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1000本超のコレクション。矢部太郎さんの歯ブラシ愛

2017年、はじめて描いた漫画作品『大家さんと僕』がベストセラーとなった、お笑いコンビ・カラテカの矢部太郎さん。ほんわかとしたイラストと心温まるエピソードに、癒された方も多いのではないでしょうか。

芸人、漫画家、俳優とマルチに活動されている矢部さんですが、じつは1000本以上の歯ブラシをコレクションしているとのこと! 今回は、矢部さんが歯ブラシを収集し始めたきっかけから、おすすめのコレクション、歯磨きのこだわりなどをおうかがいして、歯ブラシの魅力を深掘りします。

矢部 太郎さん

1977年生まれ。芸人・漫画家。1997年に「カラテカ」を結成。芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。初めて描いた漫画『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。
HP:https://yabetaro.com/

きっかけはアフリカで見つけたカラフルな歯ブラシ

取材のために、ダンボール箱いっぱいの歯ブラシコレクションを持ってきてくれた矢部さん

―すごい量の歯ブラシですね!

矢部さん

あはは。これはコレクションのほんの一部で、家にはまだまだありますよ。

―矢部さんは1000本以上の「歯ブラシ」をコレクションされているそうですが、集め始めたきっかけは何でしたか。

矢部さん

20年以上前にアフリカへロケで行ったとき、たまたま立ち寄った何でも屋さんみたいなお店で、日本では見たことがないカラフルな歯ブラシを見つけたんです。値段も手頃だったので「素敵だな~」といっぱい買って帰って、芸人仲間にお土産として渡そうとしました。でも「いらない、いらない!」って断られてしまって(笑)。

「一人がいらないって言うと、みんないらないって言う芸人ノリみたいなやつです」と笑う矢部さん

―お土産なのに渡せなかったんですね!

矢部さん

そう、カラフルすぎて抵抗感があったのか、いっぱい買ったのに余っちゃって。その歯ブラシをどうしようか考えていたんですけど、すごくかわいいし、かっこよさもある。これからは海外に行ったら旅の記念として、歯ブラシをコレクションしようと思い立ちました。

―どんな部分に魅力を感じたのでしょうか?

矢部さん

まずデザインが、日本で販売されている歯ブラシと全然違うんですよね。日本の場合「歯医者さんおすすめの歯ブラシ」がメジャーで、シンプルなデザインで磨きやすさ重視のものが多い。でも海外の歯ブラシは、メーカーごとにいろんな形のものがあって、遊び心のある仕掛けも充実しています。
 
このレディー・ガガさんの歯ブラシは、柄についているボタンを押すと音楽が鳴るんです。音楽を聞きながら歯磨きできるって、子ども向けにはありますけど、大人用では見かけないですよね。

ボタンを押すとレディー・ガガのヒット曲が流れ、ノリノリで歯磨きができる

矢部さん

あと歯ブラシって値段が手頃なので、旅行先でもお財布を心配せずに買えちゃうんです。集め始めた頃は「全色欲しい」「これも買わなきゃ」って、衝動的に買っていました。

―これまでに歯ブラシを購入された国は、何か国くらいあるのでしょうか?

矢部さん

ちょっと覚えていないですね。行った国々で買っていたので。コレクションしている本数も1000本までは数えていたんですけど、それ以降は数えていないので、いま何本あるのか正直、わからないんです。
 
あと、僕が歯ブラシを集めていると知って、珍しい歯ブラシをいただくこともあります。先輩の石田靖さんが、古道具市で見かけた昭和のレトロ歯ブラシ(未使用品)をプレゼントしてくださったり、ファンの方が送ってくださったり、ありがたいです。

石田靖さんがくれた昭和のレトロ歯ブラシ。アニメ「マッハGoGoGo」のデザインで、当時の価格は70円

―集めていくなかで、コレクション魂に火がついたんですね。

矢部さん

いまは少し落ち着いてきましたが、一時期本当にどうかしていたんで(笑)。この木の枝はインドかな? 露店に山積みにされているのを見て「これって歯ブラシですか?」とお店の人に聞いたら、歯ブラシだったんです。

木の枝の歯ブラシ(歯木:しぼく)。見た目はただの枝なのに、なぜ歯ブラシだとわかったのか?

