かぜの正しいおうちケア
急な症状でも慌てずに。セルフケアの要点、お伝えします。
やはり「かぜに休養」に勝るケアはナシ。熱や咳といった、体がかぜを治そうとする防御反応には、平常時の何倍ものエネルギーを必要とするため、できるだけ安静にして、体力の消耗を抑えることが回復への早道です。かぜのときに感じるだるさは、体からの「休んでて!」のメッセージなのです。
かぜの症状は、かぜを治そうとする体の自然な防御反応。必ずしも薬で抑え込む必要はありません。でも、そうは言ってもやっぱりつらいよ!というときに一時的に使うのが「かぜ薬」の正しい使い方。かぜ自体を治す効果はないので、漫然と飲み続けず、自分の症状に合った薬を、つらいときだけ使いましょう。
「早く元気にならなければ……」と、食欲がなくても何か食べようとしがちですが、かぜのときには胃腸も不調になることが多いもの。水分が十分に摂れていれば、食事は無理には摂らなくてOK。食べられないときの水分補給には、スポーツドリンクや経口補水液が◎です。少しずつこまめに飲みましょう。食欲が回復してきたら、食事も少しずつ再開を。
「汗をかいて熱を下げるために厚着する」のは、実は意味のないこと。熱が下がるときには厚着をしなくても自然に汗をかくので、寒ければ毛布などで体を温め、暑いときには掛け物を薄くするなど、その時々に合わせて快適な環境に調整すればOK。汗で濡れた下着はこまめに取り替え、水分摂取も忘れずに。
発熱時や倦怠感の強いときには、体温の上昇や体力のさらなる消耗を避けるために、湯船にゆっくりつかるような入浴は控えるのが無難です。長時間の入浴によって脱水が進む心配もあります。少し元気が出てきて、さっぱりしたいときには、短時間の入浴やシャワー浴でさっと汗を流すのがよいでしょう。
氷枕や額に貼る冷却シートは、解熱目的というよりも、発熱に伴う不快感の軽減や、ひんやり気持ちいい感覚を得るために使うものと考えましょう。冷たさを不快に感じるなら無理して使う必要はありません。なお、乳幼児に冷却シートを使用する場合には、シートがズレて鼻や口を塞いでしまう窒息事故にご注意を。
発熱もまた、体からウイルスを排除しようとする自然で大切な反応であり、「下げねばならない悪者」ではありません。とはいえ、熱があると倦怠感で食事や水分が摂りにくかったり、寝苦しさを伴うことも。解熱剤はこうしたつらさがあるときに、「体温を一時的に少し下げて体を楽にするため」に使うもの、と心得ましょう。
※このほか、家庭内での感染を防ぐためには……症状のある人とその他の家族が過ごす部屋を分ける(一緒に過ごすときはマスク着用)、お世話する人を限定する、定期的な換気、トイレや共有部分の手すり等のアルコールによる拭き取りを行う、などが有効な対策です。
【監修】岸田 直樹 先生
(総合診療医・感染症医/Sapporo Medical Academy 代表理事)
感染症診療のエキスパート。感染症コンサルタントとして全国各地の医療機関のアドバイザーも務める。セルフケア教育で厚生労働省医政局長賞受賞。主な著書に『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』(医学書院)など多数。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.46
「かぜ」より転載(2022年12月15日発行)