「生理期間がつらい」と悩む女性は少なくありません。東洋医学では、生理に関わる不調の原因は主に「瘀血(おけつ)」といって、血の巡りが悪く、滞っている状態が関係していると考えられています。また、生理のときは消化する力が落ちがちなので、体を温めることができて胃腸に負担がかからない食事がおすすめ。血の材料になる食材がたっぷり入った温かいスープやお茶は、生理でゆらぐ心身をやさしくほぐしてくれます。手軽でおいしい薬膳スープとお茶のレシピを、国際中医薬膳師の瀬戸佳子さんに教わりました。
- 教えてくれるのは…
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- 瀬戸 佳子さん
- 「源保堂鍼灸院」 国際中医薬膳師・国際中医専門員・登録販売者
北京中医大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。東京・青山の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基づいた食養生のアドバイスを行う。雑誌やwebの取材、セミナー講演など幅広く活躍。著書に『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』(文化出版局)などがある。現在スープに関する本を作成中。
生理前から生理後まで、ゆらぎがちな女性の心身
東洋医学では、生理に関わるさまざまな不調の原因には、血の巡りが悪く滞っている状態である「瘀血(おけつ)」が関係していると考えられています。なお、東洋医学における「血」は「けつ」と読み、血液だけでなく、体液やそこに含まれる栄養素なども含みます。
「生理に不調を起こす瘀血の原因は、主に「貧血」「冷え」「ストレス」の3つ。なかでも貧血は、血が足りていない状態で、東洋医学では「血虚(けっきょ)」と呼ばれます。血が不足しがちな生理期間は、血を補う力が強いとされる食材を積極的に摂ることがおすすめです。また、冷えから身を守り、無理をせず、リフレッシュを心がけることも大切ですね」と瀬戸佳子さん。
そこで、「生理前」「生理中」「生理終盤・後」それぞれの時期におすすめの食材を教えていただきました。
「まず、【生理前】の体は下腹部に血を蓄えようとするので、どうしてもむくみやすくなり、気も滞りがち。そのため、イライラや頭痛など「PMS(月経前症候群)」と呼ばれる不快症状が出やすくなります。
さらに貧血気味の方は、気持ちが落ち込みやすくなったり、鬱っぽくなったりすることも。この時期は、しそやセロリなどの香草や柑橘類などを上手に活用してみましょう。香りによるリフレッシュ効果が期待できます。
【生理中】は胃腸の調子も崩れがちなので、体を冷やしたり、消化の負担になったりする食べ物はできるだけ避けて。体に負担の大きいアルコール類や体を冷やすアイスクリームは、瘀血が悪化してしまうのでこの時期は特に控えたほうがいいでしょう。
料理をつくる場合も、あまり考えずに短時間でできるものがおすすめです。とりわけ体力の消耗が激しい時期なので、体をいたわり、ゆったり過ごすことを心がけましょう。
そして、【生理の終盤や生理後】は、経血で失われた血をふたたび補っていく時期。動物性たんぱく質をしっかり摂ることが大切です。
ぜひ食べてほしいのは、レバーや赤身の肉、まぐろ・かつお・たこ・いか・あさりといった魚介類。たんぱく質類の不足は、生理中の不調にもつながっています。普段から意識して、これらの食材を食べるようにしましょう。」(瀬戸さん)
ここからは、「生理前」「生理中」「生理終盤・後」それぞれの時期に適した、瀬戸さん考案のスープ、お茶をご紹介します。
【生理前】缶詰で簡単!「アサリとセロリのトマトスープ」
食材の薬膳ポイント
■セロリ:香りで気を巡らせて、イライラを抑える
■玉ねぎ:気血の流れをよくして、瘀血を解消
■アサリ:血を補い、気持ちを穏やかに
■トマト:体液を補い、血行に働きかける
材料(2人分)
- アサリ(むき身・冷凍もしくは缶詰)…100g
