3

第1回「薬はどう体を巡るの?薬が効くメカニズム」

皆さんは最近、どんなときに薬を使いましたか? 日常的に特定の薬を服用している、虫に刺されてかゆみ止めの薬を塗った、腰痛で湿布薬を貼ったなど、人それぞれ異なるでしょう。

薬は、健康な生活を維持するうえで心強い存在ですが、「薬さえ飲んでいれば大丈夫」と頼りすぎるのはよくありません。一方で、「副作用が怖いから薬は使いたくない」と必要以上に避けるのも、症状を長引かせる原因となります。

私たちにとって身近な存在である薬について、じつはよく知らないことも多いもの。このシリーズでは、“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてわかりやすく解説します。第1回目は、「薬って何?」という根本的な疑問を出発点に、薬が効くメカニズムに迫ります。

教えてくれるのは・・・
中間 葉子さん
株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局千歳台店 店長

研修認定薬剤師/スポーツファーマシスト
地域の方々が気軽に相談に来ることができるような薬局を目指し、日々のホスピタリティを大切にしている。

INDEX
そもそも、薬の役割とは?
薬は体のなかをどのように巡っていくの?
薬を服用する回数や量はどうやって決まるの?
これはNG! 薬の使い方に関する注意点
信頼できる「かかりつけ薬局/かかりつけ薬剤師」を見つけよう

そもそも、薬の役割とは?

薬にはさまざまな種類がありますが、一般的に、病院で処方される「医療用医薬品」と、薬局で入手できる「市販薬」とに大きく分けられます。どちらも、主に次のような目的でつくられています。

① 症状の原因を治す
② 症状を緩和する
③ 症状を予防する
④ 病気の有無や体の状況を知る

薬は、錠剤や粉薬、塗り薬、貼り薬、点眼薬、注射薬などがあり、使い方や形状はさまざまです。それぞれに特徴があり、たとえば粉薬であれば錠剤やカプセルよりも、量を細かく調整できるといったメリットがあります。

そうした特徴を生かしつつ、使いやすさなどにも配慮して一つひとつの薬はつくられています。

中間さん

私たちの体には、不調を自ら改善しようとする「自然治癒力」が備わっていて、健康であれば、お薬は必要のないものです。けれど、かぜをひいてしまったり、ケガをしてしまったり、体に不調が生じることもありますよね。

「薬=病気やケガを治すもの」とのイメージがあるかもしれませんが、薬はあくまでも自然治癒力のサポート役であり、自然治癒力なしに回復はできません。薬だけに頼らず、体が本来の力を発揮できるよう、栄養バランスのとれた食事・適度な運動・質のよい睡眠を意識することも、とても大切です。

薬は体のなかをどのように巡っていくの?

そもそも、薬はどのように体のなかを巡り、効果を発揮するのでしょうか。ここでは飲み薬の場合について教えていただきました。

中間さん

口から入ったお薬は、まず「食道」を通って「胃」に運ばれます。胃酸によって少し分解され「腸」で吸収されたあと、「肝臓」で処理され、血液にのって体のなかを巡ります。血液は運び役となってお薬の成分を患部に届けるので、血液を送り出す「心臓」の働きもお薬の効き目に影響します。

役目を終えた薬の成分は、その多くが「腎臓」から尿中に出され、やがて体外に排出されます。

薬の副作用はなぜ起こるの?

かぜ薬を服用したときに、眠くなった経験はありませんか? 鼻水や熱などのかぜ特有の症状を抑えるのが、かぜ薬のメインの目的(主作用)である一方、眠気のような「副作用」が生じる場合もあります。

副作用といっても、その原因はさまざまです。薬が体内を巡るときに患部ではない部位に作用してしまったり、アレルギーなどの体質が影響したりするケースもあります。とはいえ、自己判断で薬の服用を中止してしまうと、治療が長引く可能性もあるので、注意したいところです。

中間さん

「副作用が怖いから薬は使いたくない」といわれる方もいらっしゃいます。処方箋による調剤をはじめ、患者さんの不安に寄り添いつつ、心地よく早く元気になれるようにサポートするのも、私たち薬剤師の大切な役割です。

お薬で副作用が起こる可能性はゼロではありません。だからこそ、薬局での聞き取りを通して、不快な症状をなるべく防げればと思っています。

薬局で薬剤師からいろいろ質問をされると、「ちょっと面倒だな」と思うときもあるかもしれません。しかし、薬剤師は薬の専門家として、そうした聞き取りを通して処方された内容に問題がないかをチェックし、患者さんの安全を守っています。

中間さん

ときには薬剤師が、患者さんを診察した医師に連絡をして、処方する薬を再度検討していただく場合もあります。薬剤師は、薬を通して医師と患者さんをつなぐパイプ役でもあるのです。気になる症状や不安があるときは、我慢せずに相談してくださいね。

薬を服用する回数や量はどうやって決まるの?

