食中毒のリスクを下げる!食材切る順ガイド
実際の調理場面では、「これがテッパン!食中毒予防の三原則」で紹介した基本に加え、食中毒菌による汚染リスクに応じて食材を切ったり扱ったりする順番を決めることも、家庭でできる有効な食中毒対策です。
調理の段取りを考えるときの参考に、こちらをどうぞ!
果物や野菜の汚染リスクは低め。新鮮で見た目の異常がないものを、表面の土汚れなどを流水で洗い流して使いましょう。特に生で食べる果物や野菜は、魚や肉を扱う前にカットを済ませ、生肉や魚から離しておくのが安心です。
魚による食中毒の主な原因となるのは「腸炎ビブリオ」。10℃以下で増殖が抑えられるため、調理や食事の直前まで冷蔵庫で保管を。真水に弱いため、流水でよく洗うことも対策になります(シンクの汚染には注意)。魚の生食では温度管理がより重要です。「アニサキス」にも注意を(「食中毒菌・ドクメン8」参照)
「ウェルシュ菌」や「E型肝炎ウイルス」などによる汚染リスクがあるものの、肉類の中ではリスクは比較的低め。しかし、特にE型肝炎は命に関わることから、慎重に扱い、必ず肉の中心部まで十分な加熱を。なお、豚肉に限らず、肉類を流水等で洗う必要はありません(むしろ水はねで菌が飛び散り危険)。
「腸管出血性大腸菌(O157など)」や「ウェルシュ菌」などによる汚染リスクあり。特にO157は少ない菌数でも食中毒を引き起こし、子どもや高齢者では死亡例もあることから、汚染を広げないよう慎重な扱いを。なお、牛肉にみられる食中毒菌は肉の表面に付着するため、適切に管理された塊肉なら、表面をよく焼けば中は生でもOK(レアステーキなど)。一方で成型肉やひき肉料理、内臓肉は中心部までの十分な加熱を。
最も汚染リスクの高い食肉で、「カンピロバクター」が高い確率で検出されます。ほかの食品への交差汚染を防ぐため、調理では最後に扱うのがベスト。用途別にカットされた鶏肉を購入し、家でのカット工程を省くこともリスク低減に◎。なお、カンピロバクターは肉の内部に潜り込む性質があり、生や半生(表面をあぶるだけなど)で食べるのは危険です。必ず中まで十分な加熱を。
【監修】浦上 弘 先生
(新潟薬科大学応用生命科学部食品安全学研究室教授、日本HACCPトレーニングセンター理事長)
食中毒予防に関するエキスパート。監修書に『HACCP完全解説―国際的に通用する正しいHACCPとは』(鶏卵肉情報センター)など。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.40
「食中毒」より転載(2021年6月15日発行)