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不安や緊張でキリキリ…ストレス腹痛の原因と対処法

不安や緊張を感じたり、つらいことなどがあったりすると、お腹が痛くなってしまう。それは、ストレスによる腹痛かもしれません。このような腹痛は、内臓器官の疾患ではなく、脳の反応によって起こるもの。大きな病気が原因ではないとしても、QOL(生活の質)を著しく低下させるなど、心身に影響があります。この記事では、ストレスによって腹痛が起こる仕組みや、主な病気、対処法などについて解説します。

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INDEX
そもそもストレスとは?
ストレスによる腹痛の原因は、自律神経の乱れ
ストレスによって起こる、代表的なお腹の病気
ストレスで腹痛を感じたときの対処法は?
痛みが繰り返し起こるなら受診を検討しよう

そもそもストレスとは?

ストレスとは、「外部から刺激を受けたときに生じる心身のひずみ」を指します。

私たちがストレスを感じる対象はさまざまで、「物理的(気温・気圧・騒音など)」「化学的(公害物質・薬物など)」「生物的(ウイルス・細菌など)」「身体的(病気・けが・不規則な生活など)」「心理・社会的(仕事や学業の負担、人間関係のトラブル、家族の病気や介護など)」といったことが主な原因になります。

これらの原因によって、心身に負荷がかかっている状態(ストレス状態)になると、腹痛を感じることがあるのです。

ストレスによる腹痛の原因は、自律神経の乱れ

ストレスによる腹痛は、脳と深く関係しています。ストレスを感じるとまず、その情報は脳の大脳新皮質から、大脳辺縁系というところへ伝わります。つぎに、大脳辺縁系から緊張信号として視床下部に伝わると、自律神経に乱れが生じます。

自律神経は、呼吸・循環・消化・排泄などのコントロールを行う、意思とは関係なく24時間働きつづけている神経のこと。自律神経には、からだが活動モードのときに働く「交感神経」と休息・回復モードのときに働く「副交感神経」があり、2つは互いにバランスをとりながら、からだの機能を調節しています。

胃や腸などの消化管は、副交感神経の作用によって働いています。ところが自律神経が乱れると、交感神経が活発に働いているとき(仕事や運動などの活動をしているとき)でも消化管が活動して、胃酸が過度に分泌されたり腸が過剰に働いたりということが起こり、これが腹痛の原因となります。

ストレスによって起こる、代表的なお腹の病気

ストレスが引き金となって起こる腹痛には、下記の種類があります。

神経性胃炎

胃の異常な収縮、胃酸の過剰分泌、胃の粘液減少などによって、胃を守る作用が低下する病気です。みぞおちや胃の痛み・不快感をはじめ、喉のつかえ、胸焼けなどの症状が起こります。

機能性ディスペプシア(FD)

機能性ディスペプシアは、慢性的な胃の痛み、もたれなどがあるにもかかわらず、検査でも異常が見つからない病気です。胃に食べたものを貯めておくことや、スムーズに腸へ送るといったことができなくなって起こるとされています。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、検査では異常がみられないのに、腹痛を伴う便秘や下痢が慢性的に起こる病気です。症状の出方は人によって異なり、激しい下痢症状が主ということもあれば、お腹がよく張る、下痢と便秘を繰り返すなどの症状もみられます。

過敏性腸症候群について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

ストレスにご注意!脳と腸の密接なカンケイ
こんにちは。みなさんといっしょに腸活をして、体調を良くしたいと思っているコアラ女子「アラコ」です。仕事に家事に忙しい日々。体に良いものを摂って「腸活」もしてるけど、なかなか良くならないわ……ああ、悩んでたらお腹が痛くなってきちゃった……そういえば、緊張するとお腹の調子が悪くなることもあるわよね。江田先生、ストレスと腸の関係について詳しく教えてください!
https://helico.life/series/choukatsu-diary04/

胃腸の弱さに自覚がある人は、ストレスによる腹痛を抱えやすい

ストレスでお腹が痛くなる人は、「もともと胃腸が弱い」と自覚していることが多く、ちょっとした胃腸の異変でも敏感に察知しやすい傾向もあります。腹痛を心配すること自体が、さらにストレスとなる場合もあります。

ストレスで腹痛を感じたときの対処法は?

まずは、規則正しい生活を心がけることが大切

腹痛を引き起こす原因となる自律神経の乱れは、睡眠不足や就寝前のスマートフォン閲覧のほか、栄養バランスの偏った食事、お酒やコーヒー、タバコなどの過剰摂取、運動不足や過度な運動といった、生活習慣も影響すると考えられています。ストレスによる腹痛を改善するために大切なのは、生活習慣を整えること。体に負担のかからない食事を心がけるほか、適度な運動を取り入れてみてもよいでしょう。

生活習慣を改善しても、効果を感じられるまでには時間がかかることもあるため、お腹の痛みがあるうちは、対症療法(症状をやわらげる治療)として薬を服用し、痛みを緩和させることも有効です。この場合は、医師や薬剤師に相談して症状に応じた適切な薬を服用しましょう。

そのほか、ストレスの原因を取り除くことで症状が改善する場合もあります。

痛みが繰り返し起こるなら受診を検討しよう

生活を改善してみても、痛みが繰り返し起こるのであれば、早めに消化器内科を受診しましょう。腹痛の原因がストレスなのか、それ以外かどうかの判別は非常に重要なので、潰瘍性大腸炎や大腸がんなどがないか、検査も受けることをおすすめします。

「過敏性腸症候群」は心療内科を案内される場合も

ストレスによる腹痛で多い疾患のひとつ、過敏性腸症候群の治療では、食事・運動療法のほか、症状に直接作用する薬の処方が行われるのが一般的です。

ただし、症状が改善されない場合には、心療内科の受診をすすめられることもあります。心療内科では、ストレスの原因を探りながら治療方針を決め、症状にアプローチしていきます。

また、症状の悪化を防ぐには、抗うつ薬や抗不安薬の処方が有効な場合もあります。長年にわたって症状で悩んでいると「本当に治るのか」という心配や、仕事をしていても頻繁にトイレに行きたくなる不安感などから、さらに症状が悪化することがあるためです。

日常生活の中で、知らず知らずに頑張りすぎていることがストレスになり、それが引き金となって症状を引き起こしていることもあります。「たかが腹痛」と見過ごさず、不安を感じたら早めに医師に相談しましょう。

教えてくれたのは・・・
伊藤 克人先生
東急病院 心療内科

1980年筑波大学医学専門学群卒業。東京大学医学部附属病院分院心療内科を経て1986年より東急病院に勤務。専門は心身医学、産業医学、森田療法。日本森田療法学会認定医、日本心身医学会内科専門医、日本心療内科学会上級登録医、労働衛生コンサルタント。著書、監修書に『過敏性腸症候群の治し方がわかる本』(監修/主婦と生活社)、『森田療法で読むうつ その理解と治し方』(共著/白揚社)などがある。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:おさつ
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