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お腹の痛みや張り…主な腸トラブルと腸内環境の整え方

お腹が痛いと感じたとき、その原因が腸にまつわるトラブルであることは珍しくありません。食中毒や虫垂炎(盲腸)、過敏性腸症候群など、腸に関する病気にはさまざまなものがあります。この記事では、代表的な病気の症状や原因、治療法を解説するとともに、腸を元気にするための生活習慣もあわせてご紹介します。腸の健康は、体全体の健康につながります。ぜひ参考にしてください。

代表的な腸の病気とは?

おへそ周辺(中腹部)の痛みを感じた場合、「腸のトラブル」が生じている可能性があります。まずは、具体的な病気を知っておきましょう。

腸炎

腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの感染による「感染性腸炎」と、食物や薬によるアレルギー、血流障害によって腸粘膜に出血性の炎症が起こる虚血性腸炎などの「非感染性腸炎」の2種類に分けられます。

感染性腸炎

ウイルスや細菌、寄生虫などが体内に侵入することが原因で、下痢を中心に発熱、嘔吐、腹痛などの症状がみられます。治療をしなくても痛みがひいていくことがほとんどですが、腸の炎症が治まるまで、ウイルス性の場合は数日、細菌性の場合は1~2週間程度かかることがあります。細菌性を疑う場合は抗生剤を処方されるケースもありますが、ウイルス性の場合は特効薬がなく、点滴の投与などで症状を緩和します。

また、近年有名になってきたのがアニサキスという寄生虫です。サバやイワシ、サンマなどの青魚や、イカなどに寄生する長さ2~3cm、幅0.5~1mmほどの白い糸のような寄生虫で、生きたまま胃や腸に侵入すると、数時間以内にアレルギー反応を起こし、激しい腹痛や嘔吐、腹膜炎症状などが起こります。内視鏡で虫体を確認し、摘出することで症状は治まります。

非感染性腸炎

食物や薬(抗生物質)によるアレルギー、血流障害などによって大腸に炎症が生じ、左下腹部の痛み、血便や腹痛が症状としてみられます。血流障害の原因は、便秘やストレス、食事や生活習慣の乱れ、動脈硬化などが考えられ、まずは絶食と安静によって腸を休ませることが大切です。脱水を防ぐため点滴などを行いながら、徐々に食事を摂り始め、1~2週間程度で状態が安定していきます。

過敏性腸症候群(IBS)

検査では炎症や潰瘍などの異常がみられないにもかかわらず、慢性的な腹部の膨張感や腹痛があったり、下痢や便秘などの便通の異常を感じたりする病気です。治療には整腸剤を投与しますが、刺激物や脂の多い食事を極力控えたり、消化の良いものを食べたりするなど、食習慣の改善で軽減されることがあります。そのほか、お腹を冷やさないことも大切です。

過敏性腸症候群については、こちらの記事もチェック!

要注意!体に合わない食事で間違った腸活してない?
こんにちは。みなさんといっしょに腸活をして、体調を良くしたいと思っているコアラ女子「アラコ」です。腸活をしていても、下痢や便秘、お腹が張るとか、お腹のトラブルが起こることってない? でも、病院に行っても異常は見つからないし、腸内環境を良くする食べ物は積極的に摂ってるはずなのに……。日々の食事を見直しても改善しないお腹の不調の原因について、今回も江田証先生に聞いちゃおう! え、FODMAP?……それってなんですか?
https://helico.life/series/choukatsu-diary03/

虫垂炎(盲腸)

盲腸の後ろ内側から垂れ下がっている管を虫垂といい、ここで化膿性の炎症が起こるのが虫垂炎です。まずは、上腹部やおへそ周辺に痛みを感じ、時間とともに右下の腹部が痛み始めるのが特徴です。軽い炎症であれば薬で抑え込める場合が多いものの、大きく腫れ上がってしまうと手術になることも。順調に経過すれば3~4日の入院で済み、退院後一週間もすれば普通の生活に戻ることができます。

腹膜炎

腹膜炎は、突如強い痛みや発熱といった症状が現れる「急性腹膜炎」と、症状の悪化と緩和を2~3か月ほど慢性的に繰り返す、「慢性腹膜炎」に分けられます。

発症原因はさまざまですが、腹膜炎が単体で起きることはあまりありません。たとえば、虫垂炎が悪化して腹膜炎になったり、卵管に炎症が起こる卵管炎が悪化して腹膜炎を引き起こすなど、ほかの病気が腹膜炎につながることがほとんどです。入院して治療する場合は、絶食に点滴で栄養を補います。自宅で療養する場合は絶食と点滴での治療は難しいため、スポーツ飲料や経口補水液などで水分と栄養を補給して症状が緩和したら、様子を見ながらお粥やうどんなど、お腹に負担のない食事を摂ります。

憩室炎

憩室炎とは、消化管の壁の一部が外側に飛び出て、袋状になってしまう病気です。小腸や十二指腸、食道でも起こりますが、特に大腸に発症するケースが多くみられます。できてしまった憩室炎を治療で取り除くことはできないため、まずはしっかりと水分を摂り、食事制限をして大腸を休ませることが重要です。そのあとは、細菌感染を抑えるための抗生剤を投与して経過観察を行います。

