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第3回「子どもに薬を飲ませるときの注意点とコツ」

「子どもが病気になったとき、薬を飲ませるのに苦労した」。そんな経験はありませんか? 薬を飲むのを嫌がられると「無理やり飲ませても……」とためらってしまうこともありますが、正しく服用しなければ薬の効果を十分に得られず、病気が長引いたり悪化したりしかねません。

薬の味や食感など、子どもが薬を嫌がる理由はさまざまですが、ちょっとした工夫で飲みやすくなることもあります。

“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第3回目は、子どもに薬を飲ませるときの注意点や、上手な飲ませ方などをわかりやすく解説します。

教えてくれるのは・・・
中間 葉子さん
株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局千歳台店 店長

研修認定薬剤師/スポーツファーマシスト
地域の方々が気軽に相談に来ることができるような薬局を目指し、日々のホスピタリティを大切にしている。

INDEX
大人と子どもはどう違う? 薬が効くメカニズム
子どもの処方薬。基準となるのは、体重? 年齢?
どうすればいい? 子どもへの薬の上手な飲ませ方・使い方
ホントに正しい? 子どもの薬の服用に関する素朴な疑問

大人と子どもはどう違う? 薬が効くメカニズム

口から入った薬は「食道」を通って「胃」に運ばれます。胃酸によって少し分解され「腸」で吸収されたあと、「肝臓」で処理され、血液にのって体のなかを巡ります。このプロセスは大人も子どもも同じですが、薬に対する体の反応などについては違いがあります。

薬はどう体を巡るのか、薬が効くメカニズムについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

第1回「薬はどう体を巡るの?薬が効くメカニズム」
皆さんは最近、どんなときに薬を使いましたか? 日常的に特定の薬を服用している、虫に刺されてかゆみ止めの薬を塗った、腰痛で湿布薬を貼ったなど、人それぞれ異なるでしょう。

薬は、健康な生活を維持するうえで心強い存在ですが、「薬さえ飲んでいれば大丈夫」と頼りすぎるのはよくありません。一方で、「副作用が怖いから薬は使いたくない」と必要以上に避けるのも、症状を長引かせる原因となります。

私たちにとって身近な存在である薬について、じつはよく知らないことも多いもの。このシリーズでは、“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてわかりやすく解説します。第1回目は、「薬って何?」という根本的な疑問を出発点に、薬が効くメカニズムに迫ります。
https://helico.life/feature/medicinebasics-mechanism/
中間さん

大人と子どもでは、体の大きさも内臓の大きさも違います。薬は胃に運ばれると胃酸によって少し分解されますが、この胃の酸性度も、お薬の代謝に必要な酵素の量も大人とは異なります。また、お薬の代謝には腸にすむ腸内細菌も関係していて、そのバランスも大人と子どもでは違います。つまり、子どもがお薬を分解する機能は、大人に比べてまだまだ弱いのです。

大人の薬を子どもに飲ませてはいけないのはなぜ?

一般的に、大人用の薬を子どもに飲ませるのはよくないことが知られています。そこにはどのような理由があるのでしょうか。

中間さん

子どもは大人より、体内でお薬を処理する能力が低く、体の外に排出する機能も発達途中です。また、お薬に対する感受性が高く、影響を受けやすいのも特徴で、大人と比べてお薬の成分が脳に届きやすいともいわれています。お薬のなかには子どもが飲んではいけないものもあります。たとえお薬の量を減らしたとしても、大人用のものを服用させると、思わぬ副作用を引き起こしてしまうことも考えられます。大人のためにつくられたお薬を子どもに飲ませることは、絶対に避けましょう。

子どもの処方薬。基準となるのは、体重? 年齢?

医療機関を受診したときに、子どもの体重を確認されることがよくあります。これはなぜかというと、子ども用の薬を処方する際には、症状だけではなく、年齢や体重なども考慮して薬の種類や量を決めるからです。

中間さん

子どもの場合、同じ年齢でも体格に差が見られます。そのため、年齢だけではなく、体重や体表面積などもお薬を処方するうえでの重要なポイントとなります。

年齢が近いからと処方薬をきょうだいで共有すると、お薬の効果を十分に得られないどころか、副作用や症状の悪化を招きかねません。家族であっても、処方薬の共有はやめましょう。

ちなみに、市販薬にも処方薬と同じお薬の成分が入っていますが、市販薬のほうはその量が少なめで、効き目もおだやかです。また、用法・用量は年齢によって大きく分けられています。

市販薬に関しては、15歳になると大人用の薬を使用できるようになります。これは、お薬の代謝に関わる肝臓や腎臓などの臓器のほか、脳も大人と同じくらいに発達していると考えられるためです。

どうすればいい? 子どもへの薬の上手な飲ませ方・使い方

薬を嫌がったり、うまく服用させられなかったり、子どもに薬を飲ませるのは、なかなか至難の業です。薬の効果が発揮されるためにも、きちんと服用させたいものですが、どういった工夫を取り入れるとよいのでしょうか。

中間さん

薬をうまく飲み込めないときは、飲みやすくなるよう、起こした体勢にしてあげましょう。体を起こすのが難しい場合は、食道がなるべく縦になるように枕を少し高くしたり、抱っこしたりするのもいいかもしれません。

子どもは大人に比べて食道が短いので、お薬を飲んでもすぐに吐いてしまうことがありますが、体を縦にしてあげることで吐いてしまうのも防げます。ちなみに、お薬は服用してから30分ほどで吸収されますので、30分を過ぎてお薬を吐いてしまった場合には、基本的にお薬を飲み直す必要はありません。