―よくわかりましたね! 木の枝の歯ブラシは、実際に使ったことはありますか?

矢部さん

ありますよ! ナイフなどで木の皮を削って、しがんで(噛んで)使うもので、味はほとんどありません。数本買っていたので、1本だけ実際に使ってみたのですが、繊維が多くて歯間に詰まるんです。だから結局いつもの歯ブラシでもう1回磨くことに(笑)。正直、使い続けようとは思えなかったのですが、あらためて歯ブラシって自由でいいな~って思っちゃいましたね。

歯ブラシのギミックに魅了される

―ここからは矢部さんおすすめの歯ブラシをご紹介いただけますか?

「どれから紹介しよう……」と悩む矢部さん

矢部さん

まずは、ノルウェーで見つけた3方向から同時に磨ける歯ブラシをご紹介しましょうか。普通の歯ブラシは、歯の内側と外側、上面をそれぞれ磨かないといけないですが、これなら1回で全方向磨けるというものです。でも実際に使ってみると、奥歯はちょうどよく磨けるんですが、どうしても前歯が……。
 
ちなみに似た歯ブラシでワンちゃん用のもあるんです。どちらが先かわからないですけど、アイデアの元になっているかもしれませんよね。

3方向から同時に磨ける歯ブラシ。前歯の磨きにくさは大目に見ているそう

―普通の歯ブラシしか見たことがないので、形が違うだけでもときめいちゃいますね。

矢部さん

斬新で面白いですよね。ブラシ部分が回転する歯ブラシは、日本のドラッグストアで見つけましたよ。

まるでピザカッターのようなデザイン。どうやって使うのだろうか

矢部さん

イタリア産の世界最小の歯ブラシは、使い捨てで飴を舐めているような感覚で歯磨きできちゃいます。これも日本のお店で購入しました。

世界最小の歯ブラシ。「トローチにしか見えないですよね」と矢部さん

矢部さん

海外のメーカーだと、ブラシにセットされている毛の本数がパッケージに表記されているものもあります。小さなヘッドに1万2000本もの毛が植えられているものは、触ってみるとすごく柔らかいんですよ。磨いた気がしないくらい柔らかくて、歯ぐきが弱っている方とか歯槽膿漏気味な方でも使いやすいように工夫されているんです。
 
ブラシの毛でいうと、日本にも動物の毛でつくられている歯ブラシがありますよね。現代の歯ブラシの多くはナイロンの毛が使われていますが、それ以前は動物の毛で磨いていたそうです。いまでも動物の毛を使った歯ブラシは購入できるので、実際に使ってみると昔の人はこんな歯ブラシを使っていたんだな~と思いを馳せることができますよ。

―矢部さんはどんな歯ブラシが好きなんですか?

矢部さん

ハイテクっぽいのが好きなんですよ。とくにスイスの歯ブラシ・Trisa(トリサ)は、ハイテクスニーカーのようなかっこよさがあります。ウルトラマンみたいな色のデザインとか、持ち手の部分が空洞になっていたり、キラキラ輝くカット加工がされていたり、めちゃくちゃかっこよくないですか?
 
スイスの家庭で使われているメジャーなブランドだと思うんですけど、コレクター心をくすぐってくれるんですよね。

スニーカーのように部屋に飾りたくなるというTrisaの歯ブラシ

―歯ブラシをギミックやデザインで見たことがなかったので新鮮です!

矢部さん

ぱっと見の華やかさや色の組み合わせもいいんですけど、歯ブラシって機能美が素晴らしくて。アスリートの体が美しいっていうのに近いかもしれなくて、磨きやすさを追求すると歯ブラシもどんどん美しくなっていくんだろうな、って思うんです。小さな歯ブラシのなかに、お国柄が見えてきたり、遊び心があったり。集めていくうちにいろんな発見があって面白いな~ってハマってしまいましたね。

シャンパンを開けるように、新しい歯ブラシを開封する

―矢部さんはいつもどのように歯磨きをされているんでしょうか?

