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どうして肌は荒れるの?セルフケアのための基礎知識

老若男女を問わず、日常生活のなかで肌荒れに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。そもそも「肌荒れ」とは、いったい肌にどのようなことが起きている状態なのか、何が原因で起こっているのかはご存じですか?

本記事では、意外と知られていない「肌荒れ」に関する基礎知識をお届けします。

INDEX
そもそも肌が荒れるって?
日々変化する肌の状態
体質が影響する肌の弱さや強さとは?

そもそも肌が荒れるって?

肌の役割と肌荒れが起こるメカニズム

私たちの体を覆っている「肌」。肌は私たちが生活するうえで欠かせない、さまざまな機能をもっています。主な機能としては下記が挙げられます。

  • 肌の下にある組織の保護機能
  • 体温の維持機能
  • 紫外線や異物などから守るバリア機能
  • 物を触ったときの感覚や、痛みや温度などを認識する知覚機能
など

このように、さまざまな機能を担っている肌の構造を示したのが、以下のイラストです。

皮膚の構造
私たちが普段目にしている部分は「表皮」と呼ばれ、その表皮のなかで最も表側にあるのが「角層」です。角層の表面は皮脂と汗の混ざった「皮脂膜」という天然の保護膜に覆われています。皮脂膜と角層が担う機能のなかでも重要なのが、先ほど説明した機能のうち、異物の侵入や水分の蒸発を防ぐ「バリア機能」です。

過剰な洗浄などによって皮脂膜がはがれると角層の水分が失われやすくなり、保湿能力は低下します。このような状態を「肌荒れ」と表現します。また、肌荒れが進むと手やかかとなどで見られる「ひび割れ」が生じることも。さらに、乾燥によって洗浄剤(石けんなど)による刺激が起こりやすくなるとかゆみが生じ、掻いたりこすったりすることでさらに肌に刺激が加わるという悪循環に陥ってしまいます。

日々変化する肌の状態

肌の状態を左右する要因って?

肌は、さまざまな要因によってつねに状態(皮脂の分泌量や水分量など)が変化していきます。そして、その状態に合わせてお肌のケアをしてあげることが肌荒れの予防・改善において最も重要なのです。

肌の状態を左右する要因は、下記が挙げられます。

  • ホルモンバランスの変動
  • 精神的なストレスや体の疲れなどによる免疫機能の変動
  • 湿度や気温、紫外線量などの生活環境の変化
  • 食事や睡眠時間を含む生活リズムの変化
  • 加齢による皮脂分泌量の変化
  • 空気中に飛散している花粉の種類や量の変化
  • マスクによる摩擦など、肌への直接的な刺激
など

たとえば女性の場合、月経中や妊娠・出産時、あるいは思春期や更年期など、ホルモンバランスが大きく変化するタイミングは要注意といえます。また、日本は季節ごとの気温や湿度の変化が大きいため、その都度、スキンケアの方法を変えることも大切です。

さらに近年は、新型コロナウイルス感染症の影響でマスク着用を強いられる場面も多く、マスク内部の蒸れや着用時の摩擦が原因で肌荒れするケースも増えています。

手や指のアルコール消毒は肌荒れの原因になるの?

新型コロナウイルスがもたらした肌への影響は、マスクが原因となるものだけではありません。これまでよりもアルコール消毒を行う機会や手洗いの回数も増えているなかで、手荒れに悩む方も多いのではないでしょうか。

頻繁なアルコール消毒や手洗いは、せっかく肌が備えているバリア機能を破壊してしまうことにもつながるため、肌荒れの原因になり得ます。肌のコンディションによって消毒や手洗いの回数を調整したり、こまめにスキンケアをしたり、感染対策と肌荒れ対策を両立できるように工夫してみましょう。

体質が影響する肌の弱さや強さとは?

肌の弱さ、強さで何が違うの?

