ほとんどの方が経験したことがあるといっても過言ではない「頭痛」。だからこそ、多くの場合「また頭痛か」「寝れば治る」と軽く見られがちです。しかし、よく起こるからといって、見くびってはいけません。頭痛の原因や症状によってはQOL(生活の質)を下げるだけでなく、命に関わる危険性も。
本記事では、命に関わるような頭痛はどのような病気に伴うのか、どういった症状がみられたときに医療機関を受診するべきなのかなど、「危険な頭痛」について解説します。
ほかの病気が原因で起こる「二次性頭痛」には要注意
頭痛には大きく分けて、2つの種類があります。1つ目は「頭痛もちの頭痛」ともいわれる、一次性頭痛。「片頭痛」や「緊張型頭痛」といわれる日常的に起こりやすい頭痛が、これにあたります。
そして2つ目が、「別の病気」が原因で引き起こされる、二次性頭痛です。QOLを下げることはあっても命を脅かすようなことはない一次性頭痛に対して、二次性頭痛には脳の病気などが隠れていることもあり、放置してしまうと命に関わることも。いつもと違う頭の痛みがしたら、より注意が必要です。
※「その頭痛、あきらめないで! タイプ別頭痛の対処法」で、一次性頭痛と二次性頭痛の違いなどについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
命に関わる頭痛とは? 脳卒中や脳腫瘍、髄膜炎など
では、「命に関わる頭痛」を引き起こす病気は、具体的にどのようなものなのでしょうか。頭痛以外の症状などとあわせてみていきましょう。
脳卒中
脳卒中(脳血管障害)は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳に血液が行き渡らなくなり、脳の働きに障害が起きてしまう病気です。脳卒中は、血管が詰まる(あるいは狭くなって血流が悪くなる)ことで起こる「脳梗塞」のほか、血管が破れることで起こる「脳出血」、「くも膜下出血」の3つに大別できます。
特に、くも膜下出血や脳出血は激しい頭痛が起こりやすいとされており、その痛みは「頭をハンマーやバットで殴られたような感覚」と表現されるほど。また、頭痛の他にも以下のような症状が挙げられます。
- 体(顔や手足)の片側が動かしにくくなる / しびれる
- ろれつが回らなくなる
- 物がぼやけて見えたり、視野が欠けたりする
- 意識障害が生じる
- めまいやふらつきが生じる
激しい頭痛や上記のような症状が「突然」現れることも特徴です。高血圧や喫煙、大量飲酒は脳卒中のリスクを高めるといわれているため注意しましょう。
脳腫瘍
脳腫瘍(のうしゅよう)は、頭蓋骨の中(脳)にできる腫瘍の総称です。頭蓋骨に覆われた脳に腫瘍ができ、それが大きくなっていくと圧力を逃がすことができず、腫瘍が脳を圧迫。これにより頭痛を引き起こすことがあります。ちなみに、頭痛の発生に、腫瘍の良性・悪性は関係ありません。
また、頭痛だけでなく、吐き気が生じることも。加えて、脳はそれぞれの部位ごとに「運動機能」「言語機能」などの役割を担っているので、腫瘍ができる位置によってその部位の機能に障害が生じることがあります。具体的に見られるのは、以下のような症状です。
- 体の麻痺(しびれ)
- 年月日や、いまいる場所などがわからなくなる
- 集中力や記憶力が低下する
- 聞いた言葉を理解できるがうまく話せない / 聞いた言葉を理解しにくくなる
- 物が二重に見えたり、視野が欠けたりする
- めまいやふらつきが生じる
こうした症状に加えて、日を追うごとに頭痛が強くなってきているような場合には注意が必要です。
髄膜炎
頭痛のなかには、感染症などの炎症が原因で起こるものがあります。たとえば、インフルエンザにかかった際に起こる頭痛もそのひとつ。インフルエンザは「全身性の炎症」という分類になりますが、髄膜炎(ずいまくえん)は「脳の表面にある膜(くも膜・軟膜)に起こる炎症」に分類されます。
髄膜とは、脳を覆って保護する膜のこと。ここに何らかの理由で細菌やウイルスが到達し、感染(炎症)を引き起こします。鼻やのどなど、別の感染部位から細菌やウイルスが血流にのって髄膜に到達するケースがほとんどで、細菌やウイルスを自身の免疫で排除しきれない子どもがかかりやすいのが特徴。子どもは大人に比べ、免疫力が未熟であるためです。具体的な症状は以下の通りです。
- 発熱
- 頭痛
- 嘔吐
- 首の硬直(あごを胸につけられない)
- 意識障害
- 痙攣(けいれん)
- 食欲の低下
初期段階では頭痛や発熱、嘔吐など、風邪などと区別がつきにくいことが多く、診断が遅れる原因に。時間の経過とともに頭痛の程度が強くなっていく場合や、子どもの様子が「いつもと違う」と感じた場合には医療機関の受診を検討しましょう。
「経験したことがないほど痛い」「日に日に痛みが増していく」といった場合にはすぐに受診を
「頭痛」は日常的に起こるからこそ、医療機関の受診を迷う方も多いのではないでしょうか。しかし、その頭痛には、今回ご紹介したような一刻を争う病気が隠れていることも。「いままでに経験したことのないほどの痛み」「いつもの頭痛と何か様子が違う」「長期間にわたって頭痛が治まらず、日に日に痛みが強くなっていく」などといった場合には、迷わず脳神経内科や頭痛外来がある医療機関を受診しましょう。
一般社団法人日本頭痛学会 認定頭痛専門医一覧
日常的に起こる頭痛に対して、過度に構える必要はありませんが、「どんなときに即座に受診すべきか」についてはぜひ知っておきたいところ。頭痛そのものの程度や継続期間はもちろん、頭痛以外の症状についても着目してみてください。
- 教えてくれたのは・・・
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- 五十嵐 久佳先生
- 富士通クリニック頭痛外来・北里大学医学部神経内科客員教授
1979年に北里大学医学部を卒業。現在は神経内科医として、特に頭痛の診断や治療にあたる。患者に寄り添う丁寧な診療に、妊娠中や授乳中の女性からの信頼も厚い。自身の知見を活かし、テレビ・雑誌・Webなど幅広い分野で活躍中。主な監修に『頭痛女子バイブル』『さよなら!不快症状 頭痛』『頭痛をなんとかしたい 解消&予防』など。