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第5回「どんなときに役立つ?おくすり手帳の活用法」

みなさんは、病院や薬局へ行くとき、おくすり手帳を携帯する習慣はありますか? おくすり手帳を持っていても、普段病院を受診する機会が少なく、どこかにしまい込んでいたり、体調不良などで急に病院へ行ったりするときには、ついついおくすり手帳を忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。

おくすり手帳は、処方薬の情報が書かれたシールを薬局の薬剤師が貼るためのもの、というイメージがあるかもしれませんが、おくすり手帳の役割はそれだけではありません。患者さんと医師、薬剤師、看護師や、ときには救急隊員などともつなぐ重要な役割を担っています。

“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第5回目は、おくすり手帳を使うメリットと活用法についてわかりやすく解説します。

教えてくれるのは・・・
笠原 志乃さん
株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局東十条店

研修認定薬剤師/スポーツファーマシスト
患者さんのお話を親身になってお聞きすること、患者さんとの信頼関係を築くことを大切にしている。

INDEX
おくすり手帳って何のためにあるの?
おくすり手帳を使うメリットとは
知っておきたい、おくすり手帳の上手な活用法
紙と電子、それぞれのおくすり手帳のいいところは?

おくすり手帳って何のためにあるの?

おくすり手帳は、全国のどの調剤薬局でも基本的に無料でもらうことができるため、持っている方は多いと思います。おくすり手帳を上手に活用するために、まずはどのような役割があるのかを知っておきましょう。

笠原さん

おくすり手帳は、主に患者さんの体質、アレルギー、病歴、薬の副作用歴、そして、現在とこれまでのお薬の使用状況を記録するためのものです。医師や薬剤師が、おくすり手帳に記載された情報をきちんと把握することで、患者さんはより安全かつ適切にお薬を服用できるようになります。私が勤務する薬局でも、多くの方がおくすり手帳を活用されています。

おくすり手帳には、基本的に次のような内容を記録することができます。

<おくすり手帳に記録できること>

  • 処方された薬の内容(医療機関名、薬局名、薬の名前、用法・用量、服用日数など)
  • 市販薬の使用状況
  • アレルギー歴
  • 副作用歴
  • 主な病歴

おくすり手帳を使うメリットとは

定期的に病院に通院している方でなければ、おくすり手帳の利便性を実感する機会は少ないかもしれませんが、おくすり手帳の活用で、次のようなことが期待できます。

<おくすり手帳を使う主なメリット>

  • 薬の重複や、よくない飲み合わせを避けることができる
  • 過去に使用した薬の副作用を確認できる
  • 薬に関する困りごとを記入できる
  • 緊急時や災害時に役立つ
笠原さん

お薬は飲み合わせによって、思わぬ不調や副作用を引き起こすことがあります。おくすり手帳にお薬の使用状況や副作用歴、アレルギー歴などを記録しておけば、飲み合わせや重複、副作用を医師、薬剤師が確認できるので、患者さんはお薬を安心して服用することができます。

 
注意したいのが、おくすり手帳は「ひとりにつき1冊」ということです。何冊にも分かれていると、お薬の使用状況を正確に把握することができません。複数の病院に通っている場合も、おくすり手帳は必ず1冊にまとめましょう。

また、おくすり手帳に市販薬や健康食品の使用状況をメモしておくことも、活用のポイントです。

笠原さん

市販薬のなかには、複数の成分が配合されているものもあり、処方薬との飲み合わせに注意が必要なケースがあります。おくすり手帳に使用中の市販薬や、サプリメントなどの健康食品を書いていただくと、その情報をもとに、処方薬との組み合わせに問題がないかを確認できるのでとても助かります。

 
また、お薬を使うなかで困ったことや気になることがあった場合も、その都度メモをしておくことをおすすめします。そのメモが薬剤師からのアドバイスやフォローにつながることもありますし、必要に応じて担当の医師に伝えることもできるからです。

おくすり手帳は、病院を受診するときだけではなく、外出時もつねに持ち歩くと、旅先で急に体調を崩して受診するときなどに役立ちます。

笠原さん

普段からきちんと記録をしておくことで、処方せんを入手しにくい災害時でも、おくすり手帳の情報をもとに処方が可能になることがありますし、事故などの緊急時にも、お薬の使用状況を医師や薬剤師に正確に伝えることができます。実際に、東日本大震災のときにも、おくすり手帳の情報をもとに、適切に医薬品が供給されたことが報告されています。

知っておきたい、おくすり手帳の上手な活用法

おくすり手帳は薬の記録に加えて、どのように活用するとよいのでしょうか。

笠原さん

おくすり手帳は、健康に関する情報を記録する「健康手帳」のように活用してほしいと思っています。

 
病院や薬局で聞こうとしていたことを忘れてしまったり、聞きそびれてしまったりするときってありますよね。おくすり手帳にメモをしておけば、医師や薬剤師への相談がスムーズに進むことがあります。薬剤師がそのメモをもとに質問をさせていただく場合もありますので、伝えたいことがあればおくすり手帳に気軽に書き込んでください。

