毎日何気なく繰り返している排尿。その尿をしっかりと観察している方はどのくらいいるでしょうか。「すぐ流すおしっこをわざわざ観察しないよ」「特に何も考えずに流していたかも……」という方が多いと思いますが、じつは尿には「健康のバロメーター」ともいうべき、たくさんの情報が詰まっています。
本記事では今日からすぐに自宅で始められる尿観察のポイントをご紹介。これを機に尿を「見ず(水)に流す」習慣を変えてみませんか?
尿検査では何がわかるの?
腎臓は「沈黙の臓器」ともいわれますが、腎臓でつくられた尿には、たくさんの情報が詰まっています。尿はさまざまな体の状態が推測できる、いわば優秀な「健康のバロメーター」なのです。
病院で行う健康診断でも、必ず検尿が行われるのは皆さんもご存知のとおり。では、そもそも尿検査をすると何がわかるのでしょうか。自宅でできる尿観察のポイントの前に、まずは尿検査について解説します。
尿検査では、主に尿中にタンパク・糖・血液が混ざっていないかを確認しており、それぞれの項目からは、以下のことがわかります。
尿タンパク検査
尿をつくるうえで欠かせない腎臓。腎臓では糸球体(しきゅうたい)と呼ばれるフィルターによって体内の水分がろ過されています。しかし、腎臓に病気が起こると、糸球体のフィルター機能が弱まり、健康であれば尿に混ざらないタンパクが尿中に流れ出てしまうのです。
尿がつくられる仕組みについては下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
- そもそも尿ってなに?尿にまつわる基礎知識と豆知識
-
毎日、誰もが当たり前のように排泄している「尿」。体調や年齢によって個人差はあるものの、成人になると1日あたり1.5リットルほどを排尿しています。しかし、尿が体のなかでどのようにしてつくられているのか、そしてどのような役割を担っているのかをきちんと理解している方は少ないのではないでしょうか。本記事では、普段あまり目を向けない「尿」にまつわる基礎知識や豆知識をお伝えします。https://helico.life/monthly/221112nyonayami-kiso/
尿タンパク検査が陽性の場合、腎臓に関わる病気が隠れている可能性があります。そのほか発熱時や激しい運動後などは、一時的にタンパク尿が見られるケースも。後者の場合、過度に心配する必要はありませんが、本当に腎臓の病気が関連していないかを確かめるために、再検査を行う必要があります。
尿糖検査
尿糖とは尿中に含まれる糖分を指します。健康な場合には糖は体に必要な成分として再吸収されるため、尿中に糖分が混ざることはありません。しかし、血液中の糖分濃度が高い状態(高血糖)になると、体は糖分を含んだ尿を排出するようになります。
尿糖検査が陽性の場合には、まず糖尿病の可能性を疑います。排出される糖の量にもよりますが、より重症になると、尿から糖の甘い匂いがすることもあります。
尿潜血反応
明らかに見てわかる血尿以外にも、目には見えない少量の血液が尿に混じっていることがあるため、尿潜血反応では尿中の血液の有無を確認します。
血液が混じっていた場合には、腎炎などの腎臓に関連した病気や尿路結石や膀胱がん、前立腺炎など腎臓や尿管、膀胱や尿道に関連する病気が隠れている可能性も。なお、月経の前後に尿検査を行うと、経血が混ざって陽性となる場合があります。
そのほかの項目が確認できる場合も
尿検査では上記3項目を診るのが一般的ですが、検査方法によっては泌尿器系の炎症(感染症など)が起きていないかを確認できる場合もあります。
今日からできる尿観察――着目すべき3つのポイント
先ほど紹介したのは、医療機関の尿検査でわかること。では、家庭でできる尿観察は、どのようなことをチェックすればいいのでしょうか。3つのポイントと、それによってわかることをあわせてご紹介します。
ポイント1:色
通常、健康な方の理想的な尿の色は淡い黄色とされています。血尿が出ている場合には、誰が見ても血とわかるような鮮やかな赤、あるいはコーヒーのような色、黄土色(おうどいろ)などさまざまです。血尿が出ている場合、がんや膀胱炎、尿路結石などが隠れている可能性があります。肝臓の病気が疑われる場合は、琥珀色(こはくいろ)、あるいはオレンジ色の尿が見られます。
