こんにちは。みなさんといっしょに腸活をして、体調を良くしたいと思っているコアラ女子「アラコ」です。腸活をするうえで、日々の食事は無視できないわよね。世の中のお母さんたちは、家族みんながいつも健康でいられることを願って、毎日の献立を考えているはず。家族みんなで取り組める腸活ってどんなものかしら? 大人も子どももできる腸活で意識したいこと、今回も専門医の江田証先生に教えてもらっちゃお♪
- 教えてくれるのは・・・
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- 江田 証先生
- 江田クリニック院長
1971年、栃木県生まれ。自治医科大学医学研究科修了。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めてAGAで発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。国内外から来院する多数の患者を胃内視鏡、大腸内視鏡で診察しているほか、テレビや各種メディアなどでもおなじみ。『腸のトリセツ』(学研プラス)、『まいにち腸日記』(池田書店)、『新しい腸の教科書』(池田書店)、『不腸リセット』(ナツメ社)、『すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道』(幻冬舎)など著書も多数。
老若男女、それぞれに合った腸活
「腸活」といっても、すべての人が同じ方法で効果を感じられるとは限りません。年齢や性別はもちろん、その人の体質によっても、期待できる効果や方法は異なります。では、どのような点に注意すればいいのでしょうか?
女性はお腹の不調が起こりやすい
一般的に、男性に比べて女性のほうがお腹の不調を感じている人が多いといわれています。その理由のひとつが「筋力」。女性は男性よりも筋肉量が少なく筋力が弱いので、腸や消化管を支える力も、腸のぜん動運動(腸を収縮して動かす力)も弱い人が多いです。そのため、便秘がちになったり、お腹が張りやすかったりするのです。
さらに、女性のほうがお腹の痛みを感じやすいという事実も。お腹の痛みは、脳の帯状回(たいじょうかい)という部分で感じますが、この帯状回の働きが男性よりも強いことがわかっています。このお腹の痛みを感じる性差については、医学界でも注目されています。
また、女性ホルモンも腸管の動きに密接に関わっていることが解明されています。女性には生理があり、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの働きによって、生理前に便秘になる、生理中にお腹を下しやすい、といったお腹の不調が起こります。
ママと赤ちゃんの腸活
以前は、生まれたばかりの赤ちゃんは無菌であるといわれていましたが、羊水を調べると、わずかながら菌がいることがわかってきています。お母さんの腸内細菌が赤ちゃんに遺伝することはありませんが、帝王切開でない場合は、出産時、産道を通る際にお母さんの持つビフィズス菌が赤ちゃんに受け継がれます。赤ちゃんが生まれるとき、産道内の細菌が一気に増えることがわかっており、これから生まれる赤ちゃんへお母さんからの最初のプレゼントが腸内細菌というわけです。お腹の外に出てからは、赤ちゃんに触れる家族などから細菌が移ったり、さまざまな外的な影響を受けたりしながら、3歳くらいまでに腸内環境が一定になるといわれています。
妊娠中、母親の腸内細菌が赤ちゃんに直接移行することはありませんが、お母さんが摂った食事を腸内細菌が分解し、そこで生成されたものが血液を介して赤ちゃんに伝わります。そのため、お母さんが「短鎖脂肪酸をつくるような食生活」を心がけることで、赤ちゃんの健康にも良い影響があり、近年増えている子どものアレルギー疾患や喘息などの予防効果も期待できます。
(※短鎖脂肪酸については、『腸活のキーワード「シンバイオティクス」って何?』で詳しく解説していますのでそちらもご覧ください。)
働き盛り世代の腸活
20~50代くらいまでの働き盛り世代にとって、健康を維持するうえで食事内容はとても重要です。それは誰もが漠然と意識していることではありますが、仕事が忙しくて栄養バランスが偏ってしまったり、ストレスで体調を崩してしまったりすることも少なくありません。忙しいこの世代が腸活をするために大切なことは、「さまざまな種類の食材を食べる」こと。腸内細菌は、人間が食べたものをエサにして生きているので、同じものばかり食べていると、腸内細菌も同じ種類ばかりに偏ってしまいます。
