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虫歯や口臭だけじゃない!よくある口腔トラブルって?

普段食事をするときや人と話すとき、歯や舌などをはじめとする口腔の部位を意識することはあまりないかもしれません。しかし、虫歯や口内炎によって痛みが生じると途端に不便を感じたり、口臭が気になると人と楽しく会話ができなくなったりしてしまうなど、口腔トラブルは意外と身近なものです。本記事では、代表的な口腔トラブルの原因と予防、対処方法について解説します。

QOL(生活の質)に影響を及ぼす口腔トラブル

口腔が担う役割は、私たちが社会的な生活を送るうえでとても重要です。一方で多くの口腔トラブルは誰にでも起こり得るもので、虫歯や口内炎、知覚過敏などによる痛みで食欲が低下したり、話すのが億劫になったりした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのようなつらい思いをしないためにも、口腔はできるだけ健やかな状態を保ちたいもの。口腔トラブルには、日々の生活で気をつければ予防できるものが多くあります。それぞれの口腔トラブルの原因やメカニズム、予防・対処方法を合わせてご紹介します。

口腔の部位やそれぞれの役割については、こちらの記事で解説しています。あわせて要チェック!

生きていくのにとっても大事!口のなかを徹底解剖
私たちが日々何気なく行っている食事や会話。生活をしていくうえで重要なこれらの機能を支えているのが「口腔」です。では、そもそも口腔とはどういった構造で、どのような機能を持つのでしょうか。本記事では、口腔が担う役割について解説します。歯(口腔)の健康状態は健康寿命にも影響するといわれています。口腔環境の重要性を学んでいきましょう。
https://helico.life/monthly/231112oraltroubule-kiso/

虫歯

口内の糖分をエサにした細菌(虫歯菌)がつくり出した酸で歯が溶けた状態が、虫歯です。初期段階では痛みはありませんが、進行するにつれて痛みが生じます。場合によっては、歯の内部にある神経にまで細菌が到達し、細菌が血液中に入り込み全身を巡ることもあります(菌血症:きんけつしょう)。菌血症が脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化などを引き起こす原因になるともいわれているため、要注意です。

虫歯菌の栄養となる糖分を多く含んだ飲食物を頻繁に口にしたり、それらが歯についたままの状態を長時間放置したりすると、虫歯のリスクが高まります。

虫歯を予防するためには、食べかすが歯の表面につき細菌が繁殖した、「プラーク」をきちんと落とすことが重要です。そのために欠かせないのが日々の口腔清掃。プラークが取り除きにくい奥歯の溝や歯肉に近い部分、歯と歯の間などは特に丁寧にブラッシングをするよう心がけましょう。

歯周病

歯肉(歯ぐき)が炎症を起こして徐々に進行し、最終的には歯肉や歯を支えている骨が破壊されていく病気です。

虫歯と並んで歯科領域の2大疾患といわれており、特に歯周病は年齢が上がるにつれ、患う割合が増加することがわかっています。歯周病も虫歯と同じくプラークが原因です。痛みなどの自覚症状が少ないため、気づいたときには進行していたというケースも。虫歯と同様に日々のケアできちんとプラークを取り除くことが一番の予防になります。

また、歯周病は全身の病気にも影響を及ぼすこともわかっており、予防や早期発見・早期治療が非常に重要です。

虫歯と歯周病をピックアップした記事はこちら

歯を失う原因「虫歯と歯周病」の基礎知識&予防のコツ
歯科医院で治療をするものといわれて、まず思い浮かぶのは、虫歯や歯周病ではないでしょうか。これらは歯科の2大疾患といわれており、歯を失う大きな原因にもなっています。また、2つに共通するのが、「予防可能な病気である」という点です。歯は一度削ったり、溶けたりしてしまうと元には戻りません。自分自身の歯を健康に保つために、虫歯や歯周病について正しく学び、日々の生活のなかで予防を心がけていきましょう。
https://helico.life/monthly/231112oraltroubule-major/

口臭

口臭の主な原因は、細菌や食べ物の残りかすなどから出るにおいだといわれています。歯周病に伴って口臭が発生することも多く、そのような場合には、歯周病の治療を行うことで口臭が軽減したり、なくなったりします。

また、舌の表面に付着する白いコケ状のもの(舌苔:ぜったい)も口臭の大きな原因です。舌清掃専用のブラシで1日1回舌苔を取り除くことで、口臭の予防・改善が期待できます。そのほか、口腔内が原因ではなく、別の臓器・器官の病気によって臭いが発生しているケースもあります。

気になる口臭対策はこちらの記事をチェック!

ケア不足?病気のサイン?口臭の種類と原因を解説
「口臭」は、自分自身では非常に気になっているものの、周囲は気にならない場合もあれば、自分自身ではまったく気にしていなくても、家族などから指摘されて気づく場合もあります。

においの強い食べ物を食べたあと、あるいは起床後などは、誰でも一時的に口臭が起こり得るので、あまり思い悩む必要はありません。しかし、口臭は歯周病や全身の病気が関係している場合もあるため、適切にケアしていくことも大切です。

この記事では口臭の種類や原因、改善方法など、なかなか人には聞きにくい口臭について解説します。
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口内炎

舌や頬の内側、唇の裏、歯肉など、口内の粘膜に起こる炎症を口内炎と呼び、いくつかの種類に分類できます。通常、口内炎は1~2週間程度で自然に治りますが、それ以上長引く場合にはがんの可能性もあるため、思い当たる原因はあるか、いつごろから口内炎ができたか(治るまでにどれくらいかかっているか)などを把握しておくことも重要です。

