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誕生からまだ60年!?日本の生理用ナプキンの歴史と進化を学ぶ

女性の生活に欠かせない生理用ナプキン。スーパーやドラッグストアでは、たくさんの種類が棚に並んでいますよね。いまは当たり前のように使われている生理用ナプキンも、日本に登場したのは、60年ほど前のこと。

それ以前の女性は、毎月の生理にどう対処していたのでしょうか。また、ナプキンやタンポンなどの生理用品は、どのように誕生したのでしょうか。

そんな生理にまつわる歴史や、生理用品の開発ストーリーを、ユニ・チャーム株式会社の広報である藤巻尚子さんにうかがいました。

教えてくれるのは…
藤巻 尚子さん

ユニ・チャーム株式会社 ESG本部広報室に所属。2015年に入社後、営業部門を経て広報室へ異動。企業広報や商品広報に携わり、2019年から推進しているソフィ#NoBagForMeの広報活動も担当。

かつては「穢(けが)れのもの」とされた生理の歴史

ユニ・チャーム広報の藤巻さん

―日本で生理用ナプキンが使われるようになったのは、60年ほど前だそうですね。意外と歴史が短いように感じました。

藤巻さん

1961年にアンネ社が『アンネナプキン』を発売したのが、日本の生理用ナプキンの始まりです。
 
当社はその2年後の1963年に、『チャームナプキン』の製造・販売を開始しました。創業者の高原慶一朗が発売前年の1962年にアメリカを視察したとき、サンフランシスコのスーパーで生理用品が堂々と山積みされていた光景に衝撃を受けたことがきっかけでした。

ユニ・チャームが初めて製造・販売した生理用品『チャームナプキン』
藤巻さん

当時の日本では、生理用品を買うとき、人目を気にしながら薬局の店員さんに声をかけて、店の奥のほうから出してもらうことが一般的でした。生理用品を“日かげ”から“日なた”の存在にして、もっと女性に生き生きと輝いてほしいという思いのもと、生理用ナプキンを製造・販売しました。

−日本で生理用品がオープンに普及したのは、アメリカより遅かったのですね。生理用ナプキンが販売される以前の日本では、生理に対してネガティブなイメージがあったのでしょうか。

藤巻さん

日本に限らず、世界中で生理はずっと「穢(けが)れのもの」であり、タブー視されていました。日本では昔、生理期間の女性は「月経小屋」に隔離されて自由に外出できなかったといわれています。
 
月経小屋の風習は、明治時代になって少しずつ廃止されましたが、その後も、生理期間中は自転車に乗ることやダンスをすることを医師が禁じていた時代がありました。

−そんな歴史があったとは、驚きました……。

藤巻さん

いまは生理期間だからといって行動が制限されることこそありませんが、生理の悩みを、友達や親には気軽に話しにくいと感じている人は少なくないはずです。これは、生理がタブー視されていた時代に培われた価値観や考えが影響していると思います。

−はるか昔の考えが現代にも影響しているのですね。生理用ナプキンが発売される前は、布で経血を処理していたのでしょうか?

藤巻さん

そのようですね。その後、大正時代からは脱脂綿を使うようになり、ゴムで体に固定する「月経帯」が普及しました。そして生理用ナプキンが発売されて、現在に至ります。

女性の多様な悩みに応え続けるうちに、生理用品が充実していった

−ユニ・チャームさんの商品は、生理用ナプキンだけでもさまざまな種類がありますね。商品が充実していった背景を教えていただけますか?

