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「子どものこころ外来」ってどんなところ?

心に不安があるとき、大人であればカウンセリングを受けたり、精神科や心療内科を受診したりといった方法をとることができます。しかし、子どもの場合、どこに相談してよいかわからないこともあるでしょう。そうしたとき、頼れる場所のひとつに「子どものこころ外来」があります。

「子どものこころ外来」とは、どんな場所なのでしょうか。その特徴や、受診するときのポイントを、大森病院メンタルヘルスセンターでこどもの心外来の担当医をつとめる、舩渡川智之先生に詳しく聞いてみました。

教えてくれるのは…
舩渡川 智之先生
東邦大学医療センター 大森病院メンタルヘルスセンター 精神神経科 講師

児童精神科医・精神科医。2004年に山形大学医学部医学科を卒業。初期研修医時代の小児科研修での経験が児童精神科医を志すきっかけに。2年間の初期研修後、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室に入局。同医局の関連病院等を経て、東邦大学医学部精神神経医学講座の助教に就任。以来、一般精神科臨床の傍ら、児童精神科医としての臨床、精神病の予防や回復のためのデイケアの診療に携わる。

「子どものこころ外来」はどんなところ?

子どもが不安やストレスを抱え、日常生活に影響が出ているときや、子どもの発達に心配があったときに相談できる場所のひとつが、「子どものこころ外来」です。「児童思春期外来」や「児童精神科」という名称を掲げている医療機関もあります。

子どものこころ外来は、
●精神疾患
●神経発達症(発達障害)
●心身症
●不登校
●虐待
●自傷行為
●摂食障害
●スマートフォンやゲームへの依存症
など、子どもの心にまつわる問題に対応しています。

診療の対象年齢は医療機関によって異なりますが、一般的には6歳くらいから18歳まで。小学校高学年や中学生の相談が多い傾向にあります。

子どものこころ外来を担当する医師は、「子どものこころ専門医」に認定された医師であることが多いです。子どものこころ専門医は、子どもの体と心に詳しい医師が、さらに研修を受け、試験に合格してはじめて取得できる資格。そのため、資格を持っている=より専門性の高い医師であるといえます。

一般の心療内科・精神科との違い

主に大人が診療対象である一般の心療内科・精神科と、子どものこころ外来には、どのような違いがあるのでしょうか。子どものこころ外来の特徴をご紹介します。

教育機関、児童相談所などとの連携

子どもの困りごとを改善するには、家庭だけでなく学校など教育機関との連携も重要です。各種教育機関との連携を図ることができるのは、子どものこころ外来の大きな特徴といえます。

また、子どものこころ専門医は、医療機関で診療を行う以外に、児童相談所や療育機関、総合教育センター、学校保健室、特別支援学級などで嘱託医や学校医として関わることもあります。

医療機関と教育機関、どちらの事情も知っているため、一般の心療内科や精神科よりも連携が図りやすい傾向にあります。連携することで、学校(教育機関)側による精神疾患への理解が深まることも。その結果、支援が必要な子どもを適切なタイミングでサポートできるようになり、悩みが深刻化するケースが減少した例もあります。

神経発達症(発達障害)の診断

「発達障害」と呼ばれる神経発達症の診断は、子どものこころ外来の医師が行う重要な仕事のひとつです。大人がかかる一般の心療内科・精神科でも神経発達症の診断をしますが、子どものこころ外来のほうが、診断数が圧倒的に多いといわれています。

子どもの神経発達症は、発達段階の個人差や子ども特有の落ち着きのなさなどと見分けて診断することが難しいとされています。そのため、子どものこころ専門医を頼る人が多いのかもしれません。

家庭環境など、周囲との関わりも含めて診察する

子どもが不安やストレスを抱えるのは、親、きょうだいなど身近な人との関係が影響しているケースも少なくありません。悲しいことですが、こども家庭庁が発表した、令和4年度の児童虐待相談対応件数は約22万件で、前年度より1万2,000件近く増え、過去最多となっています。

こうした状況にある子どもたちが安全に暮らせるよう、医療の観点から働きかけるのも、子どものこころ専門医の役割といえます。そのため、一般の心療内科や精神科の診察よりも、子どもを取り巻く環境について話を聞くことに時間を多く使う傾向にあります。

子どものこころ外来を受診するときのポイント

近隣に複数の子どものこころ外来がある場合、どんな点を意識して医療機関を選べばよいのでしょう。また、受診するときにはどんな準備が必要でしょうか。

医療機関を選ぶポイント

まずポイントとなるのが、子どもの診察に慣れた医師であるかという点です。子どもは自分の不安やストレスを言語化することが未熟で、大人より診察が難しい傾向にあります。そのため、子どもの診察に慣れているかは、受診先を選ぶ際の重要なポイントとなります。

最もわかりやすいのは、「子どものこころ専門医」の資格の有無です。子どものこころ専門医は、2024年度までは2025年3月末までに日本小児心身医学会認定医、日本小児精神神経学会認定医、日本児童青年精神医学会認定医、日本思春期青年期精神医学会推薦医のいずれかを取得見込みの医師が暫定試験を合格して取得することが可能です。

2025年度以降は、

  1. 小児科専門医あるいは精神科専門医を所持している
  2. 子どものこころ専門医研修施設群における3年以上、36単位以上の研修を修了している
  3. 筆頭者として、子どものこころの診療に関する学会発表2回以上、あるいは論文発表1編以上の研究業績がある

上記1~3すべてを満たしたうえ、子どものこころ専門医試験(本試験)に合格することで取得可能な資格です。この資格を持っていれば、子どもの診察にも慣れた医師だというひとつの目安になります。

子どものこころ専門医機構」 のホームページに専門医資格を持った医師の名前が載っているので、その医師が在籍している病院やクリニックを検索して、受診してみるとよいでしょう。

ただし、専門医資格を持っていなくても子どもの診察に長けた医師もいますし、医師との相性も重要です。しばらく通院してもご本人が医師の診察に抵抗を感じるようであれば、別の医療機関への受診を考えた方が良い場合もあります。

受診に向けた事前準備

受診してみたい医療機関をピックアップしたら、まずは電話やメールなどで問い合わせてみましょう。受診を考えていることに加え、
●子どもの年齢
●いま抱えている困りごとの概要
などを伝えると、医療機関のほうから予約の日程や事前の問診票などの案内があります。

受診が決まったら、受診時に必要なものも聞いておくと安心です。受診時の服装や、診察の際には親子一緒に入室するのかなど、心配なことがあればなんでも確認しておきましょう。もちろん、思い出したときにあとから問い合わせても問題ありません。

心に不安やストレスを感じたままでは、子どもだけでなく、周囲の大人もつらくなってしまうことがあります。

一時的に不安を感じても、すぐ元に戻るなら問題はないでしょう。ただし、不安な状態が続き、日常生活に影響が出ている場合は、医療の出番です。家庭内だけで抱え込まず、専門家を頼ったほうが、大人も子どももラクになるはず。

困ったときの相談先のひとつとして、子どものこころ外来があることをぜひ覚えておいてください。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:Okuta
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