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骨と筋肉、同時に鍛える!ゆるスクワット&かかと落とし

健康のために骨を丈夫に保ち、筋肉をつけることが重要なのは分かるけれど、運動の習慣を身につけるのは難しい……。そう思っている方に朗報です。

骨や筋肉を丈夫に保つためには、息が上がるほどの運動を毎日長時間行う必要はありません。ほんの数分でも、自分にとって無理のない動作を継続することが大切なのです。この記事では、今日から始められる「ゆるスクワット」「かかと落とし」の方法や、メリット、注意点を解説します。筋力や骨量の低下が気になる方は、ぜひ実践してみてください。

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高齢者だけじゃない! 骨量・筋肉量の低下に要注意

骨や筋肉は、私たちの体を支える「縁の下の力持ち」的な存在ですが、骨量や筋肉量の数値は、健康診断などでも明確に認識する場面が少ないのが現状です。

そのため、転倒時の骨折をきっかけに骨量を測定してみたら、思いのほか骨がもろくなり始めていたというケースも多く見られます。そして、転倒のそもそもの原因をたどってみると、筋肉量(筋力)の低下に伴い下半身が不安定になったことで、転倒リスクが高まっていたという場合も。

骨量の低下やそれに起因するケガは高齢者に多いもの、というイメージが強いかもしれませんが、近年30~40歳代の女性の間でも、こうしたケガが増加し続けているのです

ケガや骨折をしてしまうと、日常のあらゆる動作に不便が伴うだけではなく、場合によっては手術が必要になるなど、生活に大きな負担が生じます。高齢者の場合、1回の骨折が原因で寝たきりになってしまうことも。だからこそ、大事になる前の予防が重要であり、筋肉と骨、どちらもバランスよく鍛えることが大切です。

今回は、下半身の筋肉を刺激する「ゆるスクワット」と、かかと~脚の付け根の骨を刺激する「かかと落とし」の2つの運動をご紹介します。

※1年以内に骨折をしている、あるいは整形外科系のなんらかの手術を受けているなどの場合は、実践前に主治医の方に相談をしましょう。

スクワットよりも簡単な「ゆるスクワット」で下半身の筋肉を強化

スクワットは、下半身をまんべんなく鍛えられる筋力強化に優れたトレーニングです。

下半身のなかでも大きな筋肉である「大臀筋(だいでんきん)」や「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」のほか、「ハムストリングス」や「内転筋群」、ふくらはぎを構成する「腓腹筋(ひふくきん)」と「ヒラメ筋」を鍛えることができます

スクワットをする女性

スクワット同様、ゆるスクワットでもこれらの下半身の筋肉を鍛えることができます。

「スクワット」と聞くと、膝を深く曲げるハードな動きを想像する方が多いかもしれませんが、「ゆるスクワット」は、スクワットよりも膝を深く曲げずに行えるので、筋力に自信がない方でも始めやすいのが特徴です。まずは1日10回を目標に強度の低い運動から挑戦して、徐々に回数や負荷を増やしていきましょう。

準備

椅子やテーブルなど、安定感があり支えになるものを用意する。

ゆるスクワットの方法

STEP1

両足を肩幅よりやや広めに開き、椅子の背(テーブル)をつかむ。このとき、つま先はやや外側に向ける。

STEP2

息を吐きながら4秒かけて腰を落とし、息を吸いながら4秒かけて元の姿勢に戻る。腰を落とす際、膝がつま先と同じ方向を向くように、そしてつま先よりも膝が前に出ないように意識する。このSTEP1とSTEP2の動きをワンセットとします。

POINT

・太ももの前と後ろを意識しながら、お尻を後ろに引くようなイメージで腰を落としてみてください。このとき、膝に負担がかかりすぎないよう、90度以上膝を曲げないように注意しましょう。