藤巻さん

発売当初の生理用ナプキンは、とても分厚いものでした。ところが、働く女性が増えるなかで、ナプキンに厚みがあると動きにくかったり、肌が擦れてしまったりするという悩みが多く聞かれるようになりました。
 
そこで『チャームナップミニ』という薄型ナプキンを開発、1976年に発売しました。タレントの研ナオコさんを起用したテレビCMの効果もあって、発売後1年で38億円の売上を記録するほど多くのお客様にご使用いただきました。ナプキンの薄型タイプは、いまも多くの女性に使っていただいています。

「厚くなければ本当にモレは防げないのか」と当時の常識を疑い、開発された『チャームナップミニ』

藤巻さん

当時、薄型ナプキンを開発するにあたっては、薄くても生理用ナプキンとしての機能を保つことに苦労しました。薄い吸収紙を試作し、吸収実験やモニター様へテストを繰り返して商品化を目指しました。ヒップラインに生理用ナプキンのラインが出ない形状にもこだわりました。
 
開発が進む一方で、社内からは「生理用ナプキンは、厚いという安心感があるから売れている。薄いナプキンは売れない」という反対の声もありましたが、詳しく市場調査をしてみると、多くの女性が薄型ナプキンを求めているとわかり、発売を決めました。発売の翌年には生理用ナプキン市場でのシェアを40%まで引き上げ、主力商品となりました。
 
いまもなお、生理用ナプキンに求められる「モレない、ズレない、ムレない」の3つの条件を満たすために、経血の吸収力をさらに高め、体によりフィットする薄型ナプキンの開発に注力し続けています。

−薄型ナプキンは、私も愛用しています。『センターイン』シリーズは、おしゃれな柄や香りがついているパッケージもあって、気分がよくなりますね。

『センターインコンパクト1/2』は通常のスリムナプキンの1/2サイズで、個包装のパッケージも華やか

藤巻さん

そう言っていただけるのは、とてもうれしいです。心理的にも不安定になりがちな生理の期間を少しでも自分らしく過ごしてほしいと考えて、パッケージにもこだわっています。「ポーチにIN おしゃれにGO!」というブランドメッセージにも、その思いを込めました。

−昼用・夜用ナプキンや、羽つき・羽なしナプキンなどのバリエーションが増えていったのも、女性の声がきっかけでしょうか?

藤巻さん

はい、いずれも女性の悩みに一つひとつ寄り添って製品を開発しています。
 
当社初の羽つきナプキン『ソフィ サラウィング』は、アクティブに活動したいものの経血の横モレが心配な方のために開発されました。左右についた羽でショーツをくるみ込むことで、モレの原因となるズレを防げる特徴があります。
 
また、『ソフィ サラサイドギャザー』は、当社のベビー用おむつ『ウルトラムーニー』の技術を応用して1年4か月の期間をかけて開発された、世界初となるサイドギャザーつきの生理用ナプキンです。薄型でありながら、立体サイドギャザーで昼の横モレと、夜の後ろモレをしっかり防げるようにしました。

藤巻さん

もちろん素材にもこだわっています。例えば、夜用ナプキンは長時間使用することから、吸収力や表面のサラッと感が求められます。「高分子吸収体」と「乾式不織布」を採用した商品や、吸収スピードの速さと肌触りの良さが特徴の「新素材クリアメッシュ」を採用した商品など、あらゆる素材を使い開発に取り組んできました。
 
いまはショーツと生理用ナプキンが一体化した、ショーツ型ナプキンもあります。経血が多い日や、旅行・イベントの日など、普段よりもモレやズレが心配なときに使っていただくための生理用品です。

『超熟睡®ショーツ オーガニックコットン』は下着のようにはけて、寝返りモレを防いでくれる

−ショーツ型ナプキンは、フリルがついたデザインがかわいいですね。ナチュラルグレーの色も、女性が好みそうです。

藤巻さん

白い色だと“おむつ”のように感じられる方もいらっしゃるため、このような色にしました。フリルは機能面だけを考えれば不要かもしれないですが、生理期間を少しでも前向きな気持ちで過ごしてもらいたいと思いデザインしています。

−ナプキン以外の商品も豊富にありますね。それぞれ、いつごろから発売されたのでしょうか?