1日1回の服用でOKだったり、毎食後に飲む必要があったりと、薬の種類によって服用する回数は異なります。それはなぜなのでしょうか。

中間さん

短い時間で効くお薬は、お薬の成分の分解・代謝が早いのです。つまり、体のなかからいなくなるのが早いか遅いか、その違いが服用する回数にも影響していると考えてください。

薬をしっかり効かせるためには、血液中に溶けた薬の濃度を適切に保つ必要があります。ちょうどよい濃度を保つために、1日3回などの服用方法が決められているのです。

そのため、早く効かせたいからと、指定の量よりも多く服用するのはもちろんNG。単純に薬の量が増えればよく効くわけではなく、予期せぬ副作用を引き起こす可能性もあります。

中間さん

お子さんと大人では処方されるお薬の種類や量が異なりますよね。これはお子さんのほうが、お薬の成分を分解する力やお薬を排泄する力が弱いなど、いろいろな理由があるため。医療用医薬品は患者さんの症状や体質などに合わせて処方されるため、処方される量にもちゃんと意味がありますし、用量を守ることがとても大切です。

また、病気の種類によっては、患者さんの病状などに合わせて薬の量が細かく調整されることもあります。病院で処方されるお薬はその患者さんのためにカスタマイズされているので、他人への譲渡はできません。家族での共用も絶対に避けましょう。

これはNG! 薬の使い方に関する注意点

薬の効果は、正しく使用してこそ発揮されます。ここでは薬の服用に関して、ついしてしまいがちなことを中心に、気になる疑問にお答えします。

朝食後、薬を飲み忘れてしまった。昼食後に2回分飲んでも大丈夫?

中間さん

基本的に、1度に2回分の薬を服用することはしてはいけません。飲み忘れたときの対処方法はお薬の種類によって異なるので、自己判断せず、処方した薬局に問い合わせましょう。

カプセルを飲み込むのが苦手なので、なかの薬を取り出して飲んでもいい?

中間さん

カプセルを開けるのはNGです。胃酸などで少しずつ溶かされるのを計算したうえでカプセルが用いられている場合があるので、取り出して服用すると作用が強く出すぎてしまうおそれがあります。また、苦みを抑えるためにカプセルを採用しているお薬の場合は、かえって飲みにくくなってしまいます。

ハードカプセルは水より軽いため、飲み込みにくいと感じることもあると思います。そんなときは、水を少し飲んで口のなかを湿らせてから、もう一度水と一緒にカプセルを飲み込んでみましょう。軽く下を向くと飲み込みやすくなります。

どうしても飲み込めない場合は、薬局で相談してください。お薬によっては、飲みやすい形状に変えられるかもしれません。

処方された薬がまだ残っていても、症状がおさまったら飲むのをやめてもいい?

中間さん

基本的に処方された分は、すべて飲みきったほうがいいでしょう。飲み切る前に服用をやめると、また同じ症状が出る可能性があります。自己判断でやめる前に、医師や薬剤師に相談しましょう。

小さな錠剤なので、水なしで飲んでも大丈夫?

中間さん

一緒に飲むお水の量が少ないと、お薬がのどや食道で引っかかり、炎症を起こしやすくなります。また、薬が胃のなかでうまく溶けず、十分な効果が得られない場合もあります。お水の量はコップ1杯分を目安にするとよいでしょう。

信頼できる「かかりつけ薬局/かかりつけ薬剤師」を見つけよう

病気やケガを治療するうえで、薬は欠かせない存在です。けれど、間違った使い方をすると、かえって症状が長引いたり悪化したりする可能性もあります。薬を効果的に活用するためにも、かかりつけ薬局や薬剤師を見つけておくと安心です。

かかりつけ薬剤師とは、薬はもちろん、健康・介護全般について豊富な知識を持つ特別な薬剤師です。お薬手帳や聞き取りをもとに、処方される薬をすべて把握・管理します。薬の使い方に限らず、日常の健康相談にも24時間対応しています。

中間さん

とくに複数の病院に通われて、それぞれお薬を処方されている場合、飲み合わせに注意が必要な場合もあります。処方薬を受け取る薬局をひとつに決めておくと飲み合わせによるトラブルを防げますし、ご自身での薬の管理もしやすくなります。

薬に関して、診察時医師に聞き逃したことがあれば、薬剤師を通して医師に確認することもできるので、そうした場合も、普段から行き慣れている薬局なら相談しやすいのがいいところです。

中間さん

不調を感じつつも、どの診療科を受診すればいいかわからないときってありますよね。「最近ちょっと調子悪くて……」といった会話から、「〇〇科を受診してはいかがですか?」などのアドバイスにつながる場合もあります。かかりつけ薬剤師の制度を利用すると、さらにお薬の管理がしやすくなりますし、健康について気になることも気軽に相談できます。

多くの方にとって、薬局や薬剤師がもっと身近な存在になればいいなと思っていますし、上手に活用していただければうれしいです。

かかりつけ薬剤師については、下記のページでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

おしえて薬剤師さん!第1回「かかりつけ薬剤師」
この番組は、身近にあるけどいまいちよく分からない薬局の機能やサービスについて、お笑い芸人三拍子の二人が実際の薬剤師さんにアレコレ聞いて教えてもらう、おもしろくってタメになるHELiCOオリジナルの番組です。第1回のテーマは「かかりつけ薬剤師」。
https://helico.life/feature/pharmacist-tellme01/

「薬剤師が教えます!お薬のキホン」第2回は、「薬と食べ物の組み合わせ」について解説します!

CREDIT
取材・文/藤田幸恵 イラスト/Mariko Fukuoka 編集/HELiCO編集部
3

この記事をシェアする

関連キーワード

HELiCOとは?

『HELiCO』の運営は、アイセイ薬局が行っています。

健康を描くのに必要なのは「薬」だけではありません。だから、わたしたちは、調剤薬局企業でありながら、健康情報発信も積極的に行っています。

HELiCOをもっと知る
  • TOP
  • 注目の記事
  • 第1回「薬はどう体を巡るの?薬が効くメカニズム」

Member

HELiCOの最新トピックや新着記事、お得なキャンペーンの情報について、いち早くメールマガジンでお届けします。
また、お気に入り記事をストックすることもできます。

メンバー登録する

Official SNS

新着記事のお知らせだけでなく、各SNS限定コンテンツも配信!