皆さんは、どのようなときに薬局を利用されますか? 病気やケガで医療機関を受診したとき、風邪気味で市販薬を購入するときなど、ご利用シーンはさまざまでしょう。
時代の移り変わりとともに、薬局や薬剤師の役割は変化しています。薬剤師の担当する業務は、薬の調製をはじめ、服薬指導や服薬管理、患者さんと医師との橋渡し、在宅医療の支援など多岐にわたります。地域医療の担い手として、薬局や薬剤師の存在はますます重要なものになると考えられています。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第8回目は、薬剤師の業務内容をわかりやすく解説します。
- 教えてくれるのは・・・
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- 坂本 琴弓さん
- 株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局新座店
研修認定薬剤師/健康サポート薬局薬剤師
患者さんが相談しやすい薬局になるよう、薬剤師として患者さんの立場で考えることを大切にしている。
「薬局」の定義って? 薬を扱うお店はすべて薬局?
医薬品を取り扱う店舗や施設のうち、法律に基づいて薬剤の調剤を行うことができる場所を「薬局」といいます。薬局にはそのための調剤室が必ず設置されており、薬剤師は薬剤の調製のほか、患者さんが薬を正しく使用できるよう、必要な情報の提供・指導などを行っています。
薬局のなかでも、公的な保険制度に基づいて薬剤の調剤を行うことができるところを「保険薬局」といいます。保険薬局には、保険薬局であることをわかりやすい場所に表示することが義務付けられています。
ドラッグストアや薬店との違いは?
医薬品のほか、日用雑貨などを販売しているドラッグストアのなかでも、調剤室を併設している店舗は、薬局を名乗ることができます。店舗の名前が「○○薬局」であったり、「処方せん受付」「保険薬局」などの表示があったりする場合などです。薬局に当てはまらず、医薬品を販売している店舗や施設は、一般的に「薬店」と呼ばれます。
積極的に活用したい、特別な機能を持つ薬局
薬局に期待されることが広がりつつあるなか、次のような特別な機能を持つ薬局も増えてきています。
健康サポート薬局
健康サポート薬局とは、健康の維持・増進に関する専門知識を持つ薬剤師が、地域の皆さまのさまざまな相談に対応する薬局のことで、この制度は2016年4月から始まりました。例えば、患者さんの専任となる「かかりつけ薬局・薬剤師」としての機能とあわせて、介護や食事、栄養面などの相談にも応じる「健康サポート機能」も持っています。
また、相談内容によっては、医療機関の受診、医薬品・介護用品選びに関するサポートを行い、健康相談に関するイベントなども開催しています。
地域連携薬局
地域連携薬局とは、例えば医療機関の受診時に限らず、入退院時や在宅医療の際にも、患者さんが安心して薬による治療を受けられるよう、医療機関や介護関連施設などと連携しながら患者さんをサポートする薬局のことで、この制度は2021年8月より始まりました。
ほかに、「専門医療機関連携薬局」という、がんのような専門的な治療が必要な患者さんに対して、医療機関やほかの薬局などと連携しつつ、高度な薬の管理や特殊な調剤に対応している薬局もあります。
薬剤師の業務内容とは?
薬剤師といっても、医療機関、製薬会社、行政機関と、働く場所によって業務は異なります。
なかでも多いのが薬局で働く薬剤師で、薬局薬剤師は、おもに次のような業務を行っています。
- 処方せんに記載されている内容の確認、患者さんへの聞き取り
- 処方せんの内容について、必要に応じて医師への問い合わせ(疑義照会)
- 薬の調製・鑑査
- 患者さんの氏名や年齢、薬名、分量など、法律で定められた項目を記録した、「調剤録」の管理
- 患者さんへの服薬指導、服薬中のフォローアップ
- 患者さんの服薬状況やアレルギー歴などを記録し、「薬歴(薬剤服用歴)」として管理
- 在宅医療を受ける患者さんへの服薬指導や薬剤の管理
- 医療提供施設や他薬局、介護関連施設との連携
- セルフメディケーション(※)のサポート
- 要指導医薬品や一般用医薬品の販売 など
※セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすることをいいます(WHOの定義より)。
薬剤師は、いわば“薬の番人”。患者さんに、薬を安全かつ安心して使っていただけるように、薬に関する知識のアップデートもつねに行っています。
健康を支える心強い存在。かかりつけ薬局・薬剤師のすすめ
担当する患者さんの健康情報を把握している「かかりつけ薬局・薬剤師」は、薬や健康、介護に関していつでも気軽に相談できる、心強い存在です。政府も、かかりつけ医と同じように、かかりつけ薬局・薬剤師を持つことを推進しています。
処方された薬に限らず、サプリメントや市販薬などを使用しているときも、飲み合わせによる副作用や、過度な服用などによる体への影響に配慮しなければなりません。かかりつけ薬局・薬剤師なら、日頃から薬やサプリメントの使用状況も一元的かつ継続的に管理しているので安心です。
患者さんに寄り添った医療を提供するために
これまでお伝えしたように、薬剤師の業務は薬剤の調製にとどまりません。患者さんとのコミュニケーションも、薬剤師にとっては大切なことです。
薬局や薬剤師には、地域に根差した医療の担い手として、より患者さんに近い立場で健康をサポートすることが期待されています。