藤巻さん

当社でいうと、タンポンは1974年、月経用カップは2020年に発売しました。海外では、タンポンや月経用カップの使用率が高いのですが、日本では利用者が少ないです。

月経用カップ『ソフトカップ』。コスメのようなパッケージで手に取りやすい

藤巻さん

月経用カップは煮沸消毒して繰り返し使えるため、経済的にも環境にもやさしい商品です。臭いが出にくく、長時間つけられるので、これまでの生理用品の常識をくつがえすアイテムだと思っています。使ってくださる方を増やしていきたいですね。

−ほかにも、まだ商品がありますね。『シンクロフィット』とはどのようなものですか?

藤巻さん

『シンクロフィット』は、からだとナプキンのすき間から経血がもれてしまう悩みを解決するために開発しました。生理用ナプキンと併用するアイテムで、デリケートゾーンに押し当てるように使います。モレやズレが起きないよう、幅や厚みなどの形状も1ミリメートル単位でこだわってつくっています。これは生理用ナプキンと異なり、本体も個包装も水に流せるのが大きな特徴です。

体に貼りつけて使用する『シンクロフィット』は、第三の生理用品として注目を集めている

生理期間も自分らしく過ごせて、誰もが生きやすい社会へ

−ユニ・チャームさんは、生理用品の開発や販売だけではなく、勉強会などの啓発活動にも力を入れていますよね。

藤巻さん

はい。さまざまな活動の根底にあるのは、男女ともに生理への理解を深めてもらい、誰もがより生きやすい社会にしていきたいという想いからです。
 
先ほどもお話したように、日本ではまだ生理の話をするのはタブー視するという風潮が残っています。だからこそ、生理用品の開発・販売を長期間手がけてきた当社が、正しい情報の啓発をすべきだと考えています。

−具体的には、どんな活動をされていますか?

藤巻さん

一つは、2019年から推進している『ソフィ#NoBagForMe』プロジェクトがあります。ドラッグストアなどで生理用品を買うと、紙袋や黒いビニール袋に入れられることが多いですよね。こうした、「生理は隠すもの」という風潮をなくしたいという想いから、プロジェクト名をつけました。袋が必要な方、必要でない方、双方に対して選択肢を持っていただきたい。女性が自分自身のからだのことについて、気兼ねなく話ができる社会の実現を目指しています。
 
最初の活動は、タンポンのパッケージをコスメのようなおしゃれなものにしたことでした。このパッケージ改良のあと、SNSで生理にまつわる投稿が以前の約2倍以上になりました。

『ソフィ#NoBagForMe』プロジェクトで改良されたタンポンのパッケージ

−それはすごい……! 生理の話は気軽にできない感覚がありますし、生理で体調が悪くても、無理に仕事をしてしまうこともあります。

藤巻さん

SNSの調査でも、生理で体調がすぐれないことを親や職場の上司に伝えることができずに、無理をして学校や職場に行っているケースが多いことがわかりました。
 
このような悩みを少しでも減らし、生理期間も自分らしく過ごすためには、男女ともに生理についての知識が必要になります。そこで、「ソフィみんなの生理研修」を企業向けに行うことにしました。これまで約400社に活用いただいています。建設業界や消防、警察といった、男性の割合が多い職場からもご依頼があります。

−ユニ・チャームさんがこれまで、強い思いをもって生理用品をつくられてきたことがよくわかりました。最後に、生理を通じて女性をどのように支えていきたいか、改めて思いをお聞かせください。

藤巻さん

生理用品に求めるものは、時代とともに変わっていますが、当社が一貫して大切にしているのは、生理のある人が生理期間も自分らしく過ごしてほしいということです。
 
生理用品の種類をここまで充実させたのは、女性一人ひとりが自分に適した生理用品を選んでもらうためです。たとえ使う人が少なかったとしても、悩みがあるたった1人の声にも耳を傾けて商品開発をしようという想いがあります。
 
『ソフィ』ブランドのメッセージは、「7日間は、変えられる。」です。これからも、一人ひとりの悩みに寄り添って、生理期間の不安を少しでも減らし、自分らしく過ごしてもらうために商品ラインナップを拡充していきたいと思います。

広報の藤巻さん、ありがとうございました!

CREDIT
取材・文:御代貴子 写真:宗形裕子 編集:HELiCO編集部+ノオト
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