寒くなってきて、肌荒れや手荒れに悩む人が増え始めるこの季節。乾燥しやすい時期だからこそ、「これくらいの症状で皮膚科に行くのは気が引ける……」と思う方もいるかもしれません。しかし、そのまま放っておくうちに重症化してしまう可能性もあります。
では、皮膚科を受診すべき「肌荒れ・手荒れ」とは、どのようなものなのでしょうか。その症状の種類と受診の目安をあわせて解説します。悪化する前に、早めにきちんと対処していきましょう。
肌荒れの種類とは? 症状別で解説
一言で肌荒れ・手荒れといっても、どのような状態を指すのかは人によって異なります。一般的に肌荒れ・手荒れと表現される症状は以下のとおり。それぞれ特徴が異なるため、まずは原因を見過ごさないようにしましょう。
- ニキビ(ざ瘡):皮脂が毛穴のなかにたまることで菌が増殖し、炎症を引き起こす。
- 湿疹:赤みやかゆみ、ブツブツが数時間から数日間にわたって生じ、慢性化してひび割れのような症状が出ることもある。また、皮膚をかけばかくほど悪化しやすい。
- 蕁麻疹(じんましん):突然、皮膚の一部が赤く腫れる。一例としては、重いかばんを腕にかけていると、その部位に現れることなども。多くは数十分から数時間以内に消える。
- かぶれ(接触皮膚炎):植物や金属、衣類、装飾品、消毒薬、香料や化粧品などに含まれる物質が直接皮膚に触れて起こる局所の皮膚炎。早期のほうが治りやすいが、原因となる物質の接触が続いていると広範囲に広がって重症化してしまうことがある。
- アトピー性皮膚炎:皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しやすく過敏になり、かゆみを伴う炎症。症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すことがある。花粉症や喘息などのアレルギー歴があったり、親族に発症経験があったりする場合は、アトピー性皮膚炎になりやすい性質をもっている可能性も。
- 脂漏性皮膚炎:体質的な皮膚炎で皮脂分泌が多い体の中心部、毛が生えている部位、髪の生え際などに生じる。ドライスキンとオイリースキンのバランスが偏ることで皮膚炎を繰り返す。体内の糖、脂質代謝の異常、免疫の異常などが起こると皮脂分泌に影響して皮膚炎が起こることもある。
肌荒れは重症化すると治りにくい?
肌荒れ・手荒れは重症化してしまうと治療に長い時間がかかりますが、軽症のうちに原因を把握して適切なスキンケアができれば、重症化せずに比較的早く治すことができます。ただし、誤った対処をすると、治るどころか悪化してしまうことも。
たとえば、手湿疹の症状を軽減する目的で、ゴム手袋を着用して水回りの家事をしていたところ症状が悪化。病院で詳しい検査をした結果、ゴム手袋の成分によってアレルギー反応が生じていたというケースもあります。手荒れ対策として着けていた手袋が、むしろ皮膚炎を悪化させることがあるのです。
そのほかニキビひとつをとっても、その原因は食事内容や便秘、ホルモンバランスや睡眠時間、細菌、薬によるものなど、じつにさまざまです。「こんな症状だけで皮膚科に行くなんて……」ではなく、「このくらいの症状のうちに皮膚科に行って早く治そう!」と考えて、早め早めの対策を心がけましょう。
こんな方は肌荒れ・手荒れに要注意!
日々の生活習慣や体質によって、肌荒れのしやすさも変わってきます。そこで、特に気をつけてほしい方の特徴をご紹介。普段から肌荒れに悩む人は、もしかしたら当てはまるかも?
マスク生活だからこそ、目の周りに要注意!