一般的に肌が荒れやすい、肌トラブルが起こりやすい方のことを「肌が弱い」と表現することがあります。「肌が弱い」方は、先天的に角層の水分保持機能が低く、バリア機能がうまく働かないということが考えられます。また、食べ物や花粉、その他の成分などに対するアレルギーを持っている方は、「ある刺激に対して過敏に反応する体質である」ということから、肌荒れを起こしやすい可能性もあります。このように、肌の弱さ・強さは先天的(体質的)な部分が大きいのです。

一方で、「肌が強い」という方も「生涯一度も肌が荒れない」ということは、ほぼあり得ません。年齢やそのときの体調、生活スタイルや季節、ホルモン周期、あるいは肌の部位によっても状態は異なります。だからこそ、自分自身の肌の特性や状態をきちんと見極め、自分に合ったケアの方法を日頃から知っておくことが大切です。

年を重ねてからでも肌を強くできるの?

基本的には加齢とともに皮脂の分泌量が減り、肌のバリア機能は衰えていくため、肌を強くする(良いコンディションで保つ)ことが難しくなってきます。しかし、自分自身で食事や生活習慣、スキンケアの方法に気をつかうことで年齢を問わず肌の状態を保っていくことは可能です。また、内臓の病気を管理したり、若いうちから紫外線対策を行ったりすることも肌の健康を保つ、あるいは肌を若く保つために重要です。大切なのは、他人のまねをしないこと。自分の皮膚の状態は自分が最もわかっているはずなので、きちんと管理できるはずです。他の人と比較せずに無理のないスキンケアの継続がアンチエイジングには大切です。

男性・女性で肌質の違いってあるの?

一般的に男性は女性より筋肉量が多いため代謝が高く、汗の分泌量も多い傾向にあります。また、皮脂分泌量も多い傾向にあるため、男性の方がより積極的に洗浄することが多いです。ところが、加齢によって皮脂の分泌量は減り、それとともに、代謝や汗の量も確実に減っていきます。すると、徐々に肌は乾燥気味に。過剰に皮膚を擦っている男性の場合、最初にすねの辺りが粉吹き状態になって、かさつきを感じるケースが見られるようです。特に、50歳代~60歳代頃になると、冬の乾いた季節には乾燥対策が必要になってきます。

一方、女性の肌は男性と比較すると皮脂量が少ないケースも多く、乾燥しやすい傾向があります。特に30歳代後半から40歳代頃になるとホルモンバランスの変化などもあり、皮脂の分泌量や水分量の減少によって肌質に大きな変化が生じることも


「肌荒れ」は多くの方にとって非常に身近でありながら、知らないことも多かったのではないでしょうか。年齢や性別、体質などさまざまな要素をふまえて自分自身に適したスキンケアを見つけるためにも、日頃から自分の肌に意識を向けてみませんか?

教えてくれたのは・・・
関東 裕美先生

東邦医療センター大森病院 スキンヘルスセンター長、皮膚科学臨床教授を経て退官。
現在、東邦大学医学部皮膚科学講座客員教授として診療にあたる。
皮膚科専門医。1980年 東邦大学医学部医学科卒業。日本皮膚科学会代議員、日本皮膚免疫アレルギー学会学術教育委員会委員、日本接触皮膚炎研究班班長、日本美容皮膚科学会理事、日本香粧品学会評議員、日本エステティック研究財団理事長、 日本毛髪科学協会副理事長、厚生労働省家庭用品などに係る健康被害病院モニター委員、厚生労働省家庭用品専門家会議委員、厚生労働省薬事・食品衛生審議会臨時委員、消費者庁消費者安全調査委員会専門委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員。専門は皮膚アレルギー、特殊外来でアトピー性皮膚炎と接触性皮膚炎診療を担当する。「化粧品は皮膚を守るもの」をモットーに、肌荒れをしていても化粧をやめない、乾燥を予防するスキンケアを推奨しており、子どもから大人まで幅広い年代の女性患者が受診している。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:大川久志
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