薬局ではどのような流れで薬剤の調製が行われているのか、気になったことはありませんか? とくに待ち時間が長いときは「何をしているのだろう……」と疑問に思うこともあるかもしれません。
調剤薬局では、薬剤師が患者さんへ薬を渡す以外にも、患者さんへの聞き取りや医師への問い合わせ、薬の鑑査、服薬指導など、さまざまな業務を行います。どれも、安全かつ効果的に薬を使用するうえで欠かせない、大切な手順です。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第7回目は薬局の調製の流れをわかりやすく解説します。
- 教えてくれるのは・・・
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- 坂本 琴弓さん
- 株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局新座店
研修認定薬剤師/健康サポート薬局薬剤師
患者さんが相談しやすい薬局になるよう、薬剤師として患者さんの立場で考えることを大切にしている。
その1:処方せんの受け取りと聞き取り、疑義照会
薬局では、患者さんから処方せんを受け取り、患者さんには、医療機関で発行された処方せんに加えて、次のものを提出していただきます。
- おくすり手帳
- マイナンバーカード(マイナ保険証)/健康保険証
- (必要に応じて)医療証、残薬など
※マイナンバーカードは提示
薬局でも質問票が必要なのはなぜ?
医療機関で患者さんは問診票を提出しますが、薬局でも、質問票やアンケートへの記入をお願いすることがあります。主な項目は、食べ物や薬のアレルギーの有無、既往歴、薬の使用状況、体質などです。
また、質問票のほか、処方せんの内容に問題がないかも確認するために、薬剤師が患者さんへの聞き取りも行います。
疑問点があれば薬剤師が医師に確認
例えばお子さんの場合、両親などから聞いている体重と、処方された粉薬の量が合わないなど、処方せんの内容に疑問点があったときには、薬を処方した医師に薬剤師が連絡をし、確認します。これは疑義照会(ぎぎしょうかい)という、薬剤師が担う大切な業務の一つです。
患者さんを診察した医師が薬の処方せんを発行し、薬剤師はその処方せんをもとに調製を行います。処方せんの内容に疑問があるうちは、薬剤師が患者さんに薬をお渡しすることはできません。このように、薬剤師は患者さんの健康を守るために、確認を怠らないようにしています。
その2:薬の調製、鑑査
処方せんに問題がなければ、調製を開始します。処方された錠剤やカプセル剤を取り集めるピッキングでは、似たような名前の薬や同じ名前で規格が違う薬などと間違えないようにします。粉薬やシロップ薬を調製するときには、1回分の服薬量を計算するので、こちらも細心の注意を払います。
間違い防止を目的に行う「ダブルチェック」
薬を調製するときは、調製を担当した薬剤師とは別の薬剤師が、鑑査を行います。このダブルチェックによって、薬を適切に処方できる体制を整えています。
アイセイ薬局グループでは、業務上の事故や過誤、ミスを防止するために、鑑査システム機器を導入しています。機器の導入により人的ミスを削減すると同時に、安心・安全な医療を実現したいと考えています。
調製する薬の種類によって変わる待ち時間
基本的に、調製は処方せんを受けつけた順番で進めます。ただし、薬の種類によっては、薬をお渡しする順番が前後するケースもあります。
そのほか、薬局に在庫がない薬を処方された場合は、取り寄せるのに時間がかかります。
複数の薬をまとめる「一包化」を提案することも
薬の一包化とは、用法が同じ複数の薬をまとめて1回分ずつパッケージすることをいい、患者さんとのコミュニケーションをもとに、薬剤師から薬の一包化について提案することもあります。
その3:薬のお渡しと服薬アドバイス
薬剤師が患者さんに薬をお渡しするときには、内容を患者さんと一緒に確認しながら、薬の種類や効能、用法・用量、保管方法、注意事項について説明します。副作用など気になる症状があれば、早めに薬局に連絡をいただけるように伝えます。
薬のお渡し時には、なるべく患者さんの不安を取り除けるようなコミュニケーションも欠かせません。
その4:調剤録と薬歴を記録
調剤にあたっては、調剤録と薬歴(薬剤服用歴)を記録する必要があります。調剤録には、患者さんの氏名や年齢、薬名、分量など、法律で定められた項目を記入します。
一方薬歴には、処方した薬の内容とあわせて、患者さんからの聞き取りをもとに、アレルギーの有無や体質、服用した薬の副作用について、服薬アドバイスの内容などを記録します。
患者さんに安心・安全な医療を届けるために、薬局ではさまざまな手順を経て一つひとつの薬を調製しています。患者さんが適切に薬を使用できるようにサポートするのも、薬剤師の大切な役割です。
おくすり手帳の情報や患者さんとのコミュニケーションが、より効果的な服薬アドバイスにつながることも少なくありません。服薬や処方、調製に関して気になることがあれば、おくすり手帳に記載をし、薬剤師に気軽に相談してみましょう。
おくすり手帳、処方せんについては、それぞれ下記のページでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
- 第5回「どんなときに役立つ?おくすり手帳の活用法」
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みなさんは、病院や薬局へ行くとき、おくすり手帳を携帯する習慣はありますか? おくすり手帳を持っていても、普段病院を受診する機会が少なく、どこかにしまい込んでいたり、体調不良などで急に病院へ行ったりするときには、ついついおくすり手帳を忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。https://helico.life/feature/medicinebasics-okusuritechou/
おくすり手帳は、処方薬の情報が書かれたシールを薬局の薬剤師が貼るためのもの、というイメージがあるかもしれませんが、おくすり手帳の役割はそれだけではありません。患者さんと医師、薬剤師、看護師や、ときには救急隊員などともつなぐ重要な役割を担っています。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第5回目は、おくすり手帳を使うメリットと活用法についてわかりやすく解説します。
- 第6回「何をどうチェックする?処方せんの見方を解説」
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医療機関で受け取った処方せんに、どのようなことが書かれているかをご存じですか? 急いでいるときなどは処方せんをあまり見ずに、薬局で受付をすることがあるかもしれませんが、処方せんには薬を使用するうえで大切な情報が記載されています。https://helico.life/feature/medicinebasics-prescription/
また、薬を受け取る際に、医療機関で伝えたことを薬局でも聞かれるなど、少し面倒に思う場合もあるでしょう。けれど、処方せんを受け取った薬剤師が内容に問題がないかをしっかり確認することで、使用する薬の安全性は保たれているのです。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第6回目は、薬の処方せんの見方についてわかりやすく解説します。