矢部さん

歯磨きも大好きなんですよね。5分以上磨いちゃうんです。磨きすぎはよくないと思いつつ(笑)、楽屋とかで一緒にいる人には「いますごい幸せそうな顔して歯磨きしてたね」って言われるくらい、自分にとっては至福の時間になっています。

―いい時間ですね。磨き方でこだわりはありますか?

矢部さん

磨き方は、普通ですよ(笑)。でも歯医者さんに褒められたいって気持ちがモチベーションになっているかもしれません。僕が通う歯医者さんは、なかなか褒めてくれないんです……。だから歯ブラシだけじゃなく、フロスもタフトも使って細かく磨いています。時間はかかるけど、もともと細かい作業が好きなので苦にはならないんです。磨いた分だけ結果が出るから、気持ちもスッキリしますし。

―ご自宅では、何本くらいの歯ブラシを使われているんですか?

矢部さん

多いときは、10本くらい洗面台に並べていたことがありました。芸人仲間が家に遊びにきたとき、「お前何股してるんだ!」って驚かれちゃって。

矢部家の洗面台。一人分とは思えない数の歯ブラシが並んでいたことも(写真提供:矢部太郎さん)

矢部さん

そのなかから磨きやすいものを選んで、その日の気分で変えていました。僕、口が小さいので海外のメーカーに多い、ヘッドが大きな歯ブラシはちょっと磨きにくくて、みなさんのご家庭で使っているような、一般的な歯ブラシを主に使っています。でもそれとは別に、コレクションのなかから試してみたい歯ブラシを使うときもあります。

―日常的に使う歯ブラシと、コレクションは分けていらっしゃるんですね。

矢部さん

コレクション品とか初めて使う歯ブラシは、僕にとってはちょっとした贅沢かもしれない。ご褒美歯ブラシというか「とっておきのシャンパン開けちゃおうかな~」みたいな感覚なんです。

歯ブラシを開封するときは、シャンパンを開けるときくらい気分が高まるという

―シャンパン!(笑) 捨てるのがもったいなくならないですか?

矢部さん

そこは消耗品なので、毛が開いてきたら捨てます。だからコレクション品はなかなか使えないですよね。日常的に使えるものは「いつでも買える歯ブラシ」になっちゃう。また行けるかわからない国で買った、よくわからない歯ブラシは使わずに保管し続けると思います。

ワクワクした毎日を歯磨きから始めよう

―矢部さんのお話を伺っているうちに、いつもと違う歯ブラシが使いたくなってきました。選び方のコツを教えてもらえますか?

矢部さん

まずは自分がおしゃれだと感じるデザインの歯ブラシを探してみるのがよいと思います。洋服とかインテリアにこだわっている方でも、ついつい見逃しているアイテムだと思うんです。歯ブラシもひとつのファッションだと考えて、おしゃれに楽しんでもらいたいです。
 
あとは機能かな。いままで歯ブラシの毛のかたさで「ふつう」を選んでいたら、「かため」とか「やわらかめ」に変えてみるとこんなに違うの?って驚くはず。ヘッドの大きさとか薄さ、重さとか、本当にちょっとした変化ですけど、それを感じることでワクワクできることもありますから。

終始笑顔でお話する姿から、歯ブラシ選びを心から楽しんでいることが伝わる

―いつも買っているお店だけじゃなく、通販サイトや専門店に行ってみるのもいいかもしれませんね。

矢部さん

あとちょっといい歯ブラシを使いたいなら、歯医者さんで購入するのもいいですよね。歯ブラシは、毎日使うものだからなくてはならない存在で、人生のパートナー。いままで何気なく歯ブラシを選んでいた方は、違う歯ブラシに変えるだけで、楽しい日々になるかもしれませんよ。

CREDIT
取材・文:つるたちかこ 写真:藤原葉子 編集:HELiCO編集部+ノオト
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