糖にまつわる一問一糖
「高血糖」ってよく聞くけれど、いったいどういう状態?まずは糖にまつわるギモンをまとめて解消しよう!
血糖の濃度を表したものが「血糖値」です。食事から血液中に取り込まれたブドウ糖は、インスリンと呼ばれるホルモンの働きによって、体を動かすためのエネルギー源として全身で使われるほか、肝臓や筋肉、脂肪組織に取り込まれ、エネルギーが不足したときに利用できるよう貯蔵されます。
血糖値は、正常では空腹時で70~100(110)mg/dL、食後でもインスリンの働きによって70~140mg/dLの範囲に保たれています。健康診断(健診)などで測るのは空腹時の血糖値で、この値が100mg/dL以上であれば、血糖値が高め(高血糖)であると言えます。
血糖値が高い状態は、ブドウ糖を細胞に取り込んで血糖値を下げるインスリンの働きが低下していることを表すもの。インスリンの分泌が減ったり効きが悪くなったりして、血糖値が慢性的に高い状態となるのが「糖尿病」ですが、空腹時血糖値の異常は、本格的に糖尿病を発症する1、2年前からみられるようになります。つまり血糖値が高め=「糖尿病予備軍」と言えるのです。
高血糖の怖さは、自覚症状がないことです。健診などで指摘されて、特に対策を打たずに放置すれば、糖尿病に進展していく可能性が高いだけでなく、がんや認知症の発症リスクが高まることもわかっています。高血糖はいわば「万病の元」なのです。
健診(空腹時血糖)では高くないのに、食後に血糖値が正常範囲を超えて跳ね上がる「食後高血糖(グルコーススパイク)」という現象をご存じですか?これは、インスリンの分泌が緩慢になるために起こる血糖値の異常で、いわば「隠れ高血糖」。多くは加齢に伴い40代頃からみられます。このような血糖値の急激な変動は、常時高血糖の状態よりも血管内皮細胞を傷つけ、動脈硬化症や脳梗塞などを引き起こしやすいことが知られています。これまで指摘されたことがなくても、特に40歳頃からの血糖値のケアは万人に必要なのです。
血糖値を上げる食事中の成分は「炭水化物(糖質)」ですから、食後血糖値の急な上昇を防ぐためにも、糖質の摂り方や摂取量を見直したり、継続できる運動を探したりすることが大切です。
【監修】山田 悟 先生
(北里大学北里研究所病院 糖尿病センター センター長)
糖尿病診療のエキスパート。糖尿病の新しい食事療法「緩やかな糖質制限(ロカボ)」の提唱者として、生活の質を下げない治療法を追究している。一般向け著書に『カロリー制限の大罪』(幻冬舎新書)、『血糖値が安定すればやせられる』(文藝春秋)など多数。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.27
「高血糖」より転載(2017年10月16日発行)