近視妖怪に気をつけろ!
太陽の光を浴びると近視の進行が防げることが分かっているよ。登下校の時間も含め、1日2時間(=週14時間)を目標に、屋外で過ごすようにしてみよう。
まなこべったりは、勉強やゲームなどを長時間続けている子どもが大好き。そんなときの秘密の呪文は「3つの20」。勉強やゲームなど、近くを見続ける作業(近業)を20分続けて行ったあとは20フィート(約6m)先を20秒間眺めると、まなこべったりを遠ざけられるんだ。「3つの20」を実行するために、こんな工夫もしてみてね。
文部科学省の調査*によると、視力1.0未満の小学生の割合が1979年の17.9%から2019年には34.5%に増加しています。
低い年齢で近視が始まるほど、身体の成長に伴って近視が進行する(近視の度数が上がる)傾向にあり、近視の度合いが強くなると、将来的にさまざまな目の病気になるリスクが上昇。コロナ禍でリモート授業が増えたり、屋外活動の時間が減ったりすることが、さらに小児の近視増加に拍車をかけるとも懸念されています。
台湾の小学校では週に150分の屋外活動を制度化した結果、近視の児童の割合が減少し、近視対策として効果を上げました。「3つの20」はアメリカ検眼士協会が近視の進行抑制方法として推奨しているものです。
近視の進行を抑制するには毎日の取り組みが重要です。ぜひご家族で週14時間の屋外活動と「3つの20」を生活習慣に取り入れてみてください。
*文部科学省 学校保健統計調査
子どもの年齢が低いほど、遠くがよく見えないことが自覚できないので、保護者など周囲の大人が気づいてあげる必要があります。子どもに以下のような行動が見られた場合、近視が始まっている可能性があるので、一度眼科で検査をしてみてください。
・遠くを見るときに目を細める
・TVの画面に近づく
・片目で遠くを見ようとする
・目をこすることが多い
・本やノートと目の距離が近くなった
※両親が近視の場合、子どもも近視になりやすい傾向があります
※学校で行われる視力検査は、検査環境などによって本来の視力とは違った結果になることが少なくありません。近視が始まっていないかどうか・進んでいないかどうかを確認するためにも定期的に眼科で視力検査することをおすすめします。
学童期の近視進行を抑制する治療として、「オルソケラトロジー」と「低濃度アトロピン点眼」があります。どちらも、視力が良くなるのではなく、近視の進行がゆるやかになる可能性がある治療法であり、2021年8月現在日本では自由診療(自費)です。興味のある方は、小児眼科専門医や眼科専門医に相談してみましょう。
オルソケラトロジー
ナイトレンズともよばれ、専用のハードコンタクトレンズを装着して就寝し、角膜の形を矯正する治療法。これによって、日中は眼鏡やコンタクトレンズを使わずに過ごせるようになることが多い。
低濃度アトロピン点眼
1日1回、点眼薬を使用することで近視の進行を抑制する治療法。シンガポールで一定の近視進行抑制効果が確認されている。
宇井牧子先生
CS眼科クリニック クリニック院長
小児眼科診療のエキスパート。クリニックでは小児眼科のほか、一般眼科の診療も行っている。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.41
「目の不調」より転載(2021年9月15日発行)