目が乾く、ものがかすんで見える、ずっと目を開けていられない……。そう感じている人は、もしかしたらドライアイかもしれません。涙は目を守るための大切なもの。涙の分泌量や性質の異常によって起こる疾患・ドライアイは、さまざまな目の不快感を引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。特に近年、パソコンやスマートフォンの普及によってドライアイに悩まされる人が増えています。この記事では、ドライアイの基礎知識やなりやすい人の特徴、すぐに始めることができる対処法などを解説。気軽にできることからぜひ試してみてください。
疲れ目の原因かも? ドライアイとは
涙は目の表面を覆うことで目を保護する大切な役目を担っています。ドライアイとは、涙の量や質の異常によって、涙が目の表面を十分に覆うことができなくなり、さまざまな不調が引き起こされる疾患のこと。乾き目以外にも、目が疲れやすい、充血するなど、さまざまな症状があり、長期にわたってQOL(生活の質)が下がるため、仕事などの生産性低下の原因にもなりかねません。重症化すると目の表面に傷ができ、治るまでに時間がかかるケースもあるため、できるだけ早いうちに対処することが大切です。
あなたはドライアイ? セルフチェックしてみよう
ドライアイの症状の現れ方は人それぞれ。次のなかに5つ以上心当たりがある場合は、ドライアイの可能性があるかもしれません。
□ 目がゴロゴロする
□ 目の乾きを感じやすい
□ 目の疲れを感じやすい
□ 目ヤニが出る
□ 目が痛い
□ 目にかゆみがある
□ 目が充血している
□ 目が重たく感じる
□ 涙が出やすい
□ ものがかすんで見える
□ 光をまぶしく感じる
□ 目に不快感がある
ドライアイは、自覚症状がほとんどないうちに症状が進行していく場合もあります。普段、目の不調を感じない人も「10秒間まばたきをせずに目を開けたままキープする」ことができるかをチェックしてみましょう。目に十分なうるおいがあれば、目を開け続けられますが、目が乾燥しがちな場合、開けたままでいることが難しいはず。ただし、まばたきをせずにいられるかどうかは、ドライアイの可能性を確認するひとつの指標ですので、自身のドライアイの状態を正確に知りたい場合は、眼科での診断を受けることをおすすめします。
「涙はあるのにドライアイ」というケースも
ドライアイには、大きく分けて「涙の量の異常(涙液分泌低下型)」と「涙の質の異常(蒸発亢進型)」の2種類があります。
涙の量の異常(涙液分泌低下型ドライアイ)
涙の分泌が少ないために引き起こされるドライアイ。私たちの体には、目が刺激を受けたり乾いたりすると、涙腺が刺激されて涙の分泌が促される仕組みがあります。ですが、その仕組みがうまく働かないことにより、目が常に乾いた状態になってしまいます。
涙の質の異常(蒸発亢進型ドライアイ)
涙の質の異常によって引き起こされるドライアイ。涙は、外側から「油層」「水層」「ムチン層」という3つの層から構成されており、油層には水分の蒸発を防ぐ働きがあります。油層が減少すると、涙の水分が蒸発しやすくなるため、目が乾きやすくなってしまいます。
こんな人はドライアイになりやすい
ドライアイは、次のような人に起こりやすいとされています。
□ 日常的にコンタクトレンズを装着している
□ パソコンやスマートフォンを長時間使用している
□ エアコンの風がよく当たる場所で長時間過ごしている
□ 睡眠の質が悪い
□ 食生活が乱れている
□ メタボリックシンドローム
□ 40歳以上
□ 女性
特に最近は、パソコンやスマートフォンなどの画面を長時間見ることによるドライアイが増えています。日常的にIT機器を使う人は、自覚症状がないとしても、なるべく目に優しい生活を心がけるとよいでしょう。
また、お子さんがスマートフォンやタブレットを使うシーンも目立ちますが、子どもは大人と比べてピントを合わせる力が強いため、目の疲れを感じにくいそう。そのため、子どもがデジタルデバイスを使う際は、そばにいる大人が注意を払う必要があります。あらかじめデバイス使用の制限時間を決めておいたり、休憩をはさむように声をかけたりして、見守る必要があるでしょう。
なお、環境的な要因だけでなく、睡眠や食生活の乱れなどの生活習慣がドライアイにつながるほか、近年の研究では、メタボリックシンドロームがドライアイの原因になることもわかってきました。