- セロリ…1本
- エリンギ…大1本
- 玉ねぎ…1/2個
- ベーコン…80g
- にんにく…1片
- トマト缶…1/2缶(240g)
- オリーブオイル…大さじ1と1/2
- 塩…小さじ1/2弱
- 水…200ml
つくり方
1. セロリ、エリンギ、玉ねぎ、ベーコン、にんにくはそれぞれ薄切りにする。
2. 鍋にオリーブオイル、にんにくを入れて中火にかけ、香りが立ったらベーコン、玉ねぎ、アサリ、エリンギ、セロリを順に加え、さっと炒める。
3. 具材にまんべんなく油がまわったところでトマト缶、水を加えて中火で煮る。
煮込まなくてOK
4. 全体に火が通ったら、塩で味を調える。
具だくさんなので、ごはんを添えるだけで一食に
【生理中】お湯を注ぐだけ「ナツメと黒糖のお茶」
食材の薬膳ポイント
■ナツメ:古くから女性の健康にいいといわれており、血を補い気持ちを安定させてくれる
■黒糖:血流を促し、お腹を温める
■シナモン:体をしっかり温める
材料(1人分)
- 乾燥ナツメ(無糖)…1個
- 黒糖(かたまり)…1片
- シナモンパウダー…適量
つくり方
1.ナツメは手でちぎり、耐熱カップに入れる。黒糖も加える。
黒糖は溶けやすいように、かたまりを砕いてから入れる
2. 熱湯を、お好みで120~180mlほど加え、3〜4分ほど蒸す。
3. シナモンパウダーを振ってできあがり。お茶を出したあとのなつめも食べられます。
【生理終盤・後】たんぱく質たっぷり「豚肉とイカのあんかけスープ」
食材の薬膳ポイント
■豚肉・イカ・にんじん:補血(血を補う)作用が高い
■チンゲン菜:イライラを鎮める
材料(2人分)
- 豚もも薄切り肉…180g
- イカ(冷凍でもOK)…100g
- にんじん…5cm
- しいたけ…2~3枚
- 玉ねぎ…1/4個
- チンゲン菜…1~2株
- 植物油…大さじ2
- しょうゆ…大さじ1
- 塩…少々
- 片栗粉…大さじ1
- 水…250ml
つくり方
1. 豚肉は5cm幅、にんじん、しいたけ、玉ねぎは薄切りに、イカ、チンゲン菜は食べやすい大きさに切る。
2. 鍋または深めのフライパンに油を入れて中火にかけ、玉ねぎ、豚肉、イカを順に加え、さっと炒める。
豚肉の表面の色が白くなってきたら、イカを加える
3. にんじん、しいたけ、チンゲン菜を順に加え、さらにしんなりするまで炒める。
チンゲン菜は、茎の部分を先に入れ、少し炒めてから葉の部分を入れる
4. 水を加え、煮立ったらしょうゆ、塩で味を調える。水大さじ1(分量外)で溶いた片栗粉をまわしかけ、とろみをつける。
食べもので血を補い、毎月の生理を少しでも軽やかに!
めまぐるしく忙しい現代社会。東洋医学では、ストレスも血を消耗すると考えられています。
「仕事や家事、育児などで忙しい日々を過ごすうちにストレスが蓄積してしまい、いつのまにか血の材料が体内で不足してしまうこともあるでしょう。そんな方々にもぜひ、具だくさんのスープで血の材料をたっぷり補給していただいて、生理期間を元気に乗り切ってもらえたらと思います」と瀬戸さん。
なお瘀血(おけつ)は、生理痛をもたらす理由のひとつともいわれており、少しでもつらさを軽減するためには、やはり毎日の食生活が大切です。脂っこいもの、甘いもの、冷たいもの、生ものはほどほどに。そして血の材料となる素材を、普段からしっかり食べていきましょう。
- つらい痛みをなんとかしたい。生理痛をやわらげるツボ
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生理中、お腹や腰回りに痛み、だるさなどを感じてしまう生理痛。東洋医学では、生理痛のことを「痛経(つうけい)」といい、痛みのタイプに応じたツボを押すことで、生理痛にアプローチすることができます。鎮痛薬が飲めないときは、ツボ押しを試してみるのもおすすめです。ここでは、生理痛に有効なツボの位置と、適切な刺激方法について解説します。https://helico.life/monthly/230910period-tsubo/