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心の健康に必要な食事とは?おすすめ献立&レシピ紹介

私たちの生活に欠かせない食事。食べすぎたり栄養が偏ったりすると、肥満や心臓病、脳卒中、がんなど生活習慣病のリスクが高まります。さらに最近の研究では、心の不調についても食事が関係していることがわかってきました。では、どういった食事が心に影響をおよぼすのでしょうか。

『うつ病の毎日ごはん』『こころに効く精神栄養学』などの書籍を出版されている帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科の功刀浩先生に、心と食事の関係についてお聞きしました。

教えてくれるのは…
功刀 浩(くぬぎ ひろし)先生
帝京大学医学部附属病院 メンタルヘルス科 主任教授

1986年に東京大学医学部を卒業。国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部部長、気分障害先端治療センター長などを務めた後、2020年より帝京大学医学部精神神経科学講座の教授となる。統合失調症、うつ病・双極性障害、栄養学的治療を専門としている。著書に『心の病を治す 食事・運動・睡眠の整え方』(翔泳社)『こころに効く精神栄養学』(女子栄養大学出版部)などがある。

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INDEX
エネルギー過多になりがちな現代の食生活
「幸せホルモン」にも十分な栄養が不可欠
バランス良く食事をとるための合言葉「さあ、にぎやかにいただく」
朝食におすすめ。ボリュームたっぷりメニュー
レシピ:ハムエッグ 温野菜添え
レシピ:きのこと野菜の具だくさんみそ汁
朝とは異なる主菜を選ぼう。おすすめの夕食メニュー
レシピ:カキとアサリのにんにく風味
レシピ:カラフル野菜のポトフ
食べる量にも気をつけて、バランスの良い食生活を送ろう

エネルギー過多になりがちな現代の食生活

現代の食生活は、「エネルギーは過剰で、必要な栄養素が不足している」といわれています。エネルギーをつくる大事な要素の一つが、炭水化物。白米やパン、パスタなど、主食と呼ばれるものがそれにあたります。また、ケーキやチョコレートなどのスイーツもエネルギーをつくる源。これらはコンビニやスーパーで簡単に手に入る、手軽でおいしい食べ物の代表といえるでしょう。

一方で、「良薬口に苦し」ともいわれるように、栄養価の高い食べ物は好き嫌いがわかれやすいことも。たとえば、玄米は白米と比べると、ビタミンやミネラル、食物繊維などが豊富に含まれており、栄養価の高い食べ物です。しかし、炊き方が難しくパサパサした食感になってしまうため、白米を食べる人がほとんど。

また、肉類でいうと、レバーには鉄分やビタミン、アミノ酸などの栄養素が多く含まれていますが、苦手な食べ物としてもよく名前があがる食材でしょう。

おいしくて食べやすいものだけを食べていると、エネルギーばかりを摂りすぎてしまい、必要な栄養素を十分に摂れなくなってしまいます。すると、すぐに体が疲れてしまったり、風邪をひきやすくなったりしてしまうので注意が必要です。

「幸せホルモン」にも十分な栄養が不可欠

栄養不足は体の健康と深い関係がありますが、心の不調にもつながるのはなぜでしょうか。それには脳の働きが関係しています。

私たちの感情の一部は、脳から分泌される物質によって強く影響されています。たとえば、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニン。この物質が分泌されることで、心の落ち着きやリラックスした感情が引き起こされます。ほかにも、ドーパミンと呼ばれる物質は、分泌されることでやる気や幸福感をもたらします。

これらの物質はいくつかの要因で増減しますが、十分な栄養が脳に届かないことでも量が減ってしまいます。脳の機能を働かせるためには、栄養バランスの良い食事が欠かせないのです。

バランス良く食事をとるための合言葉「さあ、にぎやかにいただく」

栄養不足にならないために、普段の食生活を見直す方法の一つとして、おすすめの食材の頭文字を並べた合言葉「さあ、にぎやかにいただく」と、それに多く含まれる栄養素を紹介します(※『うつぬけの「頑張らない」ごはん』 より抜粋)。

さ:さかな(魚介類)……タンパク質、n-3系多価不飽和脂肪酸、ビタミンDなど
あ:あぶら……n-3系多価不飽和脂肪酸、オリーブオイルなど
に:にく……アミノ酸、ヘム鉄、亜鉛など
ぎ:きのこ……ビタミンD、食物繊維など
や:やさい……ビタミン、ミネラル、食物繊維など
か:かいそう……鉄、マグネシウムなど
に:にゅうせいひん……タンパク質、カルシウムなど
い:いも……食物繊維、ビタミンなど
た:たまご……タンパク質、アミノ酸など
だ:だいず……葉酸、カルシウム、タンパク質など
く:くだもの……ビタミン、カリウム、食物繊維など

1日のなかでこれらの食材を網羅できると理想的です。とくに、カルシウム・マグネシウム・亜鉛・鉄・葉酸、食物繊維は不足しやすい栄養素。ぜひ意識して献立を考えてみてください。

