身体的、あるいは精神的なストレスが原因となって起こる「緊張型頭痛」。デスクワークや家事・育児など、日々の生活において、無意識のうちに体に負担がかかる姿勢を取ってしまうシーンは多いものです。そうした小さな負担の積み重ねが「凝り」や「痛み」として体に現れます。
本記事では、特に緊張性頭痛の原因となりやすい部位の「凝り」にフォーカス。「ストレッチ系YouTuber」として活躍するオガトレさん直伝の「ながらストレッチ」をご紹介します。「ながらストレッチ」とは、生活動作をしながらできるストレッチのことで、日々の生活に忙しい方でも簡単に取り入れられるものばかり。これを機に、毎日数十秒だけでも、自分をいたわる時間をつくってみませんか?
- 教えてくれるのは・・・
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- 尾形 竜之介(オガトレ)さん
- 株式会社OGATORE 代表
動画共有サイトYouTubeにおいて、日本最大のストレッチチャンネルを運営する「ストレッチ系YouTuber」。「カラダの硬い人をゼロにする」を実現するため、理学療法士としての経験を活かし、さまざまな悩みに応じたストレッチをYouTube上で紹介している。親切でわかりやすく、視聴者に寄り添った丁寧な解説が支持され、チャンネル登録者数は約101万人(2022年4月現在)。そのほかプロテインバーの開発や、著書の刊行など、ストレッチを広めるためのさまざまな社会活動を行っている。
オガトレさんYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UC-a9wiNTKiLIRLTyIRdNbMg
- INDEX
- 頭痛がストレッチで改善? 体にもたらすメリットとは
- シャンプーしながらストレッチ! その1「側頭筋」に効果的
- シャンプーしながらストレッチ! その2「後頭下筋群」に効果的
- ドライヤーをしながらストレッチ! 「胸鎖乳突筋」に効果的
- 掃除機をかけながらストレッチ! 「ハムストリングス」に効果的
- デスクに向かいながらストレッチ! 「僧帽筋」に効果的
- 気持ちよくてもストレッチのやりすぎには注意!
- まずは短い時間でも毎日続けることを目指してみて
頭痛がストレッチで改善? 体にもたらすメリットとは
頭の両側がグーっと締め付けられるような頭痛を感じる方は、緊張型頭痛を起こしている可能性があります。緊張型頭痛の主な原因は、身体的・精神的なストレス。日頃からしっかりとリラックスする時間を設けたり、頭や肩、首の筋肉をほぐしたりしておくことが重要です
(※緊張型頭痛やそれ以外の頭痛の種類について詳しく知りたい方は「その頭痛、あきらめないで! タイプ別頭痛の対処法」もご覧ください)。
ストレッチを行って体の筋肉をほぐすことで、ケガや故障を予防したり、ボディメイクがしやすくなったりするほか、姿勢の改善も期待できます。悪い姿勢は腰や肩に余計な負担をかけるため、頭痛の原因になりかねません。また、ストレッチには筋肉をほぐす効果だけでなく、副交感神経が優位になることによるリラックス効果も。緊張型頭痛の症状がある方は、ぜひ試してみてくださいね。
早速ストレッチにトライ!
「ストレッチのよさはわかったけれど、どんなストレッチをやればいいの?」という方に、「ストレッチのおにいさん」ことオガトレさんが、緊張型頭痛の改善が期待できるストレッチを伝授! ストレッチをする際には「痛気持ちいい」くらいの強度で、筋肉の位置や形、大きさを意識すると、効果が高まるそうです。これらのポイントを意識しながら、まずは1つだけでもトライしてみましょう。
シャンプーしながらストレッチ! その1「側頭筋」に効果的
まず1つ目は、お風呂で髪を洗うついでにできるストレッチ。こめかみ近く、皮膚のすぐ下にある「側頭筋(そくとうきん)」という筋肉を伸ばします。マスクのひもやメガネによって耳に負担がかかることで、硬くなりやすい筋肉でもあるので、しっかりほぐしていきましょう。
- 手を大きなボールを持つような形で固定する。
- そのまま頭の横で、耳を覆うようにしながら手を当てる。このとき、指をしっかり立てて突き刺すようなイメージで。 ※ただし頭皮に爪を立てないように注意
- 手をあてたまま円を描くように、30秒間回す。回す方向は、前向きでも後ろ向きでも、やりやすい方向で構いませんが、特に上に持ち上げる動きを意識するとGOOD! 皮膚が一緒に動いているような感覚があればOKです。
シャンプーしながらストレッチ! その2「後頭下筋群」に効果的
続いて2つ目も、お風呂などで実施しやすいストレッチです。うなじの辺りにある「後頭下筋群(こうとうかきんぐん)」をほぐします。
- 手をフックのような形に固定する
- 手をうなじの中央辺りにあてる
- 指を立てたまま、皮膚を巻き込むようにしてゆっくり外側に流す動作を30秒間繰り返す。このとき、ほぐしたい部分に指を入りやすくするため、少し上を向いてあごを突き出すようにするとGOOD!