・30~40歳代の方は、回数を20回程度に増やしたり、膝の曲げ伸ばしをするスピードを上げたりするのも効果的です。

「かかと落とし」で骨にほどよい「衝撃」を与えよう

骨は衝撃(刺激)を与えると強くなるという性質があり、ランニングやジャンプなどで衝撃が加わると、その衝撃に耐えうるように丈夫な骨がつくられます。「かかと落とし」は、脚の付け根に衝撃を与える運動で、継続することによって、脚の骨全体、特に付け根の部分を強化することができます。

1日30回×3セットを目標に取り組んでみましょう。ただし、誤った方法で実践すると効果が得られない場合があるので、まずはむやみに回数をこなすことよりも、正しいフォームの習得を目指してみてください。

準備

椅子やテーブルなど、安定感があり支えになるものを用意する。

かかと落としの方法

STEP1

両足を肩幅よりやや広めに開き、上半身を、股関節から少し折り曲げるイメージで前傾姿勢をとる。

STEP2

椅子の背(テーブル)をつかみ、軽く膝を曲げた状態から、両足のかかとを上げる。

STEP3

重心をやや後ろに傾け、一気にかかとを地面に落とす。このとき「股関節に衝撃が来ている感覚」があればOK! このSTEP1からSTEP3の動きをワンセットとします。

POINT

・かかとを落としたとき、衝撃が首や頭に響くような場合にはフォームが誤っているため、膝の曲げ具合や前傾具合を調整しながら試してみましょう

・かかとを上げる高さで強度の調整が可能です。下記を目安に挑戦してみましょう。

★腰や膝、股関節などに不安・痛みがある方は3cm程度
★痛みなどがない初心者の方は5cm程度
★かかと落としに慣れ、痛みもない方は8cm程度

・硬い床で行うのが基本ですが、マンションで階下への音や振動が気になる場合にはヨガマットを敷き、裸足で実践しても効果が期待できます。また、足への衝撃が気になる場合には、靴下を履いて行う、カーペットの上で行うなど、適宜衝撃を調整してください。そのほか日々の生活のなかで、歩く際にかかとから着地するようにすることも効果的です。

予防に「早すぎる」ことはありません。健康寿命(健康上の理由で日常生活が制限されたり、なんらかの助けを必要としたりせず、健康に生活を送れる期間)を延ばすためには、毎日の積み重ねがとても重要です。

これまで運動を継続することに大きなハードルを感じていた方も、将来の自分のために少しずつでも習慣にしていけるよう、ゆるスクワットとかかと落としに今日から挑戦してみてはいかがでしょうか。

「骨と筋肉のつくり、役割」については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

骨と筋肉のしくみ・役割とは?体のつくりをわかりやすく解説
私たちが生きていくためには、呼吸や水分・食事の摂取、睡眠が欠かせません。では、こうした行動ができるのはなぜでしょうか。それは、骨や筋肉が私たちの体を支えたり、動作に必要な部位を動かしたりしてくれているからです。

いま、あなたがこの文章を読んでいる間も、骨が体全体を支え、呼吸や目を動かすための筋肉が働いています。本記事では、私たちの日々の生活の動作に欠かせない「骨」と「筋肉」について解説します。
https://helico.life/monthly/230304bonemuscle-kiso/
教えてくれたのは・・・
中村 幸男先生
信州大学医学部整形外科

医学博士。長野県生まれ。自治医科大学卒業後、米国ハーバード大学医学部講師を経て、信州大学整形外科・特任教授。専門は膝関節・股関節外科、骨粗鬆症、関節リウマチ。国内外の骨研究に関する賞を多数受賞。日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会評議員、日本リウマチ学会専門医・指導医・評議員、日本リウマチの外科学会評議員、臨床遺伝専門医、日本骨粗鬆学会認定医・評議員、日本骨代謝学会評議員、日本軟骨代謝学会評議員。健康寿命延伸に向け、長野県内外におけるさまざまな活動に取り組み、骨・ロコモ対策を推進する。朝日放送テレビ「たけしの家庭の医学」など、メディアを通じても健康の重要性を訴求している。中村先生考案の ”二大寝たきり骨折” の予防体操である「かかと落とし」および「おへそ引っ込み体操」を提唱。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:チチチ
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