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女性も安心して受診できる。「泌尿器科」はこんな場所

泌尿器科に対して、「なんとなく行きにくい」「男性の患者さんが多い」というイメージを持っている女性は少なくないと思います。でも、尿のトラブルは性別や年齢を問わず誰にでも起こりえるもの。泌尿器科は、女性はもちろん、子どものおしっこの悩みも相談できる診療科です。

そこで本記事では、女性には受診のハードルが高いと思われがちな、泌尿器科について詳しく解説します。「内診はあるの?」「診察は痛くないの?」などの疑問や不安について、女性と小児の泌尿器科「自由が丘ウロケアクリニック」院長の佐藤亜耶先生に教えていただきます。

教えてくれるのは・・・
佐藤 亜耶先生
自由が丘ウロケアクリニック 院長

日本泌尿器科学会認定専門医、医学博士。日本大学医学部卒業後、研修医を経て同大学泌尿器科に入局。関連病院で診療経験を積み、2019年に自由が丘ウロケアクリニック開院。日本泌尿器科学会、小児泌尿器科学会、女性骨盤底医学学会、日本夜尿症学会所属。

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泌尿器科ってどんなときに行くの?

泌尿器科は、主に尿に関わる病気のときにかかる診療科です。具体的には、腎臓、尿管、副腎、膀胱、尿道の病気、それに加えて男性の場合には、前立腺、陰嚢・睾丸(いんのう・こうがん)、陰茎などの男性生殖器まわりのトラブルを診察します。

男性に比べて尿道が短いという体の構造上の特徴に加え、妊娠や出産、閉経などがあることから、女性も泌尿器疾患になりやすい傾向があります。症状としては「頻尿」「尿もれ」などが多くみられます。

また、女性に起こりやすい泌尿器疾患に、骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)があります。骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱などが下垂し腟の外に出てしまう病気で、出てくる臓器によって「子宮脱」「膀胱瘤(ぼうこうりゅう)」などと呼ばれます。

そのほか悪性腫瘍(膀胱がん、腎臓がん、尿管がんなど)、尿路結石も、男性だけではなく女性にも起こる可能性がある病気です。

では、どのような自覚症状があったときに泌尿器科を受診するとよいのでしょうか。まずは「おしっこに異常を感じたとき」です。具体的には下記のような症状がある場合、泌尿器科の病気が隠れている可能性があるので、受診をおすすめします。

□ 尿に血が混じる
□ 尿の色がいつもと違う
□ 尿がにおう
□ 尿が出にくい
□ 排尿時に痛みを感じる
□ 残尿感がありすっきりしない
□ トイレに行く回数が増えた
□ 尿もれしやすくなった
□ 陰部がかゆい
□ 下腹部や背中が痛い

佐藤先生

そのほかにも、股に何かが挟まっている感じがする場合には「骨盤臓器脱」の可能性が。また 尿管結石や膀胱炎・腎盂腎炎(じんうじんえん)で背中の痛みや腰痛、腹痛が出ることもあります。

ちなみに女性に多い「膀胱炎」は内科や婦人科でも診てもらえますが、何度も繰り返す場合には泌尿器科で治療を受けるのが適切です。

佐藤先生

泌尿器科では、一般的な尿検査のほか、顕微鏡で尿を確認する尿沈渣(にょうちんさ)検査、細菌検査、必要があれば腹部超音波検査などでより詳しく尿を調べます。繰り返す膀胱炎は、しっかり治すことが大事ですから、気軽に相談してください。なお、女性の「性病」に関する診察は、泌尿器科ではなく、婦人科が診療科になります。

泌尿器科ってどんな診察をするの?

知っておきたい診察の流れ。陰部を見せる必要はある?

泌尿器科の診察は、一般的に次のような流れで行われます。
1.受付で問診表に記入する
2.診察(医師の問診/必要なら検査・内診・触診)を受ける
3.治療または薬を処方してもらう
4.医療費の支払いをして完了

佐藤先生

当院では初診の方にはまず、問診表に記載されている項目で一番困っている症状などを選んでもらい、それを元に詳しくお話を聞いていきます。

尿に関わる臓器の位置を踏まえると、診察時に陰部を見せる必要があるのか、婦人科のように内診があるのか、気になってしまう方もいるのではないでしょうか。

佐藤先生

泌尿器科疾患の多くは問診と尿検査、超音波検査などで診断できるので、陰部を診たり触ったりするケースは、じつはそれほど多くはありません。ただし骨盤臓器脱が疑われる場合や陰部のトラブルのときは、内診や触診をすることがあります。当院では、ベッドに横になっていただいて診察していますが、病院やクリニックによっては、婦人科にあるような内診台に座っていただいて診察する場合がありますね。

泌尿器科の主な検査内容(女性の場合)をまとめると……

●尿検査
●血液検査
●超音波エコー
●腹部レントゲン など
※陰部の症状や骨盤臓器脱が疑われる場合に陰部の内診・触診あり

診察は痛くないの?

尿の悩みに関する診察は、前述のように問診、尿検査、超音波検査、血液検査などで済むことが多いため、痛みを伴わないケースがほとんどです。

佐藤先生

尿検査は自分で採尿していただきますし、超音波検査はお腹にプローブ(器具)をあてて調べるだけですから、痛みはありません。超音波をあてる場所は、主に腎臓があるバスト下からお腹、恥骨のあたりまでになります。また、膀胱のなかを診る膀胱鏡検査が必要な場合でも、最近はやわらかくて細い内視鏡を使うので、痛みの少ない検査が可能です。心配なことがあれば、遠慮せずに主治医に聞いてみてくださいね。

受診時の服装や用意しておくとよいものは?

