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健康診断をもっと有意義に!素朴なギモンを解決

多くの方が1年に1回受診しているにもかかわらず、健康診断にまつわる事柄について、「そういえば、これはなぜ?」「知っているようで、じつはよくわかってない」と思うことはありませんか?

本記事では、「わざわざ医師に聞くのは気が引けるけれど、ちょっと気になる」といった、健康診断の素朴な疑問を解消していきます。

INDEX
健康診断を受ける前に、食事に関する制限があるのはなぜ?
食事以外で健康診断を受ける前に気をつけたいことは?
健康診断の少し前から生活改善をすれば結果も良くなる?
オプション検査は何を基準に選ぶのがよいの?
健康診断では、体脂肪率ではなく体重を測るのはなぜ?
判定結果のアルファベットは何を示すの?
比較的改善しやすい数値/すぐには改善しにくい数値ってある?

ギモン1.健康診断を受ける前に、食事に関する制限があるのはなぜ?

健康診断を受ける際は、検査開始の10時間ほど前から絶食を指示されます。これは、食事による影響を受けやすい「血糖値」や「中性脂肪値」の測定に関わってくるためです。

食事後、血糖は2時間程度、中性脂肪は8時間程度、それぞれの値が上昇します。血糖や中性脂肪の値が高い場合には、糖尿病や脂質異常症などが疑われますが、本来健康な方であっても、血糖や中性脂肪の数値は、食事から時間が経過していない、あるいは前日に脂身の多いお肉を食べるといった行為に左右されやすく、それだけで基準範囲を超えてしまうことがあります。

その結果、本来不要なはずの再検査を勧められてしまうこともあるため、絶食が必要なのです。同様に、アルコールについても血糖値や中性脂肪に影響を及ぼすことがあるため、前日は摂取を控えます。前日から食事の時間やメニューには気を配りましょう。

ギモン2.食事以外で健康診断を受ける前に気をつけたいことは?

健康診断の前日は、睡眠にも気を配りましょう。睡眠不足の状態では、血圧が高くなる傾向にあるため、普段よりも睡眠時間が短くなることがないように気をつけてください。

また、健康診断を受けるにあたり、空腹を必要とされる場合には、糖尿病の薬は検査が終わるまで中止します。それ以外の薬の服用可否については、健診機関の指示に従ってください。さらに、健康診断で相談したい症状などがある場合には、どのくらいの期間、どのような症状が出ているのかをあらかじめまとめておくとベストです。

ギモン3.健康診断の少し前から生活改善をすれば結果も良くなる?

健康診断の1週間前など直前から食事を制限したり、運動を始めたりした経験はありませんか? 残念ながら、健康診断の直前だけ生活に気をつけても、大きな効果は期待できません。健康診断で重要なのは、検査を受けるだけではなく、結果をしっかり受け止め、どのように活かしていくかです。「普段の生活によって自身の体がどうなっているか」をきちんと把握するためにも、極端な食事制限などは避けましょう。一度の健康診断の結果だけに一喜一憂するのではなく、毎年の健康診断をひとつの区切りとして、長いスパンで生活改善・結果の確認を続けていくほうが望ましいといえます。

ギモン4.オプション検査は何を基準に選ぶのがよいの?

数多く用意されている健康診断のオプション。「せっかくなら自分にとって意味のある検査を受けたいけれど、どれを選んでいいのかよくわからない」ということはありませんか。オプション検査は受診者の年齢や性別、生活習慣などによって、何を受診したらよいのかが変わります。

「好発年齢」という、その病気になりやすい(発症しやすい)年齢層や、飲酒・喫煙習慣などリスク因子が明確になっている病気も多々あるため、総合的に判断したうえでオプション検査を検討していくことが大切です。

オプション検査について詳しくは、「年代別 健康診断「オプション」の選び方 ~女性編~~男女共通編~」を参考にしてください。(TwitterInstagramで新着記事のお知らせをしています)

年代別・健康診断「オプション」の選び方 ~女性編~
健康診断・人間ドックを受診する際、オプション(追加)検査をつけるかどうか、考えたことのある方は多いのではないでしょうか。オプションにはさまざまな種類があるため、自分はどの検査を受けるのがよいのか、選択に迷うこともあると思います。特に女性は「婦人科領域」と呼ばれるような女性特有の病気があります。この記事では女性が検討したいオプション検査(気をつけたい病気)に注目して解説します。
https://helico.life/monthly/230708healthcheck-option-forwomen/
年代別・健康診断「オプション」の選び方 ~男女共通編~
毎年受診する定期健康診断や人間ドックの際、迷うことも多いのが、オプション(追加)検査。「定期健康診断でいろいろ調べるのだから、オプション検査は不要では?」と思う方、あるいは「念のためつけたいけれど、何を選んだらいいのか分からない……」という方など、さまざまだと思います。

この記事では、成人以降の男女において、どのような観点でオプション検査を検討すればよいのか、年代や生活習慣を踏まえながら解説していきます。
https://helico.life/monthly/230708healthcheck-option-common/

ギモン5.健康診断では、体脂肪率ではなく体重を測るのはなぜ?

