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みぞおちが痛い…原因は?胃のまわりの病気と対処法

胃に関する病気は、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍など多くの種類があります。胃のトラブルを引き起こすことで知られるピロリ菌の感染率は年々減りつつありますが、食生活の乱れやストレス、薬の飲みすぎなど、さまざまな原因でこうした病気にかかる人は少なくありません。この記事では、胃やその周辺で起こる病気の基本や受診のコツを解説!心がけたい健康習慣もあわせてご紹介します。

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代表的な胃の病気とは?

腹痛といっても、その原因はさまざまで、痛みを感じる箇所も広範囲です。なかでも、「胃のトラブル」によって生じている可能性が高いのが、みぞおち(上腹部中央)あたりに起こる痛み。まずは、具体的な病気を知っておきましょう。

胃炎と胃潰瘍

胃の粘膜に炎症が起きる「胃炎」。代表的な症状は、胃の痛みやもたれに加えて、食べ始めるとすぐにお腹がいっぱいになるような、早期満腹感などです。原因は、暴飲暴食や刺激物の大量摂取、ストレス、薬の飲みすぎ、胃の粘膜に住みつく細菌であるピロリ菌の感染などが多いとされています。

さらに、生理痛や頭痛の痛み止めとして、日常的に鎮痛薬をよく飲む方は、粘膜の一部が欠損してしまう「胃潰瘍」ができているケースがあります。鎮痛薬を飲むときは一日の用量を超えて飲まないように注意し、空腹時の服用は避けるといったことも大事です。なお、胃潰瘍もピロリ菌の感染が原因になることが多いです。

十二指腸潰瘍

胃と小腸の間にある十二指腸の組織が強い胃酸によって剥がれ落ち、内部からえぐられた状態になるのが「十二指腸潰瘍」です。原因は、ピロリ菌の感染や鎮痛薬の飲みすぎによることが大半です。胃潰瘍の痛みは食後3~4時間で起こるのに対し、十二指腸潰瘍の痛みは空腹時に起こるのが特徴です。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、吐血や血便といった症状が現れることがあります。胃や十二指腸からの血が便と混ざる場合、胃酸によって血液が酸化するため、真っ黒な便になります。一方、大腸からの出血の場合は、胃酸の影響を受けないので真っ赤や暗赤色(赤ワインのような色)をしています。

胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療は、胃酸を抑える制酸剤や胃の粘膜保護剤、あるいは胃酸の中和剤などの薬による薬物治療がメインとなります。潰瘍によって穴が開いている、出血しているといった場合は、外科的な手術が必要なケースもありますが、最近では薬で治療できるケースがほとんどです。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、胃酸の逆流によって、食道に炎症が起こってしまう病気です。逆流性食道炎は、加齢や食べすぎなどによる胃内部の圧力の変化、肥満による腹部の圧力の上昇などによって、胃から食道へ胃酸が逆流することで起こります。胃そのものの病気ではありませんが、胃の痛みと胸やけが代表的な症状です。ほかに、口のなかが苦く感じる、喉がイガイガする、痰が絡むなどの症状もあります

座る、立つ、といった姿勢のときには胃酸が食道に逆流することはありませんが、寝るときは体が横になるので、胃酸の逆流が起こりやすくなり、喉に垂れ込んできて喘息になる人もいます。

ピロリ菌に感染している日本人は減ってきている

胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった病気のほか、胃がんの99%はピロリ菌が原因で起こります。井戸水を飲む文化があった日本では、かつて8割近くの人がピロリ菌に感染していました。しかし、上下水道などの衛生環境が整ってきたことや、ピロリ菌の除菌が2000年に保険適用になったことで感染率は下がり続け、いまでは最も感染率が高い70代でも5割以下、20代では1割以下にまで低下しています

ピロリ菌の除菌治療で、病気の再発防止を

ピロリ菌の有無は、内視鏡での検査のほか、血液や尿、便、呼気を調べることでも判断ができます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者さんに潰瘍の治療だけをしても、ピロリ菌が残っていると再発してしまうため、除菌治療もあわせて受けることが重要です。この場合、2種類の抗生剤と、酸を抑制する胃薬を1週間服用する方法が一般的です。

胃がんの予防についてもピロリ菌を除菌したほうがいいものの、除菌で必ずしも胃がんを防げるというわけではありません。通常、ピロリ菌の除菌をすると胃がんの発生率は3分の1ぐらいに減るといわれていますが、除菌後5〜10年経ってから胃がんが見つかることは珍しくありません。

ピロリ菌を除菌した場合でも、なるべく毎年、少なくとも2年に一度は内視鏡検査を受けて、胃がんができていないかのチェックを続けることが大切です。

さまざまな腹痛の原因やピロリ菌については、下記ページでも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

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断続的に鈍い痛みがある。刺すような痛みを感じる。このようなお腹の痛みに、不安を抱いたり、戸惑ったりしたことがある人もいるのではないでしょうか。腹痛は、日常的に起こりがちな症状のひとつですが、その原因はさまざまです。また、お腹に痛みを感じていても、じつはお腹以外の体の不調のサインであることも。この記事では、多くの人にとって身近な症状である「腹痛」について、基礎知識や受診の目安などを解説します。
https://helico.life/monthly/230506stomachache-kiso/

受診時は、症状や受診歴、時系列の状況などを伝えよう

腹痛の症状で受診をするときは、いつから、どこが、どのように痛むのか、「刺すような痛み」なのか「鈍痛」かなど、痛みの種類を含めた情報を医師に伝えることが大切です。今ある症状については話せても、それまでの経過については忘れてしまっていたり、言いそびれてしまったりすることもあるでしょう。情報をまとめたメモがあると受診時に役立ちます

すでにほかの医療機関を受診している場合は、いつごろ、どこの医療機関を受診して、どういう検査を受けたのか、どういう薬を服用して、その結果がどうだったのか、といった情報を伝えるのも重要です。血液検査や内視鏡検査の結果や画像などがあれば、忘れずに持参しましょう。こうした情報があれば検査を省略できることもあります。

このほか薬のアレルギー歴や、妊娠中・授乳中であるかどうかなども必ず伝えるべき情報です。

全身の健康が胃の健康にもつながる。トータルで生活習慣を整えよう

胃を健康に保つためには、以下のような習慣を心がけましょう。

・食事は腹八分目
・こまめに水分を摂る
・消化の良いものを食べる
・脂っこいものや辛いもの、インスタント食品、ファストフードは控えめにする

胃の健康を考えるときには、同時に体全体の健康を考えることも大切です。胃だけに良い健康習慣というものは基本的にはなく、生活習慣や食生活を整えていくことが、結果的には胃のためにも良い習慣だといえます。

教えてくれたのは・・・
村井 隆三先生
おなかクリニック 院長

1982年、東京慈恵会医科大学卒業。元東京慈恵会医科大学外科助教授。元東京医科歯科大学大学院医療経済学非常勤講師。元町田市民病院消化器外科担当部長。元東京急行電鉄株式会社東急病院外科系担当診療部長。NPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会代表理事。日本外科学会専門医・指導医 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。日本消化器外科学会専門医・指導医 日本ヘリコバクター学会感染症認定医。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:Tomoe
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