朝食におすすめ。ボリュームたっぷりメニュー

栄養バランスが考えられた献立の例として、まずは朝食を紹介します。

メニュー例

  • 全粒穀物ごはん
  • 具だくさんみそ汁
  • ハムエッグ 温野菜添え
  • くだもの、ヨーグルト
  • 緑茶

主菜の「ハムエッグ 温野菜添え」では良質なタンパク質をとり、野菜でビタミンを補給。みそ汁に野菜やきのこ、海藻をたっぷり入れることで、ビタミンや食物繊維をしっかり摂ることができます。

主食は玄米をはじめとした全粒穀物のご飯。フルーツにはヨーグルトをかけ、ビタミン、ミネラル、腸内環境を改善させるプロバイオティクスを摂取しましょう。飲み物は、ポリフェノールやカテキン、リラックス効果を促すテアニンを含んだ緑茶がおすすめ。ぬるま湯で時間をかけてお茶を淹れると、テアニンの効果がよく出るといわれています。

※プロバイオティクスについては『腸活のキーワード「シンバイオティクス」って何?』で詳しく解説していますので、ぜひそちらの記事もあわせてご覧ください。

レシピ:ハムエッグ 温野菜添え

材料(1人分)

  • 卵 1個
  • ハム 1枚
  • トマト 1/6個
  • にんじん 2cm
  • ブロッコリー 3房
  • かぶ 1/4個
  • サラダ油 少量

つくり方

  1. にんじんは1cmの厚さ、かぶは半分に切り、ブロッコリーとともに茹でる。
  2. フライパンにサラダ油を熱してハムを入れ、卵を割り落とし、好みの加減に火をとおす。器に盛り、1とトマトを添える。

レシピ:きのこと野菜の具だくさんみそ汁

材料(1人分)

  • まいたけ 15g
  • 長ねぎ 4cmから5cm
  • 絹さや 2枚
  • カットわかめ(乾) 小さじ1
  • 油揚げ 1/4枚
  • だし汁 3/4カップ
  • みそ 小さじ2弱

つくり方

  1. まいたけをほぐす。長ねぎは斜め切り、絹さやは半分に、油揚げは細切りにする。
  2. 鍋にだし汁を煮立てた後、1とわかめを加えてさっと煮て、みそを溶き入れる。

朝とは異なる主菜を選ぼう。おすすめの夕食メニュー

肉を朝に食べたら、夜の主菜は魚介をつかったメニューを取り入れてみてください。スープをつくるポイントは、具だくさんにすること。いろいろな食材を摂ることができますし、汁の量も減り、塩分の摂りすぎを防げます。

メニュー例

  • カキとアサリのにんにく風味
  • カラフル野菜のポトフ
  • 全粒穀物のごはん
  • 野菜ジュース

レシピ:カキとアサリのにんにく風味

材料(1人分)

  • カキ 4個から5個
  • アサリ(殻つき、砂抜き済み) 100g
  • ブロッコリー 4房
  • にんにく(薄切り) 1/2片
  • 赤唐辛子(小口切り) 少量
  • 白ワイン 大さじ1
  • 塩、こしょう 各少量
  • バター 小さじ1
  • オリーブオイル 小さじ2

つくり方

  1. カキはよく洗って水けを拭く。ブロッコリーは半分に切る。
  2. フライパンにオリーブオイルとにんにく、赤唐辛子を入れて火にかけ、香りが立ったらカキを加えて炒める。
  3. アサリ、ブロッコリーを加え、白ワインを振って蓋をし、アサリの口が開いたら、塩、こしょうで味をととのえ、バターを加えて混ぜる。

レシピ:カラフル野菜のポトフ

材料(1人分)

  • じゃがいも 1/2個
  • にんじん 1/8本
  • 玉ねぎ 1/8個
  • セロリ 3cm
  • ブロッコリー 2房
  • カリフラワー 2房
  • プチトマト 2個
  • 水 2カップ(400ml)……(A)
  • 固形スープの素 1個……(A)

つくり方

  1. じゃがいも、にんじんは乱切りに、玉ねぎは横半分、セロリは1cm幅に切る。ブロッコリー、カリフラワー、プチトマトは半分に切る。
  2. 鍋に(A)とじゃがいも、にんじんを入れて煮立て、玉ねぎ、セロリ、カリフラワーを加えて15分ほど煮る。ブロッコリー、プチトマトを加えてひと煮する。

※すべてのレシピは『うつ病の毎日ごはん』(女子栄養大学出版部)より抜粋。

食べる量にも気をつけて、バランスの良い食生活を送ろう

「朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧民のように食べなさい」

欧米にはこんなことわざがあります。これからエネルギーを使う1日の始まりである朝には、ボリュームのある豪華な食事を。逆に夜は食後の活動が少ないため、1日のなかで一番少ない量のシンプルな食事でOK。朝・昼・晩の食事の量にも気をつけ、バランスの良い食事を摂る習慣を身につけましょう。

ストレスを感じ始めると、食欲は増加傾向になります。しかし、あまりにストレスが強くなると逆に食欲は減少。食べられないことで心身にも影響が出てしまいます。食事の量や、食材に含まれる栄養素、心の状態などを普段から意識して、日々の食生活を見直してみましょう。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:渡邉唯
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