薬のタイプ別、服用時のポイント

●シロップ薬

付属の計量カップで飲むのが難しいときは、スプーンやスポイトで少しずつ口に入れてあげます。シロップの味が苦手な場合は、ヨーグルトやゼリー、アイスなどに混ぜるのもよいでしょう。

●粉薬

シロップ薬と同様に、ヨーグルトなどと組み合わせたり、服薬ゼリーを使用したりするのもおすすめです。赤ちゃんの場合は、水を少し加えてペースト状にしたものを頬の内側など、舌が直接当たらないところに塗り、飲み物を飲ませると服用しやすくなります。

●坐薬

坐薬の先に、オリーブオイルやベビーオイルをつけると入りやすくなります。薬から意識がそれるように、好きなアニメなどを見せながら挿入してもよいでしょう。ただし、入りやすくなる分、出やすくもなるため、挿入後はティッシュやおしりふきで軽くおさえてあげてください。

●点眼薬(目薬)

もし点眼薬が見えているのが怖い場合は、目を閉じたままで点眼をしてもかまいません。膝枕などをして仰向けに寝かせ、閉じた目に2、3滴ほど薬を落とします。そのままゆっくり目を開けてふたたび閉じてもらえば、薬が目の中に入っていきます。

●点鼻薬(噴霧タイプ)

後ろから抱きしめて動かないように固定してから、軽くアゴを引かせて噴霧します。噴霧したあとは薬が奥までしっかり届くように、頭を後ろに少し傾けましょう。

中間さん

ヨーグルトなど、食べ物と組み合わせて服用させる場合、その組み合わせによっては、お薬の効果が変わったり、苦味が出たりするものもあります。また、お薬を服用したあとに、いつもと違う変化が出ていないか、様子を見ることも大切です。食べ物との組み合わせなど、お薬について気になることがあれば、薬剤師に相談してくださいね。

第2回「組み合わせに注意したい薬や食べ物は?」
医療機関を受診したときや薬局で薬を受け取るとき、いつも飲んでいる薬やサプリメントがないか聞かれたことはありませんか? それは、飲み合わせによっては薬の効果が強く出すぎたり、弱まったり、副作用が生じたりする可能性があるため。また、薬やサプリメントに限らず、日ごろ口にする食べ物や飲み物との組み合わせにおいても思わぬ健康トラブルを招くことがあり、注意が必要な場合もあります。

とはいえ、薬を受け取るときに、これから口にするだろう食品をすべて薬剤師に伝えるのは難しいもの。では、薬と食べ物の組み合わせによるトラブルを防ぐためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第2回目は、知っておきたい薬と食べ物の組み合わせについて、よく見られる例を挙げながらわかりやすく解説します。
https://helico.life/feature/medicinebasics-combination/

ホントに正しい? 子どもの薬の服用に関する素朴な疑問

最後に、子どもの薬の服用に関する疑問について、実際に薬局でよく聞かれるものをご紹介します。

母乳やミルクで薬を飲ませても大丈夫?

中間さん

薬と飲食物を組み合わせることで、その飲食物を嫌いになってしまうケースがあります。母乳やミルクは赤ちゃんにとって大切な栄養源。薬と混ぜることで、お薬だけではなく母乳やミルクも嫌いになってしまう可能性があるため、一緒に飲ませないようにしましょう。おかゆやごはん、牛乳なども同様です。

また、牛乳の場合は、一部の抗生物質や鉄剤、便秘薬の酸化マグネシウムと組み合わせると、お薬の成分が吸収されにくくなるので注意してください。

食事を摂れていなくても、薬は飲ませたほうがいい?

中間さん

抗生物質など、きちんと飲み続けることで効果を得られるお薬は、何も食べられない状態でも飲ませてあげてください。お薬が効いて回復することで、食事を摂ることができるようにもなるかもしれません。

子どものお薬は効き目が比較的おだやかなので、食後の服用を指示されている場合でも、食事を摂らずに飲んでも大丈夫というケースが少なくありません。気になるときは、薬剤師に相談をしてください。

子どもが寝ていても、起こして薬を飲ませたほうがいい?

中間さん

ぐっすり寝ているときは、無理やり起こして飲ませる必要はありません。起きたタイミングでお薬を飲ませてあげましょう。

また、お子さまが保育園や幼稚園に通っていて、お昼の時間帯にお薬を飲むのが難しいケースもあると思います。必要があれば、医師に連絡してお薬を服用する回数を調整したり、お薬の種類を変更したりといった対応をとれることがありますので、自己判断せずに薬剤師に相談してみてください。

子どもは、薬のどんなところが苦手なのか、嫌いなのかをうまく言葉にして伝えられないもの。薬を受け取ったあとにきちんと飲めているか、困ったことはないかを把握して対応策を考えるのも、薬剤師の大切な仕事です。

中間さん

そんなときのためにも、お子さまのことを気軽に相談できるかかりつけの薬局があると、日頃の様子がわかっているだけに、より的確なアドバイスができることもあります。忙しい子育て世代の方にこそ、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を見つけることをおすすめしたいですね。

かかりつけ薬剤師については、下記のページでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

おしえて薬剤師さん!第1回「かかりつけ薬剤師」
この番組は、身近にあるけどいまいちよく分からない薬局の機能やサービスについて、お笑い芸人三拍子の二人が実際の薬剤師さんにアレコレ聞いて教えてもらう、おもしろくってタメになるHELiCOオリジナルの番組です。第1回のテーマは「かかりつけ薬剤師」。
https://helico.life/feature/pharmacist-tellme01/
CREDIT
取材・文/藤田幸恵 イラスト/Mariko Fukuoka 編集/HELiCO編集部
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