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まずは知ろう「腸」のこと。腸は“第二の脳”?

はじめまして。みなさんといっしょに腸活をして、体調を良くしたいと思っているコアラ女子「アラコ」です。最近では「第二の脳」なんて呼ばれて注目されている「腸」。腸活を始める前に、まずは腸についてもう少し知っておきたいな。そこで、テレビなどのメディアでもおなじみの江田証先生にお話を聞いてきました! 先生、腸って汚れるとどうなるんですか?

教えてくれるのは・・・
江田 証先生
江田クリニック院長

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学医学研究科修了。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めてAGAで発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。国内外から来院する多数の患者を胃内視鏡、大腸内視鏡で診察しているほか、テレビや各種メディアなどでもおなじみ。『腸のトリセツ』(学研プラス)、『まいにち腸日記』(池田書店)、『新しい腸の教科書』(池田書店)、『不腸リセット』(ナツメ社)、『すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道』(幻冬舎)など著書も多数。


INDEX
そもそも腸はどんな働きをしているの?
腸は全身の司令塔
腸が汚れるとどうなる?

そもそも腸はどんな働きをしているの?

腸は、「食べたものを消化する→栄養を吸収する→排泄する」といった臓器であることはみなさんご存じかもしれません。腸は大きく「小腸」と「大腸」に分けられ、さらに小腸は「十二指腸、空腸、回腸」に、大腸は「盲腸、結腸(S字、上行、横行、下行)、直腸」に分けられ、それぞれが連携を取りながら体に入ってくる食べ物を消化吸収しており、1日の消化量はおよそ9リットルにも及びます。

しかし、腸はそれだけでなく、全身の臓器にさまざまな影響を及ぼしているということがわかってきています。

腸は全身の司令塔

「腸は第二の脳」という言葉を聞いたことがありますか? じつは、腸内には「腸管神経」という脳とつながる神経網が張りめぐらされており、約1億個もの神経細胞が存在します。なんとこれは脳に次ぐ多さ! さらに腸の機能は、脳が司令を出しているのではなく、腸が判断して自らコントロールしていることから、「第二の脳」と呼ばれています。

また、特に近年注目されているのが、「脳腸相関(のうちょうそうかん)」といわれる脳と腸の関係。脳と腸は、どちらか一方からではなく、お互いに影響し合っています。精神的なストレスでお腹が痛くなったという経験がある人も多いと思いますし、最近の研究では、うつ病や自閉症の患者には便秘が多いというデータも。腸は脳だけでなく、体内のあらゆる臓器と密接な関係にあり、腸の状態を感知して各所に信号を送ることで全身の状態を整えています。

さらに、体の外から入ってくるのは食べ物だけでなく、あらゆる細菌やウイルスなどの病原体も入ってきます。これらを前線で撃退するのが「免疫細胞」で、体全体の免疫細胞のうち約7割が腸に集まっています。体内に病原菌などが侵入すると、腸内の免疫細胞が働き、抗菌作用のある物質を放出して病原菌を撃退します。

腸は外から体内への「玄関口」であると同時に、体内機能のバランスを維持する「司令塔」ともいえる存在なのです。

腸が汚れるとどうなる?

腸活ではよく「腸をきれいに保ちましょう」といいますが、自分ではなかなか腸の状態はわかりません。それでは、どのようなことをすると腸が汚れるのでしょうか。

「お掃除」をしないと汚れていく

腸の動きには2種類あります。1つ目は、食べた直後から数時間、食べ物をかみ砕くような弱い運動をします。2つ目は食後3~4時間後、「MMC(伝播性消化管収縮運動)」と呼ばれるぜん動運動が起こります。これは、強いさざ波のような動きで、食べ物の残りカスや腸内細菌、バクテリアなどを口側からお尻側に向けて大きく洗い流すお掃除運動のようなものです。

ところが、間食を頻繁にするなど、常に何かを食べ続けていると、この大きなお掃除運動が起こらず、弱い運動だけになってしまいます。24時間営業のお店に例えると、ずっとお客さんがいて、休みなく営業し続けているのでしっかりと掃除をする時間が取れず、店内がどんどん汚れていくようなイメージ。つまり、間食を控えて空腹の時間をつくり、小腸や大腸のお掃除運動を起こすことが、腸を汚さないための大切なポイントです。