 
また、処方されたお薬の飲み残しがあった場合も、メモをしておきましょう。お薬の効果を十分に得られていない可能性がありますし、次に処方するお薬の日数を調整する必要があるかもしれません。状況を正しく把握できれば、医師、薬剤師もより適切に対応できます。

子どもの場合は、体重によって処方する薬の量が変わります。病院や薬局で体重を聞かれたときにすぐ答えられるよう、おくすり手帳にこまめに記録しておきましょう。

笠原さん

このお薬はよく効いた、このお薬は嫌がって飲まなかった、このお薬を飲んで下痢になったなど、使用したときの様子も記録しておくと、お薬の形状や種類について、医師は処方の際、薬剤師は確認の際にとても参考になります。

 
何より、こまめに記録することで子どもの体調をよく観察するようになりますし、ちょっとした変化にも気付きやすくなるでしょう。私が接する患者さんのなかにも、おくすり手帳にメモをしている方は少なくありませんし、私もメモがないかを必ずチェックするようにしています。

紙と電子、それぞれのおくすり手帳のいいところは?

最近では、紙のおくすり手帳と同様に、スマートフォンでの電子おくすり手帳の活用も広がってきました。紙と電子、それぞれどんなところが利点なのでしょうか。

笠原さん

紙の場合は、幅広い年齢の方にお使いいただけますし、気軽にメモを書き込むこともできます。病院や薬局でも医師や薬剤師にそのまま渡せますし、介護が必要な方などは、家族にも預けやすいですよね。また、事故などでご本人が意識を失っている場合でも、おくすり手帳があれば、服薬などに関する情報を正確に医師や薬剤師と共有できます。

 
一方、持ち運びに多少不便な点もあります。大きなものではありませんが、いつも携帯するとなると、面倒だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。おくすり手帳に貼ったシールが増えるとかさばりますし、破損や紛失をしてしまうと、それまでの服薬情報などが、わからなくなってしまう場合もあります。

電子おくすり手帳はスマートフォン内で、処方薬の情報を記録していきます。スマートフォンはつねに携帯して外出することが多いため、自宅に忘れてしまう心配は少ないでしょう。また、紙のおくすり手帳のようにかさばることはありません。このほか、電子おくすり手帳にはどんな特徴があるのでしょうか。

笠原さん

急な病気やけがで受診するときや、外出先で市販薬を購入するときなどにも、お薬の使用状況を正確に伝えられるのはメリットです。お薬の飲み忘れ防止機能のように、便利な機能がついていることもあります。

 
ただし、スマートフォンを忘れたり、電波状況が悪かったりする場合は使えませんし、とくに高齢の方は操作に不慣れな場合もあります。また、スマートフォンのロック機能を使っていると、緊急時でも本人でなければ使用することはできません。

もらったその場で使える紙のおくすり手帳とは違い、電子おくすり手帳は、使い始めるときに登録手続きが必要となるため、面倒に感じることもあるかもしれません。活用する方は増えていますが、電子おくすり手帳に対応していない薬局もあるので注意しましょう。

紙と電子のどちらが便利かについては、生活パターンや好みなど、人によって異なります。それぞれの特徴を理解したうえで選ぶとよいでしょう。

笠原さん

おくすり手帳は、医師や薬剤師と患者さんをつなぐ大切な役割を担っています。おくすり手帳のメリットを上手に活かすためには、体調の変化や気になること、伝えたいことなどをこまめに記入するのが重要です。

 
病院で出された処方せんをもとに、薬剤師が患者さんにいろいろと質問をすることがありますよね。おくすり手帳があると、患者さんの状況を把握したうえで質問ができますし、より具体的なアドバイスにつながるでしょう。

おくすり手帳を上手に活用すれば、適切に薬を処方できるだけではなく、健康管理にも役立ちます。

笠原さん

自分のおくすり手帳はもちろん、家族のおくすり手帳がどこに保管されているのかを把握しておくことも大切です。

 
患者さんがなるべく快適に治療を進められるように、お薬の専門家としてサポートするのも薬剤師の大事な役割です。気になることがあれば、気軽に相談してください。

おくすり手帳については、下記のページでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

おしえて薬剤師さん!第2回「おくすり手帳」
この番組は、身近にあるけどいまいちよく分からない薬局の機能やサービスについて、お笑い芸人三拍子の二人が実際の薬剤師さんにアレコレ聞いて教えてもらう、おもしろくってタメになるHELiCOオリジナルの番組です。第2回のテーマは「おくすり手帳」。
https://helico.life/feature/pharmacist-tellme02/
CREDIT
取材・文/藤田幸恵 イラスト/Mariko Fukuoka 編集/HELiCO編集部
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