アフタ性口内炎

最もよく見られる口内炎で、丸く白い潰瘍(かいよう)が生じます。ストレスや疲れ、栄養不足(特にビタミンB2)、睡眠不足などが原因となるため、自身の体調を示すバロメーターともいえます。また、抗がん剤や放射線の治療などで起こることも。しっかり休養をとり、栄養にも気をつけるようにしましょう。

外傷性(カタル性)口内炎

外からの刺激で粘膜が傷つき炎症が起こった際に、外傷性口内炎が発生します。口内を誤って噛んだり、義歯(入れ歯)や詰め物、矯正器具がきちんと合っておらず、こすれたりすることが原因となります。何度も同じ部位に口内炎ができると、そこから口腔がんになるリスクが上昇してしまうため、義歯や詰め物などの不具合が原因の場合には、歯科医院で調整してもらいましょう。

また、噛み合わせや歯並びによって口内を噛みやすくなっている場合には、矯正のほか歯を削って調整をするなどの方法もあるため、あまりに頻度が高い場合には、一度歯科医院で相談してみましょう。

ウイルス性(ヘルペス性)/カンジダ性口内炎

ヘルペス性口内炎は単純ヘルペスウイルスなど、特定のウイルスに感染することで起こります。乳幼児に多くみられ、高熱や歯肉の炎症などとともに、口内の粘膜に水ぶくれ(水疱:すいほう)が生じます。

カンジダ性口内炎は口内にコケ状の斑点やただれがみられる口内炎で、カンジダ菌と呼ばれるカビの一種が増殖することで起こります。カンジダ菌は普段から口内に常在していますが、病気による免疫の低下や薬の服用などで数が増え、それが口内炎の原因となります。

いずれも薬を用いた治療を行うため、通常の口内炎とは異なる様子が見られた場合には、歯科医院を受診しましょう。

その他の口内炎

食物や薬品、金属などのアレルギー反応によるアレルギー性口内炎、喫煙習慣によって粘膜が白く変色するニコチン性口内炎があります。ニコチン性口内炎は口腔がんにつながる可能性もあるため、注意が必要です。

知覚過敏

知覚過敏は、虫歯や歯の神経の炎症などがないにもかかわらず、冷たい/甘い食べ物や飲み物を口にしたり、歯ブラシが触れたり、風があたったときなどに歯に痛みを感じる状態です。歯の内部にある「象牙質(ぞうげしつ)」という部分に刺激が入り、歯髄の神経で痛みを感じます。

通常、象牙質はエナメル質と呼ばれる層や歯肉に覆われているため、直接刺激が入ることはありませんが、加齢や歯周病により歯肉が下がり、歯の根が露出したり、強すぎるブラッシングで歯が徐々にすり減りエナメル質がなくなったり、歯が欠けてしまったりすることで、象牙質が露出してしまうことがあります。ほかに、歯ぎしりや食いしばりなども原因のひとつです。

軽度なものであれば、知覚過敏用の歯磨剤(歯磨き粉)を使用して適切なブラッシングを行い、象牙質にある小さな穴をふさいで、刺激が神経まで到達するのを防ぐことで改善できます。また、歯周病を予防することで歯肉が下がるのを回避することも重要です。

がん(口腔がん、唾液腺がん)

舌や歯肉、頬の粘膜のほか、口の床にあたる口腔底(こうくうてい)、天井にあたる口蓋にできるがんを総称して口腔がんといい、そのうち舌がん(ぜつがん)は約6割を占めています。また、唾液を産生する働きを持つ唾液腺にもがんが発生することがあります。

口腔がんは喫煙や飲酒、あるいは何度も同じ部位に刺激が入る(口内炎ができる)ことによってリスクが高まることがわかっており、粘膜が赤くなる、白く変色する、形が変わるといった症状が現れます。先述のとおり、口内炎で強い痛みがなく2週間以上治らない場合には口腔がんの可能性もあるため、歯科や耳鼻咽喉科、口腔外科などの受診を検討しましょう。

唾液腺がんはあまり自覚症状が現れないことも多いですが、唾液を出す際に痛みが生じるようになったり、大きな唾液腺のある耳の下部や前部、顎の下部、舌の裏などが腫れたりすることがあります。

定期的なメンテナンスで適切な対処を

さまざまなトラブルが起こり得る口腔。口腔を健康に保つためには、正しいブラッシングなどで日常的に予防をするほか、歯科での定期的なチェックやメンテナンスが重要です。定期的に歯科を受診することで、口腔トラブルの初期段階で対処できる可能性も高まるため、結果的に自身の歯を保ったまま治療ができたり、治療期間が短くなったりすることが期待できます。

年齢や口腔内の状態にもよりますが、健康な状態であれば1年に1回、あるいは半年に1回のチェックとメンテナンスが一般的です。

日々忙しく過ごしていると、ついあと回しにされがちな口腔トラブルの予防や対処。しかし、トラブルが起きてから、ひいては悪化してから受診すると、結果的に治療の回数などが増えて、費用や時間が多くかかってしまうことも。予防や早期対処のために、まずは定期的に歯科を受診するように心がけてみてはいかがでしょうか。

教えてくれたのは…
和泉 雄一先生
東京医科歯科大学 名誉教授/総合南東北病院 オーラルケア・ペリオセンター長/福島県立医科大学 特任教授

東京医科歯科大学歯学部、ジュネーブ大学医学部歯学科、鹿児島大学歯学部などを経て、2007年に東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授に就任、2018年より名誉教授、2019年よりオーラルケア・ペリオセンター長、2021年から福島県立医科大学特任教授。2015年~2017年には日本歯周病学会の理事長を務めた、歯周病の治療・研究のスペシャリスト。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:omiso
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