その一方で、生活習慣に問題がない人でも、ドライアイになる可能性は十分にあります。40代以降になると涙や涙の蒸発を防ぐ油分の分泌量が減少していくため、ドライアイになりやすくなります。特に女性は、まぶたの内側にある油分を分泌する器官「マイボーム腺」が男性ホルモンによって活発に働く性質を持つため、もともと油不足になりやすい傾向が。性ホルモンが減る閉経もドライアイのリスクになります。
そのほかにも、体のいたる部位が乾きがちになる自己免疫疾患「シェーグレン症候群」や、薬の副作用によってドライアイが引き起こされる場合もあります。
今日からできる! ドライアイを和らげる日常の工夫
ドライアイは、いくつもの要因が重なって発症しているケースが多いため、その要因や、症状を悪化させる可能性のあることを、できるだけ避けるように心がけることが大切です。特にコンタクトレンズ、パソコン、エアコンなどの環境要因は、比較的すぐに見直せるポイント。目に優しい環境づくりを目指してみましょう。
コンタクトレンズを見直す
コンタクトレンズの装着はドライアイの大きなリスク因子です。特にコンタクトレンズ装着中に目の渇きを自覚しやすい人は、思い切ってコンタクトの使用をやめてみるか、メガネと併用をする、もしくはドライアイ用のコンタクトレンズを利用するのがおすすめです。
エアコンの風向きを調節する
冷暖房の風が当たりやすい環境にいると目が乾きやすくなります。できるだけ直接風が当たる場所を避けて過ごせるよう、風向きを調整したり、テーブルや椅子など家具の位置を変えてみたりといった工夫をするとよいでしょう。
デスクワークのパソコン作業環境を見直す
パソコンの長期間使用は、目にとってどうしても負担になってしまうもの。デスクワークの人はぜひ、下記の方法を実践してみてください。
□ パソコンの画面はやや見下ろす視線になる位置に置く
□ 画面と部屋の明るさを合わせる
□ 正しい姿勢を意識する
□ 30分に1回は休憩する(休憩時間はスマートフォンなどほかのデバイスを見ないで目を休ませる)
□ デュアルディスプレイは視線の距離を合わせた配置にする
□ ときどき席を立ち、意識的に体を動かすようにする
目を温める
目が疲れたと感じたときは、市販のグッズや蒸しタオルで目を温めながらリラックスするのもよいでしょう。蒸しタオルはビニール袋で覆い、その上にタオルを巻いて使うと冷めにくくなるのでおすすめ。温かさは火傷をしない程度で、人肌やお風呂くらい(42℃以下)が適温です。
ただし、アイメイクをしたまま蒸しタオルなどで目を覆うと、メイク汚れが目に入ってしまうことも。汚れが入ることで、涙の油分を分泌するマイボーム腺が詰まってしまう可能性もあります。目を温めるのは、入浴後などメイクを落としてからにするのがよいでしょう。
「深いまばたき」をする
目をぎゅっと閉じて数秒キープする「深いまばたき」は、涙だけでなく、涙の蒸発を抑える油分の分泌も促してくれます。パソコンなどで集中して作業をしていると、まばたきの回数が減りがちになるため、休憩時間や気がついたときなど、意識して「深いまばたき」をしてみましょう。
あくびや深呼吸をする
あくびや腹式呼吸は、副交感神経を刺激して涙の分泌量を増やします。目の乾きを自覚したときは、あくびや深呼吸をすると症状が和らぐこともあるでしょう。
症状が深刻な場合は、早めに眼科で治療を
ドライアイは日常生活を見直すことで改善するケースもありますが、症状が深刻な場合や、シェーグレン症候群など別の病気が原因の場合は、セルフケアだけでは改善しません。放っておくと視力に影響を及ぼすこともありますので、できるだけ早めに眼科で治療を受けましょう。
治療は基本的に目薬や眼軟膏などを用いた薬物療法となります。軽症の場合、1か月程度で改善が見込めますが、重症の場合、年単位での治療が必要になることも。そうならないよう、日ごろからぜひ目の健康に気をつけて、早めのケアを心かげていきましょう。
- 教えてくれたのは・・・
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- 川島 素子先生
慶應義塾大学医学部卒業。LIME研究会世話人をつとめるほか、日本眼科学会、日本角膜学会、日本涙道涙液学会、日本眼形成再建外科学会などの学会に所属。生まれ育った埼玉県久喜市で「久喜かわしま眼科」を開業し副医院長として診療を行う。