灸」の使い方
ツボ押しに加えて、冷えには「お灸」が強い味方になります。お灸は「熱い」というイメージが強いですが、なかには好みの熱さを選べ、手軽に使える台座灸というものがあります。ドラッグストアで購入できるので、興味がある方は試してみるのもよいでしょう。
台座灸は、台座の上にモグサ(ヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したもの)が乗っているお灸です。シール状の製品が多く、手軽に利用できます。心地よい程度の熱さのものや、煙が出ないもの、火を使わないものなど、たくさんの種類があるので、ぜひお気に入りを探してみてください。お灸は基本的には毎日行っても大丈夫です。
台座灸を使用する際には、事前に「ライター類」「水をいれた小皿」「濡れタオル」を用意しましょう。
使い方は簡単です。
1.シールを剥がして、台座灸を中指や人差し指の腹に貼る
2.ライターなどで点火する
3.あいている方の手で台座部分を持ち、ツボの上に置く
※身柱や腎兪など自分では手が届かないツボは、ほかの人に手伝ってもらいましょう
モグサ全体に火がまわって煙が減ってきた頃(点火後大体30秒〜1分)、徐々に温かさを感じるようになります。
火が完全に消えるまで、大体5分ほどかかります。熱さを我慢できるようなら、台座灸の火が消えて冷めた頃に取り外してください。
熱くて我慢できないときは、すぐに使用を中止しましょう。台座は熱くなっていますので、濡れタオルで指を冷やしてから取り外してください。肌に「アチチ」「ピリピリ」という感覚があるときは、そのまま我慢をすると水ぶくれになりますので、注意しましょう。
※各商品の説明や注意書きをよく読み、内容を必ず守って使用してください。
寒くなると冷えを感じる人が多くなりますが、体の内部が冷えている場合は、服装などの防寒対策だけでは改善が難しいこともあります。この時期に冷えを感じやすい場合、自覚症状がないだけで、じつは一年中体が冷えているケースも少なくありません。
紹介したツボ押しや食生活の見直しなどのセルフケアで、日頃から「冷え対策」を意識して行っていきましょう。
- 教えてくれたのは・・・
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- 髙田 久実子先生
- こどもと女性のためのめぐり鍼灸院 院長
鍼灸師、全日本鍼灸学会認定鍼灸師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。25年以上東京女子医科大学東洋医学研究所鍼灸臨床施設に勤務(現在は非常勤)、2019年に千葉県松戸市で「こどもと女性のためのめぐり鍼灸院」開院。現代医学と東洋医学の観点から患者さんに適した施術を行う。痛みやコリだけでなく女性のライフステージに合わせた施術や小児はり、顔面神経麻痺の鍼治療にも力をいれている。