腸内細菌は多様性が重要で、その種類が多いほど腸内フローラが整い、腸のバリア機能が高まるといわれています。腸のバリア機能が高まれば、病原体を撃退し、健康を維持できるようになります。近年スーパーなどでも「10品目の野菜サラダ」などを見かけますが、このように食材の数を増やすことを意識すると良いでしょう。厚生労働省も「一度の食事で野菜の入った小鉢を5種類ほど食べると良い」と推奨しています。
おじいちゃん、おばあちゃんの腸活
人間の腸内環境は、60歳頃から性質が変わるといわれており、「プロテオバクテリア門」という毒性の高い種類の腸内細菌が急激に増えるといわれています。よく知られているところでは、ピロリ菌やサルモネラ菌、カンピロバクター菌、大腸菌などがあります。そして、それらの病原体を撃退するにはやはり善玉菌の活躍が必要不可欠。より腸活を意識した食生活を心がけましょう。
じつはコワイ便秘の話
人が老いるのと同じように、腸内細菌も老化し、その影響で便秘が増えてきます。便秘というと若い女性に多いイメージがありますが、老化に伴って男性にも増え、70歳くらいになると性差はほとんどありません。さらには、便秘が原因で死に至ることもあります。
高齢者のなかには高血圧に悩む方も多いですが、便秘が高血圧を引き起こすことがあるので危険です。特に寒い冬場、便秘の人がトイレでいきんで血圧が急上昇し、倒れてしまうことも。心肺停止で救急医療施設に運び込まれる人の約40%は、トイレで倒れているという統計もあります。
高血圧の方の多くが、血圧を下げる薬を日常的に飲んでいますが、便秘は軽視されがちです。「最近便秘がちだな」と気づいたら、たかが便秘と思わずに、水分を多めに摂ったり、腸内環境を整えたりすることを意識しましょう。
家族みんなが意識したい「腸活」に有効な食べ物とは?
家族みんなが健康を維持するための腸活は、具体的にどのような食べ物を摂ったり、食生活を心がけると良いのでしょうか? 先述の通り、腸内細菌は3歳頃までに一定になりますが、大人になっても改善することは可能です。腸内環境自体が大きく変わることはありませんが、普段の心がけ次第で整えることはできます。
それは、「高脂肪食を避け、食物繊維をしっかり摂る」こと。明治時代以降、西洋食が普及し、日本人の食生活は大きく変わってきました。しかし、脂肪分の多い西洋食が中心で、食物繊維をあまり摂らない食生活を続けていると、たった3週間ほどで腸内環境は悪化してしまいます。逆に、低脂肪で食物繊維を積極的に摂る食事をすれば、短期間でも改善が見込めるというわけです。
具体的にどんな食事が良いかといえば、ずばり「和食」です。野菜や豆など繊維質の多い食材が多く含まれた、昔ながらの和食メニューが腸活には効果的といえます。例えば、野菜がたっぷり入った味噌汁などは、非常に理にかなっているメニュー。「酪酸」 をつくりだす野菜や味噌が摂れて、脂肪分も低く、腸内環境を整えてくれます。味噌汁が体に良いといわれるのは、単に発酵食品である味噌だけでなく、酪酸をつくりだす食材も含まれているからなのです。
日本人だけの特権、海藻パワー!
さらに、積極的に摂りたいのが、酪酸を増やしてくれる「海藻類」。海苔やわかめなど、どれも身近な食材ですよね。最近、『DNAリサーチ』という著明な医学雑誌に、世界11ヶ国と比較した日本人の腸内細菌の特性についての研究が発表されました。それによると、日本人だけが海藻を分解する腸内細菌を持っていることがわかったのです。日本人は海藻に含まれるポルフィランという炭水化物を分解できる酵素を持っており、中国を含む世界中の人では15%ほどしか海藻を分解できないため、海藻を食べても栄養にならずに排泄されてしまいます。
食生活の西洋化によって、日本人の腸内細菌が変わってきている今日この頃。20年ほど前までは、日本人の20~40%くらいが自身の腸内環境のなかに酪酸産生菌を持っていたといわれていますが、現代ではほとんど日本人の腸内では見られなくなっています。改めて和食を見直し、日本人特有の貴重な腸内細菌を次世代に残していきましょう。