クマなく! 目に良い! あかり術!
家で過ごす時間が長くなり、自宅でリモートワークをする人も増えたいま、家庭の照明も目にとって重要です。作り付けの天井照明に「ちょい足し」すると、まぶしく感じず暗くもない、目にやさしい照明環境に一歩近づきますよ。
人間には朝起きて、日中活動して、夜に眠るというリズムが備わっています。これは日の出とともに目覚め、日が沈むと眠るという大昔からの生活によってつくられたものです。このリズムに合わせて、1日の間に太陽の光が変化するように照明の色・明るさも変えると、目だけでなく体にもやさしい照明環境になります。日中に照明を使う場合は青白い色で過ごし、夕方以降は暖色系の色に変え、明るさも少し落としてみましょう。
天井照明で光の色・明るさを調整できる場合は時間によって調整し、できない場合は夕方以降に天井照明を消して暖色系の光源を使ったスタンドライトなどを使うといった工夫も可能です。
部屋の中で明るいところと暗いところの差が大きいと、目が疲れる原因になります。暗い部屋でTVを見るのが目に良くないのも、部屋の暗さとTVの明るさの差が大きいため。部屋の明かりを暗めにしているときはTVの裏側に照明を入れて壁を照らすと、部屋とTVの明るさの差が少なくなり、目が疲れにくくなります。
夜、リビングルームでゆったりと読書をする場合は、書いてある文字がはっきり読めれば、照明はあまり明るくしすぎないほうが適しています。
天井照明に加えてデスクライトを使うことで、小さな文字を読んだり書いたりするときも目が疲れにくくなります。紙と文字の色のコントラストが大きいほど、文字が読みやすくなるので、白と黒がはっきりした筆記具を使うのがおすすめです。デスクライトは、視線を挙げたとき、光源が直接目に入らないように位置を調整しましょう。
パソコンを使う場合、モニターはまぶしく感じないくらいの明るさに。部屋の明るさとモニターの明るさの差が大きいと目が疲れるので、どちらかが明るすぎる・暗すぎるということのないようにしましょう。パソコンによっては「夜間モード」など、夜間の使用時に暖色系の色調にする設定ができる場合があるので、一度確認してみるのもおすすめです。
また、部屋の照明がモニターに映り込むことも目が疲れる原因になります。パソコンの位置を変えたり、モニターに反射防止フィルムなどを貼ったりすることで対策してみましょう。
仕事や勉強を行う部屋は、明るすぎる部分や暗すぎる部分がないように、どの部分も同じ明るさにしたほうが快適です。一方で、食卓では部屋全体の照明とは別に、料理が並ぶテーブルに照明を当てて少し明るさの差をつけると、料理が引き立ち、鮮やかに見えて目にも◎。
夕食のときは部屋全体の明かりを少し落とし、料理を並べたテーブルには天井から吊り下げるペンダントライトやスポットライトを当てるのがおすすめです。天井から吊り下げる照明を取り入れるのが難しい場合、作り付けの天井照明にフロアスタンドライトを足す、というかたちなら比較的手軽に取り入れられます。
中村芳樹先生
東京工業大学 環境・社会理工学院
建築学系都市・環境学コース教授
建築空間の見え方を設計する、照明工学のエキスパート。著書に『視環境設計入門 見え方から 設計する光と色』(数理工学社)など。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.41
「目の不調」より転載(2021年9月15日発行)