ドライヤーをしながらストレッチ! 「胸鎖乳突筋」に効果的
次はお風呂から上がったタイミングで、髪を乾かしたり、スキンケアをしたりしながらできるストレッチ。耳の後ろから鎖骨のあたりにかけてある、「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」という筋肉を伸ばします。猫背の方や、首が前に出ている方が硬くなりやすい筋肉です。
- 鎖骨を上から押しつけるように、人差し指を鎖骨に沿って当てる。このあと首を動かすときに、鎖骨が一緒に動かないように止めるイメージで押さえましょう。
- 押さえた鎖骨と反対側の天井(斜め後ろ)を見るようにあごを上げる。
- あごを上げたまま口を開け、しゃくれさせながらゆっくり閉じる。あごから鎖骨にかけての筋肉がグーッと伸びるので、その状態で30秒間キープ。
掃除機をかけながらストレッチ! 「ハムストリングス」に効果的
次は、掃除機をかけながらできるストレッチ。お尻から膝の後ろ側にかけて、太もも裏にある大きな筋肉「ハムストリングス」を伸ばします。「頭痛改善が目的なのに、なぜ脚の筋肉をほぐすの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、「痛みを感じる箇所だけでなく、根本の原因を探り、つながりのある筋肉をしっかりほぐすことが大切」とオガトレさんはいいます。ハムストリングスは背中とつながりがある筋肉のため、この部分が硬くなることで背中の筋肉の凝りなどを引き起こし、最終的に首や肩、頭にまで影響してしまう可能性があるのです。
- 片足を少し前に出して、出した足のつま先を上げる。このとき前の脚の膝を伸ばしておくのがポイント。
- お尻を突き出すようにしながら上半身を少し前に倒し、「く」の字の姿勢で30秒間キープ。前に出したほうの、ハムストリングスの伸びを感じましょう。後ろの脚は曲がってもOKです。
デスクに向かいながらストレッチ! 「僧帽筋」に効果的
次は比較的シチュエーションを選ばず、座ったままでも気軽にできるストレッチ。耳の付け根から首にかけてついている「僧帽筋(そうぼうきん)」を伸ばします。デスクワークなどで硬くなりやすい筋肉なので、両側しっかり伸ばしましょう。
- 手の甲を腰の少し上あたりにあてる。肩甲骨をロックすることで、僧帽筋が伸びやすくなります。
- 反対の手を逆側の耳上付近に添えるようにして、頭を真横に倒し30秒間キープ
気持ちよくてもストレッチのやりすぎには注意!
実際にやってみると、気持ちがよくてついついずっとやってしまうという方もいるかもしれません。しかし、何事もほどほどが大切。ストレッチのやりすぎで逆に筋肉が伸びすぎてしまい、筋肉を痛めてしまうこともあるのです。こまめにストレッチを行うことは◎ですが、1回(1つの部位)につき、長くとも30秒程度にしておきましょう。
また、しばらくストレッチを継続しても頭痛が続く(痛みが増す)、あるいは経験したことのないような頭痛が生じる場合には、緊張型頭痛ではないほかの原因が隠れている可能性もあるため、脳神経内科や頭痛外来のある医療機関の受診を検討しましょう。
まずは短い時間でも毎日続けることを目指してみて
ここで紹介したストレッチは、1回30秒を1セットとし、1日3セットほどできるとベスト。また、ストレッチがもっとも効果を発揮するのは「毎日継続」したとき。どれか1種類を数秒間行うだけでもよいので、日々の生活にストレッチを取り入れてみましょう。
タイミングとしては、体が温まっているお風呂上がりや運動後がおすすめ。朝イチは体が冷えていて、筋肉が伸びづらいのでなるべく避けましょう。まずは2週間ほど続けることで変化を感じられるケースが多く、そのまま徐々にストレッチを習慣化させていけば、筋肉もよいコンディションをキープできるようになっていきます。
仕事や家事に育児、さまざまなことに追われて日々忙しく過ごしている方が多いため、いきなりまとまった時間を確保するのは難しいと思います。「全部を完璧にやろうとしなくてもいいんです。最初はとことんハードルを下げていいので、自分のためにストレッチをすることが大切ですし、それが自分の自信にもつながります」とオガトレさん。まずは1日のうち数秒間だけでも「自分をいたわる時間」として、ストレッチを取り入れてみるのはいかがですか。