最近では、体重のほかに体脂肪率や筋肉量も測定できる家庭用体重計・体組成計がメジャーになっていて、体脂肪率の変化を日ごろから意識している方も多いと思います。しかし、健康診断では体重しか計測しないのはなぜでしょうか。それは、足のみ、または手足からなど測定方法のほか、推定計算式もメーカー毎に異なるためです。

体組成計は、筋肉は電流を通しやすく、脂肪は通しにくいという性質を利用して、体内を電流が流れる際の抵抗値や身長・体重・年齢・性別などの情報を組み合わせて推定値を算出しています。そのため、体内の水分量などでも値が大きく変動します。

また、体脂肪には生きるために必要な「皮下脂肪」と、病気を引き起こす「内臓脂肪」があり、体脂肪率はその合計を測定しています。そのため、体脂肪率を指標とするよりも、身長と体重をもとに算出したBMIと腹囲で判定を出しているのです。

ギモン6.判定結果のアルファベットは何を示すの?

健康診断の結果を主にアルファベットで表す判定結果は、施設によって少しずつ異なるものの、ベースとなる区分を日本人間ドック学会が以下の通り定めています。

A:異常なし
検査値が基準範囲内、あるいは将来的な病気の発症リスク等がないと判定された場合。

B:軽度異常
基準範囲等を超えており保健指導の対象にはなるものの、体に悪影響がない場合。画像検査においては、まったく異常がない方には見られないものがあるが、直近で体に悪影響を及ぼす可能性がないことを示す。

C:要再検査・生活改善
治療や精査は不要なものの、1年以内に生活習慣を修正、再検査を実施し悪化がないか確認したほうが良い場合。

D:要精密検査・治療
異常レベルが高く、生活習慣の見直しだけでは結果の改善に期待ができない場合。画像検査においては、異なる検査も含めてより詳細に調べる必要があることを示す。

E:治療中
検査結果を改善する目的で治療を受けている場合。

判定における「基準範囲」とは、健康な方のみから得られた検査値の分布の幅を示すものです。つまり、「健康な方の多くで、ある検査の結果がこの数値の幅のなかに収まっていた」ということを表しています。基準範囲から外れた場合、その程度(どれだけ基準範囲と乖離があるか)も重要な観点です。

一方で、BMIや血圧、脂質、血糖は「臨床判断値」といい、疫学研究(※)によってこの値を超えると将来的に病気を発症することが予測され、予防の観点で対応が必要と考えられる値を基準としています。

※疫学研究:ある特定の集団を対象に病気の発生状況の頻度や分布を調査することでその要因を明らかにする研究

ギモン7.比較的改善しやすい数値/すぐには改善しにくい数値ってある?

健康診断の検査のなかでも、生活習慣などで数値を改善しやすいものと、そうでないものがあります。

中性脂肪は食事の影響を受けやすいぶん、異常値が出てしまった場合でも比較的改善しやすいといえます。数値が気になる場合は、糖質の多い食事内容を見直すほか、体がアルコールの分解に追われていると、中性脂肪を分解する余裕がなくなってしまうため、節酒・禁酒を心がけること大切です。

一方、腎臓の機能が低下した場合(eGFR:イージーエフアールが異常値となった場合)、現在のところ治療薬はありませんが、症状を悪化させる高血圧や糖尿病が起きていないか、注意を払いましょう。腎臓は一度機能が低下してしまうとほとんど回復しないため、塩分や脂肪、たんぱく質、アルコールの摂取量に気を配り、予防あるいは悪化を防ぐことが重要となります。

それぞれの検査値がどのようなことを表しているのか、放置することで何が起こるのかについては以下の記事もご覧ください。

この数値ってどんな意味?健診結果の見方を解説
健康診断は、多くの方がかかりやすく、放置すると命に関わる病気の兆候がないかを確かめています。しかし、健康診断を受けるだけで満足している、あるいは結果を見ても自分の体がどんな状態か、どのようなことに気をつけたらよいかわからないという方もいるのではないでしょうか。

本記事では、健康診断で行う主な検査項目と目的、それぞれの数値の見方、日々の生活で気をつけるべき点などについて解説します。
https://helico.life/monthly/230708healthcheck-results/

あなたの疑問は解消されたでしょうか? せっかく健康診断を受けるのであれば、よりきちんとした数値を把握できるよう、前日から過ごし方に気をつけてみるのもよいかもしれません。健康診断は自分自身の体の状態を確かめるひとつの指針となるため、結果をしっかり活用していきましょう。

教えてくれたのは・・・
和田 高士先生

医学博士。1981年、東京慈恵会医科大学卒業、85年同大学大学院修了。同大学第4内科講師、同大学附属病院総合診療室診療医長、東京慈恵会医科大学健康医学センター長、日本人間ドック学会副理事長、日本生活習慣病予防協会副理事長などを経て、2023年より現職。東京慈恵会医科大学 客員教授。日本健康・医療情報研究所所長。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:佐藤夏希
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