また、普段よりも尿の色が濃いと感じた場合には、水分摂取量が足りていない可能性があります。意識して水分を摂るように心がけてみましょう。
ポイント2:におい
健康な方の尿は、排出直後はほんの少しにおいがする程度です。ただ、時間が経つと細菌によってアンモニアが発生し、においを放つようになります。一方で、排出直後から刺激臭やアンモニア臭、あるいは悪臭がする場合には、尿路感染症などの可能性が考えられます。また、尿から甘い香りがする場合には、糖尿病(尿に糖が多く含まれている)の可能性もあるでしょう。
ポイント3:泡立ち
排尿後、尿に泡立ちが多く見られる場合は、尿中に含まれるタンパク量、あるいは糖が多くなっている可能性が高いです。とはいえ、立ったまま排尿をした場合などに尿に泡立ちが見られるのは当然のこと。タンパク尿の場合には「泡がなかなか消えない」「比較的泡が細かい」という特徴があります。
また、水分摂取量が減ったときや発汗が多いとき(水分不足で尿が濃くなるとき)、あるいは摂取した食べ物や飲み物の影響で一時的に泡立ちが多く見られる場合も。日々尿観察を行い、1か月以上も尿に泡立ちが見られる場合には、泌尿器科や内科の受診を検討しましょう。
尿の色がおかしい、発熱時の尿の濁り――こんなときはすぐに泌尿器科の受診を
尿に関連する診療科として泌尿器科が挙げられますが、特に女性の方は「泌尿器科の受診はハードルが高い……」と、受診をためらう方も多いのではないでしょうか。しかし、冒頭の通り、尿はとても優秀な健康のバロメーター。以下の症状があった場合は要注意です。
血尿や琥珀色など尿の色がいつもと違う
尿観察の着目ポイントでも触れましたが、尿の色は健康状態によって大きく左右されます。特に、血尿(ピンク色、鮮血のような赤、黒っぽい赤、赤茶色など)や琥珀色の尿が見られた際は、直ちに泌尿器科を受診しましょう。
なお、服用している薬やサプリメントが尿の色に影響する場合もあります。医療機関を受診した際は、自身が飲んでいる薬やサプリメントを医師にきちんと伝えましょう。
発熱時の尿の濁り
尿が濁っている場合には、体内で感染が起こっているケースも考えられます。発熱を伴っており、さらに腰部痛も生じている場合には、腎盂腎炎(じんうじんえん)の可能性が高いといえます。発熱時に濁った尿が出た際には注意してください。
泌尿器科のなかには、女性専門外来や女性の医師が常駐している医院もあります。気になる方はぜひ、近隣の医療機関を調べてみることをおすすめします。
泌尿器科については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
- 女性も安心して受診できる。「泌尿器科」はこんな場所
-
泌尿器科に対して、「なんとなく行きにくい」「男性の患者さんが多い」というイメージを持っている女性は少なくないと思います。でも、尿のトラブルは性別や年齢を問わず誰にでも起こりえるもの。泌尿器科は、女性はもちろん、子どものおしっこの悩みも相談できる診療科です。https://helico.life/monthly/221112nyonayami-urology/
そこで本記事では、女性には受診のハードルが高いと思われがちな、泌尿器科について詳しく解説します。「内診はあるの?」「診察は痛くないの?」などの疑問や不安について、女性と小児の泌尿器科「自由が丘ウロケアクリニック」院長の佐藤亜耶先生に教えていただきます。
本記事では、尿からわかること、そして家庭でできる尿観察のポイントを解説しました。日々、尿を観察していれば、早めに異変に気付くことができるかもしれません。ぜひ、今日からチェックを始めてみてはいかがでしょうか。
- 教えてくれたのは・・・
-
- 吉田 正貴先生
- 桜十字病院 上級顧問・泌尿器科医長
すっきりぐっすり排尿外来を開設。
1981年熊本大学医学部卒業。1987年同大学院医学研究科修了。熊本大学医学部泌尿器科准教授、国立長寿医療研究センター手術・集中治療部長などを経て、2017年より同センター副院長、泌尿器外科部長。2021年より桜十字病院上級顧問、泌尿器科医長。日本排尿機能学会元理事。「夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]」の作成委員長をはじめ、各種排尿障害ガイドラインの作成委員を務めた。