婦人科受診の際には「スカートを履いていくのがおすすめ」とよくいいますが、泌尿器科の場合はどうなのでしょう。

佐藤先生

泌尿器科の腹部超音波検査は腎臓があるバスト下から恥骨のあたりまでを出していただきます。(骨盤臓器脱の場合には腟の内診を行う場合があります)。腹部エコーをするだけなら下着を脱ぐ必要はありません。お腹のあたりを診察するので、服装はワンピースよりもトップスとボトムスに分かれているほうが楽だと思います。また、ボトムスはウエストや足周りがぴったりとしたものよりも、ゆったりとしているほうが検査も受けやすいでしょう。

そのほかの診察の流れは内科や皮膚科を受診するときと変わりません。保険証、医療費、お薬手帳などを忘れずに持参しましょう。

泌尿器科で行われる治療とは?

診察の結果、治療が必要な場合には、泌尿器科ではどのようなことが行われるのでしょうか。

行動療法・運動療法(骨盤底筋のトレーニング)

症状に応じたセルフトレーニングの方法をお伝えします。過活動膀胱、尿もれ、骨盤臓器脱などに効果があります。

佐藤先生

頻尿の場合は、排尿の間隔をあける膀胱訓練(尿を膀胱に溜める練習)を、腹圧性尿失禁の尿もれの場合には、骨盤底筋を鍛えることが一番いいといわれていますので、正しいトレーニング法をアドバイスします。

骨盤底筋の鍛え方については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

尿もれを予防&改善!無理なく続ける骨盤底筋の鍛え方
くしゃみやジャンプをしたとき、重いものを持ったときなどに、思いがけず尿がもれてしまう……。そんな症状で悩んでいませんか? これは骨盤底筋の筋力低下によって起こる尿もれで、「腹圧性尿失禁」といいます。女性に多く、ひとりで悩んでいる方も少なくない尿もれですが、症状が軽いうちならセルフトレーニングで改善が期待できます。本記事では、排尿コントロールに関わる、骨盤底筋を鍛える方法について解説します。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-kotsuban/

飲み薬(処方薬)や点滴などの薬物療法

症状によっては薬を処方する場合もあります。膀胱炎など尿路感染症、陰部のかゆみ、尿もれ、頻尿の治療などで飲み薬や塗り薬を使うことがあります。

佐藤先生

例えば、夜中に何度もトイレに起きてしまうというお悩みでは、「過活動膀胱」「夜間多尿」「不眠症」などの原因が考えられます。もし過活動膀胱と診断された場合は、お薬を処方することも多いです。普段は問題なくても、会議や旅行などでトイレが不安になるときにだけ、症状を和らげるお薬を飲んでもらうこともできますし、不眠症が原因なら、それに対応する薬で対処していくこともできます。

腟内装具療法・外科的療法

骨盤臓器脱が進行して、骨盤底筋トレーニングでは改善が見込めないときには、補正器具を使うほか、手術を行うこともあります。

泌尿器科への受診を悩んでいる人へ

泌尿器科で男性医師の診察を受けるのは、「恥ずかしい」と感じる人は多いと思います。最近では、女性泌尿器科医も増えてきていますので、ネット検索で地域のクリニックを探してみるといいでしょう。

佐藤先生

おしっこや陰部の悩みは、相談しにくいと我慢してしまう方がとても多いですね。でも、例えば尿もれが気になり外出を控え、家に引きこもるようになってしまうと、気持ちが沈みがちになってしまいますし、QOL(生活の質)も低下してしまいます。なかには「病気かどうかもわからないのに、病院へ行ってはいけない」と思っている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。おしっこトラブルにはさまざまな理由があるので、検査を受けることはとても大事なんですよ。

女性の場合、膀胱や腎臓、尿道の近くには、子宮や卵巣といった女性特有の臓器があります。たまたま頻尿の症状で受診したら、子宮筋腫などの婦人科系の問題が見つかったケースもあるんです。不安や悩みを話すだけでも大丈夫です。風邪をひいたら内科に行くように、「おしっこで悩んだら泌尿器科」という感覚で受診してみてくださいね。

子どものおしっこの悩みも泌尿器科でOK

泌尿器科は大人のためだけの診療科ではありません。「子どもがしょっちゅうトイレに行くので心配」「おねしょが治らない(夜尿症)」など、子どもの尿トラブルなどで悩んでいる保護者の方もいるのではないでしょうか。こんなときもぜひ、泌尿器科へ相談してみましょう。

佐藤先生

子どものおしっこのトラブルって意外と多いんです。頻尿や夜尿は悪いことではありませんが、お子さんへの接し方などで悩んでいる保護者の方もいらっしゃいますね。気を楽にして、泌尿器科へ相談していただくと適切なアドバイスがもらえると思います。そのほか「男の子の包茎について、どこに相談したらいいかわからない」というときも、泌尿器科にご相談くださいね。

子どものおねしょについては下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ
「おねしょが治らないけど大丈夫かな」「おねしょをしちゃった子どもに、なんて声をかけてあげたらいいの?」などと悩んでいる方は少なくないと思います。いろいろな対策を講じてもうまくいかなかったり、親子ともにナーバスになってしまったり、おねしょが解決するまでに試行錯誤を繰り返すことはめずらしくありません。

本記事では、おねしょの原因や改善のために家庭でできること、医療機関に行く目安についても解説していきます。お子さんにしっかり寄り添うためにも、まずはきちんとした知識を学んでいきましょう。
https://helico.life/monthly/221112nyonayami-bedwetting/
CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:タカヤユリエ
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