補聴器の誤解あるある
「まだそんな年じゃない」「うっとうしいだけ」なんて、補聴器を敬遠していませんか?だけど補聴器は、周囲とのコミュニケーションをつなぐ、強力なサポーター。正しく知れば、きっと、補聴器をもっと身近に感じるはずです。
補聴器はおもに加齢性難聴(加齢による自然な聴力低下)に対して用いられますが、補聴器が必要になるタイミングは人それぞれ。低下した視力をメガネで補うのと同じように、聴力も、年齢に関係なく「日常生活で不便を感じたとき」が検討の始めどきです。メガネはよくて補聴器はダメなんて、おかしいですもんね。
電気店や通販で気軽に買える「集音器」は、見た目や機能は似ていますが、医療機器である「補聴器」とは別物。すべての周波数の音を一律に増幅する集音器に対し、補聴器は、使う人のきこえにくい周波数に応じた調整が可能で、必要な音域だけを補います。補聴器=使いにくい、は実は集音器との混同で起こっている誤解であることも。
加齢性難聴の場合、長い年月の間に徐々に聴力が低下するため、自分がきこえが悪い状態であると気づきにくいのが特徴です。きこえない本人は困っていなくても、周囲の人が困っていたり、いつのまにか会話が減ってしまったり……。補聴器は、周囲の人との良好な関係性やコミュニケーションをつなぐ、大切なツールなのです。
聴力の低下=聴覚を介した脳への刺激の減少であることから、近年、聴力の低下(難聴)が認知症の最大のリスクになることがわかってきました。補聴器で聴力を補うことで、このリスクを低減できる可能性を示す研究結果も次々報告されるなど、補聴器はコミュニケーションを助けるだけでなく、健康寿命をのばすのにも役立つ可能性があるのです。
【監修】小森 学 先生
(聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教室 主任教授)
「耳」診療のエキスパート。耳科手術を多く手掛けるほか、小児の耳鼻咽喉疾患も専門とする。補聴器適合判定医・補聴器相談医。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.52
「耳の不調」より転載(2024年6月17日発行)