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発育やQOLに影響も。子どもの便秘は早めの対応を

ほうっておくと生活や心身にさまざまな影響をもたらす、子どもの便秘。よくある疾患のひとつと捉えている人もいるかもしれませんが、重くならないうちに対処をすることがとても大切です。特に、排便機能が未発達な幼少期のうちは、悪循環におちいりやすいため、保護者が注意深く見てあげる必要も。この記事では、子どもならではの便秘の症状や原因、対処法などを解説します。

INDEX
回数だけではない、子どもの便秘の目安とは?
便秘の原因には、子ども特有のものも
便秘は子どもの成長にどんな影響がある?
便秘への対処は、無理のない範囲でバランスのよい食生活を
排便に不安を感じるなら、受診を

回数だけではない、子どもの便秘の目安とは?

日本小児栄養消化器肝臓学会によると、子どもの便秘とは「便が長い時間出ないか、出にくいこと」をいい、排便の回数が週3回よりも少なく、5日以上出ない日が続けば便秘と定義されています。

ただし、便秘かどうかの目安は回数だけではありません。たとえば毎日排便はあっても、出すときに苦しがったり、痛がって泣いたり、肛門が切れて血が出たりする場合も便秘と考えられます。

また、便秘というと硬い便をイメージするかもしれませんが、たとえ便が軟らかくても、溜まって出しにくくなることもあります。便の硬さは、目安のひとつと捉えておくのがいいでしょう。体格や性格に個人差があるように、便秘の症状にも個人差があるのです。

保護者が子どもの排便に注意を払うことが必要

特に幼少のうちは、子ども自身では便秘を訴えることができないため、できるかぎり保護者が排便の様子や便の状態に注意を払うことが大切です。

たとえば、便が溜まってしまっている状態では、1回いきむだけでは排便できず、なかなかトイレから出てこられないケースも。ひどい場合には、1日かけて何度もうなりながら出したり、それでも結局排便しきれなかったりすることもあります。

また、便秘が招く意外なトラブルとして覚えておきたいのが「トイレの詰まり」。便が一気に出たり、硬かったりすることで、トイレが流れなくなってしまうのです。

子どもが排便でつらそうにしている様子や兆候があれば、慎重に経過を見守っていきましょう。

便秘の原因には、子ども特有のものも

子どもの便秘には、大人と同様に食生活の乱れや水分不足などが関係していることもあれば、子ども特有の問題が原因となっている場合もあります。

私たちは、便意を感じるとお腹に力を入れていきみ、肛門を開いて便を出しますが、小さな子どもはこうした排便機能が未発達で、うまく便を出せないことがあるのです。排便機能は小学校高学年ごろになってようやく、大人並みになるといわれています。

幼少期の便秘には特に注意

排便機能が未発達な2~3歳のころに、便がうまく出せずにつらい思いをすると、排便を我慢するようになってしまうことがあります。大腸には便から水分を吸収する働きがあるため、排便を我慢することで長時間とどまっていた便はどんどん硬くなって、排便時に激しい痛みや苦痛をともなうことに。そうなると子どもはますますトイレに行こうとしなくなる、という悪循環が起こります。

さらにその状況がつづくと、溜まった便によって直腸(肛門の上部にある消化管)は慢性的にふくらんで伸びきった状態となり、便を出すときに必要な収縮する力が弱まってしまいます。そして次第に便意も起こりにくくなり、便秘が慢性化していきます。

ストレスが排便リズムに影響する場合も

子どもの便秘においても、大人のようにストレスが原因となることがあります。進学・進級などのライフイベントが頻繁にある子どもは、さまざまなストレスがかかりやすい状態。めまぐるしい環境の変化にともなって排便リズムが乱れてしまい、もともとの便秘がさらに悪化したり、新たに便秘になったりしてしまう場合もあるでしょう。

便秘は子どもの成長にどんな影響がある?

子どもの便秘の問題点は、発育やQOL(生活の質)に影響を及ぼす可能性があることです。

お腹やお尻にずっと不快感を抱えながら生活することは、子どもにとって大きな障壁となり、集団生活や社会生活、学業にも影響を及ぼすことが考えられます。慢性化した便秘の症状をほうっておくと、どんどん深刻化してしまい、腸が異常にふくらむ「巨大結腸症」や、便が漏れつづける「遺糞症(便失禁)」になってしまう可能性も。

便秘外来を受診する子どものなかには、便秘のせいでいつも食欲がなく、顔色が悪かったり痩せたりしている子どももいますが、便秘が解消することで改善する場合も少なくありません。

便秘によって排便機能の成長が阻害されてしまうと、成人以降もずっと便秘に悩みつづけることになる可能性が高いため、早いうちに適切な対処をしていくことが非常に大切です。

便秘への対処は、無理のない範囲でバランスのよい食生活を

子どもの便秘も大人の便秘同様、食事に気をつけることや生活習慣の改善が役立つことがあります。ただし、効果は人それぞれ。ある方法によって便が出るようになる子どももいれば、そうでない子どももいます。一定の期間試してみても変化がなければ、ほかの方法を試してみる必要があるかもしれません。

たとえば、食物繊維が豊富な食材や乳酸菌が含まれている発酵食品は、便通によいとされていますが、特定の食材にこだわり過ぎることなく、できる範囲でバランスよく食べることを心がけましょう。また、便通によいからといって、子どもの嫌いな食べ物を無理に食べさせるのは、ストレスになるのでかえって逆効果な場合も。

便秘に対処していくうえで大切なのは、ひとつの解決方法に固執しすぎないこと。また、根気強く向き合っていくことも大切です。

排便に不安を感じるなら、受診を

子どもの排便に異常を感じたら、小児科に相談するという選択肢もあります。

排便の期間が3~4日以上空く、排便をするのがつらいなど、目立った便秘の症状がない場合でも、排便の様子に不安を感じるようであれば、悩まずに受診してみましょう。受診の前に、便秘の診療に対応しているかをホームページなどで確認しておくと安心です。

もし診察の結果治療の必要はないと言われたとしても、ドクターから、どんな症状があらわれたら再度受診をする必要があるかを教えてもらうことで、子どもの状態にアンテナを張っておけるようになります。

医療機関での治療は、便秘症状の重さよって違いはありますが、基本的には処方薬や浣腸を適切に使用しながら、規則正しい排便のリズムを身につけていくものになります。自分でスムーズに便を出せる力を手に入れることは、子ども本人の未来を守ることにもつながります。
 

便秘の症状は人それぞれ。たとえ排便の間隔がそれほど空いてなかったとしても、本人が苦しんでいるのであれば、便秘の可能性があります。気がかりなことがあれば、抱え込まずに医療機関へ相談を。その一歩が、状況を改善するきっかけになるかもしれません。

教えてくれたのは・・・
小森 広嗣先生
小森こどもクリニック 院長

慶應義塾大学医学部卒業。小児外科学会専門医、小児外科指導医、医学博士。東京都立小児総合医療センター小児外科医長を経て小森こどもクリニックを開院。患者家族と成長の感動や喜びを分かち合い、楽しく安心して子育ができる社会を創ることをビジョンに活動する。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:沼田光太郎
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