大腸がん

日本人女性のがん死亡数の第1位である大腸がん。大腸の粘膜の表面にできるがんで、その多くはポリープが大きくなる過程で発生します。痛みや血便、発熱を伴うことがありますが、初期段階ではほぼ無症状のため、大腸がん検診(便の潜血検査)によって早期発見をすることが重要です。

じつは日本では、便潜血検査で陽性と結果が出ても、精密検査を受ける方は約半数しかいません。精密検査を受けない理由としては、潜血は痔のせい、という自己判断や、検査に対する恥ずかしさ、恐怖心などが挙げられますが、自分の体の現状を知るのは極めて重要なこと。便潜血検査が陽性になった人は、必ず精密検査を受けましょう。

お腹の病気を調べる方法はさまざま

お腹の病気を調べるためには、はじめに視診や触診、打診、聴診などでお腹全体を診察し、そのうえで必要に応じて、レントゲン検査、CT検査、超音波検査などが行われます。

レントゲンとCTでは、検査で得られる情報量が大きく異なり、CTの方がより多くの情報を得ることができます。たとえば虚血性腸炎や虫垂炎、憩室炎は、CT検査で特定できる病気のひとつです。

このほか血液検査や尿検査によって、炎症反応が出ていないかどうか、貧血になっていないかどうかなどを把握することも大切です。

全身の病気に影響を及ぼす腸内細菌とは?

お腹の病気に加えて、全身の病気と深い関係があるもののひとつに、腸内に生息する細菌集団である「腸内フローラ」があります。

大腸の中には、100兆ほどの細菌がいるといわれています。人間の細胞は約37兆個といわれているので、その約3倍もの細菌が大腸に住んでいることになります。このように数え切れないほどの細菌が集団ごとに群れをなして住んでいる様子が、さながら花畑のようだということで、「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内細菌と病気の発症には深い関係があり、とくに炎症性腸疾患、大腸がん、肥満、糖尿病、動脈硬化、多発性硬化症、自閉症、躁うつ病、パーキンソン病などに関与していると考えられています。これらの患者さんは、腸内細菌が偏っている傾向があることがわかってきています。また、今後さらに研究が進めば、もっと多くの病気との関連も明らかになってくるでしょう。このように考えると、腸内環境を整えることがいかに大切か、わかるといえそうです。

腸内フローラについては、こちらの記事もチェック!

腸活のキーワード「シンバイオティクス」って何?
こんにちは。みなさんといっしょに腸活をして、体調を良くしたいと思っているコアラ女子「アラコ」です。 「腸活」について調べていると、「○○バイオティクス」や「酪酸菌」という言葉をよく目にするわ。どうやら、正しい「腸活」をするには、このあたりが重要なカギを握っていそう。でも、善玉菌とか乳酸菌くらいは知ってるけど、「らくさんきん」っていったいナニモノ? それに「○○バイオティクス」には似たような言葉がいくつもあって、違いがよくわからない…。腸活にどう影響するのかしら? 教えて、江田先生!
https://helico.life/series/choukatsu-diary02/

健康への第一歩は便秘をしないことから

腸内環境を悪化させる最大の原因は、便秘。日ごろから腸を健康に保つためには、何よりもまず便秘にならないようにすることが大切です。便秘になる人に多くみられるのが、便秘の状態で過ごすことが日常化し、それが当たり前になってしまっていることです。

当然のことながら食事量そのものが足りないことは便秘の原因になるので、1日3食をしっかり食べるようにしましょう。また、排便を我慢するのもよくありません。「食べたら排泄」を習慣にするのが腸の健康への近道です。

バランス良く食べる、食物繊維を摂る、肉よりも魚を食べるなど、食生活の改善も効果的です。腸内細菌には発酵食品が良いとされているので、納豆やヨーグルトなども積極的に食べましょう。反対に、スナック菓子やインスタント食品、ファストフードなどは腸内環境を悪化させるので、できるだけ控えたほうが賢明です。

下剤の常用は危険!

便秘になると下剤を服用する人が多いですが、市販薬であっても漢方薬であっても、毎日飲むのはおすすめできません。腸の動きが悪くなり、ますます便秘の症状が悪化してしまうことがあるからです。どうしても市販薬で対応しなければならないときは、整腸剤や酸化マグネシウムの組み合わせがいいでしょう。ただし、市販薬で対応するのは一過性の便秘のみとし、何日も続く場合は、便秘外来などがある病院を受診するのが安心です。
 
便秘は、未来の健康だけではなく、いまのQOL(生活の質)にも大きく影響を与えるもの。セルフケアで改善がみられないときには、我慢せず、医師に相談してみることをおすすめします。

教えてくれたのは・・・
村井 隆三先生
おなかクリニック 院長

1982年、東京慈恵会医科大学卒業。元東京慈恵会医科大学外科助教授。元東京医科歯科大学大学院医療経済学非常勤講師。元町田市民病院消化器外科担当部長。元東京急行電鉄株式会社東急病院外科系担当診療部長。NPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会代表理事。日本外科学会専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。日本消化器外科学会専門医・指導医 日本ヘリコバクター学会感染症認定医。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:姫田真武
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