モノを食べてから2段階のプロセスで、腸のなかはきれいな状態に。さざ波のようなお掃除運動(ぜん動運動)を起こすためには、食べない時間が必要なのです。

お掃除の強い味方は「食物繊維」

日本においては明治時代より近代化が進み、食生活も大きく変わってきました。それまではあまり食べることのなかったお肉を頻繁に摂るようになり、高脂肪食が多くなりがちに。食物繊維が少なく、脂身の多い肉や乳製品、揚げ物などの高脂肪の食事に偏ると、腸内はアミノ酸や腐敗物を栄養とする「プロテオバクテリア門」という悪玉菌が増えてしまいます。悪玉菌が増えすぎると体に不調が起こりやすくなるため、善玉菌を増やす必要がありますが、そのエサになるのが「食物繊維」。便のカサを増やして、腸のなかをきれいにお掃除してくれる役割もあります。

また、適度な運動も腸の動きを良くするために日々心掛けたいところ。コロナ禍でリモートワークとなり運動量が減っているなかで、家にあるものをちょこちょこ食べてしまう……そんな腸内環境を悪化させてしまうNG習慣をとってしまっている人が増えているので要注意です。

腸のバリア機能を守れ

食生活の変化で高脂肪食が増えたことにより、体を守る機能が弱くなるという弊害も……。これは、脂肪分の高い食事が原因で腸の粘膜の上に乗っている粘液が薄くなってしまうためです。この粘液には腸を守るバリア機能があり、それが薄くなって機能しないと、有害な腸内細菌が腸のなかに入り込みやすくなります。3~4週間という短期間でも粘液が薄くなってしまうことがわかっているので、腸のバリア機能を守るためにもなるべく高脂肪食を避けましょう。

腸が汚れていると怖い病気にも……

腸が汚れた状態が続くと、体に不調をきたすことも。近年急激に増えている病気が、潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病といった「炎症性腸疾患」と呼ばれるもの。通常、体外から入ってくる細菌やウイルスなどの病原体を撃退するのが「自己免疫」の役割ですが、これが自分の腸に対して働いてしまうことで起こるのが「自己免疫疾患」です。原因がまだ解明されていないので難病指定されていますが、潰瘍性大腸炎もクローン病も自己免疫が関わっているのではないかと考えられています。これは遺伝子的な問題だけでなく、食事を中心とした生活習慣が影響しており、食物繊維の少ない食事や高脂肪食が続くと、このような炎症性腸疾患につながる可能性があります。

また、長らく脳の病気だと考えられていたパーキンソン病も、腸との関係が指摘されるように。パーキンソン病は、神経が障害されて手が震えたり、スムーズに歩くことが難しくなったりするなど、日常生活に支障をきたす恐ろしい病気です。腸内細菌によって作られるαシヌクレイン(アルファシヌクレイン)という有害物質が迷走神経を通じて脳に集まることで、パーキンソン病を引き起こすと考えられています。発症する10年くらい前から便秘がちになる人が多いということで、身近なお腹のトラブルの「便秘」も、パーキンソン病の初期症状ではないかといわれています。

近年では、「NASH(ナッシュ/非アルコール性脂肪肝炎)」という病気も増えています。これまでは、肝炎ウイルス(B型、C型)への感染が肝臓がんのほとんどの原因でしたが、最近はそれらに感染していないのにもかかわらず、肝臓がんや肝硬変になる人が増加。これがNASHという病気で、腸内細菌がひとつの原因として疑われています。

その他にも、便秘が長く続くと、腸内細菌が作り出すインドールやp-クレゾールなどの有害物質が腎臓に入り、腎不全を進行させてしまうことがわかっています。

このように、脳や肝臓、腎臓など、体中のさまざまな臓器に、「腸」の状態が影響を及ぼしています。ひいては、お腹のトラブルが続くことにより、QOL(Quality of Life=生活の質)を下げ、メンタルヘルスにも影響が出る場合も。全身の司令塔である腸を味方につけて、心身とも健康を目指しましょう。

はぁ~ん、なるほど! 腸ってこんなにいろんな働きをしてくれていて、気持ちよく働いてもらうために「腸活」が大事ってことね。腸活のモチベーションが上がったわ! 次回は、腸活の救世主「酪酸菌」についてお話を聞いてみようっと。

→第2回「腸活のキーワード「シンバイオティクス」って何?

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト・キャラクターデザイン:小山 健
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