コロナ禍により、マスクを着用する機会が増えた昨今。マスクによる肌への摩擦によって「マスク荒れ」を起こす方も見受けられます。特に不織布のマスクは刺激を感じやすい場合もあるため、肌と合わないときはインナーマスクを着用するなど、直接的なマスクの接触を避けるようにしましょう。
また、マスク着用による肌への影響は、摩擦だけではありません。マスクで顔の半分が見えないこともあり、アイメイクに力を入れるようになったという方も増えたと思いますが、目の周囲は人間の皮膚のなかで最も薄くて過敏な箇所。異物が吸収されやすい弱い部位なので、洗顔料などによる肌荒れがはじめに現れます。加えて、マスクの接触が気になって、下まぶたなど目の周囲を頻繁にさわってしまいがちですが、そうすると爪などで皮膚に細かな傷を作ってしまうことも。そこへ、また濃いアイメイクをすると、刺激に伴う炎症を起こしてしまう可能性があります。
さらに、メイクを濃くすればするほどメイクそのものの負担だけでなく、メイクを落とすときのリムーバーやこするときの刺激も強くなりがち。メイクを落とす際には、まずはクレンジングオイルを顔に塗布して時間をおき、メイクを浮かせてからやさしくなでるようにするのがおすすめです。
花粉症などのアレルギー体質の方は要注意!
一般的に、花粉症やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがある方は「刺激に対して体が反応しやすい」状態にあるため、肌荒れ・手荒れなどを起こしやすく、また長期化・悪化もしやすいといえます。
たとえば蕁麻疹が生じた際、患部をかくことで皮膚が傷つき湿疹まで生じ、症状が長期化してしまうことも。さらにそこから免疫のバランスが崩れて、全身に症状が広がってしまう可能性もあるのです。ですから、アレルギー体質の方の場合は特に、肌荒れ・手荒れを長期化させないよう早めに皮膚科を受診するのが望ましいでしょう。
月経前や妊娠期間は要注意!
女性は月経や妊娠などによってホルモンバランスが大きく変動し、これが肌荒れにつながるケースが多くあります。月経前に肌荒れがひどくなり、月経が始まると途端に肌荒れが治まるという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
きちんと肌荒れが治まる場合には皮膚科を受診する必要はありませんが、人によっては漢方薬などを用いながらホルモンバランスのコントロールをしないと肌荒れが治らないという方も。
きっかけが月経や妊娠だった場合でも、あまりに長期にわたって肌荒れが続く場合には、一度皮膚科で相談してみてもよいかもしれません。
内臓の機能が低下している方は要注意!
皮膚というと外からの刺激ばかりに目がいきがちですが、じつは、内臓の機能低下によって皮膚に症状が現れることもあるのです。一般的に、脂漏性皮膚炎は中高年の男性で悪化しやすい傾向にあります。しかし、中高年の男性に限らず、糖代謝(血糖値)や脂質代謝(コレステロールや中性脂肪の値)異常がある、尿酸値が高い方も同様に悪化しやすい傾向があります。
背中にニキビができる、あるいはTゾーン(おでこや鼻)が乾燥するという場合には、内臓の機能に問題がないかを確認したほうがよい場合も。根本的に皮膚をきれいにするためには、体の内側から整える必要が。肌は心と体の不調をよく教えてくれます。その変化に注意して心身のバランスを整えるようにしましょう。
心当たりはありましたか? ひとくちに「肌荒れ」といっても、症状や原因はいくつもあります。一時的な肌荒れだと思ってしばらく放っておくと、はじめは一部分だった症状が全身に広がってしまい、皮膚の病気が長期化することも。「なかなか肌荒れ・手荒れが治らない」「なぜ治らないんだろう」と思ったら、ためらわずに皮膚科を受診してみましょう。
- 教えてくれたのは…
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- 関東 裕美先生
東邦医療センター大森病院 スキンヘルスセンター長、皮膚科学臨床教授を経て退官。
現在、東邦大学医学部皮膚科学講座客員教授として診療にあたる。
皮膚科専門医。1980年 東邦大学医学部医学科卒業。日本皮膚科学会代議員、日本皮膚免疫アレルギー学会学術教育委員会委員、日本接触皮膚炎研究班班長、日本美容皮膚科学会理事、日本香粧品学会評議員、日本エステティック研究財団理事長、 日本毛髪科学協会副理事長、厚生労働省家庭用品などに係る健康被害病院モニター委員、厚生労働省家庭用品専門家会議委員、厚生労働省薬事・食品衛生審議会臨時委員、消費者庁消費者安全調査委員会専門委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員。専門は皮膚アレルギー、特殊外来でアトピー性皮膚炎と接触性皮膚炎診療を担当する。「化粧品は皮膚を守るもの」をモットーに、肌荒れをしていても化粧をやめない、乾燥を予防するスキンケアを推奨しており、子どもから大人まで幅広い年代の女性患者が受診している。